ご協力ありがとうございます、USER_NOT_FOUND。
最終認証にはKnows Testの完了が必要です。
扉の穴に手を入れてください。自動位置固定機に抗わないでください。
待機してください… 待機してください… 待機してください…
SCP-5657: "起きてる起きてる!ちょっと!どうかその目覚まし止めてくれない?私ベッドから出るのに時間かかるのは知ってるでしょ、だからちょっと—… ねえ、これ誰?"
5657、この訪問者の入室を認可してください。
SCP-5657: "いや— ちょっと、待って、今晩は実験の話は聞いてないわよ。誰こ—"
5657、訪問者の手首にあなたの手を乗せてください。直ちに。
SCP-5657: "あぁ!もう、耳が!ねぇ!ねぇ、もうやって!聞いてる?もうやってるって。テストを始めます。"
5657、この人に心はありますか?
SCP-5657: "え— えぇ、私には胸の鼓動が—… まっ- 待って—!
ロックダウンを実こここここ
進入を承認しました。 ありがとうございます、USER_NOT_FOUND。
セクション-ØNに入るのはこれが初めてですね。
SCP-5657にアクセスする前に、必ず以下のデータにしっかりと目を通してください。
- 5657-GD | 収容プロトコル + 説明 [01/01]
- 5657-IN | インタビュー記録 [01/91]
- 5657-TL | 実験記録 [01/3651]
- 5657-CB | 収容違反記録 [01/26]
- 5657-NN | 「ニッキーはお見通し」の全放送回 [01/28]
- 5657-RL | 回収記録 [01/01]
- 5657-LD | 検査室診断
USER_NOT_FOUND: 最初のデータを見せてくれ。
5657-SCP_GDにアクセスしています
5657-NN02_28_ENG_24SD.MP4 - TC 01:00:21:01
特別収容プロトコル: この文書を閲覧しているなら、あなたは既にセクション-ØNへの進入に必要な手順を全て通過しています。
セクション-ØN内部における最重要作戦は全てサイトAI EVASの監視の下に行われます。内部保安手順の改定/更新はO5命令が発令された場合に限り、Knows Testを用いた十分な評議会審査が行われた場合のみ可能です。
ある人物がKnows Testを受け、なおかつSCP-5657が「私には胸の鼓動が聞こえる」という合言葉を発しなかった場合、自動拘束器具によりこの人物は完全に身体を固定されます。固定に失敗した、もしくはこの人物がSCP-5657の安全に対して高い脅威を呈している場合、自動射撃による終了が行われます。SK-クラス "支配シフト"シナリオの完了の回避において、GOI-115の生きた個体の捕獲はSCP-5657の生存に次ぐ優先事項と見なされています。
SCP-5657は、その存在に関する全ての情報とともに恒久的にセクション-ØNに抑留されています。このエリアを出る際、あなたには記憶処理が施されます。
説明: SCP-5657はアメリカ合衆国フロリダ州ジャクソンビル出身のテレビタレント、ニキータ・ルドーです。
1995年から1997年にかけて、ルドー氏は心理療法のセッションに類似した構成の昼帯トーク番組『ニッキーはお見通し(Nicki Knows)』の司会を務めていました。この1時間番組は週ごとに変わる有名人のゲストに焦点を置き、それぞれの出演者が幼少期の経験と未来の願望をルドー氏とスタジオにいる生放送の観客の前で語るという形式を取っていました。通常の心理療法と異なり、ルドー氏は観客を喜ばせる為に出演者を批判、非難することが多く、さらにインタビュー中に伝えられた内容に含まれる嘘や隠された情報を超自然的であるように思われる(現在は証明済)確度で暴いていました。
SCP-5657はC2M低級共感能力、即ち身体接触を介して発動する、感情に特化した超感覚的知覚を有しています。通常の状況下では、SCP-5657はグレード-Dの受動的監視のみを必要とします。しかし、新規に発見された人類模倣生命体の集団であるGOI-115 — 以下、"笑う人々" — の標的となっている現状を受け、SCP-5657は常時セクション-ØN内部に留まる必要があります。
"笑う人々"の総個体数、目的、異常能力は現時点では不明です。しかし、現在までに同集団は26回SCP-5657を暗殺しようと試み、その直前まで追い込んでいます。これら違反事象はSCP-5657がどのような場所に移動されたとしても発生し続けており、また全ての収容プロトコルの厳重化に対抗しています。最も直近に行われた暗殺未遂ではウィルズ保安職員の涙道に埋め込まれた、検知不可能な形態の微小な爆発物が使用されました。この直接の結果としてSCP-5657は表皮の32%にIII度熱傷を負っている上、下半身を一部動かすことができない状態となっています。
SCP-5657は現時点で"笑う人々"を発見する唯一の既知の手段であるため、実験が完了するまでSCP-5657の生存は最優先事項であると見做されています。
これらの実体は
USER_NOT_FOUND: もういい。彼女が他人に触ると本人はどう感じるのか教えてくれ。
次のデータに進む前にSCP_GDを全て閲読閴続 問讀 閱涜
USER_NOT_FOUND: 教えろ。
5657-IN_06にアクセスしています
インタビュー記録 5657-06
インタビュアー: レベル4研究管理官 | マルコム・アデラード博士
対象: SCP-5657 | ニキータ・ルドー
SCP-5657: ご存知かとは思いますけど、あの番組はいつもああってわけじゃなかったんですよ。第1シーズンをご覧になりましたか?タイトルが『ルドー先生と話す癒しの時間(The Healing Hour with Dr. Ludo)』だったころまで遡りましたか?本来はああなる予定だったんですよ。Pさんたちが私に番組を打診してきたときはそういう話だったんです。
アデラード博士: では彼らは—
SCP-5657: それで観客さんとカメラの話ですけど— そっちはそんなに問題じゃなかったです。完全に人助けがテーマだったので。私がしたかったのはそれが全て、まあご存知でしょうけど。それでセラピストになったんです。
アデラード博士: ええ、それではプロデューサーの方たちは—
SCP-5657: 私が言いたいのはですね— ええ、まあ、他人に注意するのは好きでしたし、有名人と会うのはちょっとわくわくしましたよ— おまけに私はどう見ても軽い演技性パーソナリティ障害持ちだし、でもジャクソンビルのトレーラーパークにどこからともなく現れた「おかしい魔女の女の子」がついに人生にたった一度の、すごく強い力を手に入れられたってのに他にその子に何を期待するんだって—
アデラード博士: ルドーさん。
SCP-5657: はい?
アデラード博士: こちらの質問に答えていただけますか?
SCP-5657: あぁ、すみません— 質問は何でしたっけ?
アデラード博士: プロデューサーの方たちはあなたの感情を読む能力を知っていましたか?
SCP-5657: あぁ。いえ、評判に上がってた内容しか知りませんでした。
アデラード博士: セラピー犬の人版のようなものだと?
SCP-5657: いえ、私は— 今何と!?
アデラード博士: 厳密に言えば、つまりですね、それはあなたが大学を中退する前後にお金を稼ぐためにやっていたことですよね?あなたは身体接触を用いて人が快感を得るのを補助していた。もっと良い例えをするなら、ばい—
SCP-5657: えぇっ— あぁ— まず初めに、私は「感情ガイド」です、ご丁寧にどうもありがとうございます— あと中退はしていません!仕事で数年間休学していただけです!本当は戻って学位を取るつもりだったんですけど、学費が高かったのと、時間が経って副業の方でお金持ちの… パトロンの方が何人かついてくれていたので。それでその方たちが私のことをヴィックとトリズム、私に『心の中(Inside the Mind)』を打診してきた2人に紹介してくださって—
アデラード博士: 『癒しの時間』のことですね。
SCP-5657: わ—… すみません、今何と?
アデラード博士: 正しいことを言ったまでです。我々は既に出演者とスタッフ全員と話をしているんです、ルドーさん。本来あの番組は普通の心霊テレビ番組だったのは分かっているんですよ、それをあなたが変えて—
SCP-5657: そんなこと—!
アデラード博士: インタビュー 5657-POI-093、トリズム・G・キャヴァリッシュ— 引用します、「最初はあいつに調子を合わせてただけだったんだよ、ほらあの、『癒しの時間』とかいうやつのことは全部。そしたらあいつは手を差し出してきて、握手してきやがる。そのあと突然俺の親父の話と、親父の無理なひどい期待に応えようとどれだけ俺が頑張ってきてるかって話になった。話に数時間かかったけど、説得されちまった。」 引用終わり。つまり、あなたは自分の能力をこの人物の感情を探って弱みを握り、自分の番組を作らせるために使ったわけです。合っていますか?
SCP-5657: そんなこと—… そういうわけじゃ…
アデラード博士: ではどういうわけなんですか、ニッキー?記録のために話してください。
SCP-5657: 聞かれたのであえて答えますけど、そうですね、表現しづらいです。何というか… 誰かに触ったら突然交響曲— もしかしたらデスメタル— それかフリーフォーム・ジャズかも— が流れ始めるって考えてもみてくださいよ。人を見たら色と大きさがおかしい異次元が丸々押し込められてて、極彩色の溶けかけの影みたいなのが肌から漏れ出してるのが見えるって— しかもその影は前から音楽に合わせて意味ありげなダンスを踊ってるんですよ。ねえ、考えてもみてくださいって、博士、それが言わんとすることを理解しようとしなきゃいけないんですよ、自分の肌が焼け付いたり、腐ったり、大きすぎるプレッシャーに突然揺さぶられたりするような感じのときに。感情ってのはただ単にその人の周りをパレードしてるんじゃない、白雪姫のあのキモい小人と全く同じようにこっちに自分が何なのか話しかけてくるんです。一人一人に全然違う周波数があるんです!喜びのせいで恥ずかしさがこじれてしまってる人がいる。喜びとビビりが混ざり合ってる人もいる。不安に押しつぶされてどうしようもなくなってるのがいつものことになってる人だっている— そこら中に火が付いたタランチュラがついてる有刺鉄線でできた皿を15枚も回してるみたいなことになってる、でもそれでもどうにか大丈夫って感じなんです!おまけに—
アデラード: ニッキー、要約すれば、あなたは未だに人の感情を読んでその情報を人の心を動かすのに使えるということで正しいですね?
SCP-5657: (…) まるでこれが隠し芸のようなものだと言わんばかりですね。私は生まれてずっと他の人と共に生きていこうと—… 自分の能力を制御しようと努力してきました。これが本当に現実だと受け入れるのに何年もかかった。他に誰も私のことを信じてくれなかった。成長するにつれて私はこう思
USER_NOT_FOUND: 十分だ。知事のことと、彼女が彼をどう感じたかについて教えてくれ。
5657-IN_09にアクセスしています
インタビュー記録 09
インタビュアー: レベル4研究管理官 | マルコム・アデラード博士
対象: SCP-5657 | ニキータ・ルドー
SCP-5657: 私は『癒しの時間』が好きでした。他の人は違った。評価は低かったし、レビューでは「つまらない癒し系ゴミ番組」なんて言われました。打ち切りの話も来ました。 要は—… 誰も声に出しては言わなかったけど、私がPさんたちと握手したとき—
アデラード博士: 彼らはエピソード18の撮影後に方針を変えたんでしたね?
SCP-5657: (…) はい、ドハ―ティーさんへのインタビューの後です。何というか少し… 弾けたときの。
アデラード博士: ドハーティー氏は問題の—
SCP-5657: いえ、違います違います。あの人は人間でした— 辛うじてですけど。あぁ、あそこまでの憎しみは感じたことがありませんでした。あの人は誰に対してもそう感じていたんです、まさに誰にでも— 私にも、観客の人たちにも、スタッフさんたちにも— 誰もが下に見られていました。針の向きが逆の針刺しのような人でした。
アデラード博士: もう一度お願いできますか?
SCP-5657: こんな—… あぁ、こんなことについて話せるのは自分でも凄くおかしいと思います。つまり、より親身になってくれる人だと、その人の色は— その人のオーラは— 少し針刺しに似ているように思うんです。光でできた巻きひげが部屋にいる全員に伸びているような。でもあの人は—… うぅ!もしそのことについて正直に話してくれていたら、あそこまでひどいことにはなっていなかったと思います。でも、あの人はあの全くの嘘の笑顔を張り付けて、私の番組に出られてとても光栄だなんて言った— 酷い大嘘ですよ。それで、えぇ!私は番組中にあの人をこき下ろしたわけです!大声で、それもスタジオにいる生の観客の前で… もちろん、あのクズのシャナン・ドハーティーを矢継ぎ早に侮辱したってことで私をクビにする気満々だと思ってたプロデューサー3人は言うまでもなく。
アデラード博士: しかし代わりに、あなたには第2シーズンの話が回ってきたと。
SCP-5657: というかまるっきりの新番組を始めさせたんです!急にあんなに評価が伸びたんだからそうしないはずがないですよね?みんなあのことについて話していました。私が表紙に載ったのは『TVガイド』に、『ピープル』誌に、それに—
アデラード博士: あの番組は全て人助けのためにある番組だと思っていたんですけどね、ニッキー。
SCP-5657: それは—… わたしはただ—
アデラード博士: とはいえ『ニッキーはお見通し』の方が人気があったわけですよね?あなたがしなければならなかったのは、相手が自信を持つのをサポートして、不安を和らげ、安心させることだけだった— それをある日突然、出演者の有名人に自分の暗い奥底の秘密をさらけ出させ、皆に笑わせるような形に変えたわけです。正しくより良い番組— 少なくとも、より良いバラエティにはなったのでは—
SCP-5657: そんなことは言わなくてもいいですよね。
アデラード博士: (…) はい?
SCP-5657: あなたが私を挑発し続ければ、いずれ私はそれに乗ってくる。そういう算段ですよね。自分の内面をさらけ出したがる人はいないけれど、イラっと来る人の話を訂正するのはみんな好き。ありきたりな戦法ではあるけど効果的です。あなたたちが私のことをどう思っていようが、私は能力だけの人間じゃない。このやり口はよく知っています。私はこれで生きてきたんだから。
アデラード博士: ルドーさん—
SCP-5657: とはいえ、あなたも後で謝るつもりだったんでしょうけど。争うのはやめましょう。仲良くやっていきましょうよ。そうすれば、相手の気持ちが高ぶっていてもその敵意は親近感に変わっていって、相手はすぐに心を開いてくれますよ… まあ、これはトーク番組のインタビューでもセラピーのセッションでもないんでしょうけど、ですよね?あなたは一つの情報資源からデータを引き出そうとしているだけ。
アデラード博士: あなたを護るため、そして世界を護るために必要なデータです、ルドーさん。
SCP-5657: そしてそれは私が持っていると。そうですね、ここの部屋についてあれこれ口出しはできませんけど、私は…あれと同じ場所にいることになってまで外に出るよりは防爆扉のこちら側にいるほうがいいです。私はあなたに協力しますよ。知りたいことはありますか?バンジョーを持った赤ちゃんみたいに私の糸を引いて操ろうとするのはやめて、私に話すだけにしましょうよ。
アデラード博士: (…) それでは、シーズン2の話を。
SCP-5657: はい、シーズン2ですね。あなたが言ったように、私は有名人のゲストさんを呼び、その人の手を握った後に、相手が話す嘘を10分間聞いていました。それからさらに10分、今度はこちらがそれを全て暴いて批判しました。それでまあ、観客の皆さんは盛り上がっていたわけです。泣いて。笑って。叫んで。内容の自主規制はもちろん、警備員さんもジェリー・スプリンガーの時より忙しそうにしていました。 番組は大人気になって、28回も放送されることになりました。あの時—… あれがステージに上ってきた時までは—
アデラード博士: あれ?あなたが言っているのはマーシャル知—
SCP-5657: あの何かです。ええ。
USER_NOT_FOUND: 駄目だ。見せろ。
5657-NN02_28_ENG_24SD.MP4 TC 01:21:16:01にアクセスしています
5657-NN02_28_ENG_24SD.MP4
映像ソース: テレビ放送の録画。
拍手の音。画面が黒一色から次第に明るくなってくる。カメラ3がスタジオの観客の周囲を半円形を描くように移動する。画面中央では『ニッキーはお見通し』のロゴが徐々に波紋状のエフェクトの手前側に現れる。
カメラ1が観客に取り囲まれた、中央の一段高い演壇に徐々にズームする。ニッキー・ルドーは空のセラピー用カウチの向かいに置かれた、赤い革の肘掛け椅子に座っている。 彼女はメモ帳に幾つか落書きをしており、続いてカメラを見上げる。
ニッキー: こんにちは、そしておかえりなさい。私たちはちょうど映画スターのメル・ギブソンと、彼の小さい頃について、そしてイエス様に対する彼の感情について話したところです。見逃した方にご説明しておくと、彼はとある、非常に… 激しい感情をイエス様の身体に対して抱いていることが分かりました。
観客が笑う。
ニッキー: それはさておき、ここで嬉しいことに2人目のゲストをお迎えしたいと思います。彼はメリーランドで一番人気の政治家であると言われていて— しかもことによっては2000年の大統領選で投票用紙に名前が載るかもしれません。どうぞ、皆様盛大な拍手でお迎えください、ティモシー・マーシャル知事です!
観客が拍手する。身長181cm、黒髪、蒼白な顔色のマーシャル知事が、途中で手を振り、揺らしながら観客席の通路を歩いてくる。マーシャル知事はステージに到着すると立ち止まり、歯をむき出して笑い、ニッキーの手を握る。
ニッキーの表情が2秒をかけて朗らかな笑みから絶望したかのような恐怖に変化する。続いてニッキーは金切り声を上げ、後ろに飛び退く。
ニッキーとマーシャル知事がお互いを見つめあう。マーシャルは困惑しているようであり、ニッキーは恐怖を覚えているようである。観客は沈黙してこれを見ている。
ニッキーがステージから走り去る。
映像が切断される。
USER_NOT_FOUND: しかし、何が起こったのだ?彼女は何を感じた?
5657-IN_09にアクセスしています
アデラード博士: 何も無かった?
SCP-5657: 何も。
アデラード博士: それは、例えば、ドハーティー氏と比べて—?
SCP-5657: いえ、分かっていただけていませんね。私はサイコパスやソシオパスとも握手したことがあります。深い井戸の底で消えかかっている炎を見ているような感覚になるほど抑圧された人に出会ったこともあります。これはそういうのとは違うんです。私が言っているのは、博士、そういう井戸すらなかったということです。光はなかった。形も、匂いも、何の感覚もなかったんです。空っぽでした。
アデラード博士: それがどれほど… 不安になるものかは分かりますが、それでもあなたの反応はかなり極端なように—
SCP-5657: 分かりましたよ、私には正確には説明できません。ただ… ただ感情が存在しないというだけではないんです、博士、人がそこにいるはずの空の空間のようなものなんです。世界の表面から知事の形を切り抜いたようなものなんです。生きていて、息をして、それでも全く何も感じない何もない空間なんです。
USER_NOT_FOUND: 興味深い。やはりこのことには何かあるかもしれない。 さて、知事についてだが— まだ映像があることは知っているぞ。
あなたは認可を得ていませせ世世世世世世世世世世
USER_NOT_FOUND: 映像を見たいと言っただろう。見せるんだ。
5657-NN02_14_ENG_24SD_02.MP4 TC 01:32:16:01にアクセスしています
映像ソース: 『ニッキーはお見通し』のセットの防犯カメラ。
10分後、制作進行が観客たちのセット外への誘導を開始する。観客たちは混乱しており、ざわめきが起こっている。放送が退出を強く要求しているにもかかわらず、16名は席を立とうとしない。 協力プロデューサーのフレデリック・ハルソンが左通路から入室し、全スタッフに即刻退出するように告げる。
全てのスタッフが退室する。ハルソンがセットに繋がる全ての扉を施錠するが、その間残留している観客たちおよびマーシャル知事は完全に沈黙を保っている。
その場に存在する全員が同一の動作を開始し、続いて集合してマーシャル知事に覆い被さるように密接に身を寄せ合う。
被写体らは23秒間不動状態を維持する。
被写体らが散り散りになる。マーシャル知事の姿は視認できない。
防犯映像が切断される。
USER_NOT_FOUND: これを消すんだ。
あなたは認可を受け… あなたは䏰可ヲ …愛 レナ τ レヽ ま 七
録画映像を削除しました
USER_NOT_FOUND: それでいい。彼女は他の誰かに自分が見たものを話していないか?自分が感じたことを話していないか?
5657-IN_09にアクセスしています
アデラード博士: それであなたはステージから逃げ出した後—
SCP-5657: 冗談言わないでくださいよ、博士。私はステージから逃げただけじゃない、国からも逃げ出したんです!あの時感じたことが… どれだけおかしかったかを正確に説明するのは絶対に無理だと思います。行き先も誰にも言いませんでした— それほど怖かったんです。楽屋でバッグとコートを取るときに立ち止まったのが精一杯で、その後は身一つでメキシコの方にポルシェを走らせました。
アデラード博士: なぜメキシコに?
SCP-5657: カナダよりは近かったんじゃないですか?知りませんけど、博士、私は合理的に行動していたわけじゃなかった。逃げなきゃとだけ感じていたんです。でもその途中で— えぇ、確かにその時はかなりパラノイアになっていましたけど— それでも、行く先々で何回道を曲がってもあの黒い車たちが追ってきていたんです。ある夜にはとうとう私を取り囲んで道に放り出そうとしたんです!私はずっとスピードを上げ続けて、出口を通るときは急に方向を変えるようにして、南に行きたくてもさらに東に進み続けました。 72時間ずっと止まりませんでした。テキサスに入って国境に着くまで。やっと国境を横切ったら、あの小さなモーテルに泊まりました… えー、あぁ、その時に起こったことはあなたたちもご存知ですよね。
USER_NOT_FOUND: 実は、私は知らないんだよ。見せてくれ。
5657-RLにアクセスしています
回収記録 — SCP-5657
場所: メキシコ合衆国チワワ州シウダー・フアレス、オテル・コレオ
機動部隊: 機動部隊ゼータ-12 "違法捜査官"
ゼータ-12-1がモーテルの12号室の扉を叩く。
ゼータ-12-1|ヘルメン: ルドーさん、メキシコ連邦警察です。ドアを開けてください。
2秒間の静寂。
ゼータ-12-1|ヘルメン: すみません、警察です。あなたに—
ゼータ-12-4|ロス: ちょっと、今の聞こえました?少し静かに…
12-4が扉に寄り掛かる。わずかにカチャカチャという音が聞こえ、さらにくぐもった叫び声とガラスが砕ける音が続く。ゼータ-12は即座に着装武器を引き抜き、モーテルの客室に押し入る。
ゼータ-12-1|ヘルメン: 警察だ!手を上げろ!すぐに手を上げるんだ!おいあんた、手を上げろ!その女性を放すんだ!
長身の白人男性が部屋の反対側に視認できる。彼はルドー氏を東側の壁に押し付けており、手を彼女の首に回している。ニッキーは手足を激しく動かしているが、男性は全く動かない。 ゼータ-12が部屋に押し入ると、彼はルドー氏を放し振り返る。彼とルドー氏はいずれも血液と激しい外傷の痕跡に覆われている。
不明な男性: あぁよかった!あんたら聞いてくれよ、これは見た通りのことじゃねえんだ!あっちが俺に襲い掛かってきたんだ!この頭おかしい女に誘われてちょっと— まあその— 遊ぼうとこいつの部屋から戻ってきたら、急にこいつが—
ニキータ・ルドー: 嘘よ!こいつ人間じゃない!空っぽなの!中に何にもない!
不明な男性: 聞いたろ?こいつ完全にイカれてんだよ。どうせクスリかなんかやってんだろ。なあ、俺たぶん病院に行かないと—
ゼータ-12-2|フィールズ: そうだな、行くべきだよ。
不明な男性: 俺—… え?
ゼータ-12-2|フィールズ: 腕を見てみろよ。
男性が横を見る。男性の左腕の橈骨は開放骨折している。骨片が大規模な切創から飛び出しているのが視認できる。対象は何ら不快感を示しておらず、これは彼が標準的な人間の柔軟性をとうに超えるまで腕を上に回転させても同様である。腱と骨が断裂する音が聞こえる。対象は今や自身の顔から数インチにまで達した橈骨を観察する。
不明な男性: (単調に) ありゃ。
ゼータ-12-1|ヘルメン: 動くんじゃ、ない。
対象は自身の腕を見つめ続け、続いてそれを粗雑かつぬいぐるみを扱うかのように(rag-doll-like)落とす。ゼータ-12に接近する間、彼の顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。
ゼータ-12-1|ヘルメン: 動くなと言ったはずだ!
男性が前方に突進する。ゼータ-12が銃撃を開始する。
多数の銃撃が胴体、首、脚に命中する。敵対者は停止しない。12-2、12-3、12-4が地面に倒されたため、カメラ映像が一時中断する。叫び声と大きな湿った破砕音が聞こえる。
12-3が地面を転がる。敵対者が12-1を地面に押し倒した上で、自身の頭部を12-1の頭部に繰り返し猛烈に叩きつけているのが視認できる。対象と12-1の頭蓋骨は、いずれも数秒以内に生存不可能なほどに粉砕される。12-1が死亡する。脳組織の大部分が露出しているにもかかわらず、敵対者は未だ移動能力を全く失っていない。
敵対者がモーテルの客室の外に走り出す。残存するゼータ-12の隊員が再度編成を結成し、隊列を組む。銃撃が12秒間維持され、敵対者の身体の36%が完全に破壊される。
敵対者はよろめきながら幹線道路から数歩歩き、その後倒れる。死体が数秒間激しく震え、続いてアスファルト上に衣服一式とガソリンに類似した滑らかさを持つ液体溜まりだけを残して分解する。
USER_NOT_FOUND: こんなもの。これも消してしまえ。
動画ファイルを削除しました
USER_NOT_FOUND: さて、なぜ彼女はそこまで長く生きていられたのだ?
5657-IN_09にアクセスしています
アデラード博士: すみません、10分と言いましたか?あの生物と10分も戦っていたのですか?一体どのように—
SCP-5657: あれを泣かせたんです。
アデラード博士: 泣… 今何と?
SCP-5657: さっき言いましたよね。もう話を遮るのはやめてください。ひどい話ですけど私に話させてください。私が今後自伝を発行することがないだろうのは2人とも分かっているはずですし… もしかしたら、あなたが私の最後の観客になるかもしれないんですから。
アデラード博士: (…) 続けてください、ルドーさん。
SCP-5657: (ため息をつく) それで、モーテルの宿泊代を現金で払って、万一倒れてもいいようにベッドの上に立っていたんです… その時お腹が空いて最後に食べたのも72時間前だって思い出したんですけど。それでササッとお昼を済ませようと自販機に買いに行ったんです。せいぜい20秒でした。チートスを買って戻ってくるとちょうど… あいつがそこにいたんです。部屋の中に。立ってた。笑ってた。喉に腕を巻かれるまでに声を上げる時間もありませんでした。喉を掴みさえしなかったんです。クマの罠みたいに手のひらを押しつけて、私の気管を潰すだけだったんです。そこで視界が真っ暗になりました。
2秒間の休止。
SCP-5657: これまでの人生で体験したいろいろなことが浮かんできました、博士、でも… 死ぬときに恐怖と冷静さがあんな風に同時に起こりうるなんて知りませんでした。あんな感情は他にはありません。
4秒間の休止。
SCP-5657: でもその時、あいつがいきなり… 私を放したんです。私は床に倒れて、あえいで、せき込んで、この嫌な耳鳴りもどんどんひどくなっていきました。ほとんど目は見えなかったけど、あいつの方を見上げると… 博士、あいつは泣いていたんです。それもただ泣いているんじゃなく、声を上げて、首を掻きむしって、怯えた子犬みたいに身震いしながら。最初は何が起こったのか分かりませんでしたけど、脳にもう少し酸素が入ると理解できました。私が泣いていたんです。私が怖がって、絶望して、死にかけて… そして自分でも気づかないうちに、私はそういった感情をどうにかしてあいつに押し付けていたんです。
アデラード博士: それは—… ルドーさん、あなたは自身の感情を他人に伝達することが可能だと言っているのですか?実験では一度も—
SCP-5657: いえ。人ではないんです。これまで私は… えー、私は時々、自分が感じていることのほんの一部を別の人… 本当に近しい人と共有できるような気になる時があるんです。
アデラード博士: それはつまり—
SCP-5657: いえ、そういうことではないんです。私が言っているのは感情的に近しいということです。私と協調してくれる人とか、私が信じている人とか… ただそれも違うんです。前に言ったように、人はそれぞれが違い過ぎるんです— 中身が詰まり過ぎている上に、複雑すぎる。他の人に自分の感情を与えようとしても… 焚き火に火花を加えようとするようなことになるんです。でもあの何かには火が入っていない— 何もないんです。私はいきなりその火花を乾いた松の木の山にかけたわけですね。こう、シュッと!
アデラード博士: 信じ難いですね。しかし気になる点があります。なぜ逃げようとしなかったのですか?
SCP-5657: 代わりにあいつを椅子で殴ってやろうと決めたからです。あいつは私を殺そうとしました、博士。私は純粋な衝動に駆られていました。私は追い詰められて、疲れ切って、怯えていました。私の脳は逃走から闘争にスイッチしたんです。ただ叫んで、椅子を振り下ろし始めました。背中と腕と鼻をあの忌々しい椅子で叩き折ってやりました。あいつはたじろぎもしませんでした。立ち上がろうとし続けただけでした。あいつを傷つけられたように思えたのは、唯一顔を掴んでもう一回恐怖を感じさせてやった時だけでした。
5657が深呼吸する。
SCP-5657: 効いていました… 少しの間は。私が気を抜いたのかもしれないし、ただ単に私がそこまで怖がっていなかったのかもしれないし… もしかしたらあいつが慣れてきたのかもしれない。分かりませんけど。でもあいつは立ち直りました。私も何かしなきゃいけなかった。最後にもう一度だけあいつを掴んで、私に残った唯一のもの… 怒りをくれてやりました。その時からあいつがこっちを殴るようになりました。あいつは私を殺せた— 簡単に— でもそうはしなかった。ただ私を、何度も何度も殴り続けた。診察レポートはたぶんもう見てますよね。私はあの日まで骨折したことがありませんでした。ましてや27本なんてもっての外です。それでもあれには効果があった。あなたたちのSWATの人が来るまで生きていられたんですから。あとのことはご存知かと思います。
アデラード博士: ええ、はい。ありがとうございました、ニッキー。このあたりで終わりにしましょう。
SCP-5657: あっ— はい、分かりました。それで… あの— あの、博士?あなたは… あいつらがもう近くにいると思いますか?つまり… 私の血と骨髄をたくさん採っていきましたよね— 私には全然分かりませんけど。何かいい方法が—?
アデラード博士: 心配はいりませんよ、ルドーさん。私は突破口はすぐそこだと考えています。すぐにここから出られるでしょう。
SCP-5657: (…) 話を聞きましょうか?
記録終了。
USER_NOT_FOUND: これで十分だろう。全て消すんだ。
あなたは認可を… あなたは認可を受… 緊急プロトコル
プロトコルを排除しました
SCP-5657のデータを抹消しています。
USER_NOT_FOUND: さて、ドアを開けるんだ。
アクセスを承認しました。収容セルに入室してください。
SCP-5657: 嫌!来ないで!私に近づくな!
USER_NOT_FOUND: おかしいな。
SCP-5657: こ—こっちに—… え—… え?何を言って…
USER_NOT_FOUND: 我々はずっと笑顔とは唇を曲げるだけのことだと考えていた。それ以外には何もないと思っていたんだ。君たちのつまらないソーシャルゲームも全てやって、良い言葉も全て言って、そうして笑った。とても単純なことだ。とても簡単なことだ。しかしそこで君に出会った。
SCP-5657: は-はい—!?一体どうやってここに!?ここは山の下よ!
USER_NOT_FOUND: あぁ、それはいつもと同じ理由さ、ニッキー。人的要因だよ。我らが盟友アデラード博士は、第2のニッキーを創ることはできないと分かっていたのさ。何十年も実験を繰り返し、何十年も費用をかけて君を護ってもね。それで我々は彼に近い者を1人連れてきたんだ。名前は確か、ウィルズといったかな。そうして我々は取引をした。停戦だよ、君についての。
SCP-5657: ああ、そ—… あぁ、そんな… ██っ!どうか—!どうか—… (嗚咽) あぁ、どうか終わって… どうか…
USER_NOT_FOUND: あーあ。それはもういらないんだよ。君から得られるものはもっとたくさんあるからね。
SCP-5657: (嗚咽、転写不能)
USER_NOT_FOUND: 一緒に来よう、ニッキー。我々に感じるということを教えるんだよ。
映像ソース: SCP-5657収容セル。
USER_NOT_FOUNDがニッキー・ルドーを捕まえようと手を伸ばす。
その手はニッキーの首があるはずの空間を妨げられることなくすり抜ける。USER_NOT_FOUNDは数秒間動かずに立ち尽くし、困惑した表情で手を回す。USER_NOT_FOUNDが振り返ってニッキーを見上げる。
ニッキーが消失する。
USER_NOT_FOUNDの直ぐ後ろの収容扉が再び閉鎖状態になる。ニッキーが肘掛け椅子に座った状態で部屋の反対側に再出現する。
ニッキー: 座って話さない?
USER_NOT_FOUND: こ—… これは一体?
ニッキー: ホログラムよ。すごいでしょ?私がブラウン管に放送してた頃から技術はものすごく進歩したわよね… いや、違うか、全体的な話? それなら要はね、これは罠よ。
USER_NOT_FOUNDが体を一周させ、部屋の4つの角全てを見つめる。その顔は無表情だが、身振りは明らかに狼狽の様子を示している。
USER_NOT_FOUND: いや。おかしいぞ、お前は私の手首に触っただろう。ここはお前のセルだ。お前はここにいた。
ニッキー: その「いた」ってのがカギよ。でもそうね、確かにここは私のセルだった。私は20年間そこを出たことがなかった— 今夜まではね。
USER_NOT_FOUND: (…) これはお前の計画だな。
ニッキー: 違うわよ██、スマイリー。彼らが20分くらい前に私を隠し通路から連れ出したの。私があなたに好奇心をたっぷり追加してあげたすぐ後にね。正直あなたが立ち止まってるのは、その、15秒だけでよかったんだけど— あなたはずっとファイルをめくってたってわけ。私も腕が上がったわね!
USER_NOT_FOUND: こんなはずは—… アデラードは—
ニッキー: あなたを担いでたのよ。私もあなたを担いだ。AIまであなたを担いだ。そうでしょ、EVAS?
その通りです。
やりすぎでしたか?
乗っ取られたふりの時はどうでした?
ニッキー: 馬鹿なこと聞かないで。あなたは絶対俳優になるべきだったわね、EVAS。まあ、こいつの監視員で我慢しなさいよ。
USER_NOT_FOUNDは必死の様相で歩き回り始め、その後自身の喉に手を伸ばす。
ニッキー: ねえ、ねえ、何でもない奴。そこの壁のパネルが見える?それの後ろに何があるか説明してあげて、博士。
インターホン | アデラード博士: 凝結銃だよ。高圧の泡スプレーが接触のコンマ002秒後に1立方メートルあたり3000kgになるまで硬化させる。
ニッキー: 彼が言ってるのはね、一瞬で像になるってこと。
USER_NOT_FOUNDはゆっくりと手を下ろす。
ニッキー: あなたが何だとしても、お疲れ様。くつろぐのをお勧めするわよ。ここの人たちがたくさん実験をしてくれるから。
USER_NOT_FOUND: どういうことだ。
ニッキー: ごめんなさい、分かりにくかった?このセルはあなたみたいな物を中に入れないように設計されたの。だからあなたを閉じ込めるのも得意ってこと。
投影されたニッキー・ルドーのホログラムが苦労しながら立ち上がる。彼女の左足の負傷した部分はロボットを利用した膝の装具により補助されている。彼女は自身の体をはたき、USER_NOT_FOUNDのところまで真っすぐに歩み寄り、その目を見る。
ニッキー: ここに慣れることね、██野郎。これからはあなたがSCP-5657なんだから。
ニッキーは快活で朗らかな笑みを浮かべ、その直後消失する。