“クリプティッド・キャッチャーズ” シーズン4より、ビリー・マクガラーのプロモーション映像。
インタビュー 5774-2
日付: 08/03/26
回答者: ビリー・マクガラー
質問者: ブラント博士
序: マシュー・マクガラーへのインタビューから数週間後、財団の監視網は、ビリー・マクガラーが“正真正銘の未確認生物を捕まえた”と称し、不活性状態のSCP-5774の画像をソーシャルメディアに投稿したのを検出した。調査のために派遣されたエージェントがSCP-5774の異常性を確認し、尋問のためにマクガラー兄弟を連行した。
ビリーの“罠師学”は番組中における架空の博士号である。彼は実際には高度な学位を何ら取得しておらず、大学では美術、天文学、宗教学などの単位を落としている。“クリプティッド・キャッチャーズ”の共同司会者を務める以前は、幾つもの低水準の職業に従事しており、異常な人物・団体との関係は知られていない。
<記録開始>
ブラント博士: どうも、マクガラーさん、長々とお待たせして申し訳ありません。幾つかお聞きしたい事があります。
ビリー・マクガラー: ご心配なく、それと僕のことはビリーって呼んでくれ。君たちはいわゆるメン・イン・ブラック系の組織なのかい? もうこうなったらウィル・スミスが入って来て質問を始めても驚かないよ。
ビリーは笑う。
ブラント博士: 映画よりアクションは大分少ないですし、書類事務はずっと多いですよ、ビリー。ですが私としてはもう少し優秀な組織だと思いたいですね。では、どうやってその、えー、異常実体を捕獲したか説明していただけますか?
ビリー・マクガラー: 例の変身未確認生物くんのことだね? うん、簡単じゃなかったよ。最初にあれを見たのはマットだったけど、その後すぐに僕も狙われ始めたんだ。僕ら二人を嫌と言うほど驚かせて、そこら中付け回して、薄気味悪い音ばかり立てるんだ。
でも、しばらく経ってもお互い怪我しなかったから、きっと危害を加える気は無いんだと思った。他の人たちが傍にいる時は必ず姿を消したし、絶対にカメラに映らなかったから、見られたくないんだろうとも思った。それで、ちょっとした罠を仕掛けることにした。
僕は一人きりで森の中に入って、あいつが思いのままに僕を怖がらせる十分な機会を餌にした。車を路肩に停めて、軽く散歩しながら自然の動植物を眺めていると、やがて未確認動物くんが現れた。そこで、バーン、前の日にプロデューサーに設置してもらったドローンを一斉に起動したんだ。テレビ番組1つ分の予算が使えるんだから楽なもんだよね。どのドローンにも360度カメラと投光器が据え付けてあって、隠れる場所は何処にも無い。
でも、どういう訳かあいつは隠れたんだ。泥の中を這いずり回ること数時間、ちっぽけな石人形に化けたのをようやく見つけ出した。厳重に管理した場所に入れるまで、しっかりカメラで監視しておいたよ。
ブラント博士: 民間人にしては驚くべき手際の良さですよ、マクガラーさん。過去に異常な存在との交流経験があったのですか?
ビリー・マクガラー: いや。番組ではプロの罠師を演じてるけど、あれは全部でっち上げなんだ。子供の頃、叔父さんに連れられてマットと一緒に狩りに出かけた時、リスを何匹か罠に嵌めたくらいかな。番組に出演してるのはマットが是非ともって言うから、それだけ。楽に稼げるって話だったしね。科学の知識は必要ないし、ただ髭を生やしてビッグフットとかの取り留めもない話をすればいい。当時の僕は無職でお金も必要だったから、それじゃあ、って受けたんだ。
でも、この種の生き物が実は本当に居るんだって分かったのはとてもクールだと思うよ、まさか実際にあんな物を目撃できるとは思わなかった。君たちはいつもこういうのを相手にしてるのかい? 素晴らしい仕事だろうね。
ブラント博士: お察しでしょうが、財団の業務の詳細は開示できませんし、この実体は素晴らしいというより忌まわしいと言う方が当たっていると思いますね。ところで、これはどうやら特にあなたとお兄さんだけに惹かれているようですが、その理由などは分かりますか?
ビリー・マクガラー: 断言できないけれど、疑わしい事件はあったよ。“キャッチャーズ”みたいな番組はとにかく奇人変人を大勢引き付ける。中でも特に目立ってた人がいたんだ— マットの本のサイン会に来た、ゴスっぽい恰好をした赤毛の女の子。確か会場はポートランドだったかな。
その子は本当に怒っていてね、僕らを“偽預言者”と呼んで、盲目であることを選んだ人たちは確かに悪いけれど、僕らは物質的な富のために信じるふりをしているから尚悪い、と言った。ちょっと心に刺さったよ。僕はよく、“キャッチャーズ”は本当に無邪気な面白番組で済んでいるのか、実は不思議な物事を信じている誠実な人たちを笑い者にしているんじゃないかって考えるんだ。
それと、もし僕らが本物の怪物を見たら面白いとは思わないだろう、みたいな事も言ってたな。ああ、彼女は正しかったよ、あんなのを目にした今となっては、番組に復帰するのは難しいもの。
ブラント博士: その女性は名乗りましたか? 連絡先や、身元が分かる情報などは?
ビリー・マクガラー: うーん… いや。思い当たる節が無いな、すまない。
ブラント博士: ありがとうございます、ビリー。今回はこれで終わりとします。
<記録終了>
結: 一定期間の調査の後、ビリー及びマット・マクガラー自身には異常性が無く、更なるSCP-5774関連情報を持たないと断定された。彼らは後ほど解放され、グレードIIIの財団監視下に置かれた。
目撃者としての信憑性が低く、異常現象について最小限の知識しか持たないため、マクガラー兄弟の記憶処理は不要と判断された。2人を脅迫した女性はPOI-5102に指定されており、所在地と身元を特定する努力が進行中である。