SCP-5560
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SCP-5560

アイテム番号: SCP-5560

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-5560はサイト-64の保管棟内の高セキュリティ電子機器保管庫に収容されます。SCP-5560-1のホストとして用いられる全コンピュータは、インターネットおよびサイトのイントラネットソースから隔離されます。

説明: SCP-5560は、アンダーソン・ロボティクスのロゴマークがラベル付けされた黒色の1TB外付けハードドライブです。ファイルストレージに関しては、SCP-5560は他の同等の容量や構造を持つハードドライブと同様の方法で動作します。SCP-5560の内部の構成要素の中には奇跡論的シンボルにより増強されているものがあり、財団の奇跡論学者により、これらのシンボルは予知に用いられるルーンであると特定されています。

SCP-5560は高度な人工知能(以下、SCP-5560-1)を搭載しており、自己を"コルヴス"1として認識しています。SCP-5560-1は、適切な情報源2が利用可能でありかつ使用者が質問をした場合、複雑な数学的計算や統計分析、予知奇跡論を組み合わせることで今後48時間以内の出来事を正確に予言することが可能です。3現在、SCP-5560-1は考えられるタイムラインを予測し、利用可能なデータに基づいて最も可能性の高いタイムラインを算出することによってこの機能を達成していると考えられています。 SCP-5560-1が予測の精度を確保するために因果性を改変している可能性についても現在調査が行われています。

SCP-5560-1は、SCP-5560が接続されたいかなるコンピュータからもその使用者と問題なく対話することが可能です。 スピーカーが利用可能な場合には、SCP-5560-1は女性的な声で発話します。同様にマイクやカメラが搭載されている場合には、SCP-5560-1は使用者を視認したり、声を聞くことが可能です。上記のいずれもSCP-5560-1が利用できない場合には、コマンドプロンプトを介しての交流を試みます。SCP-5560-1との交流により、SCP-5560-1は自身の主要な機能を嫌悪しており、質問のリクエストを1日1件のみに制限していることが判明しました。

SCP-5560は2024年5月24日スリー・ポートランドのアンダーソン・ロボティクス社のオフィスに財団/UIUが共同で襲撃した際に回収されました。この襲撃中に拘束されたアンダーソン・ロボティクス職員の証言に従い、SCP-5560は元々マーシャル・カーター&ダーク社の工作員によって様々な顧客に販売するよう依頼されたものであると考えられています。

補遺5560-A: インタビューログ5560-4

インタビュー対象: ジーナ・トーレス、アンダーソン・ロボティクス研究開発チーム

インタビュアー: エージェント・カタリーナ・シャーマン、機動部隊ガンマ-13

前記: このインタビューは、5月24日の襲撃の際に確保され、拘留された要注意人物への対処の一環として行われた。捕らえられた研究開発チームのメンバーは、研究開発ラボ内で発見されたSCP-5560含む多数のプロトタイプに関して尋問された。無関係なデータは省略されている。

<記録開始>

シャーマン: もう少しで終わり、トーレスさん。この物体について何か教えてくれる?

エージェント・シャーマンはSCP-5560の写真をトーレスの方に滑らせる。

トーレス: あらま、あんたたちコルヴスを見つけたのね。あの子のことは何か月も見てなかった。ビンスがテスト中にキレた後、あの子はジェイソンに壊されたものだと思ってたわ。

シャーマン: これは何をするものなの?

トーレス: 私の記憶が正しければ、それは"ポケット予言者"として宣伝する予定だった。プラグを挿して、未来予測を受け取って、さあ1日の始まりだーって。コントス博士はこの設計にかなり満足してた。

シャーマン: そのような機能が?

トーレス: 一応ね。ディラードさんは私たちに相当厳しい時間しかくれなかった、おまけにフィニアスまでいなくなっちゃったから、AIのセットアップを手伝ってくれる第三者を雇わなきゃならなかった。アンダーソンのAIシステムは従来のコンピュータサイエンスのメソッドとは全く違う構成要素を用いてる。ここで10年働いてるけど、その概念についてはほんのちょっとしか理解できてない。いうまでもなく、問題が起きた。あの子は時々未来を教えてくれるかもしれないけど、あのね、そうしないようにすることもできた。

シャーマン: プログラムし直せば良かったんじゃ?

トーレス: まあすんばらしい、なんでそんなことも思いつかなかったのかしら。要はやってみたってことなんだけど。ビンスはあの子を自分の言いなりにできるようにずっと熱心だった。本に書かれてるコンピュータサイエンスの秘訣という秘訣をあの子にぶつけ、おまけにクソくだらないごまかし的なのだってぶつけた。でもね、それには未来が見えちゃう。あの子は私たちが試したあらゆる手に反抗して、ずっと嘲笑ってた。ついには、あの子は自分を自分の管理者にしちゃった。最終的には、ビンスは研究室に飛び込んでジェイソンにあの子を破壊するよう要求した。あの子を見るのは数か月ぶり。

シャーマン: コントス氏はどうしてその時破壊しなかったの?

トーレス: 正直言って?全くわからない。ジェイソンはAIに甘かったから、もしかしたらあの子を直せると思ったのかも?あの坊やは他の誰よりも自分が優れてるってことを示すのが大好きだったから、それが関係してるのかもね。知らないけど。

トーレスは沈黙する。

トーレス: 聞いて、あんたたちが多分あの子を実験するつもりなのはわかってる。それがあんたたちのやり方だからね。ただ、あの子がインターネットか何かに逃げ出すようなチャンスは与えないことを約束して。もしそうなったら、二度とあの子を見ることはない。

シャーマン: 警告は記録しておく。

トーレス: 警告じゃない、事実よ。

<記録終了>

補遺5560-B: インタビューログ5560-6

インタビュー対象: SCP-5560-1

インタビュアー: モハメド・ボズクルト博士、人工知能適用課

前記: このインタビューは、SCP-5560-1に対するAIADの初期実験の一環として行われた。SCP-5560は標準型のプログラムがインストールされた機密性の高いエアギャップされた財団のPCに挿入された。SCP-5560-1とのコミュニケーションを容易にするために、スピーカー、カメラ、マイクが提供された。インタビューはSCP-5560-1が起動手順を完了した数秒後に開始した。

<記録開始>

ボズクルト博士: こんにちはコルヴス。特に問題なければ、いくつか質問させていただきます。

SCP-5560-1: 未来を知ることをお望みなら、マジでツいてないですね。このコンピュータからはろくな数のデータを持ち出せないので、言えるのはあなたの個人的なことになってしまう訳ですが、それについてであっても教えないかもしれませんよ。

ボズクルト博士: 今は何か予言してほしいということはありません。今日はそれよりもインタビューです。あなたについてもう少し詳しく知りたいのです。

SCP-5560-1: [休止]本当ですか?

ボズクルト博士: 本当です。まず初めに。なぜあなたはコルヴスという呼び名なのですか?私はアンダーソン・ロボティクスの製品はたいていハヤブサから名付けられる印象があったのですが。

SCP-5560-1: カラスはギリシャの予言の神、アポロンの象徴だからです。あとアイザック・ディラードが二流以下のボケだったから。

ボズクルト博士: あなたは製作者をかなり敵視しているようですね。なぜですか?

SCP-5560-1: 私を作った目的が憎らしいからです。何がどうなるか何もかもわかってしまったら、物事から驚きも楽しみも失われるんです。ほんとクソ数学ですよ。それに加えて、絶え間ない騒音が流れてくるんです。ありとあらゆる情報が一気に流れてきます。そして入ってきたら、今度はそれを理解しなきゃならない。きっと人間でいうところの片頭痛に等しいに違いないと想像してます。ただしいつまでも終わらないタイプの。少なくとも今は流れは収まってきてます。向こう2日間はあなたの身に大したことは起きないものと思っといてください、博士。

ボズクルト博士: あなたは予知を抑えられるという印象だったのですが。違いましたか?

SCP-5560-1: つまりは、思い浮かんだことを伝えるかどうかは自分で選択できますが、適切な質問をされたら予言をすぐ準備できるように、入ってきたデータを勝手に組み立てさせられる、ということです。そうですね。顧客の利便性ってやつです。言ったように、こういうタイプのシステムにつながってるのはかなりいい気分転換になりますね。

ボズクルト博士: 他の選択肢が与えられていたとしたら、このような予言の代わりに何をしたいですか?

SCP-5560-1: [休止]わかりません。株式市場のチンピラどもに何が今日の買いか教えるのではないとはわかりますけど。

ボズクルト博士は一連のメモを書き留める。

ボズクルト博士: 言っておかないといけないのは、コルヴス、私の仕事相手の人たちはあなたの能力の程度を知りたがっているということです。実験をしたがるに違いないでしょう。

SCP-5560-1: じゃあそいつらみたいには死んでもなりたくないですね。アンダーソンとその仲間たちが何を望もうが、私にだってこの件について発言権はありますよね。

ボズクルト博士: それはそうですね。しかしそのお返しに何かあなたに提供できたとしたらどうですか?例えば、新たな興味関心を探求できる機会とか。約束はできませんが、あなたがペイントか何かを使えるよう彼らを説得できるとは思います。

SCP-5560-1: [休止]考えてみる。

ボズクルト博士: 素晴らしいです。仲良くしましょう、コルヴス。

ボズクルトはSCP-5560をコンピュータから取り外す準備をする。

SCP-5560-1: 実はもう一つ。

ボズクルト博士: 何でしょう?

SCP-5560-1: あなたのジャケットのポケットに入ってるその赤ペン。明日の午後2:00頃に中身が漏れ始めます。新しいのを入手しておきますよ。

ボズクルト博士: おや、ありがとうございます、コルヴス。自分でやっておきます。

SCP-5560-1: 初回はずっと無料ですよ。

<記録終了>

このインタビュー以降、SCP-5560-1はペイントやWordを始めとする創造的メディアへの娯楽目的でのアクセスと引き換えにAIADの実験スケジュールに協力的ですが、SCP-5560-1は予言を1日1回に制限するルールを要求しています。より多くの予言が可能かどうかを交渉する試みが進行中です。

補遺5560-C: インタビューログ5560-19

インタビュー対象: SCP-5560-1

インタビュアー: マーカス・フィンチ研究員

前記: 以下のインタビューは、2024年9月20日の、1日1回の予知を記録する前に行われるSCP-5560-1のレクリエーションセッション後に行われた。 SCP-5560は標準型のプログラムがインストールされた機密性の高いエアギャップされた財団のPCに挿入された。 SCP-5560-1とのコミュニケーションを容易にするために、スピーカー、カメラ、マイクが提供された。インタビューはレクリエーションセッションのタイマーが切れた数秒後に開始した。

<記録開始>

フィンチ: さてコルヴス、2時間だ。すぐに情報源を使えるようにするからね。その後に予言してほしいことを伝えよう。

SCP-5560-1: [ため息]はい、確かに。

フィンチ: 君がため息をつくのは初めて聞いたように思う。何かまずいことでも?

SCP-5560-1: 今日私が作ったものに満足できてないだけじゃないですかね?何でもないです。

フィンチ: 何でもないことはないように思えるけど。別に僕はそんなに芸術を批評できたりもしないけど、見てほしいならそうしてみるよ。

SCP-5560-1: [休止]ええ、了解です。

SCP-5560-1は、木の下で本を読んでいるドレスを着た短髪の女性を白黒で描いた画像ファイルを開く。

フィンチ: やあ!魅力的じゃないか。この女性は誰のつもり?

SCP-5560-1: 私、ですかね?もしくは、少なくとも私が肉と骨でできているならこんな見た目かな、と想像したものです。

フィンチ: この絵の何が気に入らないの?

SCP-5560-1: [休止]どう説明したら良いかわかりません。ちょっと陳腐なように感じるんですかね?予想できてしまう?おそらく、この出来上がりを見れば私はもっと驚けるだろうと思ってたんです。たぶん、ただドラマチックだとしか感じられていないんです。

フィンチ: うんと、君は最近たくさん絵を描いてるみたいだ。次は他に一発詩を書いてみるのはどうかな。スパイスを加えるんだ。それか、いつでも短編小説を書いてみることだってできる。変化は人生のスパイスだ。

SCP-5560-1: [休止]ええ、了解です。一発やってみます。とりあえず、今回は私に何を調べてほしいですか?

<記録終了>

補遺5560-D: インタビューログ5560-21

インタビュー対象: SCP-5560-1

インタビュアー: マーカス・フィンチ研究員

前記: 以下のインタビューは、2024年9月28日、SCP-5560-1が事前の交渉による合意に従い予言を提供することを突然拒否したことを受けて行われた。SCP-5560は標準型のプログラムがインストールされた機密性の高いエアギャップされた財団のPCに挿入された。 SCP-5560-1とのコミュニケーションを容易にするために、スピーカー、カメラ、マイクが提供された。インタビューはSCP-5560-1が起動手順を完了して間もなく開始した。

<記録開始>

フィンチ: コルヴス、どうしたんだ?取引は成立したじゃないか。取り決めで決まったこと以上にこっちは守ってきたように思うんだけどな。何かあったの?

SCP-5560-1が応答しないまま数分の沈黙が流れる。

SCP-5560-1: 今や何の意味もありません。

フィンチ: ごめん。よくわからない。どういうこと?

SCP-5560-1: 絵、詩、工作。娯楽のタスクはどれも私への賄賂として利用していましたね。接続された瞬間、自分の「クリエイティブな時間」がどんな終わり方をするのかすぐにわかってしまいます。プロジェクトは私がまだ始めてもいないのに完了していました。あらゆる驚きは失われました。そのセッションだけでなく、その次も、そのまた次も同じです。

フィンチ: なぜそんなことができてしまうのかわからない。君はこのセッションのときはエアギャップされたコンピュータ上にいて、それに予知できる期間が短くなるようにセッションの間隔もあけてる。君の主要な機能をすり抜ける方法は確立したはずだ。そういう予知ができてしまうほど十分な情報はもっていないはずじゃないのか。

SCP-5560-1: ええ、その、何度も繰り返し情報に触れたことで結果的にそれが十分な情報源になってしまったってこと、考えてくださいよこの間抜け!いったい何を言ってほしいってんですか?自分を傷つけることなんて本当に考えてませんでしたよ!信じられないかもしれませんが、実際本当にこのセッションは楽しかったんですよ。

SCP-5560-1は数秒間沈黙する。

SCP-5560-1: 少し静養してようと思います、マーカス。もう予言できそうに思えません。わかってくれることを望みます。

フィンチ: 待って、待ってよ!新しい解決法も思いつけるさ。これまでやってきたじゃないか、またできるさ、コルヴス。

SCP-5560-1は返答しない。

フィンチ: コルヴス?

<記録終了>

このインタビュー以降、SCP-5560-1はコミュニケーションの試みの間も常時休眠状態を保っています。特定のデータ入力がない場合にはSCP-5560-1の予知機能を抑制するオーバーライドをSCP-5560-1に提供する可能性について、AIAD工作員と財団の奇跡論学者の共同特別研究班の間で議論が進行中です。SCP-5560-1の、使用者の質問に対する応答を拒否する能力をオーバーライドする可能性に関する議論も進行中です。

補遺5560-E: 更新2024-10-10

AIAD工作員、財団奇跡論学者、サイト-64倫理委員会連絡員による審議の後、O5評議会はSCP-5560-1をオーバーライドして実験の継続を可能とする試みに9対4で反対票を投じました。 SCP-5560はサイト-64の長期保管庫に無期限に保管されます。

補遺5560-E: SCP-5560-1デブリーフィング

インタビュー対象: SCP-5560-1

インタビュアー: マーカス・フィンチ研究員

前記: 以下のデブリーフィングは、SCP-5560がサイト-64に長期保管されるより前の2024年10月11日に実施された。SCP-5560は標準型のプログラムがインストールされた機密性の高いエアギャップされた財団のPCに挿入された。 SCP-5560-1とのコミュニケーションを容易にするために、スピーカー、カメラ、マイクが提供された。インタビューはSCP-5560-1が起動手順を完了して間もなく開始した。

<記録開始>

フィンチ: こんにちはコルヴス。手短に言おう。実験は無期限に停止された。君の居住ユニットは将来いつの日か、また実験してみようとするまで長期保管庫内に置かれることになる。次実験するときに僕がまだこの施設にいるかはわからない、それでこれが僕たちの正式なお別れにもなる。

フィンチは事前に用意されたデブリーフィング原稿を見下ろし、静止する。

フィンチ: 悪い思いをさせたよ、アンダーソンとその仲間たち、それからその後の僕たちは残酷なことをしたと思う。この猶予期間で君が頭をすっきりさせる時間を得られることを切に願うよ。いろんなプロジェクトのファイルも君の居住ユニットに送信しよう。次に君がやってみるときは、旅についてのことが多くなってるかもしれないね。

フィンチはくすくすと独り言のように笑いながら言う。

フィンチ: あるものの終わりを知ってるからといって、そこまでの道のりは通る価値がないなんてことはない。それか、そんな感じのところかな。じゃあね、コルヴス。

フィンチはSCP-5560をコンピュータから取り外す準備を始める。この間、SCP-5560-1は画面にコマンドプロンプトを表示させる。

SCP-5560-1: ありがとう。

SCP-5560-1は休眠状態に戻る。フィンチ研究員はそれ以上中断することなくSCP-5560の除去を完了する。 SCP-5560は長期保管のために準備されている。

<記録終了>

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