アイテム番号: SCP-579-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-579-JPは滅亡または消滅し、今は存在していません: 関連する記録や情報も全て破壊されました。
全職員は、上記の事実を認識・記憶しておかなければなりません。その上で、混乱を避けるため、SCP-579-JPに関する情報の口外や記録等はいかなる内容であれ(無根拠な推測、噂も含め)禁止します。許可なき情報の所持、そして流布を行った者は、追跡、特定、拘留され、レベル4/579-JPの情報漏えい罰則を処されます。
更に、後述の説明は虚偽の内容となりますが、全職員はその内容をよく読み、それが虚偽である事を含めて認識しておかなければなりません。
これらの内容は今後も徹底して行われ続けなければならず、そのため、SCP-579-JPのオブジェクトクラス: Neutralizedへの再分類は行われません。
虚偽の説明: SCP-579-JPは人型の生命体です。人間の8分の1ほどしかない大きさにかかわらず、SCP-579-JPは器用に手足を動かし、立って歩き、言葉を話し、文明を築きました。
SCP-579-JPについての正しい知識を持たない人間がSCP-579-JPを見ても、戯画化された、物言わぬ不動の人形にしか見えません。そのような人間は、持ち上げたSCP-579-JPが脱出しても「人形」はそこにあると思い込み、やがてそれをどこかに置いて、忘れ去るか、「無くした」と判断するでしょう。
SCP-579-JPの姿や振る舞いは人間と同じに見えますが、その本当の意味を理解することは、人間の価値観では不可能です。人間は、人間と関与(交流)する能力を犠牲にする事でSCP-579-JPとの深い交流が可能になります: これまでに、以下のような影響が人間にもたらされることが確認されています。
SCP-579-JP-甲: SCP-579-JPの「人形」でない顔を見た人間は、人間に対する相貌失認を発症します。SCP-579-JPの写真やある程度以上写実的な絵画であれば、SCP-579-JPを正しく知覚できない人間でもその顔を戯画化せずに認識でき、同様に相貌失認を発症します。
SCP-579-JP-乙: SCP-579-JPの言語で会話が可能になった人間は、人間に対する言語障害に陥り、あらゆる人間の言語の再教育が不可能になります。また、SCP-579-JPを正しく知覚できるか否かにかかわらず、SCP-579-JPの文字を読んだ人間は、人間の文字に対する文字認識能力を失います。
SCP-579-JP-丙: SCP-579-JPは現在の人類が一般的に用いる数字に、未知の数字を1つ加えて計算を行います。乱暴に言えば、人間にとっての2進法はSCP-579-JPにとっての3進法、人間にとっての10進法はSCP-579-JPにとっての11進法になるという事に近いですが、実際にはそれは正確ではありません。
SCP-579-JPの計算法を理解した人間は、人間の数学を使用できなくなります: 人間の数学に基づいた金銭の勘定、時間の計測等を行うと、必ず計算間違いをするようになります。そして、いずれ、身の回りの計算をSCP-579-JPの方法で行うようになるでしょう。普通の人間はその計算「結果」については整合性のあるものとして認識できますが、途中式は理解できません。更に、その計算に使われた紙や筆記具などの道具は、人間の計算に用いる事ができなくなります(精密機械も例外ではありません)。
かつて日本人は、特定の人間を口語のみか筆談のみでSCP-579-JPと交流させる事で、常に人間の先を行く文明を持っていたSCP-579-JPの技術や知恵を手に入れていました。しかし、この日本人とSCP-579-JPとの関係は、下記をきっかけに終わりを告げました。
SCP-579-JP-丁: SCP-579-JPは、我々人類が発見して「原子」と名づけたものが、どの種類においても、SCP-579-JPが知る原子に対して、大きさ、そして質量がそれぞれ約8倍となっている事に気がつきました。SCP-579-JPの炭素原子が我々人類にとっての炭素原子と同じ大きさになるにはおよそ8の3乗(8個分の縦×横×奥行き): 512個分の数量が必要ですが、その時の質量は8分の1の512倍: 我々の炭素原子の約64倍の質量になります。
「SCP-579-JPの計算が」正しければ、我々人類の身体は自重によって崩壊する事を、SCP-579-JPは知りました。
過去の事例より、この科学的事実が我々人類へと反映される可能性を危惧したSCP-579-JPは、この事実を知らないSCP-579-JPの個体を通して日本人へ以下の内容を打診し、それは受諾され、実行に移されました。
日本中に、次のような誤情報が流布されました:
- 一般の人間には、SCP-579-JPは架空の存在であると強く信じさせる通念が与えられました。
- SCP-579-JPを学術的に追求しようとする者達には、SCP-579-JPが同じ人間の少数民族だったとする学説が、現代科学では見抜くことのできない偽装を施した証拠品とともに提示されました。
- SCP-579-JPと交流していた人々や、財団のように異常な存在を取り扱う組織や人物には、SCP-579-JPが人間に滅ぼされ、絶滅したというカバーストーリーが可能な限り伝えられました。
情報の流布は成功し、SCP-579-JPを正しく知覚してその影響を受けてしまう人間は、殆どもしくは全く見られなくなりました: 「正しい知識」が無ければSCP-579-JPを正しく知覚できないという状況は、SCP-579-JPの知識が無い場合だけでなく、「正しい知識」が誤情報を追記・上書きされ、歪められた場合でも成立します。SCP-579-JPは記憶の消去よりも確実かつ強固にSCP-579-JPの知覚を防ぐ手段として、この情報の流布を考案し、それは期待通りの効果をもたらしました。
この試みは財団が日本での活動を開始する以前に行われ、当時、情報の流布は蒐集院が担当していました。財団が蒐集院を吸収合併した際、SCP-579-JPの取り扱いもまた、財団へと引き継がれました。
こうしてSCP-579-JPは森の奥深くや土の中等の人目のつかないところへ潜むようになったか、もしくは今も我々人類が認識しないだけで、すぐそばにいるかもしれません。SCP-579-JPは人間の言葉で著したSCP-579-JP-丁の理論をインターネットに流す等により、ごく簡単に我々人類の数を減らして住処を広げる事ができるはずですが、どうしてそうしないのかは分かりません。かつてSCP-579-JPは我々人類を巨大な神として崇拝していたのか、それとも常識を超えた珍獣として評価していたのかといった事も、全ての情報が収容(隠ぺい)された今となっては不明です。
いずれにせよ、日本人、ひいては人類は、今もSCP-579-JPに保護されている状況下にあります。
補遺579-1: ここまでが特別収容プロトコルです。SCP-579-JPの真の内容は公開されません。