by PlaguePJP

SCP-5596。
特別収容プロトコル: SCP-5596はサイト-332の標準的な物品保管庫に収容されています。SCP-5596-1は低セキュリティのヒト型生物収容室に収容されています。SCP-5596の回収以降、異常性の発現は収まっていますが、SCP-5596に類似する機械がその特性を再発現させる可能性があるかは判明していません。
説明: SCP-5596は利用者の“性的魅力”を測定するための“ラブテスター”装置です。25セント硬貨を投入すると、利用者は装置のグリップを握るように求められます。グリップを握ると、縦一列に並んだ電球の、利用者の魅力に対応するいずれかが点灯します1。スコアは (低い順に) “じっとりしてる”Clammy、“無害”Harmless、“穏やか”Mild、“イタズラだけど素敵な人”Naughty but Nice、“野生的”Wild、“燃えるような”Burning、“情熱的”Passionate、“アツアツ”Hot Stuff、そして“制御不可能”Uncontrollableです。

SCP-5596-1。
SCP-5596-1はメイン州バンゴー在住だった26歳のインターネット動画投稿者、チェスター・メイブリーです。SCP-5596-1はかつて、若者を対象とする交際関係アドバイス専門のYouTubeチャンネル “モダン・デイ・キューピッド” の管理者兼ホストを務めていました。当該チャンネルは20万人以上の登録者を集めましたが、2017年5月、SCP-5596-1は“他に負った義務”を理由として、チャンネルへの投稿をこれ以上行わない旨を発表しました。
ある人物がSCP-5596で“イタズラだけど素敵な人”以下のスコアを出した場合、最後にSCP-5596を利用してから2週間以内に、SCP-5596-1が対象者の所在地に瞬間移動します。この事象は現地時間の午後8時から午前12時までの間、ターゲットが孤立している際に最もよく発生します。SCP-5596-1はその後、ターゲットの恋愛に関する助言を提供し、交際関係上の問題を修正しようと試みます。
補遺 1 — 交流サンプル
SCP-5596-1の捕獲は最優先課題と見做されていました。SCP-5596プロジェクトの収容チームは装置を使用したものの、誰一人として“イタズラだけど素敵な人”以下のスコアを得ることができませんでした。このため、ポール・ラグー管理官はSCP-5596をサイト-322の近場にある財団のフロント経営店に移送し、サイト職員と一般人の双方がSCP-5596の異常性を発現させ得る環境に置くように指示しました。
最新の活性化条件は、21歳の大学生、ジェームズ・ヤーバウによって引き起こされました。財団は監視プロトコルを開始し、彼の自宅にカメラとマイクを設置しました。
書き起こし
«記録開始»
(SCP-5596-1がヤーバウの寝室に出現する。SCP-5596-1は近くにあったクッション張りの椅子をヤーバウのベッドサイドまで引き寄せ、ナイトスタンドから充電中の携帯電話を取り上げる。)
SCP-5596-1: うわぁ、ホントにモテなさそうな面だな。
ヤーバウ: 誰だお前?
SCP-5596-1: 歯の妖精さ… 或いは君の守護天使。
ヤーバウ: さっさと俺の家から出ていけ!
SCP-5596-1: すぐ出てくよ。“じっとりしてる”を出したんだって? マジで? 何をやってんの、君? ダメだよそんなんじゃ。
ヤーバウ: け — 警察呼ぶぞ。
SCP-5596-1: (ヤーバウに向かって携帯電話を振る) また刑務所に送られると賭けに負けちゃうんでね。もしそんなに重大事だと思うなら、僕の仕事が終わってから通報してくれ。
ヤーバウ: 俺をどうしようってんだ?
SCP-5596-1: 例えば、君のお気の毒な交際関係を改善したい。
ヤーバウ: …その手には乗らないぞ。
SCP-5596-1: こっちだって嫌だけどさ、僕でも君よりずっとマシな恋愛ができるよ。集中してもらえる?
ヤーバウ: 集中って何にだよ?
SCP-5596-1: 僕の演説に。今夜は他に相手しなきゃいけない非モテが16人もいるから、手早く済ませよう。“じっとりしてる”を出したそうだね? ちゃんと覚えてる? 僕は変な事言ってないよね?
ヤーバウ: な — 何を言ってんのかさっぱり分かんねぇんだけど。
SCP-5596-1: 14番街のショッピングセンターにあったラブテスター。僕の上司だ。19日に彼を使ったと聞いてるよ。
ヤーバウ: アレか? ただのアーケードマシンだろ? ノブ握るだけで25セントかかるやつ。
SCP-5596-1: 家でひたすらノブ握っときゃ高得点出せるみたいな言い方しやがって… 今考えてみると、君のスコアがスコアだから、まぁ辻褄は合うね。
まだ気付いてないなら断っておくけれど、僕は歯の妖精じゃないし、あの“アーケードマシン”は決してそれだけじゃなかった。君を手伝わせてくれるかい?
ヤーバウ: 手 — 手伝うって何をだよ。なんでお前暗号みたいな話し方すんの? 何が起きてんのか全然分かんねぇんだけど。さっきからお前アホみたいな事しか言ってねぇじゃねぇか。
SCP-5596-1: (溜め息を吐き、以下の文言をリズミカルに暗唱する。) 愛の追及は壮大なもの。誰もが理解していること。お前は孤独な負け犬だ。愛を求めて、我は行く—
ヤーバウ: テメェ! また訳分かんねぇことを! 侮辱しやがって!
SCP-5596-1: 歌詞の一部なんだよ、仕方ないだろ。このまま歌を続けてほしい? クソみたいな自己紹介があと7節ぐらい続くよ。
ヤーバウ: やめてほしいね。今の時点でもう人生最悪の経験だ。
SCP-5596-1: ありがとう、フィードバックに感謝するよ。君の恋愛事情ってどうなの? 話してくれ、僕は別にとやかく言うつもりはない。それは上司の仕事だ。
ヤーバウ: お前そのためだけに来たの? マジ?
(SCP-5596-1は頷く。)
ヤーバウ: 馬鹿馬鹿しくて話にもならないね。3年間付き合ってたカノジョがいたけど、距離が離れすぎて2ヶ月前に振られた。それだけ。
SCP-5596-1: 骨抜きにされたような気がする?
ヤーバウ: は? 何を聞いてそう感じたかさっぱりなんだけど。
SCP-5596-1: 台本を読んでるだけだよ。彼女とよりを戻したい? 君がよりを戻したがってるのを感じるよ。心の底から。
ヤーバウ: 知らねぇよ — あの子にその気があるかも分かんねぇし。

弓矢を構えるSCP-5596-1。財団の拘留下で撮影。
SCP-5596-1: 正直に言ってしまえば、全く心配しなくていい。僕のチチンプイプイは効果絶大だから。君のスコアを“情熱的”まで引き上げるのはどうだい? どんな時でも打ってつけの立ち位置だ。
(SCP-5596-1は小さなプラスチック製の弓と、先端に吸盤が付いたプラスチックの矢をズボンから取り出す。)
SCP-5596-1: 君が今居る所からは大体6ランク上さ。この能力が役に立つと思いたいけど、僕が結果を見届けたことは一度も無いんだ。上司はいつも自分の側では上手く行ってると言う。僕は敢えて言い返そうとは思わないよ、あいつが腹を立てるとどれだけ面倒臭いか、電球がどれだけ熱くなるか知ってるからね。じゃ、6ランク上ってことで?
ヤーバウ: 何をする気なんだ?
SCP-5596-1: 髪をかき上げてくれる?
(ヤーバウは従う。SCP-5596-1はプラスチックの矢を弓につがえ、発射する。矢はヤーバウの額に命中し、そこに留まる。)
ヤーバウ: オーケイ… それで?
SCP-5596-1: そのまま数時間放っておけば、すぐそのランクに到達するよ。また会おう友よ! グッド・ラック!
«記録終了»
翌朝、ジェームズ・ヤーバウはペンシルベニア州ランカスターの自宅を離れ、元交際相手が住むテキサス州ダラスへと向かいました。短時間の交流を終えて帰宅する前に、ヤーバウが車の中で泣いている様子が観察されました。
帰宅したヤーバウはSCP-5596を13回利用し、その全てにおいて“情熱的”のスコアを出しました。ヤーバウの恋愛関係における成功度合いの観察可能な変化は一切確認されていません。