アイテム番号: SCP-5623
オブジェクトクラス: Ticonderoga1
特別収容プロトコル: 地球低軌道内に存在する遠隔感知衛星及びイメージング衛星にて、深宇宙に存在する全ての観測所の監視を行ってください。
新たに深宇宙望遠鏡及び衛星の製造及び売買を行うことのできる企業は、関連ハードウェアの全てに「Binary_Star.aic」のデータファイルを埋め込む目的を達成するのに十分な数の財団職員が潜入している企業に限られます。
望遠鏡、衛星、宇宙探査機、ドローン、惑星探査機及びその他特別な機器を用いて収集されたSCP-5623のデータは全て、 財団AI「Binary Star」によって傍受され、財団のデータベース上に保存の後、公的な記録から即時削除されます。当アノマリーを目撃した人物にはクラスB記憶処理が施されます。
地球外のアノマリーを研究しているクリアランスレベル4以上の職員は、保存データへのアクセスが許可されています。
レベル5クリアランスを持つ職員は、「ディプロマット端末」を用いてSCP-5623-1との対話記録を閲覧することが許可されています。
説明: SCP-5623は、SCP-5623-1と指定された1名の乗組員を乗せて宇宙をさまよい続ける、金属でできた暗黒色の宇宙船です。SCP-5623は、財団が最も初期に発見した地球外の宇宙船です。SCP-5623は人類初の宇宙船ができる54年前2、最初の有人宇宙船の57年前3にはその存在が確認されています。サンプルの入手が困難であるため確認はできませんが、SCP-5623はパラジウムと黒ロジウムの合金でできていると考えられています。SCP-5623は扁球の形状を持つ構造体で、側面の下部には操縦席と思われる外室が存在します。
SCP-5623-1は現在のところ年齢や出自の明らかになっていない、知性を持つ実体です。実体との対話の中で、SCP-5623が恐らく時間の感覚を失っており、宇宙そのものから自然発生的に形成されたと主張をすることから、SCP-5623も自身の詳細を完全に理解していないとみられています。
SCP-5632の操作方法は現在のところ不明です。数光年相当の距離をほぼ瞬時に移動する様子がBeholder-3探査機によって観測されており、SCP-5623を追跡することはほぼ不可能です。
SCP-5623-1はSCP-5623を利用して宇宙を航行し、死に瀕した星を探しています。到着すると、SCP-5623-1はその星を回収しSCP-5623内に保管します。航行方法と同様、星への干渉方法について実体は説明をしていません。現在、SCP-5623及びSCP-5623-1の所在は不明です。

LZ 127 ツェッペリン
発見: 1872年12月4日、フェルディナント・フォン・ツェッペリンはSCP-5623を望遠鏡で発見したと主張しました。彼には記憶処理を施しましたが、当時利用できる記憶処理の質が低かったため、SCP-5623に関する記憶の断片がフォン・ツェッペリンの潜在意識に残存しました。
この記憶の断片によって、フォン・ツェッペリンは飛行を伴う航行への関心を急速に高めていたと推定されています。内部での協議後、財団の管理スタッフは、彼が肉体労働者を雇う際に、正体を隠した職員を配置した上で新たな飛行船を発明する許可を出すことに決めました。フォン・ツェッペリンがいずれはSCP-5623の設計を基にした航空機を発明すると予測されていました。現在のところ、LZ 127ツェッペリンが非常に小型ながらも、最も正確にSCP-5623を象った機体です。
1903年8月28日、財団の天文学者は天の川銀河のオリオン座星雲の付近に、フォン・ツェッペリンの説明と合致する物体を望遠鏡で観測しました。その後、この物体はSCP-5623と指定されました。
1955年2月25日、地球外のアノマリーの探査及び調査のため、財団はBeholderラインから探査機を宇宙へ打ち上げることに成功しました。1958年7月29日、Beholder-3によってSCP-5623が最後の観測から約55年ぶりに観測されました。
1962年7月2日、新たな探査機「ディプロマット」が、Beholder-3の方向へ発射され、直接対話をする方法を確立するために、SCP-5623の乗組員に対して下記のものを移送しました。
- さまざまな水準のシラバス、辞書、57の地球言語の音声ファイル
- 地球の生物の写真
- 数名のサイト管理官から承認を受けた、世界中の様々な音楽、自然音
- 予備送信機及び受信機を備えた深宇宙無線交信装置
毎日午前8時(UTC4)、異なる信号を機械的に送信しました。1986年8月14日、SCP-5623-1からの返答が記録されました。
補遺-1: ディプロマット端末のログ
| クリアランス適合
| ディプロマット端末への接続安定
| メッセージ受信中
1986/08/14 SCP-5623-1:
ARE YOU THERE? BIST DU DA? ÊTES-VOUS LA? そこにいるのか?
| 他10言語は簡素化のため省略
| 実行者: 財団AI BINARY STAR
| メッセージ終了
当時の深宇宙無線通信技術では距離と混信5が原因で、各メッセージが完全に受信できるまでに7日間を要しました。完全な通信ログは下記より確認ができます。
| クリアランス適合
| ディプロマット端末への接続安定
| 履歴の閲覧
1986/08/14 O5:
こちら地球。我々は君について詳しく知りたいと考えている。君が何者か教えてもらえないだろうか。言語は問わない。可能であれば英語かドイツ語を希望する。
全ての情報は我々の間だけの機密とする。
| 他13言語は簡素化のため省略
| 実行者: 財団AI BINARY STAR
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1986/08/28 SCP-5623-1:
思い出すのに少々手間取っているが、英語は大丈夫だろう。
私には名が与えられていない。呼ばれた名前を使おうと思う。何か名をつけてくれないか?
1986/08/28 O5:
我々は君のことをSCP-5623-1と呼称している。
何故君に名前が与えられていないのか、詳しく聞かせてもらえないだろうか。また、過去にどのような名前で呼ばれていたのか例を知りたい。
我々が最後にメッセージを送ってから、君が数光年ほど移動していることに気づいている。推進方法を教えてはもらえないだろうか?
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1986/09/11 SCP-5623-1
貴方からのメッセージに一つずつお答えしようと思う。私の答えたいものから始めさせてもらうよ。
私は「VACUUMBORN真空生まれ」の生物だ。君たちのように出生名を付けられていない。できれば、名前を付けてもらえないだろうか?
私の航行方法に関しては、技術ではなく能力によるものなんだ。その能力を持っていないのならば、ぜひとも努力してみてくれたまえ。
- 星を看取りし者
1986/09/11 O5:
それが何故あなたの答えたいものなのか、説明できるような理由は存在するのか?
「真空生まれ」の生物について詳細を説明してくれないか?
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1986/09/25 SCP-5623-1:
私が何をしているのか少しでも適切に説明するためだ。
宇宙に由来する私を含むすべての生物は、真空生まれと呼ばれているんだ。我々の多くは自然発生的に形成された存在だが、中には例外もいる。
ところで、名前は考えてくれたかい?
-虚空の放浪者
1986/09/25 O5:
我々は君のことをSCP-5623-1と呼称している。
「星を看取りし者」が君の行動を指しているのならば、その行動が星にどのような作用をもたらすのかを知りたい。
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1986/10/09 SCP-5623-1
それは名前ではない。ラベルだ。
ラベル付けをした上でより多くのことを知ろうとしている君たちを別に咎めやしない。ただ、名前は正真正銘のものを付けてもらいたいものだ。
- 太陽を巡礼する者
1986/10/09 O5:
肩書と認識されないような、本当の出生名のような名前を君に与えることとした。その代わり、我々の質問にもっと答えていただきたい。
ご理解いただけますと幸いです、グレン。
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1986/10/23 SCP-5623-1
ありがとう、素晴らしい名前だ。
私は死に瀕している星を探し、船の中に回収しています。君たちは僕の船に素敵な名前を付けてくれているね。今一度その名を教えてくれませんか?
ちなみに、私はこの行動を星への作用だとは思っていない。ただ摘み取っているだけだ。
- グレン、星雲を旅する者
1986/10/23 O5:
貴方の船には正式な名称をつけていませんが、貴方の仰るその名前は「ツェッペリン」のことかと思います。
死に瀕している星は非常に爆発しやすい。貴方はこれまでにいくつの星を集めているのですか。またどのようにして爆発を防いでいるのでしょうか?無限に近い量のエネルギーを収容する方法があるのでしょうか?
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1986/11/06 SCP-5623-1:
心配には及びません。予期せぬ爆発などありません。超新星は私が遅れた時だけ発生するのですから。そして、私は滅多に遅れたりしません。
心配をしてくださったことにはとても感謝しています。しかし、心配は無用です。私は時間では測れないほど長い間、この作業を行ってます。
皆さんが星をエネルギー源のようなものとだけ捉えているようで悲しい限りです。核融合について調べてみることをお勧めしますよ。
- グレン、自身の遺産を維持する者
1986/11/06 O5:
貴方はおいくつですか?そして、貴方は年齢とほぼ同じ期間、星を集め続けていたのですか?
貴方の肩書にある「遺産」はこれに言及したものですか?
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1986/11/20 SCP-5623-1:
私は何年も何年も生き続けている。私は間違いなく最も古い真空生まれだ。私は誰よりもずっと多くの時間を過ごしてきた。
覚えている限り私は星を集め続けており、これからもそれを止めることはない。
私の遺産。この星々だ。すべてが非常にユニークなんだよ。
- グレン、国境なき放浪者
1986/11/20 O5:
星を集める目的は何ですか?達成すると何かあるのですか?
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1986/12/04 SCP-5623-1:
私は星を永遠に外に出しておきたくないのだよ。
- グレン、宇宙の案内人
1986/12/04 O5:
仮定の話だが、最後の星を集めきるか、宇宙が終焉を迎えたら、貴方はどうするのか?
それから、貴方は何をするつもりなのか?
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1986/12/18 SCP-5623-1
私は宇宙の始まりから死に瀕した星を集め続けている。そして、最後の最後まで星を集め続ける。その後私はそれらを爆発させ、また最初からやり直すのです。
私は、誰もがまた星を見ることができるようにしたいだけなのです。
それには皆さまがたも含まれていますよ。O5。
- グレン、輝きを守りし者
1986/12/18 O5:
どのようにしてその用語の知識を得たのか、説明を要求する。
そして、もう一度やり直すとはどういうことだ?
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1987/01/01 SCP-5623-1
ハッピーニューイヤー。
この祝福の言葉をまだ君たちに伝えられる状態であることを、本当に嬉しく思っているよ。
こんな機会が毎回訪れるわけではないが、私も時間を無駄にはできない。
君たちがくれた名前についても、とてもありがたく思っているよ。
君たちはいつも私に同じ名前を与えてくれますね。
- グレン、SCP-5623-1、宇宙を白紙に戻す者
| 手動による接続の切断
| 履歴終了
SCP-5623-1はZK-クラス宇宙初期化シナリオを引き起こす存在とみられています。当シナリオが発生した回数は不明です。
SCP-5623の収容が不可能であることから、収容プロトコルは全て、民間人による観測の妨害及びアノマリーに関する情報の獲得に焦点が置かれています。SCP-5623の所在は現在のところ不明です。