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以下の報告書本文は情報の喪失を防ぐ目的で研究員による編集を行っていません。特に現在の財団では実験を行うことができないため、実験記録の記述は現状のまま保存されます。報告書本文に問題はありません。性質の解明のため、注釈を記入することは許可されています。特に明記のない注釈は、G████・██████氏による手書きの注釈です。
説明: SCP-550-JPは、███の████に存在する異常性を持った道路だ。現地に行って確認してほしい。
SCP-550-JPは、███トンネル(以降SCP-550-JP-1と指定)を抜けた先に続く道路である。SCP-550-JPは通常空間とは異なる空間に存在しており、SCP-550-JPへ侵入した対象者は外部から観測した場合即座に消失し、出口から出てくることはない。███トンネルは国道██号から続く道路とつながっているが、交通量は少なく、自治体による封鎖も行われていないことから、異常性は近年に発現したものと考えられる。SCP-550-JP-1の西側開口部(出口側)からSCP-550-JP-1へ侵入した場合は異常性はない。これはこちらで確認した。
SCP-550-JPの存在する空間は、SCP-550-JP以外の人工物が一切存在しない荒野が広がっており、わずかな植物以外に生物も存在しない。SCP-550-JPの上空には、常に通常空間における何れかの場所が上下が反転した状態で見えている。出現する場所に規則性は見られない。
上空の異常空間(SCP-550-JP-2と呼称)との境界面は、地表から50mほどに存在し、境界面より高い建造物や地形は、重なり合った状態で観測される。SCP-550-JP上にいる限り、それらから物理的影響を受けることはない。
SCP-550-JPから外側へ出た場合、対象者は5分以内に見かけ上の重力を失う。重りなどは効果が無かった。対象者はその後SCP-550-JP-2へ落下する。上空の地表までの距離は常に100m前後だった。車両につないだロープなどで落下の衝撃はコントロールできる。それに気づくまでに2名の犠牲を出してしまった。SCP-550-JP側へ戻り、SCP-550-JPに触れることで帰属する重力圏の回復が可能だ。
SCP-550-JP-2は通常空間と同様の空間ではあるが、それらの場所と時間軸が異なる。時間のずれは、SCP-550-JPを進んだ距離に応じていて、1m進むごとに1分先の時間軸へと移行する。SCP-550-JP-2内では自発的に時間は流れていない。SCP-550-JP上の移動、もしくは対象者の干渉によってのみ変化を示す。
- 空の街は"未来"ではない。我々の"現在"は空の街に影響を与えない。
SCP-550-JPの重大な異常性は、SCP-550-JP-2の事象に干渉できることである。
SCP-550-JP-2における因果事象は非常に不安定であり、対象者による干渉は正常な時間経過を伴わない。干渉は即座に通常空間へ反映され、物理現象は可能な限り、最初からそうであったように振舞おうとする。そのためSCP-550-JP-2で行われた改変は、対象者以外に知覚記憶することはできない。SCP-550-JPによる因果事象の改変は、基底時間軸と離れるほどに深刻な改変を行うようになり、ほとんどの場合不可逆である。
SCP-550-JP内の因果事象は決定論的挙動を示し、対象者を消し去る改変を行ってもSCP-550-JP-2内の対象者は影響を受けず、通常空間では最初から対象者がいなかった世界として決定される。
注記550-q007: ██博士による疑義
SCP-550-JPがもたらす未来の情報は、確実に現実世界で実現するのか?
注記550-a007: 担当研究員(M博士)による返答
SCP-550-JPは未来予知オブジェクトではありませんが、SCP-550-JPがもたらす情報は確実なものです。
SCP-550-JPの先行性確定情報における実証テスト
SCP-550-JPによってもたらされる予見的情報は対象者のみによって知覚されます。この予見的情報の確実性は、スクラントン・ボックスを用いた非透視非改変の認証試験『フィゾーテスト』によって確かめられています。
SCP-550-JP-1の出口は、SCP-550-JPの空間側では完全な平面として存在しており、側面や裏側から観測することはできない。正面から進入することで、問題なく通常空間へ退出できる。SCP-550-JP-1の出口は道路の途中に存在しており、反対側へ進むことで過去の時間軸への移動が可能だが、干渉は基底時間軸へ波及しない。
- 時の川の出口はひとつ。流されている。過去から出ることはできない。
19██/02/27 私、G████・██████は偶然にもSCP-550-JP-1へ侵入した。車は失ったものの上空への落下は免れた。SCP-550-JP-1から退出した後、数日かけ上空に映った街を調査。車が直撃した建物は干渉した当日に、建築資材の落下により倒壊していたことを確認。2度目の侵入では装備を整え、SCP-550-JP-2への到達に成功。過去改変能力を確認する。幾度かの干渉後、SCP-550-JP-1周辺の土地を購入し、入り口を厳重に封鎖した。
干渉実験記録: 多少の私的使用後、SCP-550-JPの能力の限界を確認するため、研究施設を建造し干渉実験を行った。
実験記録550-F001: 19██/04/15 11:23:50
到達した場所: アメリカ ペンシルバニア州 █████
到達した時間: 推定6ヶ月後
行った干渉: 街路樹の枝を折る。
結果: 干渉時間より1年前に付近で交通事故が発生。弾かれたバイクが街路樹に衝突。干渉時間に枝の折れた街路樹が実現した。
実験記録550-F002: 19██/04/20 10:45:30
到達した場所: フランス オート=ヴィエンヌ県 ███
到達した時間: 推定2年後
行った干渉: 個人診療室にて、机に置かれていたカルテの年齢を『34』から『64』に書き換える。
結果: 当該人物の出生日時が30年早まる。それに伴い、当該人物周辺の環境が大きく変化。多くの人間が改変事象の影響を受けたと思われる。
実験記録550-F003: 19██/05/03 09:45:10
到達した場所: 中国 四川省 ███
到達した時間: 推定2年3ヵ月後
行った干渉: 街路樹の枝を折る。
結果: 干渉時間より4年前に、███全域が山火事により焼失。街は放棄され、干渉時間に枝の折れた街路樹が残される。
実験記録550-F004: 19██/05/13 13:07:02
到達した場所: ████ ██ ███
到達した時間: 推定2年6ヵ月後
行った干渉: 自動車を一台走行不能にする。
結果: この実験による変化は観測されていない。なぜだ。
実験記録550-F005: 19██/07/12 14:02:55
到達した場所: カナダ オンタリオ州 ████
到達した時間: 推定8年後
行った干渉: 雑貨店の入り口に飾られていた、█████東部████連邦共和国のものと思われる国旗を持ち帰る。
結果: █████東部████連邦共和国が地図上から消滅。干渉時間より7年前に、2カ国に分離し、その国名と国旗は地図上から抹消された。
実験550-F005以降、改変事象がもたらす重大な危険性から、SCP-550-JPを300km以上進むことは禁止とすることにした。
違反報告550-I001: 19██/11/12 研究員の1人が、禁止命令を無視し300km以降へ侵入。研究員は錯乱した様子を見せ、XK-クラスシナリオの発生を予言した。
彼の使用していたコンピューターには"14件"のメールが保存されていた。
日付はすべて、備品の買い換えでデータを移行した日付になっているが、おそらくSCP-550-JP-2から彼が送信したものと考えられる。"件数"は、おそらく最初は1件だけであり、今後増えると思われるが、我々に数えることはできないだろう。
最初の1件には、XK-クラスシナリオ発生の結果と詳細、その日付が記されていた。それとともに、恐るべき事実も記されていた。
我々は、SCP-550-JPを使用し、XK-クラスシナリオの発生を幾度も防いでいたというのだ。しかし、何度目かの改変事象により、我々の組織自体が影響を受け、弱体化、破滅シナリオを抑制していた事実さえ消し去ったというのだ。
失敗だった。我々は失敗したのだ。
せめて私自身が改変を行っていたのなら、彼のような暴走を許すこともなかっただろう。我々は、一個人が運営する小規模な研究団体に成り下がってしまった。もはや、組織を強化するだけの時間も体力も残ってはいない。今や君たちこそが、この場所を管理するのにふさわしい組織になってしまった。
私は思うままに、過去を、未来を書き換えてきた。それが人類のためだと信じていたからだ。実際、私は大いにこの世界の安定に貢献できたと考えている。しかし、時間は容赦なく過ぎ去っていく。私にも、寿命が来たのだ。この事実は、最善を尽くしても、永遠に引き伸ばすことはできないだろう。
はるか地平線の向こうを目指す彼を止めるために、何度も職員を送ったが、全て失敗した。彼が未来において妨害しているのだ。
彼を止めてくれ。それが君たちが取るべき正しい選択だ。そして永遠に、SCP-550-JPを閉ざしてくれ。
未来は君たちに託された。
20██/04/01 G████・██████
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以上が、SCP-550-JPを所有していたG████・██████氏から送られてきた書簡による報告書本文です。
20██/04/07 G氏の依頼を受けた弁護士が、財団のエージェントと接触を行いました。その際に、SCP-550-JPを含む土地の権利と、1台のコンピューター、上記の文章の書かれたレポート用紙が財団へ譲渡されました。当該の弁護士には記憶処置が施されました。(注記:このことはG氏の指示書に記されていました。)
G氏の書簡には、上記の報告書の他に、自身の財がSCP-550-JPによって築かれたことを告白した文章と、O5に向け将来予想されるCKクラス-再構築シナリオの発生を指摘する書類、それに対抗するための指示書が同封されていました。何れの時間軸においても、G氏が財団および財団の保有する機密情報へ接触できる可能性は低いと考えられ、G氏がどのように財団の情報を取得し得たのかは不明です。財団の保安体制は恒久的に維持されます。
補遺01: SCP-550-JPおよびSCP-550-JP-2の観測記録により、報告書本文の確実性、G氏による指示書の信頼性が確認されました。
補遺02: G氏から譲り受けたコンピューターは、SCP-550-JP上にいる研究員が使用していたものであり、ハードディスクには予見的情報が記載されたメールが保存されています。保存されているメールの信頼性も現在非常に高いものとされていますが、その性質上、現状を維持したまま保管しておくことができません。
注記550-o002: O5-07による疑義
SCP-550-JPによる過去改変事象は回避不能なのか?
注記550-a009: M博士による返答
SCP-550-JPが引き起こす過去改変事象は、以前未解明な因果律の波及効果により、財団が保有するSRAおよびXACTSなどの再構成防御機構を無力化します。
原因については不明な部分が多く、ここで述べるべきことはありません。時間についてニュートン力学で体系化されてから300年、相対性理論が提唱されてから100年あまり、我々はこの概念について、あまりにも多くの部分を知り得ていません。
SCP-550-JPは来るべき未来を、先んじて覗き見るオブジェクトだと考えられます。干渉し、決定した未来が下流の基底時間軸へ流れてくるのです。
補遺03: 財団による、SCP-550-JPの進行は当該人物に到達するまで継続されています。 全て失敗しています。
(補遺03追記:) 失敗に至る要因は様々で、調査を担当する職員の事故死から、車両の故障、通信機器の不備などが発生しています。修繕や補充、代替などの対処を行っても、必ず別の阻害要因が発生します。現状、300km以前での観測記録などは問題なく行えます。
注記550-o003: O5-07による提案
SCP-550-JPによる過去改変事象は、過去こそが選択可能で無限の可能性を持つものだと示唆するものである。これは、未来こそ選択自由であるべきという財団の見解とは大きく異なる。SCP-550-JP上で進行を続けている研究員を追跡することは、現在の我々の技術では不可能と考えられる。彼が悪意ある存在だったのなら、我々財団はすでに消し去られているはずである。しかし、一個人の考えが常に一定であるとは言えず、SCP-550-JPの存在を許容し続けることは、財団にとって大きな危険が伴う。SCP-550-JP-1を破壊すべきかどうか、担当研究員の意見を求む。
注記550-a011: M博士による返答
おそらくSCP-550-JP-1を破壊することはできません。私たちにはここを閉じることしかできないのです。
SCP-550-JPが完全に無人になった場合、当該オブジェクトはThaumielクラスに分類される可能性があります。しかし、無人となる直前に最大の過去改変事象が行われる可能性も依然として高く、オブジェクトクラスの再分類は保留されています。