SCP-576-JP
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アイテム番号: SCP-576-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-576-JPは、サイト-8181の保管ロッカーに収容してください。SCP-576-JPをエリア-576-JPへ移動させる事は禁じられています。また、SCP-576-JP-3は拘束したうえでサイト-8123の人型オブジェクト収容室に収容してください。

説明: SCP-576-JPは、██県███郡██村1の村議会議員だった███ █氏の遺灰です。また、エリア-576-JPは███市のうち旧██村だった地域です。

SCP-576-JPがエリア-576-JPに持ち込まれた場合、SCP-576-JPを中心として徐々にSCP-576-JP現象が発生・進行します。SCP-576-JP現象では3種類の現象が同時に進行している事が確認されており、通称「再現」現象と「退行」現象、「住民化」現象と呼ばれています。

「再現」現象の対象となるものは現象発生時に建造物が建てられていなかったエリア-576-JP内部の土地です。SCP-576-JPがエリア-576-JPに持ち込まれてからランダムなタイミングで発生します。

「再現」現象が発生すると、対象となった土地に突如建造物(SCP-576-JP-1)と人型実体(SCP-576-JP-2)が出現します。現時点で確認された限りではSCP-576-JP-1は19██年代2に実在した商業施設3に、SCP-576-JP-2はその従業員4に酷似しています。

SCP-576-JP-1および2はあたかも最初からその場に存在したかのように振る舞います。しかしながら、SCP-576-JP-2は私人として活動している点は一切確認されておらず、観察された限りではいついかなる時でもSCP-576-JP-1の従業員であるかのように振る舞います。また、SCP-576-JP-2とは世間話レベルでの意思疎通は可能ですが、19██年代以降の知識はない事が確認されています。

また、SCP-576-JP-1およびSCP-576-JP-2はSCP-576-JPがエリア-576-JPから持ち出された時点で消滅します。SCP-576-JP-1が出現した土地もSCP-576-JP-1出現以前と何ら変わりのない状態に戻ります。

「退行」現象の対象となるものはエリア-576-JP内部の無生物のみです。「退行」現象が発生した物体は同様の機能を持っている物体の技術水準が徐々に以前の時代のそれへと変化していきます。例えば、スマートフォンの場合には二つ折り式の携帯電話、ストレート式の携帯電話、肩がけ式の携帯電話の順に、液晶テレビの場合にはブラウン管カラーテレビ、白黒テレビ、といった順に「退行」していきます。

「退行」現象は最終的には「再現」現象と同じく19███年代の水準にまで「退行」した時点で終了しますが、当時存在しなかった技術を利用した物品は「退行」現象の途上で消滅します。「退行」現象の影響を受けた物品は「再現」現象とは異なりSCP-576-JPがエリア-576-JPの外へ持ちだされた場合でも元の状態には戻らない点に注意してください。

「住民化」現象の対象となるものはエリア-576-JP内部にいる人間です。「住民化」現象が発生すると、対象となった人物はSCP-576-JP-3へと変化します。SCP-576-JP-3は、19██年代当時に██村に居住していた人物の、19██年代当時の外見をした人型実体です。現時点ではSCP-576-JP-3のタイプは76種類(SCP-576-JP-3-1~76)確認されています。SCP-576-JP-3はSCP-576-JP-2とほとんど同じ性質であり、19██年代以降の知識は持っていません。ただし、SCP-576-JPがエリア-576-JPから持ちだされても消滅せず、また元の人物に戻る事もありません。SCP-576-JP-3に変化した時点で元々の人物の人格は消滅し、SCP-576-JP-3のモデルとなった人物を模したものとなります。しかしながら、SCP-576-JP-3の人格はSCP-576-JP-3のモデルとなった人物のそれを完全に再現したものではない事が判明しています。

SCP-576-JP-3の種類のリスト(一部抜粋)

番号 外見 備考
SCP-576-JP-3-11 高齢の、丸メガネを着用した禿げた男性。藍色の和装をしている。 19██年に亡くなった██村の住人だった███ ██氏に酷似しているが、███氏の趣味であった航空機の模型収集は再現されていない。
SCP-576-JP-3-19 スーツを着用した大柄な壮年男性 19██年当時██小学校の教師であり███氏の担任であった██ ██氏に酷似しているが、遺族が証言している「家庭では非常に子煩悩だった」という性格は見られない。またSCP-576-JP-3には██氏の妻子に酷似した個体は見られない。
SCP-576-JP-3-23 19██年当時の警察官の服装を着用した中年男性 19██年当時██村の交番に勤務していた██ ███氏に酷似している。██氏は19██年当時は胃炎を患っていたが、SCP-576-JP-3-23にはそのような様子は見られない。
SCP-576-JP-3-36 赤色の野球帽に短ズボン、ランニングシャツを着用した10代前半の男性 ███氏の友人だった██ █氏の少年時代に酷似している。
SCP-576-JP-3-47 ██中学校の制服を着用した10代半ばの男性 SCP-576-JP-3-36のモデルでもある██ █氏の学生時代の外見に酷似。
SCP-576-JP-3-65 もんぺを着用した老齢女性 19██年当時██村で農業を営んでいた██ ██氏に酷似。██氏には老齢の夫がいたが、SCP-576-JP-3-65による言及はなく、SCP-576-JP-3群にも見られない。

なんというか、昔の村を忠実に再現した、というより個人の印象や記憶を頼りに再現した、という感じなんですよね。特にSCP-576-JP-3のモデルになった人物のすべてが再現されている、というわけでない点とか。███氏の印象とか記憶とかから再現された、という事なら完全な再現ではないという点も説明がつけられそうです。 -五月雨研究員

SCP-576-JPの性質を財団が発見した時には既にSCP-576-JP現象が一部で発生しており、██件の家屋等に「退行」現象が発生し、█件のSCP-576-JP-1と██体のSCP-576-JP-2が発生、また███市住民██人がSCP-576-JP-3に変化していました。カバーストーリー「土砂災害」が適用され、影響を受けた家屋等はすべて取り壊し、SCP-576-JP-3になった住民らは死亡扱いとした上でサイト-8123に収容されました。

インタビュー記録-576-JP-12

SCP-576-JPの起源の解明に有用であると判断されたインタビューの抜粋です。

対象: 上野 ███氏 (以下「対象」。元██村議会議員。生前の███氏とは同僚だった。)

インタビュアー: エージェント・妙高

[録音開始から省略]

エージェント・妙高: それでは、███さんの事について教えていただけますか?

対象: はいはい、よろしいですよ。こんな爺いの話すことが役立つならなんでもどうぞ。

エージェント・妙高: ありがとうございます。まず、███さんはどのような方でしたか?

対象: そうだねえ。まあ悪い奴じゃなかったのは確かだね。なんせ電線の工事絡みで賄賂渡そうとした業者を怒鳴りつけて警察に通報したくらいだし。ただ…

エージェント・妙高: ただ?

対象: いささか怒りっぽくてなあ。その時も怒鳴りつけるだけでなく手も出そうとしてたって話だし。奥さんや息子さんが止めたみたいだけどね。

エージェント・妙高: 直情的な方だったんですね。

対象: まあー…そうなるわな。死ぬ何年か前からはもっと怒りっぽくなってたな。こう言っちゃ悪いけど、ポストが赤いと言っては吠え、東から日が昇ったら噛みつくなんて調子だったからねえ。あとは…あの村が大好きだったねえ。

エージェント・妙高: と、おっしゃいますと?

対象: あいつは生まれも育ちも██村だったからね、██村への愛着は人一倍だったよ。今思えばそれがあいつの命取りになったんかねえ…

エージェント・妙高: 命取り、ですか?

対象: うん、あいつは██村が███市に吸収されて、██っていう名前が消えるのが本気で嫌だったみたいでね。最後まで、村長に食って掛かってまで5反対してた。そのことでずーっと、四六時中腹立てていてさ。

エージェント・妙高: そして?

対象: あいつはあの年だったのに脂っこいものとか味付けの濃いのが好きでねえ、それもあったのか、脳溢血起こしてそのまま逝っちゃったの。

エージェント・妙高: そうだったんですね。

対象: ああ…そうそう。あいつは死ぬちょっと前からずーっと「昔はよかった」って言ってたねえ。

エージェント・妙高: 昔はよかった、ですか?

対象: うん。俺とか██6とか、ともかく同年代の連中によく言ってた。「昔は良かった、ケータイやらパソコンやら変な機械も無かったし、もっと素朴だったし、それに██村も賑わってたし」ってね。

[録音終了まで省略]

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