クレジット
タイトル: SCP-5651 - 哀れな星の核
翻訳責任者: Tutu-sh
翻訳年: 2023
原題: SCP-5651 - Wretched Core
著作権者: Sirslash47
作成年: 2021
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-5651
初訳時参照リビジョン: 13
アイテム番号: SCP-5651
オブジェクトクラス: Sköll1
特別収容プロトコル: 様々な国内および国際宇宙プログラムに潜入した職員は、中央管理室のハードウェアと全ての始動したプロジェクトの構成要素にBinary_Star.aicのファイルを移植します。恒星間財団プロジェクトによるオミクロン-5651区画への進入は禁じられています。
財団AI Binary Star はSCP-5651に関する全ての情報を傍受して財団データベース内に保存し、ただちに財団以外の記録から消去します。
SCP-5651-1は現在SCP-5651内に収容されています。SCP-5651の形状あるいはSCP-5651-1の挙動に変化が観測された場合、財団職員は警告を受けます。

SCP-5651
説明: SCP-5651は、その近傍に位置する唯一の恒星の周囲を公転する、部分的に地殻が破断した銅色の惑星です。SCP-5651の周囲半径30.7メガパーセク2以内に他の天体・星雲・空間的現象は存在しません。当該の超空洞3はSCP-5651を中心として存在しており、公式記録ではオミクロン-5651に指定されています。
SCP-5651は現在SCP-5651-1用の牢獄として機能しています。SCP-5651-1が最初に収容された経緯と責任者の身元は不明です。SCP-5651は当該の明確な目的のために本来の軌道から移動させられたとする仮説が立てられています。
SCP-5651-1はSCP-5651の核へ部分的に融け込んだ起源不明の単一の実体であり、地殻全体の裂罅を通して視認可能です。当該実体は重力を操作する能力を示しており、極限環境下でも生存します4。SCP-5651-1が現在の状態から積極的に脱出しようとする際、SCP-5651の地殻は重力の影響を受けて運動する様子が認められます。
核が高温であるため、SCP-5651-1はその動作に応じて橙色から明るい黄色の光を放ちます。拡大画像と組み合わせた輪郭の解析から、SCP-5651-1は6本の付属肢(2本の後肢と4本の前肢)を持つ痩身のヒューマノイドであることが示唆されます。SCP-5651-1が有する4個の眼窩は実体が動作を試みた際に明るい白色光を発散する様子が見られます。背側には明らかに椎骨が存在し、そこから未知の結晶鉱石が成長します。もし結晶の入手に成功した場合、その長さ・組成・トラップされた灰や堆積岩に基づくアノマリーと実体の両方の年代決定に寄与する可能性があります。

連鎖衝突の後、オミクロン-5651の方へ移動する小惑星とデブリ
1955年2月25日、財団は地球外アノマリーの探知と研究を目的としてBeholderラインから宇宙へ無人探査機を発射しました。1984年2月3日、Beholder-11は理論的には超銀河団が始まるはずであった、天体の存在しない区画5を観測しました。探査機の経路は変更され、より近傍での当該現象の観測が開始されました。
2017年5月7日にBeholder-11は、境界の外側の小惑星がSCP-5651の方へ徐々に浮動していることから示唆される、オミクロン-5651の境界に到達しました。周囲の調査を経てSCP-5651が発見され、衝突してオミクロン-5651へ進入した小惑星がSCP-5651の裂罅へ誘引される様子が3日間に亘り観測されました。後にSCP-5651-1に指定される隠れた実体の輪郭が裂罅の直下に観測され、さらに観測したところ内部の岩層に刻まれた擦痕やその他の損傷が発見されました。
補遺-1: 2017年5月11日、駐留していた小惑星が連鎖衝突によって移動し、Beholder-11はオミクロン-5651区画へ進入しました。この後、SCP-5651-1がSCP-5651の内部から部分的に出現している様子が観察されました。以下は当該の出来事のログです。
付記: マーサ・スティルス博士とキャロライン・ステインバーグ博士はBeholder-11の探査機に配属された研究員です。ステインバーグ博士はサイト管理官マティアス・レイマッグとの会議に出席しました。
<記録開始>
2分間に亘ってサイレンが鳴る。
ステインバーグ博士: んじゃ、この煩い呼び出し音について説明してもらえない?既にレイマッグのせいで頭痛がしてるのに、これじゃ頭が真っ二つに割れるわよ。
スティルス博士: 誰かさんにはニコチンキックが要るみたいね。とにかく、システムを確かめる。たぶん、馬鹿なデブリがまたスキャナーか何かに突っ込んできたのかも。
ステインバーグ博士: ああ、まだサイレン止まってない。探査機に損傷はある?
スティルス博士: 全て動作可能、バッテリーは78%ある。浮いてるけど、まだ着陸装置が格納されてない。
ステインバーグ博士: どうして浮いてるの?小惑星には完璧に固定したのに。
スティルス博士: また連鎖衝突しやがったのよ。あのクソ石また戻ってきた。スキャンして、最寄りの小惑星に戻ることにするわ。
対処を要する角度でデブリがモニターに映し出される。ステインバーグ博士が着席する。
ステインバーグ博士: OK、ちょっと交代しよう。探査機の座標教えてもらえる?
スティルス博士: ちょっと待って、座標は ⸺ ああ、待って、問題発生。
ステインバーグ博士: じゃあもうこいつ止めて!
スティルス博士が制御システムに複数のコマンドを入力し、サイレンの停止に成功する。制御室内で赤色の光が点滅し続ける。
スティルス博士: [溜息] 少なくとも、雑音は消えたわね。
ステインバーグ博士: 問題って?
スティルス博士: 探査機 ⸺ あー……探査機がオミクロン-5651に入った。
ステインバーグ博士: [溜息] クッソ、書類の山が増えるわ。ちょっと、気をつけて!
SCP-5651へ向かう複数の小惑星がBeholder-11の探査機をかすめていく。
スティルス博士: 探査機も惑星に引き付けられてる。今こいつを操縦して、アノマリーが見えるようにする。
ステインバーグ博士: じゃあ、着陸装置を格納する。これもうちょっとスキャンしなきゃね。SCP-5651-1が位置を変えたかも。
スティルス博士: ええ、実体は動いてるみたいだけど、輪郭の一部だって見えてな ⸺
激しい破壊音に続き、重々しい呼吸の音が聞こえる。
ステインバーグ博士: 今のは何?
スティルス博士: 分からな ⸺
SCP-5651-1の腕が亀裂を通して伸び、SCP-5651の地殻をさらに破壊する。マグマが再び地表へ落下し、黒い雲が立ち上る。さらに小惑星が誘引される。
ステインバーグ博士: ヤバすぎ、あれで腕だけなの?惑星の直径よりも長いじゃない。
スティルス博士: 待って、あいつここまで圧縮されてるってこと?本当はどんなに大きいの?
ステインバーグ博士が黒く焦げた皮膚を拡大する。複数個所に腱や骨が認められる。
スティルス博士: どの程度の火傷なのか見当もつかない。手を拡大できる?鉤爪なのかどうか分からなかった。
ステインバーグ博士: 明らかな変形は別にして、私には鉤爪っぽく見える。でも、絶対ケラチン質じゃないわね。たぶん脊椎に生えてるのと同じ結晶でできてる。
SCP-5651-1が掌を開く。Beholder-11はシステムにかかった極端な重力のため数回に亘って接続を失う。
ステインバーグ博士: ねえ、何が起きてるか、スキャナーが感知してる可能性は?
スティルス博士: 探査機の速度 ⸺ いえ、加速度が指数関数的に上がり続けてる。実質引きずり込まれてる。
ステインバーグ博士: オミクロン-5651がどうして空っぽだったのか、それにどうしてあいつを閉じ込めておくのか、理由がようやく分かったみたいね。もしあれが解放されたらどうなることかしら。
スティルス博士: うーん。あいつが元々どんなふうだったのか、それとまずどうやってあいつを収容できたのか、そっちの方が興味あるわね。
<記録終了>
結論: Beholder-11は回収不能と判断され、現在はSCP-5651-1に関して可能な限り多くの画像とデータの収集が注力されています。
SCP-5651-1が影響しうる領域はSCP-5651の地殻の崩壊に伴って拡大し続けています。SCP-5651-1の起源とその収容に迫る調査が進行中です。天体の重力変動は細心の注意を払って観測する必要があります。