SCP-5654
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アイテム番号: SCP-5654

オブジェクトクラス: Ticonderoga

特別収容プロトコル: O5評議会及び倫理委員会は、SCP-5654を収容するのは不適当であると判断しました。SCP-5654発生事例を隔離して曝露者を最小限に絞るため、財団の神経学専門家が世界各地の医療施設の潜入エージェントと共働しています。

説明: SCP-5654は様々な記憶関連の認知障害の罹患者に影響を及ぼす異常な幻覚現象です。SCP-5654の被影響者はアルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、慢性的感情ストレス、コルサコフ症候群を含むものの、それらのみに限られない疾患と診断されます。SCP-5654は典型的に、通常の社会的交流が最低限しか行われない施設、最も一般的には介護施設や医療機関の居住者に影響します。

SCP-5654の影響を受けた人物は、その年齢や出生した時代によって容姿の変化する1人の人物が歌っている様子を幻視し始めます。2021/12/23現在、この現象の最も一般的に報告されている形態は、被影響者から“ミスター・ベニー”と呼称される歌手です。被影響者たちの認識監視試験で、SCP-5654は白いタートルネック・セーター、フォーマルなズボン、磨かれた黒い靴を着用している人間男性だと判明しています。皮膚の色や歌唱/発話に用いられる言語は、被影響者の国籍や個人的な好みに応じて変化することが確認されています。

幻覚が始まると、被影響者はSCP-5654が自分の向かい — 通常は高い位置 — からマイクを通して直接語りかけ、歌を“[被影響者]に捧げる”と宣言する姿を知覚します。続いて、SCP-5654は被影響者に1曲の歌を披露します。この歌はオリジナル曲で、通常は被影響者の人生における有意義な瞬間に関連する内容です。

SCP-5654はその後、被影響者に謝意を示し、もし周辺環境に空席があれば向かいに着席して、会話を始めます。SCP-5654は発話できない人物と意思疎通する際にはテレパシー能力を発揮します。

十分な情報を聞き出すと、SCP-5654は被影響者を言葉で鼓舞し、“カーテンコール前の最後の一勝負”に挑むことを促します — この時点で幻覚は終了します。これに続いて、被影響者は何らかの些細かつ個人的な課題を1つこなすのに十分な時間、明晰な意識を取り戻します。

SCP-5654の歌唱に関する記憶は、記憶の劣化に対して異常な耐性を示すことが指摘されています。被影響者はその後の人生を通して歌を思い出すことが可能です。

補遺5654-1: 以下に編纂されているのは、SCP-5654被影響者の特筆すべきイベントログの完全版です。更なる記録は要請に応じて閲覧可能です。

イベント 5654-12
時刻 出来事
15:46 - 15:57 病状に起因する攻撃的な感情の激発を起こすことで知られていたカルメン・ホーキングス夫人が、約11分間穏やかになり、聞こえない歌に対して歓声や拍手を送る。介護施設の職員が行動の変化に気付く。
16:26 ホーキングス夫人は目立たない服装に着替え、介護施設の外へ出てゆく他人の家族の後に続いて脱走に成功する。
16:34 ホーキングス夫人はバスに乗車し、64km離れたオハイオ州██████郊外の家族の家へ向かう。
17:04 ホーキングス夫人が家の裏庭に座り、かつて自らのペットだったコッカー・スパニエル犬を撫でているのを、娘のルシールが発見する。ホーキングス夫人はルシールに気付き、会話し始める。ルシールは泣き始め、母を抱擁する。
18:35 ルシールは母を介護施設に連れ戻す。

追記: 留意すべき点として、介護施設の職員とかかりつけ医は共に、当該イベント以降のホーキングス夫人の行動が改善していることを確認した。時折、彼女は施設の社交室で他の入居者たちにピアノを弾く様子が見られた。


イベント 5654-21
時刻 出来事
10:39 - 10:59 イベント以前の8ヶ月間にわたって昏睡状態だったジョヴァンニ・フェラリーニ氏が、イタリアにある██████医療センターの集中治療棟で意識を取り戻す。フェラリーニ氏は医療職員による交流の試みに反応しない。職員はフェラリーニ氏が微笑んでいることに気付く。
11:31 - 11:46 医療職員の不在中に、フェラリーニ氏はベッドから起き上がり、磁器のカップを持って病室の洗面台へ向かい、カップに水を入れる。その後、フェラリーニ氏は入院中に家族から贈られた枯れかけのシダに歩み寄り、散水する。フェラリーニ氏はこの活動を15分間続ける。
11:47 フェラリーニ氏は植物への水やりを終え、笑顔でベッドに横たわる。
17:04 フェラリーニ氏が最期の言葉を口にする: 「俺は勝ったぞ、ジュゼッペ。」
17:10 フェラリーニ氏が死去する。

イベント 5654-01
時刻 出来事
12:19 - 12:28 介護施設で暮らすディアドラ・ビショップ夫人を、息子のジェームズが訪問する。会話中、ビショップ夫人は緊張し続けている。5分後、彼女は落ち着くが、会話を試みるジェームズには反応しない。
13:08 ビショップ夫人と会話する複数回の試みが失敗した後、ジェームズは不満げな様子で介護施設を去ろうとする。彼が去る前に、ビショップ夫人が立ち上がって彼の腕を掴み、引き留める。ビショップ夫人は息子を抱擁する。
13:09 ジェームズは泣きながらビショップ夫人を抱き締める。
13:54 ジェームズは介護施設を去る。

追記: 留意すべき点として、ビショップ夫人とロバート・アーカート (ジェームズの父親) はどちらも第二次世界大戦に従軍していたため、ジェームズの幼少期のほとんどを不在にしていた。

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