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SCP-5574: 架空の苦しみ
著者: CrystalMonarch
タイトル: SCP-5574 - 架空の苦しみ
翻訳責任者: C-Dives
翻訳年: 2025
著作権者: CrystalMonarch
原題: SCP-5574 - Imaginary Suffering
作成年: 2021
初訳時参照リビジョン: 12
元記事リンク: ソース
>login SCP Database MTompkins.Site109@scipnet
SCPデータベースにアクセス中…
資格情報を承認。おかえりなさい、 マリッサ・トンプキンス次席研究員
>access SCP-5574
クリアランスレベル 2/5574 を確認
SCP-5574をロード中…
SCP-5574感染初期段階における1913年発行の大衆小説の表紙。この時点では、右下に描写された登場人物にのみ症状が見られる。
アイテム番号: SCP-5574
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-5574は現在、標準収容ロッカー B2032 に保管された小説 “高慢と偏見” の内部に収容されています。
常時、最低10冊の小説をSCP-5574の現在の宿主と共に保管し、それ以前に感染した小説は全て除去・焼却する必要があります。
物語メディアに対するSCP-5574の効果の実験は現在、クラス2/5574以上の研究員のみに許可されています。人間に対するSCP-5574の効果の実験は現在、コールドウェル研究主任の直接的な承認が無い限りは禁止されています。
説明: SCP-5574は非インタラクティブな物語メディアに感染する叡智圏ノウアスフィア1由来の寄生体です。
感染したメディアは、その物語の通常の範囲を大幅に超えて拡張されます (映画が本来の再生時間よりも遥かに長く継続する、物理的な書籍の文章がリアルタイムで変化し書き換えられるなど) 。物語の内容は連続性を保ち、観察されていない時でも発生します。この異常効果は感染したメディアのコピーには波及しません。
物語の登場人物は感染前に確立された性格設定に沿って行動しますが、一般的に脳の変性疾患と関連付けられる様々な症状を示していると記述されるか、もしくはそのような症状を経験する様子が描写されます。SCP-5574の症状は典型的に頭痛から始まり、続いて想像力や創造的思考力に関わる領域を中心として精神能力が徐々に低下します。
SCP-5574は人間やその他の知性体にも感染します。この場合に観察される影響は、感染したメディアの登場人物に見られる症状と一致しており、宿主が独立した思考能力をほぼ完全に喪失して永久的な植物状態に陥るまで続きます。人間を宿主とするSCP-5574感染の進行過程は、物語メディアでは数時間から数週間と幅があるのに対して、通常8~15年と顕著に長く続きます。
感染が完了した、もしくはその時点での宿主が時期尚早に死亡した/破壊された後、SCP-5574は新しい宿主へと転移します。SCP-5574は物理的に近接している他の物語メディアに優先的に転移し、移動範囲は約15mです。この範囲内に感染条件を満たすメディアが存在しない場合、SCP-5574は範囲内の人間に転移します。
上記の選択肢がどちらも実行できない場合、SCP-5574は叡智圏を介してミーム的に近接する人物2へと転移します。この二次的な転移手段には物理的な距離制限が存在せず、以前の宿主から最長4,200マイル離れた人物に感染した事例があります。
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>exit SCP Database
>access SCiPNET messages
最近のメッセージスレッドをロード中…
SCPiNET v4.0.2
端末: 53817
認証: MTompkins.Site109
上席研究員 コールドウェル博士 とのメッセージ履歴
今日のメッセージを表示中: 古い順 > 新しい順
[09:15] MTompkins: SCP-5574に関する私の研究報告に目を通していただけましたか? 調査結果が非常に憂慮すべきものだったため、収容プロトコルの緊急変更を幾つか提案しています。あなたのオフィスに連絡しましたが、返答が得られませんでした。直接お会いして本件を討議するのにご都合の良い時間帯を教えてください。
[09:26] JCaldwell: 君の報告書は読んだが、これ以上の議論は必要ない。現在の収容プロトコルは、収容を継続するうえで完璧に有効だ。サイトが最近取得した、記録を実際に更新する必要があるSCPに注意を払うことを勧める。
[09:28] MTompkins: これは収容体制ではなく倫理の問題です。このアノマリーは実際の知性ある人間を創作し、拷問しています。彼らは苦しんでいます。
[09:37] JCaldwell: 私は本のページに表出する多少のインクを救うために生身の人間を拷問するのを認めるつもりはない。この厄介な寄生虫のような危険な実体を封じ込めるために、財団は時として幾らか不愉快なこともしなければならないのだよ。本に記される内容が気掛かりなら、読まなければいい。たかが1匹の、収容ロッカーに放置するのが望ましいアノマリーに過ぎない。
[09:39] MTompkins: この件に関する私自身の気持ちはどうでもいいのです。人間が、あなたや私と同じくらい現実的な感情を持つ本物の人間が苦しめられているのです。彼らが異常な経緯を経て生成されたとしても、彼らの体験が本物でなくなるわけではありません。
[09:45] JCaldwell: よしんば彼らがある意味で生きているとしても、彼らの命はアノマリーの産物だ。もしアノマリーが命を作り出し、破壊するのなら、それは純損失ではない。アノマリーがいなければ、それらの“人々”は初めから存在しなかった。
[09:47] MTompkins: 彼らはSCP-5574の人間の犠牲者と同じくらい過酷な拷問を受けているのですよ。しかも、非常に早々と死ぬので、あなたが収容に用いている小説の中では、人間を宿主にした場合より何桁も多くの人々が苦しみながら死んでいます。異常生成された知性体の苦痛を、血肉を備えた人間のそれと同等に捉えることに、あなたが反感を覚えるかもしれないとは理解しています。ですが、財団倫理憲章では、私たちは全てのクラス2知性体を保護する義務を等しく負うとされており、私の研究はSCP-5574物語実体がその要件を満たすことを明確に示しています。
[10:06] JCaldwell: もし倫理委員会に苦情を申し立てたいのならば、大いに結構。半年後に彼らが書類を整理し終えたら、収容プロトコルは変更されるかもしれない。しかし、私がSCP-5574の研究主任を務めている限りは人命の保護が最優先だ。
[10:08] MTompkins: お願いします、会って話し合う機会をいただけませんか。
[11:13] JCaldwell: 私は多忙なんだ、マリッサ。1時間後に講義が控えているし、沢山のアノマリーを監督する必要があるし、ここでの業務に気後れしている全ての次席研究員にいちいち付き添っている暇はない。ハドガン博士に、彼が追跡している例の新種の捕食性物語に関する報告をしなさい。そうすれば、君の才能を活かして本物の人間の命を救うことができる。
[11:15] Mtompkins: 彼らにも本物の人間の命があります! あなたが対策を1週間遅らせるたびに数十人が、事によると数百人が苦しむことになるんですよ!
[11:36] JCaldwell: この話はこれで終わりだ。
JCaldwell がオフラインになりました
[18:28] MTompkins: SCP-5574の最新の宿主のコピーを添付しておきます。この問題を別の観点から捉えるのに役立つと思います。
[19:07] JCaldwell: 私がこれをクリストフ管理官に報告したのはもう分かっているはずだ。今すぐに辞職を申し出て、これ以上自分に不利な行動を取らないことを勧める。
1 件の新着メッセージがあります
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上席研究員 コールドウェル博士 からの新着メッセージを表示中
[21:15] JCaldwell: あそこに囚われたもう一人の私のことが頭から離れない。君を責めたい、君があの私を作り出して拷問したのに腹を立てたいという気持ちはある。しかし、私はSCP-5574の研究主任を過去15年間勤めてきた。私自身が同じように苦しめてきた人々の数が何千人になるかは想像もつかない。己の過ちを認めるのは難しい。それを認めれば多大な苦しみの責任を受け入れることになるならば、尚更難しい。しかし、私は常に困難な決断を下せる人間であろうと努めてきたし、現状をこのまま継続するつもりもない。
クリストフ管理官には、今後はSCP-5574を人間の宿主に収容すると伝えておいた。最初の被験者には私が志願した。私はもう若くはないし、昔から想像力はかなり豊かだったし、知的思考力への深刻な影響が及ぶまでに少なくともあと5年は研究・教育面で活動を続けられる自信がある。
だからマリッサ、私がしてしまったことを償うチャンスを与えてくれて、ありがとう。
>logoff








