SCP-5877

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西安飛行機事故

アイテム番号: SCP-5877

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 身元情報の記録された全人物の集積ハブを維持するため、世界中の出生記録データベースが定期的に財団サーバーにコピーされます。

以下のいずれかの条件が満たされるまで、あらゆる人物をSCP-5877実体と想定するのが財団のプロトコルです。

  • 該当人物が写真身分証明を作成する
  • 該当人物がウェブを基盤とするアカウントを有していると確認される
  • 該当人物が財団実体データベースのエントリと一致していることが確認される

回収されたSCP-5877実体は民間人として扱われ、記憶処理を施されて社会に復帰させられます。

説明: SCP-5877は人間に類似した実体の総称です。それ以外のあらゆる点で通常の人々と同一であるものの、実体は以下の特徴を共通して有しています。

  • SCP-5877実体の起源は、あるとしても不明である。
  • SCP-5877実体の身元は、あるとしても不明である。
  • SCP-5877実体には、以前に存在していた記録がない。
  • 2007年まで、回収された全てのSCP-5877実体は死亡していた。

SCP-5877実体は潜在的にGoI-006("何者でもない")に所属する可能性が高くなっています。

財団が発見したSCP-5877実体の大多数は回収時点で死亡しています。これらの事例の相当数が、識別不可能なほど損傷した非異常の人間と区別できないことが認められています。しかし、SCP-5877実体について顕著な事例があり、これにより財団は全体的な現象を異常と分類しました。そのような事例の一部は以下の通りです。

日付 出来事 正常性への侵害
1970/05/16 カリフォルニア州レッドランド、メープルストリートにおいて、住宅14軒が全焼した。 住宅からの避難は成功したと記録されており、行方不明者は2名に留まった。しかし災害対策チームが住宅の残骸を検査したところ、住宅跡から60体を超える遺体が発見された。遺体は主に寝室か、焼けたマットレスや毛布付近で発見された。
1984/11/14 ダブリンの病院で双子が死産した。 以前の母親の超音波画像には、子供が一人しか映っていなかった。
1996/08/22 西安発上海行き40014便が墜落し、乗客が全員死亡した。 フライトの旅程に記載されていた全員が確認された一方で、墜落現場付近で更に30名の身元不明の犠牲者が発見された。これらのSCP-5877実体は、身元の確認された乗客の上で座席に縛り付けられているのが発見された。

生きたSCP-5877実体の回収: 当初、SCP-5877は死体のみに関わる現象として記録されていました。2007年、生きたSCP-5877実体らが、多くは集団で発見されました。それ以降、財団は3度生きたSCP-5877実体を発見しています。

日付: 2009/05/14

実体番号: 54

回収: 財団リソースは、テキサス州の採石場における、兵器化可能な異常物質を回収する採掘作業に関する多数の噂を耳にした。初期調査では噂を裏付ける顕著な情報は見つからなかったものの、超常テロの脅威への嫌煙から採石場の強制捜索が実行された。

強制捜索では異常物質は発見されませなかった。しかしながら、採掘作業は認可されておらず、かつ採石場での寝泊まりを強制される奴隷労働を用いており、違法であった。労働者への尋問と処理の結果、彼らは全員SCP-5877実体であると判明した。

注意すべき点として、エージェント タイラー・マリズは、強制捜索後に幼い少女に遭遇し、彼女がこの出来事を採石場の外から見て、明るいピンク色の日記にメモを取っているように見えたと報告した。マリズに訊ねられると、彼女はSCP-5877実体と同様に振る舞い、輸送車へと護送されて財団サイトに連れていかれたはずであった。しかしながら、この少女は最終収容報告書には記載されていなかった。確保を逃れる性質と観察を行う性質1から、その少女はGoI-006("何者でもない")との関連を有する可能性があるという説が提唱された。加えて、少女に関する個人記録が存在しないことから、彼女はSCP-5877実体に分類された。

これらのSCP-5877実体の処理の後、アイデンティティ関連のアノマリー及び何者でもないとの接触に対処するため、機動部隊シータ-15("ネームタガー")が設立された。採石場強制捜索の人員が最初のシータ-15隊員として選抜された。

日付: 2013/07/22

実体番号: 74

回収: ルイジアナ州で暴風雨の中機動部隊シータ-15が"何者でもない"2を尾行していた際、定員に達したホームレス保護施設に遭遇した。保護施設内部の、及び外部で立入を要求する多数の人物は自身の身元を判断できず、財団記録にも一致はなかった。

シータ-15は、ホームレスの一部を新たな保護施設に移送するために公共交通機関を使用するというカバーストーリーの下、財団輸送機関を要求した。作戦は急ピッチで行われたため、少数のSCP-5877実体が適切に回収されなかったと考えられている。しかしながら彼らの立場上、これはヴェールの維持に重大な影響を及ぼしていないと考えられた。

日付: 2018/12/12

実体番号: 37

回収: 財団職員は、ルーマニアにある単一の児童養護施設から名前のない養子を迎えた夫婦に関する多数の内部情報を受け取った。養子縁組プロセスは参加者から「シンプル」かつ「カジュアル」と評された。3

エージェント・マリズは機動部隊シータ-15を率いて、人身売買の可能性を調査するという名目で児童養護施設を調査した。調査の際に抵抗されることはなかった。回収された全てのSCP-5877実体は16歳未満だった。成人のSCP-5877実体や非異常の人間は発見されなかった。

回収されたSCP-5877実体は児童養護施設の所有者を若い女性と説明し、幼い実体は「お姉ちゃん」ないし「ミス」と呼び、それより年上の実体は単に代名詞でのみ呼称した。これは現在、以前の回収に関連した何者でもないのメンバーと同一人物であると考えられている。

回収された各SCP-5877実体は、記憶処理が施され、名前と個人の経歴が与えられ、財団内部データベース及び関連する政府システムに記録されました。

"何者でもない"の捕獲: 2023/07/18、コロラド州ロングモントのコールド・ストーン・クリーマリーで強盗が発生した後、何者でもないが収容されました。機動部隊シータ-15は付近のホテルまで"何者でもない"を追跡し、そこで抵抗されることなく拘束しました。"何者でもない"GOI調整官兼国際情勢スペシャリスト兼SCP-5353プロジェクト主任である機動部隊シータ-15隊長タイラー・マリズは、SCP-5877に関して"何者でもない"へのインタビューを許可されました。

何者でもない: こんな人気者になったのも久しぶりな感じ。

マリズ: 何故大人しく捕まった?

何者でもない: ちょっとちょっと。頭でっかちでもおしゃべりくらい楽しむもんだよ。

マリズ: こっちはウン十年とお前を追いかけてきて、捕まえられたのは初めてだ。それも、アイスクリームケーキ一つのために適当にガラス割ってぶんどってきたなんてことで。お前は理由があってここにいる。

何者でもない: おー、そこで前にあなたの顔見たんだ!

マリズ: それで私のことがわかるのか。

何者でもない: ぼんやりとだけどね。顔を覚えるのは得意だけど、名前はそうでもないから自己紹介はほしいな。名前も知らない相手と喋るのはだいぶ難しいからね。

マリズはため息をつく。

マリズ: わかった。私はタイラー・マリズ。

何者でもない: 何か積もり積もった怒りみたいのを感じる。こんな長くあなたたちのことを避けてきたことにイライラしてる?

マリズ: お前は50年前に私の母親に噛みついた。物理的にな。

"何者でもない"は驚く。

何者でもない: えっと…… まず最初に、わたしはそれを覚えてないけど、第二に、50年前にわたしが取ったかどうかもわからない行動で今現在のわたしを判断するのはあんまり寛容な考え方じゃない。

マリズ: お前の第一印象は最悪だ。

何者でもない: それは私だったかもしれないけど、今ここに座ってるわたしとは別物だよ。

マリズ: 話題を変えているな。何故お前はここにいる?

何者でもない: わたしが全部話すなんて期待してないでしょ。それの何が楽しいの?

マリズ: オーケー、わかった。じゃあお前の手の者はどこだ?

何者でもない: うん? わたしの手の者?

マリズ: お前を見かけるたびに、毎回お前みたいな人々が周囲にいた。名前も、身元も、身体以外に何も持たない人々がな。お前のように。

何者でもない: 正直言って、失礼なフィールドエージェントが今日一番興味深い質問をしてくるとは思ってなかった。

マリズ: 話を逸らすな。

何者でもない: わかったわかった。あなたに教えるのはすごい簡単だけど、できない。

マリズ: その理由はあるか?

何者でもない: ルール違反だから。

マリズ: クソくだらなくない理由はあるか?

何者でもない: 何でわたしがあなたたちを導くだけで何も教えないのか疑問に思ったことはある? あるいは、何でわたしが実際に何かしてるのを見たことがないのか? でもあなたもわたしも、わたしが事を成してるのは知ってる。私は世界のハンディマン便利屋みたいなものだね。今回は、ハンディウーマンって言った方がいいかな。

マリズ: それのどこが理由なのか見えてこないな。

何者でもない: 最高の管理人は、オフィスをきれいに保って、決して散らかってるところを見せない。正気な人なら、配管工がパイプを修理してるときにそれをじっと見つめたりしない。もしわたしが仕事してるのを見られたら、わたしはあんまりいい仕事をしてないことになる。そしてもしあなたに屋根瓦の交換方法を教えたとして、あなたは自分でもできると思うだろうけど、結局家から落ちて首の骨を折る結果になる。それがハンディマンのルール。

マリズ: これが今日お前から引き出せる一番まともな説明か?

何者でもない: 今日他の誰にしたよりもずっとわかりやすい答えだよ。少しくらい感謝見せてくれてもいいんじゃないかな。

マリズ: 失礼する。

回収されたアイテム: 回収時、"何者でもない"は以下のアイテムを携行していました。

  • .45口径のグロック30。シリアルナンバーは削り落とされている。
  • スイスアーミーナイフ。長刃、短刃、缶切り、ワイヤーストリッパーはいずれも酷使により摩耗している。スクリュードライバーは先端が尖っており、血が付着している。
  • レザージャケット。過去90日間洗濯されていないように見える。
  • IHOP4のポイントカード。
  • ポケット日記。ページのほとんどは破り取られている。残りの記入事項を以下に示す。

激変#TG-442, 7/14

激変場所に到着。街はあまり変わってない

激変原因: 保留ルール1違反

群衆#551のサイズと集まりのせいでルール1違反が差し迫ってる。サイズも自然復帰を妨げてる。介入が必要っぽい

現在の追跡者: SCP、白服

激変#TG-442, 7/15

今のメッセンジャーはぼろぼろの状態で動いてるから代わりが必要、できればふさわしい貯蔵庫。

近くの公園に群衆が広がってた。地元住民も注目してるけど今は何かのサマーキャンプだと思ってる。夜更かししてるのが何か聞いてこないか心配

特に混乱イベントはなかった。まだ

追跡者: SCP、白服、イングルウッド夫人(まだここに住んでて驚いた)

激変#TG-442, 7/16

メッセンジャーは分解し始めてる。ルール1違反が再発しないか心配

群衆#551に集まる白血球。高速道路33号での自動車事故は混乱イベントの可能性が高い。ほぼ誰もあの道を走らないから、2台が正面衝突したとは信じがたい

ルール4を破らずに群衆を一時的に隠さないと

追跡者: SCP、白服、イングルウッド夫人

激変#TG-442, 7/17

2日間白服の気配がない。振り切ったなんてことは絶対ないはず。すぐに干渉してくる疑いあり

イングルウッド夫人との直接の交流は成功した。ルール4克服

イングルウッドさんは群衆#551を納屋に保管することに同意してくれた。公共交通とイングルウッド夫人のトラックを使って群衆を移送。バスが許されることには驚いたけど、でもやっぱり運転手は変なものを見たかな

混乱イベントの激化が心配

今は大規模な社会復帰の手を検討中。フェイルセーフがいるかも

追跡者: SCP、白服、イングルウッド夫人

激変#TG-442, 7/18

十分な情報を収集できた

激変予想日: 5/21 5/22

今の障害: 服の介入、メッセンジャーのスタミナ、ルール4、ルール1違反が再発しないようにする

リソース: ノート、スイスアーミーナイフ、.22口径(弾は3発)、つながり

目立った混乱イベントが起きてないのが心配だけど、アイデアももらえた

PoI-006("何者でもない")資料レポート

"何者でもない"の日記に残されたメモを調査した結果、"ミリアン・イングルウッド"という人物の住居を突き止めることができた。また数日前には、多数のホームレスがロングモントから、イングルウッド夫人の住居から3マイル離れた停留所まで移動していたという報告も見つかった。経歴を辿れば、この群衆はSCP-5877実体群である。

問題は、"何者でもない"にはトリックとペテンの前歴があることだ。奴が我々を引っ張り回すのはこれが最初ではないだろう。このメモは我々が見つけるよう残したのではないかという疑念がある。何かが仕掛けられている気がする。だが何か仕掛けられているとして、何故リソースとしてのノートに注意を向けさせた? 誰であれ当然内容を疑うだろうに。

こうした懸念から、追加情報を得るために"何者でもない"へインタビューを追加で行った。転写は以下の通りである。


何者でもない: こんにちは! ねえ、もうあなたと喋れないんじゃないかとちょっと心配してたよ。

マリズ: お前のメモには「激変」のことが書かれていた。これは何だ?

何者でもない: いきなり本題に入るんだね。

マリズ: いいから質問に答えろ。

何者でもない: えっと、自明のことだと思うけど。激変は悪いこと。

マリズ: もっと具体的に行こうか。激変が起きたらどうなる?

何者でもない: わかんない。

マリズ: 知らないと?

何者でもない: 私の仕事はそれを止めること。激変中に何が起きたのか知ったらそれはルールを破ったことになる。

マリズ: またルールに逆戻りか。

何者でもない: 何か問題でも?

マリズ: 説明を拒否して自分の無知を正当化している。雑な戦術だ。

何者でもない: わかった、ヒントくらいならあげる。物理学みたいに考えて。実際にその部分部分を理解してるわけじゃないけど、多分何かに基づいてはいる。

マリズ: また話を逸らす! 激変を止めるためにもこれが何なのか教えてもらう必要があるんだ。

何者でもない: あら、自分で干渉するつもり?

マリズ: お前にさせるわけにはいかない。

何者でもない: なるほどね。まあどうにかしたいなら、群衆を丸ごと終了してみてもいいかもね。

マリズ: 何だって?

何者でもない: まあ、後片付けは必要だけど、でもうん。それで上手くいく。

マリズ: ……はあ。

何者でもない: 何を期待してたの?

マリズ: 別に。それは…… 大胆な要求だな。

何者でもない: そう? 今更?

マリズ: まあそれで、お前のメモには、明らかに激変の結果と結びついてる「混乱イベント」なる言葉が何度も書かれていたが、何が起きるかの手掛かりは全くないとお前は言った。そしてお前のメモへの自惚れっぷりを考えると、激変の影響を粉飾するために後からこの文を追加したのだろうと考えてしまう。あるいは激変は存在すらせず、指定の日に我々がターゲットの家に現れるのを望んでいるというだけかもな。

何者でもない: じゃあ行かないの?

マリズ: 最後まで聞け。何故なら今、お前の激変についての発言を真に受けてたら、お前はただ…… 彼らを撃てと言った。もし私が本当にお前の言葉を額面通りに受け取ってたら、お前はあの人々に死刑宣告することになる。だがお前は、私が本当にお前のことをもう信じているとは考えていない。お前はそれを当てにしてる。

何者でもない: これ全部をわたしに説明した理由は?

マリズ: もし私が行間を正しく読めていなければ、もっと介入してきたはずだ。私の発言にもっと疑念を投げかけてきただろう。だが…… これがお前の逃亡に繋がることはない。巨大な罠に繋がることはない。せいぜい、数体のアノマリーとこちら側の少数を無力化するだけだろうが、事の大きな計画においてはそんなのは何にもならない。

何者でもない: それすなわち?

マリズ: 我々の利害は一致するかもしれない。

"何者でもない"はクスクスと笑う。

何者でもない: 嬉しくなさそうだね。

マリズ: お前は我々を助けるようなたちじゃなかっただろ。

何者でもない: それは自己中心的な見方だね。

マリズ: だったら詳しく述べてもらおうじゃないか。

何者でもない: 今度はわたしが仮説を想像してみる番だね。今、世界には70億人、でいいよね? の、人がいると信じている。もし実は80億人いました、なんて言ったら。道ですれ違ったり、地下鉄で見かけたり、レストランで近くに座った人の8人に1人が行方不明。本当はここにいるべきじゃない。世界にある身体の数が名前の数を超えてる。どうやって実際に知ったらいい?

マリズ: 更に10億人を維持できるほど充分なリソースは生産していない。

何者でもない: うんわかった。ちっちゃなことにこだわるもんだ。じゃあ10万人としよう。正直どうあがいても10億には届かないと思ってる。それはルール違反だね。

マリズ: 実際にルールを強制しているものはあるのか?

何者でもない: はっきりしたのはないけど、それが激変の原因とは考えてる。

マリズ: ルールを破ったペナルティとして?

何者でもない: わたしはそれを不正の埋め合わせというよりも…… この宇宙と考える方が好きかな。でも罰は逃れられる。群衆が一つ死んだところで誰も気にしない。世界から見て、それはただのいち死体に過ぎない。銃の乱射で10人死のうが20人死のうが有意な違いはないって知ってた? 数が大事になるのは、犠牲者に名前があって、生きてて、世界の他の部分とつながりがあるときだけ。名前のない人を殺すのはずっと簡単。

マリズ: それがお前の目的か? そういう人々を…… ルールから守ることが?

何者でもない: 「何者でもない」って呼ばれる人が名無したちの救世主だと、群衆を新たな人生に導いてると想像するのってそんなに難しい? 従うべきルールはあるけど、結局のところ、私の望みは彼らにちゃんとした名前を与えて、ちゃんとした人生を送れるようにすること。幸い、名前は安いから。唯一の注意事項は、名前を与えなきゃいけないこと。そしてまあ…… どう見ても、今の私じゃ名前を与えられない。

マリズ: そこで我々を引き連れて、こっちで彼らに新しいアイデンティティを与えて社会に再統合しろと。

"何者でもない"はニヤリと笑う。

何者でもない: あなたがわたしに割り当てられてどんなに嬉しいことか。

マリズ: あぁ、本ッ当に全くだよ。

インシデント5877-I: 2019/09/21、機動部隊シータ-15はイングルウッド邸からSCP-5877実体を回収するために配備されました。以下はイベントの時系列です。

<19:14> シータ-15はイングルウッド邸に到着する。チームは"ピューマ"と"クーガー"の2グループに分かれる。

<19:16> ピューマは母屋の入口をノックし、クーガーは家から約100m離れた納屋に向かう。

<19:17> イングルウッド夫人が扉を開ける。彼女は目に見えて動揺して見える。ピューマの隊員は訪問販売員として自己紹介し、招待を待たずに家に入る。

<19:19> クーガーは納屋に到着する。隊員はSCP-5877実体の存在を確認するために赤外線ゴーグルを着用する。32の異なる熱源が存在する。内部の人数に対して、納屋は異常に静かであることに注意。

<19:19> イングルウッド夫人は、こんな遅くに訪問者を入れることを夫が好まないとして、ピューマに退出を要求する。イングルウッド夫人は6年前に夫と離婚し、一人暮らしであったことに注意。

<19:20> クーガーは納屋の扉を開ける。中には31体のSCP-5877実体と、白服を着た男性(以降PoI-5877)が存在する。PoI-5877は若いSCP-5877実体を抱え、その頭に銃を向けている。

<19:20> クーガーの隊員はPoI-5877にSCP-5877実体を解放して銃を下ろすよう要求する。PoI-5877は返答として"何者でもない"の場所を教えるよう要求する。クーガーは情報を明かすことを拒否する。

<19:21> イングルウッド夫人はピューマを家から追い出そうと必死になり、隊員の一人を鍋で攻撃する。イングルウッド夫人はその後拘束され、「ここにいたらあいつに殺される」と叫んだ後、鎮静剤を投与される。

<19:21> PoI-5877は人質に銃を向けたまま、悪態をつき始める。クーガーは再度PoI-5877に投降を要求する。PoI-5877は人質を盾にして、納屋の後方の扉まで後退する。出口から出た後、一発の銃声が聞こえる。他のSCP-5877実体は叫び出す。クーガーは出口まで駆けると、銃創で無力化したSCP-5877実体が地面に倒れているのを発見する。

<19:22> ピューマはイングルウッド夫人の記憶処理を完了する。

<19:23> クーガーは財団の輸送機関がSCP-5877実体を回収しても大丈夫だと合図を送る。

インシデント後、30体のSCP-5877実体はサイト-23まで移送され、標準人型実体収容ロッカーに収容されました。5/23に記憶処理と再統合の準備が開始されました。

インタビュー5877.2: PoI-5877の予期せぬ存在のため、エージェント・マリズは予期せぬ敵対者について尋問するため"何者でもない"との追加のインタビューを手配しました。

<記録開始>

マリズ: あれはいったい誰だ?

何者でもない: あんまりいい挨拶の仕方じゃないね。

マリズ: 白服を着たあの男だ、何であそこにいた?

何者でもない: まあ、彼は計画の一部だったんだよ。

マリズ: 何故教えなかった?

何者でもない: あなたたちはとってもよくやってたから、見逃してるとこを指摘したら気が悪くなると思って。

マリズ: お前の仲間が一人殺されたんだぞ!

何者でもない: 大きな計画の前には少数が死んでも大したことはないって言ったのあなたじゃなかったっけ?

マリズ: お前の問題だろ! お前はそれを気にもしない。

何者でもない: あぁ、まあそうだね。でも本当に知りたいなら、あの男があそこにいたのは、彼がわたしをここから出してくれる手段だからなんだ。

マリズ: いや。信じられない。

何者でもない: この命にかけて誓う。

マリズ: お前は私をからかっている。

何者でもない: そうだけどだからって嘘ついてることにはならない。

マリズ: じゃあ何故私に教える?

何者でもない: それが次のターンを始める方法だから。

マリズ: 違う。

何者でもない: 違う…… 何が?

マリズ: お前が出ていくことはない。また日の光を見れれば幸運だろう。この「ゲーム」は馬鹿げている。お前は自分の計画を話している。当然私は止める。

何者でもない: でもそれも問題なんだよ。あなたには止められない。わからない? 全部計画の一部なんだよ。わたしの計画についてあなたが知ってることも計画の一部。わたしへのインタビューにかける一秒一秒は、他の何かを遅らせる一秒一秒でもある。あなたのアカウントにメールが届くのを待ってる。実験用のサルが化学薬品を持ってくるのを待ってる。独房の外は見えないけど、足音、カートのタイヤのきしむ音、警備員のおしゃべりは聞こえる。わたしがここまでやってきたことは完璧に計算されてる。

マリズ: ……イカサマだ。

何者でもない: もう一度言ってくれる?

マリズ: イカサマだ。そんなことを言うのは許されない。起こったことは全て計画の一部だと主張してるが、私には証明できない。ルール違反だ。卑怯者の動きだ。

何者でもない: ルール違反なら、わたしは言えてないはずだよ。

マリズ: ならハッタリということだ。

何者でもない: かもね。でもドアの向こうでサイト-23がまだ無事だって確信度は変わった?

マリズ: どうやってその名称を知った?

何者でもない: 良き配管工は居住者よりもよく家を知ってる。

マリズ: またハンディマンの話か?

何者でもない: イライラさせたようでごめん。

マリズ: 思ってもないことを。

何者でもない: あなたのことは気に入ってるよ。本当に。あなたのお母さんを思い出す。あなたはできる限り目を離さないようにして、自分にわからないことをよく把握してる。でも今日は、疑ってもらいたい。わたしの証人になってほしい、けど用心してね。

収容違反警報が鳴る。

マリズ: 何— お前がやったのか?

何者でもない: 当然違うよ。わたしはここにいる。あなたと話してる。

マリズは扉から顔を出し、警備員を止めようと手を振る。

マリズ: SCPの護送が必要だ! これを独りにはさせられない!

何者でもない: でもね博士、場合によってはあなたも違反現場にいたかもしれないよ。何かを実行してたり、何かの手順を観察してたりしたかも。

マリズ: 喋るのをやめろ! ここから二人とも脱出しようとしてるんだ。

何者でもない: そんなに心配しすぎなくていいよ。どっちにしろわたしはもう出るとこだから。

マリズ: 何だって?

何者でもない: 女の子の面倒は見てあげて。よくやってくれたよ。

インシデント5877-IにおけるPoI-5877が拳銃を振り回しながらインタビュー室に入る。マリズは地面に身体を落として自分の銃に手を伸ばす。マリズの向かいに座っているSCP-5877実体が叫ぶ。

マリズ: お前は誰だ?

PoI-5877: それはいい。あれは誰だ?

PoI-5877は叫んでいるSCP-5877実体を指す。

マリズ: お前は誰なんだ?

PoI-5877: 今日に関しては私たちは同じチームだ、約束するよ。知りたいのは、あれを認識できてるかどうか。

SCP-5877実体: お願い、どうか殺さないで。撃たないでください。

マリズはすすり泣いているSCP-5877実体を見る。

マリズ: 待て…… ついさっきまで"何者でもない"がここにいたはず。

PoI-5877: 見えてないのかい?

マリズ: あぁ。さっぱり。

PoI-5877は銃を下ろす。

PoI-5877: クソ。

間。収容違反のサイレンの中、マリズはとPoI-5877の深呼吸の音が聞こえる。SCP-5877実体は発言を止めるが、鼻をすする音が聞こえる。

マリズ: [PoI-5877に向かって] お前が激変か?

PoI-5877: 何だい?

マリズ: "何者でもない"、奴がいたとき…… 激変だかなんだかと言ってた。宇宙のルールを強化するとか。お前のことを言ってたんじゃないかと。

PoI-5877: さあ、あの怪物を追い続けて一世紀、「激変」なる言葉を使ったのは聞いたこともない。

マリズ: ……畜生。

PoI-5877はインタビュー室を出て、後ろ手に扉を閉める。マリズはゆっくりと立ち上がり、椅子に座り直す。収容警報が鳴り続ける中、心拍を落ちつけようとする。

SCP-5877実体: 大丈夫ですか?

マリズ: 馬鹿にされていた。だが、それ以外は大丈夫。けがは?

SCP-5877実体: いえ…… でも助けが欲しいです。

マリズ: どんな助け?

SCP-5877実体: わ— わかりません。周りに助けてくれる人がいるから、独りになることはないと言われました。それでもう一人の人はどこかに行ったんです。だからきっとあなたのことです。

マリズ: なるほど。多分、そうかもな。君を助けるよ。

SCP-5877実体: ……ありがとうございます。

マリズ: まだ何もしてないけど。

SCP-5877実体: はい、でも…… 申し出てくれる人も、誰もいなかったnobodyので。

<記録終了>

収容違反は、SCP-████の実験中にエネルギー収容措置に致命的な不具合が生じたことが原因と断定されました。この不具合の正確な原因は不明であり、利用可能な文書には、その日の前の時点で措置が予備実験に合格していたことが示唆されています。結果として生じた爆発により40名の犠牲者が発生し、うち3名は財団スタッフ、7名はDクラス職員、30名は回収されたSCP-5877実体でした。

PoI-5877は後にSCP-5353と特定され、爆発によって発生した収容違反中にサイト-23に侵入したものとほぼ断定されています。彼の口頭での報告によると、施設を出る前に瓦礫の下敷きになっていた数名の財団職員を救出しました。

この出来事の後、生存者の正式調査において数名の管理スタッフがの数が用務員予算で示されるよりも少ないことが判明しました。しかしながら、用務員個人が行方不明となった記録は発見されませんでした。


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