回答者: バリー・ウィリアムズ
質問者: レオナルド・バートラム博士
序: バートラム博士は歴史学者を装い、現地の生涯居住者であるバリー・ウィリアムズへのインタビューを手配した。1980年代初頭に撮影された会場の写真から、ウィリアムズ氏は元・利用者だと特定されていたが、どのSCP-5491-1個体にも似ていなかった。
<記録開始>
バートラム博士: どうも、ウィリアムズさん。電話でお話ししたレオです。
バリー・ウィリアムズ: ようこそ、入ってくれ。やかんを火にかけたとこだ、もし-
バートラム博士: いや、どうかお気遣いなく。そう長々とはお邪魔しませんから。
バリー・ウィリアムズ: 時間なんか好きなだけ取ってくれていいんだぜ。
バートラム博士: では、まず… この写真についてですが。
バートラム博士は全盛期のクラブの内装を写したポラロイド写真の複写を取り出す。SCP-5491-1個体に酷似した人物数名が丸で囲ってある。
バリー・ウィリアムズ: あぁ、確かにアスペクトだ。 …荒れ果てちまったのは残念だ。
バートラム博士: 隅にいるのはあなたですね?
バリー・ウィリアムズ: やれやれ、ベルボトムなんか履いてやがる。うん、俺だな。あの頃ですら流行遅れのファッションだったのによ。
バートラム博士: では、この丸く囲った人々は…
バリー・ウィリアムズ: どれどれ… うーん、悪いけど左側の2人は分かんねぇな。でもここにいるこの女は — 1マイル離れた所に住んでたリンダ・ハートフォードだ。気の毒なリンダ…
バートラム博士: もし宜しければ、リンダさんが今どちらにいらっしゃるかお訊ねしても?
バリー・ウィリアムズ: いやぁ、可愛い子だったよ。あの当時は町の半分がリンダに夢中だった。10年生の頃、俺もあの子と… ええと、2週間ぐらい付き合ってたかな。他の大勢と同じように、80年代の初めに引っ越していって、その数年後に亡くなったと耳にした。
バートラム博士: 申し訳ありません、ウィリアムズさん。
バリー・ウィリアムズ: 構わないさ。ありゃ確か… 飲酒運転事故だったかな。運転してた側がリンダだった。昔あそこに集ってた奴らには酒に溺れたのが大勢いるが、可哀想なリンダは何年も問題を抱えてたんだ。
バートラム博士: 先程、大勢の人が引っ越したと仰いましたね?
バリー・ウィリアムズ: ああ、サッチャー政権が鉱山を閉鎖し始めた頃にな。町がまな板の上に乗せられちまったのには誰もが気付いてたし、実際にその時が来るまでに、若い連中はみんな大都市に移ってたよ。スウォンジーとか、カーディフとか… 余裕のある奴は大学に行ったりもした。ほとんどの奴らは二度と帰ってこなかった。
バートラム博士: そして、あなたは居残った?
バリー・ウィリアムズ: 金が無かったんでね。親父は閉山まで掘削機の整備士だった。親父からエンジンについて諸々教わったおかげで、俺は40年以上この町の自動車整備工場に勤めてこられた。
バートラム博士: リンダさんの隣に写っている、こちらの男性はどなたでしょうか?
バリー・ウィリアムズ: あぁ、トーマスだ。トーマス・ラングフォード。立派な紳士だったぜ、トミーは。あのな、こいつはウェールズで最初にエイズで死んだ中の1人なんだ。あんたの歴史書に相応しい陰惨な豆知識ってとこかな。
バートラム博士: それは… 酷い話です。他に — どう言えばいいのか — まだ残っていて、私がお会いできそうな方はいますかね?
バリー・ウィリアムズ: いやぁ、俺は昔のダチとはもう何年も音信不通だよ。今じゃみんなあちこちに散らばっちまった — ロンドンとか、そういう所で真っ当な都会人になっちまった。ここに戻る気は無いだろう。
バートラム博士: それは残念です。何人かにお話を伺ってみたいものですよ。
バリー・ウィリアムズはお茶を一口飲む。
バリー・ウィリアムズ: サッチャーがこの町をどれだけ痛めつけたか分かるか? 俺を突き動かすのはな、怒りなんだ。この町が完全にゴーストタウンにならない限り、俺はここに留まるよ—
バートラム博士: ええと、その、そろそろ私はお暇しなければならないようです。お時間をいただき本当にありがとうございました、ウィリアムズさん — 研究の大きな助けとなりました。
<記録終了>