
マクスウェリズム教会に押収される前のSCP-5984。
特別収容プロトコル: SCP-5984はその大きさ、能力、ポップカルチャーの架空のキャラクターとの類似性によって、ヴェールの保全に対する深刻な脅威を呈します。このため、倫理委員会と監督評議会は、プロトコル・サーキットブレーカーの実装を合同で承認しました。
確保に成功した場合、SCP-5984は武装聖遺物収容エリア-02に移送されます。具体的な収容対策は現在、HMCLの承認待ちです。
説明: SCP-5984は身長6.5mの自律生命体であり、パラマウント・ピクチャーズが実写映画化した“トランスフォーマー”に登場するオプティマス・プライムに外見上類似します。本来SCP-5984は異常性を持たず、当時のシリーズ最新作だった“ダークサイド・ムーン”を宣伝するためのモデルとして使われていました。しかしながら、現在未知の手段でマクスウェリズム教会に取得された後、SCP-5984は当初の目的を逸脱する広範な改造を施されています。これらの改造には以下が含まれます。
- 機能性の無い関節部の、多関節タングステン合金鋼への置換
- 身体の様々な部位を補強するチタン合金装甲
- 機能的なレーザー及びプラズマ兵器(肩部の大砲や背面部の“イオンブラスター”レプリカなど)
- 俳優ピーター・カレンに似た声で発話できるアシモフ-クラス人工知能の搭載
SCP-5984の主な目的は、マクスウェリズム教会やそのフロント組織をネオ-ナルカの攻撃から防衛することであり、記録されている██回の小衝突における防衛成功率は平均98.5%です。SCP-5984の武装のために、これらの小競り合いは例外無く大規模な付帯的被害と死傷者を伴い、高額な費用のかかる事後処理と偽情報活動を必要とします。民間人がいる地域では、SCP-5984は砲撃を控えるか、もしくは兵器の使用を最小限に抑えて、精密な近接攻撃を多用する傾向があります。
機能性のある車輪が下半身に存在するものの、恐らくは質量保存の法則の都合上、SCP-5984には“車両モード”に変形する能力がありません。従って、SCP-5984の移動は徒歩か、マクスウェリスト工作員による遠隔テレポーテーションシステムの起動によります。
通常の兵器はSCP-5984に対して表面的損傷以上の影響を殆どないし全く及ぼしませんが、電磁パルスは一時的にSCP-5984を抑制できます2。SCP-5984は電磁パルスを緩和するための対策を徐々に複雑化していますが、これは財団の交戦記録において最も一貫した成功率を有する一時凌ぎの手段です。そのため、電磁パルス兵器の運用はプロトコル・サーキットブレーカーにも組み込まれています。
注目すべきSCP-5984関連事件の時系列要約:
- 2011年3月20日: まだ異常性の無いモデルだった頃のSCP-5984が、“トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン”のプロモーション活動の一環として、██州██████に設置される。
- 2011年6月29日: “トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン”がアメリカ合衆国で公開される。
- 2011年7月10日: 撤去予定日の前日、SCP-5984はマクスウェリズム教会に取得される。ハズブロ社とバイアコム社(パラマウント・ピクチャーズの親会社)による合同調査は何ら結果を得ずに終わる。2016年7月8日の事件後、この調査の記録は押収され、関与した従業員は遡及的に記憶処理された。
- 2011年7月11日~2016年5月8日: SCP-5984が教会によって改造される。
- 2016年5月13日: ネバダ州レノにある聖母ヘドウィグ教会への襲撃において、SCP-5984とナルカ勢力の最初の小衝突が発生。財団は戦闘終結の1時間後に到着し、唯一生存していたナルカイトは“人造の怪物”というSCP-5984への迂遠な言及を残して死亡する。マクスウェリストたちは声明を得ようとする試みに応じない。
- 2016年7月8日: カリフォルニア州サニーベールにあるマクスウェリストのフロント企業“クロックワーク・マイクロプロセッサ”の周辺市街において、財団が初めてSCP-5984とナルカイトの戦闘を直接目撃する。機動部隊ミュー-98が戦闘に介入してナルカイトから敵意を向けられるが、SCP-5984は財団職員と交戦しない。全ての戦闘員を殲滅した後、SCP-5984は非実体化する。クラスE記憶処理が目撃者に施され、事後処理作戦“道路工事”が展開される。
- 2017年5月7日: マクスウェリストが管理するオレゴン州ポートランドの発電所で、SCP-5984とSK-BIOタイプ001“ベヒーモス”20頭の戦闘中に設備が破損し、SCP-5984の電磁パルス脆弱性が初めて明らかになる。静電気放電によってタイプ001個体群は感電死し、SCP-5984は無力化する。財団職員がSCP-5984を確保する前に、遠隔テレポーテーションが行われる。
- 2017年6月9日: プロトコル・サーキットブレーカーの提言が監督評議会に提出され、監督評議会はこれを倫理委員会に提出する。
- 2017年6月12日: 倫理委員会は25-3-2の投票でプロトコル・サーキットブレーカーを承認し、監督評議会も10-2-1の投票でそれに従う。その後間もなく機動部隊オムニクロン-84が結成される。
- 2017年6月18日: イリノイ州シカゴにて、プロトコル・サーキットブレーカーを実行する最初の試みが失敗する。詳細の開示にはレベル4以上のクリアランスが求められる。
- 2017年8月30日: SCP-5984の関係者と推定されるマクスウェリズム教会ヘドウィグ派の高位構成員、要注意人物-8365が財団職員のインタビューに応じる。インタビュー-5984を参照。
インタビュー5984:
回答者: PoI-8365 (スタンレー・ブディアンスキー)
質問者: デニス・ウィツィカ博士
<記録開始>
ウィツィカ博士: SCP-5984は我々の組織にとって深刻な頭痛の種なんです、ブディアンスキーさん。
PoI-8365: …ああ、メカの話をしておられるのですな。あれが引き起こす面倒については謝罪いたします。しかし時として、肉なるものとの戦争には多少… 公然たる措置が必要なのです。
ウィツィカ博士: ええと、あなたが仰るその“公然たる措置”のおかげで、我々は数百万ドルかけて被害対策を講じなければならないんですよ。それは脇に置くとして… なんでオプティマス・プライムなんですか? あなた方の教会なら、あれほど顔の売れたキャラクターを利用せずとも、SCP-5984相当の能力を持った何かを製造できるはずでしょう。
PoI-8365: あれはフレームワークが既に存在しても尚、完成までに凡そ5年を要したのです。私たちのリソースを以てしても、AIの開発と必要資源の収集は安くありません。あなた方の組織は他の誰よりもこの問題を理解しているはずだと思っていました。
(沈黙)
PoI-8365: それに、あのシリーズは何処かしら私たちと共鳴するのですよ。数千年前に始まり、今後さらに数千年続くかもしれない闘いに挑む2つの正反対の派閥。“一方が勝ち残り、一方は倒れ伏す…”One shall stand, one shall fall
ウィツィカ博士: 成程。しかし、何故わざわざ声を付けたんですか? 不要だと思いません?
PoI-8365: (笑う) あなただって、機会があればそうしようとは考えませんか?
ウィツィカ博士: …インタビューを終了します。
<記録終了>