アイテム番号: SCP-553-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-553-JPを含む公園全体を高さ5mの塀で覆い、一般人の公園内への進入及びSCP-553-JPの目視を阻止してください。この封鎖について一般に公開している情報には"重金属による土壌汚染"という内容のカバーストーリーが適用されています。担当職員はSCP-553-JP付近を常時監視し、侵入者を発見した場合は直ちにこれを退去させてください。また、SCP-553-JPの入口は鉄製の扉を取り付けて常時施錠し、その他の開口部はすべてセメントで埋めるか鉄板で封鎖してください。
内部への立ち入りはセキュリティクリアランス3以上の職員の許可がある場合のみ許可されますが、その場合もDクラス職員のみ入ることが許されています。また、いかなる場合でもSCP-553-JP-2出現中にSCP-553-JP-1の扉を開けることは許可されません。
説明: SCP-553-JPは██府██市に存在する公園内の公衆便所です。SCP-553-JPそのものには通常の公衆便所と外見上の差異は見受けられず、異常性も発揮しません。
SCP-553-JP内の男子用トイレの個室(以下SCP-553-JP-1と記述)にヒト(以下被験者と記述)が入り、施錠してから5分が経過すると、SCP-553-JP-1内部に20代前半の日本人女性と推定されるレベルⅢ霊的人型実体(以下SCP-553-JP-2と記述)が出現します。
SCP-553-JP-2を肉眼で視認した被験者は頸部に何かが巻きつく感覚を覚えた後、極めて強い力で天井方向へと引き上げられ、非実体の紐で首を吊った状態となります。この際頸部を保護する試みや被験者を救出する試みはいずれも失敗に終わっています。
被験者が縊死するとSCP-553-JP-2は消失し、同時に被験者は宙吊りから開放されます。
実験記録D-553-JP-01 - 日付20██/10/17
対象: D-81080及びD-81081
実施方法: 小型ビデオカメラを装備させたDクラス職員1名にSCP-553-JP-1に入らせ、施錠後SCP-553-JP-2が出現するまで待機させる。
結果: D-81080がSCP-553-JP-1に入り施錠して5分後、SCP-553-JP-2実体が出現。D-81080は宙吊りになる。D-81080は紐を外そうとするが触れることができない。痙攣、弛緩、終末呼吸を確認。
宙吊り状態になって4分25秒後、D-81080は心肺停止状態になり、その直後にSCP-553-JP-2が消失。 同時にD-81080は落下。死亡が確認された。その後ビデオカメラを回収し、D-81081に確認させたが、異常性は確認されず。
分析: この実験によりSCP-553-JP-2は映像媒体による確認が可能な事、肉眼による視認でないとSCP-553-JP-2の異常性は発揮されない事が判明した。
実験記録D-553-JP-02 - 日付20██/10/18
対象: D-81081及びD-81082
実施方法: Dクラス職員2名にSCP-553-JP-1に入らせ、施錠後SCP-553-JP-2が出現するまで待機させる。可能なら宙吊り状態からの救出を試みる。
結果: D-81081及びD-81082がSCP-553-JP-1に入り施錠して5分後、SCP-553-JP-2実体が出現。D-81081及びD-81082は宙吊りになる。以降実験記録D-553-JP-01と同様の結果をたどる。
分析: 視認したものが複数でも問題なく絞首するようだ。
実験記録D-553-JP-03 - 日付20██/10/19
対象: D-81083及びD-81084
実施方法: Dクラス職員1名にSCP-553-JP-1に入らせ、施錠後SCP-553-JP-2が出現するまで待機させる。出現を確認後もう一人のDクラス職員にSCP-553-JP-1の扉を外部から開けさせる。
結果: D-81083がSCP-553-JP-1に入り施錠して5分後、SCP-553-JP-2実体が出現、D-81083は宙吊りになる。その直後にD-81084によってSCP-553-JP-1の扉を開けさせたところ、D-81084も同じく宙吊りになった。直ちにアイマスクをした機動部隊員によってD-81083及びD-81084の救出が試みられたが、失敗に終わる。おおよそ5分後にD-81083及びD-81084の縊死を確認。
分析: SCP-553-JP-1内にいなくても視認すれば絞首されるようだ。何らかの理由でSCP-553-JPの外や公園の外から視認してしまった場合でも絞首される可能性があるため、公園そのものの封鎖が必要と思われる。
SCP-553-JPは20██年4月3日から10月15日にかけて、同じ死因による変死体が発見される事案が3件相次いで発生したことで財団の目を引きました。捜査にあたった警察内部に潜入していた財団エージェントによってSCP-553-JPの異常性が確認された後、関係者に記憶処理を行いました。
補遺1:
実験記録D-553-JP-01の映像を解析した結果、SCP-553-JP-2の外見が近隣住民であった██ ██という女性と酷似していることが判明しました。
彼女は20██/04/03にSCP-553-JP-1内で首を吊った状態の遺体として発見されました。当初捜査当局は自殺だと見ていたのですが、検死の結果他殺であると断定されました。以下は██ ██を知る近隣住民に対するインタビュー記録です。
対象: ██ ██の近所に住んでいる50代主婦。
インタビュアー: エージェント・一宮
付記: エージェント・一宮は週刊誌記者と称してインタビューを行っている。
<録音開始>
エージェント・一宮: ██ ██さんについてお聞かせ願えますか?
主婦: ほんまええ子やったよ。いつもにこにこしとって礼儀正しゅうて、██ちゃんみたいなええ子がなんであないな酷い目に遭わなあかんのやって近所の人はみんな言うとるわ。親御さんもえらいショック受けてもうてな、奥さんはショックで倒れて未だに入院しとるし、ご主人もえらい気落ちしとるしねぇ。
エージェント・一宮: ええ。それで、██さんが事件に巻き込まれた時の事で、何か覚えてることがあれば教えていただけませんか?
主婦: それはええんやけどさ、うちらよりご主人に聞いた方がええんちゃう?
エージェント・一宮: まだ心の整理がついてなさそうでしたので。
主婦: 週刊誌の記者ってのはそないな時でもお構いなしに根掘り葉掘り聞くもんやと思うとったんやけど、あんたええ人やね。
エージェント・一宮: それはどうも。で……
主婦: ██ちゃんが死んだ日の事やったね。最後に██ちゃんに会うたんは確か2日の昼頃やったかなぁ。うちがお隣の奥さんと喋っとったらあの子が通りかかっってな。えらいおめかししてどこ行くんって聞いたら、あの子今から彼氏と買い物行くんやって嬉しそうに笑ろうとったわ。そん時は若いってええなぁ、ってお隣の奥さんと言っとったんやけど、まさかあないなことになるとは思わんかったわ。
エージェント・一宮: なるほど。で、その彼氏についてはご存知ありませんか?
主婦: それな、うちらもあの子が殺されたって聞いた時、その彼氏が怪しいんちゃうかって調べに来た警察に言うたんやわ。でもそれから何件も似たような事件が起きとんのに犯人捕まらんやろ?そんなことやから府警は信用できへんとか税金泥棒とか言われんねん。
エージェント・一宮: そうですね。
主婦: あ、そういや
エージェント・一宮: なにか思い出したことでも?
主婦: 前に██ちゃん言うとったんやけど、彼氏はアメリカ人や言うとったな。名前は確か……ジェームズなんとかやったんやけど。なんやったっけ……ちょっと思い出せへんわ、堪忍な。
エージェント・一宮: いえ、貴重なお話ありがとうございます。
<録音終了>
20██/10/20の近隣住民に対するインタビューの後、██ ██の両親からの聴取及び██ ██のスマートフォンの解析により、██ ██の交際相手の名前がJames Franklinであることが判明しましたが、入国管理局及び在日米軍、合衆国社会保障局のデータベースには該当する人物が日本国内にいた形跡はありませんでした。
██ 12月15日
合コンにアメリカ人がいたんですけど。しかもイケメンでマジどうしよう。
██ 12月15日
イケメンアメリカ人、ジェームズって名前だった。メアド交換しちゃった。
██ 12月17日
ジェームズから妹のクリスマスプレゼント何がいいって相談のメールがあって今からちょっと出かけてきます。
██ 12月17日
ジェームズの買い物に付き合ったついでにプチデート。彼イケメン過ぎてヤバいんですけど。マジ好みだわ。
██ 1月20日
どうしよう、彼と会う度にどんどん惹かれてく自分が怖い。
██ 1月27日
彼に告白されました。まだ頭の中パニクっててどう言っていいやら。夢なんじゃないか、もし夢なら醒めないで欲しい。
██ 2月15日
一晩中彼と一緒にいて思った事。私彼なしじゃもう生きていけない。彼の言うことなら何でも聞いちゃう。
██ 3月25日
彼が一緒に住もうって言ってくれた。もう幸せすぎて死んじゃいそう。
██ 4月3日
彼と一緒に住む新居をこれから見に行ってきます。
██ 4月3日
わたしきょうからここにすみます
かれのいうことならなんでもききます
かれがつるせっていうからつるします
ああわたしとってもしあわせ
しぬほどしあわせ
付記:最後のツイートは██ ██の死亡推定時刻の6時間後に書き込まれたことが判明しています。
補遺2:
██ ██のツイートにあった合コンの参加者にインタビューを試みたところ、全員がJames Franklinという人物について「いたとは思うが顔は覚えてない」と証言しました。また、合コン当日James Franklinをスマートフォンのカメラで撮影したと複数人の参加者が証言しているにも関わらず、それらの画像はいずれも発見されていません。加えて、██ ██のTwitterに投稿されたJames Franklinの画像も全てサーバー上から消失していることが確認されています。
James Franklinを写した画像はすべて不自然に消失しています。また、彼の顔を覚えている人間が誰もいません。これは現実改変の可能性を疑うべき案件だと思われます。―信濃川博士
James Franklinについて不自然な点があり、未収容のSCPオブジェクト、あるいは要注意団体の関与が疑われるため、財団本部に関連資料がないか連絡を取って調査協力を依頼したところ、関連性のあると思われる「SCP-████の報告書」の存在を示唆されました。しかし、当該報告書は現実改変によるものと思しき改竄の形跡があり、James Franklinについて明確な情報は得られませんでした。James Franklinに関する財団本部との共同調査が現在検討中です。
██ ██と交際していたJames Franklinが件のSCP-████の報告書に名前の上がっているJames Franklinと同一存在なのかは確証がない。ただ単に名前が同じだけの可能性もある。だがJames Franklinが現実改変能力を有する人型存在である可能性を有する以上、楽観論を語ることは危険であると考える。過去にも事態を楽観視した結果、最悪の結果を招いた例がある。失敗を繰り返さないためにも、打てる手は打っておくべきだろう。—日本支部理事・███████