SCP-5732
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アイテム番号: SCP-5732

オブジェクトクラス: Neutralized

特別収容プロトコル: SCP-5732は2016/4/29に火葬されました。ミラー博士は、異常性が見られなかったため遺骸を保管することを許可されました。

説明: SCP-5732は女性の人型実体であり、年齢は20歳でした。SCP-5732と直接物理接触した水からは、あらゆる不純物が即座に除去されました。SCP-5732が大きな水域に沈んだ際には、およそ1500リットルの浄化に成功した後、この影響がもたらした過重負担により対象は意識を喪失しました。

SCP-5732の異常能力はその免疫システムや臓器にとって直接的に有害なようであり、能力の使用は免疫不全や臓器機能障害の増加と相関しています。異常性によるSCP-5732の身体損傷を制限するため、蒸留水が使用されました。

SCP-5732は友人宅のプールに飛び込んで直ちに意識を喪失した事故を受けて入院した後、2015/3/14に発見されました。財団の█████████博士が当該病院に勤務しており、SCP-5732を素早く回収して、緊急手術の最中に死亡したというカバーストーリーを流布しました。居合わせた家族や友人への記憶処理は不要でした。





ミラー博士によるインタビュー
日付: 2015年3月21日

[記録開始]

ミラー博士: おはようございます、SCP-5732。

[SCP-5732は返答しない]

ミラー博士: 今は受け止めきれないほどいろいろなことを考えているんでしょう。ただ、私に協力していくつか質問に答えてほしいのです。できますか?

SCP-5732: はい。

ミラー博士: 病院に行く羽目になったあの出来事は強烈なものでしたね。お身体の方はどういった感じなのか知りたいです。あなたの状況について見落としがないか確認したいんです。

SCP-5732: 気分は問題ないです。水を飲んだらひどくなりますけど。シャワーを浴びさせてもらったときなんか本当にクラクラしました。

ミラー博士: それはあなたが水と接触したときだけ起きるのですか?

SCP-5732: 他で起きたことはないです。

ミラー博士: なるほど。こちらの研究員があなたを助ける方法を見つける上で進んでいる方向は間違ってないみたいですね。

SCP-5732: 変な助け方ですよ。

[両者、数秒の沈黙]

ミラー博士: ご家族が恋しいようですね。

SCP-5732: 別れを言う機会すらくれなかったですよね?

ミラー博士: こう考えましょう。彼らはあなたが死んだものと思っています。本当にあのプールで死んだとして、その場合別れを言うことはできますか?

SCP-5732: ……いえ。

ミラー博士: お別れは贅沢です。ほとんどの人はそれをできませんから。

SCP-5732: あなたは?

ミラー博士: 何です?

SCP-5732: あなたはこれまで- できなかったことが…… あー、つまり、誰かを喪ったことはありますか?

ミラー博士: はい。

SCP-5732: ……こんなこと訊いてすみません。

ミラー博士: 大丈夫ですよ。

SCP-5732: それで私はどうしたらいいんでしょう? 外には出れない、誰にも会えない、何をしたら?

ミラー博士: これから数日かけてあなたの能力をテストします。あなたの状況を適切に和らげるために、あなたにできることの限界を知る必要があります。

SCP-5732: でもテスト以外は? 何をしろっていうんですか?

ミラー博士: あなたのような人型アノマリーは交代制で娯楽用品に触れることができます。本、ビデオゲーム、映画みたいなアイテムを-

SCP-5732: 前に置いてかれた2枚のスパイダーマン2みたいな? ただじっと座って独りで観ていろと?

ミラー博士: 同じ映画を2つだけ渡されたのですか?

SCP-5732: いや。オズ はじまりの戦いもあります。でもそれならスパイダーマン2を2回観た方がいいです。

ミラー博士: そんなことは。フランコ1もそんなに悪くないですよ。

SCP-5732: 自分で何言ってるかわかってます?

ミラー博士: あなたのことは良く思っていますよ。態度もいいですから。

SCP-5732: まあ要は、他にはなんにもないんですよね?

[SCP-5732は数秒沈黙し、やがて泣き始める]

[ミラー博士はポケットから1枚の紙を取り出して机の上に置く]

ミラー博士: インタビューはこれで終わりです、SCP-5732。セキュリティ上の理由からアノマリー同士の会話は許可できませんが、このリストから認定スタッフメンバーとの交流手段をリクエストできます。これは精神的な安定に役立つことがわかっています。

SCP-5732: 私が精神的に不安定だと思って?

ミラー博士: いえ。しかしあなたはとても難しい立場にいて、誰かと話したいと思うかもしれません。

SCP-5732: あなたもこのリストにいますね。

ミラー博士: 認定を受けているので。

[SCP-5732は返答しないが、紙を受け取る]

[記録終了]






補遺: SCP-5732の事前健康診断結果の公開を受け、以下が要求されました。

物品 要求ステータス
軽度の鎮痛剤2 承認
ツインサイズの電気毛布1枚 承認
認定スタッフメンバーとの通信用に改造された携帯電話 承認
窓のある地上宿舎への移転 却下





ミラー博士によるインタビュー
日付: 2015年3月27日

[記録開始]

SCP-5732: (ブルックリン訛りに似せて) はっきり言ってくださいよ、博士。本当に私はもう死にかけてるんですか?

[ミラー博士は一瞬笑うが、すぐに素に戻る]

ミラー博士: ハハ、あー…… はい。

SCP-5732: あぁ。マジか、はあ。

ミラー博士: それほどひどくは驚いていないようですね。

SCP-5732: まあ…… そうかも。気分はずっと最悪なんですよ、ミラー博士。何か飲むたびにインフルエンザみたいになります。論理的結論みたいなものです。

ミラー博士: 申し訳ないです。

[両者、数秒の沈黙]

ミラー博士: 苦痛を抑えるために投薬できないか医療スタッフと話しておきます、何か他にできることはありますか?

SCP-5732: ジェームズ・フランコに会いたいです。

ミラー博士: ジェームズ・フランコに- いえ。それはできません。

[ミラー博士は言葉を止める]

ミラー博士: フランコ? 最初に思い浮かんだのがその人なんですか?

SCP-5732: 冗談ですよ。

ミラー博士: 言いましたけど、持っておく映画を切り替えることもできますよ。

SCP-5732: あぁ、知ってます。スパイダーマンをずっと持ってます。

ミラー博士: あなたは大変よくこれを受け止めていますね。

SCP-5732: 受け止めなかったとしても…… 死にかけ度が下がるわけじゃありませんから。

ミラー博士: いい考えですね。

SCP-5732: ……ただこれが終わったら泣いちゃうかもしれません。恐らく。いつもみたくあなたがいなくなるまでは待ちます。

ミラー博士: わかりました。頭の中で処理するには大きすぎますからね。

SCP-5732: 寿命はどれくらい残ってますか?

ミラー博士: 推定では5か月ですね。

SCP-5732: おぉ。そこまで悪くはないですね。時間はたっぷり。

ミラー博士: 時間はたっぷりです。あなたは間違いなく勇敢な人です。

SCP-5732: 誰だっていつかは死にます。待つ以外で私に何ができますか?

ミラー博士: じゃあ、待ち時間に何ができるか確認してみましょう。

[記録終了]






補遺2: ミラー博士の要求した設備。

物品 要求ステータス
睡眠補助薬3 承認
Playstation3ゲーム機1台 承認
デジタルプロジェクター1台 却下
地元のハイキング道への付き添いありの遠足 承認 別のアノマリーの収容違反により承認取り消し





ミラー博士によるインタビュー
日付: 2015年5月3日

[記録開始]

ミラー博士: 本当に申し訳ありません。

SCP-5732: 大丈夫です。最初から行けるとは思ってませんでしたし。言ってみる価値はありました。

ミラー博士: ただ、確かに一度承認はされました。もう少しだけ待てば行けるかもしれません。

SCP-5732: 待ってる時間もないですけど。まあ大丈夫! 周りを警備員にうろうろされてたらどうせ違ったでしょうし。

ミラー博士: 彼らはそんなに悪い人じゃないですよ。

SCP-5732: 全員が全員とことん頑固なんです。

ミラー博士: それが彼らの仕事です。

SCP-5732: それはそれと、プロジェクターは手に入れられました?

ミラー博士: いえ。

SCP-5732: えっ? 何でですか?

ミラー博士: 不要だと考えられているようです。

[SCP-5732は咳をする演技をする]

SCP-5732: 本当に病気みたいだったらどうします? こんな風にほんとに病気だったら? おーぅ、私は死にかけで、スパイダーマン2を800回観るためにプロジェクターが必要で、さもないと私の死体はスーパー異常に……

ミラー博士: やめてください。

[間。両者、数秒の沈黙。]

SCP-5732: 私がいなくなったら寂しいですか?

ミラー博士: 当然です。

SCP-5732: どうだか。この場所中に私と同じようなめちゃくちゃにトンチキな輩はごまんといるでしょ。

ミラー博士: そんなに多くはありません、実際。私は自己無力化型のアノマリーを扱っています。アノマリーの多くは自己破壊型ですが、大概は無生物です。ごく少数が動物で、人型は更に少ないですね。

SCP-5732: 私みたいな?

ミラー博士: あなたみたいな。

SCP-5732: 他に何人くらいいましたか? 人型は?

ミラー博士: あなたで5人目です。

SCP-5732: その全員を寂しがって?

ミラー博士: 全員を寂しがってます。

SCP-5732: とんだお間抜けですね。

ミラー博士: 全くです。

SCP-5732: 何でこの仕事を続けるんですか? 最悪じゃないですか?

ミラー博士: 何か一つなんでも手に入るとして、この世を去る前になぁんでも一つ持っていられると保証されるとして、あなたはどうしたいですか?

SCP-5732: ……独りになりたくない。

ミラー博士: そういうこと。

[ミラー博士はため息をつく。]

ミラー博士: それに、ほんの少しの時間でも、ないよりはずっといいですよね? 彼らが逝ってしまう前に、少しでもいい経験をさせてあげられるよう、私が必要だったんです。

SCP-5732: でも現実問題、実際どれくらいのことがミラーさんにできるんですか? 外に出してすらもらえないんですよ。

ミラー博士: えっと— ただ望みどおりになることだけが時間を価値あるものにするわけじゃありませんよ。

[記録終了]






補遺3: 新たにミラー博士の要求した設備。

物品 要求ステータス
弱オピオイド、神経障害性疼痛に対する抗けいれん剤4 承認
デジタルプロジェクター1台 却下
██████キャンプ場への付き添いありの遠足 却下
イタリアのサイト-███への一時的移転 却下
光起動式の暖色系常夜灯2機 承認
電動車椅子1台 保留











補遺4: SCP-5732の投薬計画改定に伴い新たにミラー博士の要求した設備。

物品 要求ステータス
抗けいれん剤の変更7 承認
食欲増進剤8 承認
追加の鎮痛剤9 承認
電動車椅子1台 承認
財団職員の個人用仮想現実コンソールの使用 保留





ミラー博士による交流訪問の音声記録
日付: 2016年4月27日

[記録開始]

ミラー博士: 気分はどうですか?

SCP-5732: おぉ。まあ見ての通り。

ミラー博士: ええ。見ての通りです。何を持ってきたと思います?

SCP-5732: まさか、それってオキュラス10

ミラー博士: そ…… れはわかりませんが。良さそうなのを買ってきました。

SCP-5732: ミラーさんが買ったんですか?

ミラー博士: ええ、当然です。最近はそんなに高くないんですね。使ったことは?

SCP-5732: ないです。

ミラー博士: それは良かった。あなたがとても気に入りそうな海洋シミュレーターが入ってます。今夜セットアップしますか?

SCP-5732: 実は、今夜は気分があまり良くなくて。でも明日なら!

ミラー博士: 計画してるみたいですね。やりたいことリストをまた少し削除できますね。

SCP-5732: 動物たちを見たい。

ミラー博士: 好きなだけ見れますよ。

SCP-5732: フランコを4Kで見たい。

ミラー博士: それは…… どうですかね。

SCP-5732: それでも、ありがとうございます。本当に。3DCGの動物を見させてもらえるなんてとってもわくわくします。

ミラー博士: お役に立ててうれしいです。

[記録終了]






内部情報を入手しました。
なんですか
機密扱いのトップシークレットです
教えてくれないとひどいですよ
明日の朝はフレンチトーストスティックです。
うわーい
VRに映画にフレンチトーストスティック
おっしゃる通り。
また明日
おやすみなさい、ローリー。
ちょっと言ってもいいかな
緊急とかじゃないんだけど本当に言っておきたいことが
おーい
もう寝ちゃったのか
まあ明日の夜に言うねー
木 11:13 PM SMS


注: SCP-5732は2016/4/28、睡眠中に死亡しました。ミラー博士は、火葬後の遺骸を保管することと、財団の娯楽ライブラリから2枚のDVDを保管することを許可されました。






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