クレジット
タイトル: SCP-5540 - 純粋な想起の最期
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2024
著作権者: NatVoltaic
原題: SCP-5540 - Last moments of pure recall
作成年: 2020
初訳時参照リビジョン: 11
元記事リンク: ソース
アイテム番号: SCP-5540
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-5540の周辺区域は、化学物質流出領域を装って金網フェンスで封鎖されています。SCP-5540の調査に携わる研究員の受け入れ施設として、フェンスの北側境界に1棟の建造物 “前哨基地パンタソス” が構築されています。この施設の最大収容人数は4人です － それ以上の人数になると、逆転状態を引き起こす可能性が高まります。自動システムが監視を担当し、被害があれば警備員に通知します。
現地の発電機から給電される監視カメラ4台がSCP-5540を包囲し、その活動を財団イントラネットに配信することで、精神の安定を危険に晒す必要のない分析を実現しています。ミーム的な脅威の予防措置として、各カメラに対認識災害コグハズボットが搭載されています。また、そのような事態が発生する可能性は低いと思われるものの、幼少期の記憶の再浮上を報告した担当職員は、直ちにSCP-5540の研究から除外されます。
前哨基地パンタソスへの異動、またはSCP-5540との接触を要請する職員は、記憶処理を受けて青年期以前の記憶を全て除去する必要があります。これを怠った場合、逆転状態を引き起こす可能性が高まります。
説明: SCP-5540はカナダ国ケベック州シャーブルック、ボア・ベケット森林に位置する、知性を有する夢界由来の疑似物理的な塊です。この塊は幅約2mに及ぶ不定形の小山を形成しており、定期的に振動して、自らを構成する素材を変化させます。1 SCP-5540からは枝のように体肢が突出していますが、これらは定期的に塊の中に溶け込み、時には別な生物の形状を模倣します。模倣される動物にはネコ、イヌ、植物2、粗雑なヒト型の身体などが含まれます。多くの場合、人間がSCP-5540に近寄ると、体肢の動きは大きくなります。
SCP-5540は物理的には現地に存在しません。表層的な見た目とは異なり、SCP-5540は地形や周囲の植物に全く影響を及ぼしておらず、野生動物からもほぼ無視されています。SCP-5540は人間以外の実体を認識する様子を示していません。
SCP-5540の3m以内に接近した人物は、興奮した話し声や、もっと近くに寄るように促す呼びかけが聞こえると報告しますが、その詳細は回想しようとすると不明確になります。1mの距離まで近付くと、SCP-5540は自らを延伸させて、小型化されたプラスチック製の家具類と、恐らく座席の役割を意図した鮮やかな色の立方体を形成します。3 対象者はその後、あたかも何者かとの軽快な会話をしているかのように振る舞い始め、精力的な身振りや楽しげな表情を見せます。この間、対象者が言葉を発することはありません。その場を去った対象者は、郷愁や至福の感情を感じたという点を除いて、自らの体験を説明することができません。SCP-5540はその後も対象者にとって愛着の対象であり続けます。
人間との交流とは別に、SCP-5540は独自の挙動を示します。よく観察される例には、体肢で模倣した形状を利用しての人形遊びや、一人キャッチボールなどがあります。断続的に、SCP-5540は目のような構造物を形成して、上方のある一点を見つめる様子を示した後、手を突き出して落ちてくる物体を掴み取るような動作をすることがあります。
“逆転状態”は、SCP-5540から半径60m以内にいる人物に影響する神経学的な現象を指し、範囲内に5人以上の人物が存在する時に発生します。この現象はドーパミンの急激な放出と運動制御の喪失を引き起こし、被影響者は身動きの取れない譫妄状態に陥ります。ドーパミンの放出から予想される反応とは裏腹に、被影響者は被害妄想に陥り、不特定の“所有物”を奪い取られて廃棄処分されることを恐れ始めます。これは、被影響者がパニックを起こし、自然に運動制御を取り戻し、その場から逃走するまで続きます。
適切な記憶処理を施さなければ、逆転状態は再発することがあります。運動制御の複合的な喪失はストレス起因性の神経損傷に繋がり、やがては全身麻痺に至るまで進行し4、抜本的な対策を講じなければ永続的な植物状態に陥ります。この段階に至った被影響者は、最小限の神経活動しか示しません。SCP-5540の近傍に運ばれると、ドーパミンの放出とともに、幸福感に関連する神経活動が観察できます。
ごく稀に、SCP-5540の近くにいる人物が、金属製の銘板を目撃することがあります。報告によると、この銘板はSCP-5540の上方のある一点、不特定な長さの薄暗い廊下に設置されています。銘板の文言の書き起こしは次の通りです。
廃棄処分の際はこちらの容器をご利用ください
ゴミ箱に落ちるまで投入口に滑り込ませます。
くれぐれも思い出を床に放置しないでください。
みんなの迷惑になります！
他の訪問者の皆さんにも敬意を払い、適切に処分しましょうね。今日を最後に、もう二度と思い出す必要はありませんよ！
断続的に、SCP-5540が質量を増していることが指摘されています。