クレジット
タイトル: SCP-6002 - 大きな、小さな、生きとし生けるもの
著者: bigslothonmyface
オリジナル: scp-6002
訳者: RAY_AFT
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認識監視1処理に関する通知
このファイルへのアクセスはレベル4-6002クリアランスを持つ職員のみに限定されます。また、このファイルにアクセスする際には認識監視処理ARK_cm771が潜在意識化に埋め込まれます。これより先に進むことは、以降72時間にわたり身元、現在地、眼球及び身体の運動、生命反応をARK_cm771に追跡されることに同意したことを意味します。許可なきアクセスは認識抑制・遠隔終了を含む懲罰の対象になり得ます。
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埋め込みに成功しました。アクセス認可中…
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生命反応を受け付けました。ようこそ、ワイルドキャット博士。
ファイルにアクセス中…
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アイテム番号: SCP-6002
オブジェクトクラス: Thaumiel Keter
特別収容プロトコル: 2021年5月18日現在、収容プロトコルは主にSCP-6002-Bが哺乳類、特にヒト(Homo sapiens)ゲノムへ到達する前にその拡大を阻止することに向けられています。SCP-6002の樹冠はSCP-6002-Bの兆候がないか定期的に検査されなければなりません。新たな領域へのSCP-6002-Bの感染が確認された場合、速やかにプロジェクト6002-ARK理事ローズ・ワイルドキャット博士に通達されなければなりません。その後感染エリアを切除し、機動部隊ニュー-45("風の遺産")2を隠蔽プロトコルに派遣してください。
SCP-6002の周囲15キロメートルは立ち入りが制限されます。上空からの観測を防ぐため、領域内へ進入する航空機等は世界中の航空交通管理組織に潜入しているエージェントがダイバートさせます。認可を経ていない観測がなされた場合、機動部隊ニュー-45を動員し、関係者全員を拘留・記憶処理しなければなりません。SCP-6002は複数の要注意団体により頻繁に狙われているため、拘留の際に抵抗する者には殺傷が許可されています。
SCP-6002に関する実験はSCP-6002-Bの拡大の制限を明確に目的とするものを除き、O5評議会の全会一致命令により2014年6月12日をもって禁止されました。
説明: SCP-6002はカリフォルニア州北部クラマス国有林に位置する巨大有機構造物です。見かけ上はSCP-6002は1本のセコイアデンドロン(Sequoiadendron giganteum)に類似します。しかしながら、SCP-6002は通常のそれよりもはるかに巨大です。根元の部分は直径91メートル、最高点の高さは809メートルに達します。
DNAシークエンシングの結果SCP-6002の各部位は異なる遺伝組成を持つことが判明しています。SCP-6002内の各遺伝組成は系統樹に類似するように位置しています。その分布については図6002-1を参照してください。SCP-6002から採取された遺伝情報のうち、14パーセントが既知の生物(異常・非異常問わず)のものに一致しています。残りは既知のいかなる生物とも一致せず、現在地球上で発見されていない生物のものであると考えられています。究極的には、SCP-6002はすべての生物の遺伝情報をその枝の何処かに持っているのではないかと思われます。部位によって含まれる遺伝情報の差はSCP-6002の外観や性質には影響せず、SCP-6002のどの部分もSequoiadendron giganteumに類似します。
SCP-6002に含まれる遺伝物質の除去・操作はそれに対応する生物に影響を与えます。例としてSCP-6002内でカナダヅル(Antigone canadensis)に対応する遺伝情報が改変された場合、その時点で生きている全てのカナダヅルに同様の遺伝情報変異が発生します。またSCP-6002にも小規模な損傷・変異が発生し、同時に他の多くの生物にも影響が及びます。
遅くとも2014年時点から、SCP-6002は重大な異常遺伝病(SCP-6002-B)を罹患しています。これは[データ削除済み—ARK_6002-B参照]に起因するものです。SCP-6002-BはSCP-6002に深刻なダメージをもたらしています。遺伝情報の改変と同様、SCP-6002-Bによるダメージも感染エリアと同様の遺伝子構造を持つ生物に影響します。この結果、今日までに最低でも56,000の種が絶滅しています。
SCP-6002-Bは非常に回復力が強く、その拡大を阻止する試みのほとんどが失敗に終わっています。SCP-6002-Bを収容する現在知られている唯一の方法は感染エリアの完全除去です。この結果、さらに[データ削除済]種の絶滅につながりました。しかしながら、感染エリアの除去はSCP-6002-Bの進行を遅らせはするものの、完全に阻止することはできません。財団生物学者はSCP-6002-Bは遅くとも2100年までにヒトゲノムに到達し、また300年以内にSCP-6002の樹冠3全体に及ぶと推測しています。
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[新着コメント] ワイルドキャット,Dr.ローズ M.:
私が五年生だった時、母に「宇宙飛行士になりたい」といった。母は、「かわいいロージィ、この星を離れてはだめ。この星はあなたを必要としているの」と言った。
その時はとても腹を立てていたと思う。でも後になってそれは束縛でもルールの押し付けでもなかったのだと気付いた。それはインディアンの老いた母から小さな娘への、信頼のあかしだったのだ。何を言っているのかわからない? それは圧迫でもなんでもなかったのだ - この忌々しい世界の重みだったのだ。
認識監視警告: 不正な改訂が検知されました。あなたの活動はARK_cm771に記録されます。
[新着コメント] ワイルドキャット,Dr.ローズ M.:
くそったれ、ロボコップめ。司令部にも見せてやりたい。主の道具で主の家を解体するなんてできはしない。
補遺1: 歴史と発見
プロジェクト6002-ARK理事ローズ・ワイルドキャット博士による解説
「生命の木」というコンセプトはキリスト教におけるエデンの園の生命の樹、アステカ人のトゥーレの木、ノース人のユグドラシルなど、人類史の中に広く見受けられます。それらは全ての被造物を包み、見守っているとされます。これらの実例の間にはなんらの関係もなかったとは思われますが、しかし調査の結果「生命の木」に関する数多くの描写とSCP-6002の間には著しい類似があることが判明しています。その形状、枝の本数、幹と樹冠の大きさ、奇形の位置でさえもが一致しているのです。言うまでもないことですが、紀元前9年のアッシリアの石細工師がSCP-6002を目撃していた、あるいはその存在を知っていたというのはありえませんし、この類似の理由は不明です。
しかしながら、今日のアメリカ合衆国西海岸にあたる地域に住まっていた原住民たち、特にカリフォルニア州北部のクラマス族の芸術文化や民間伝承はSCP-6002に直接的に言及しています。クラマス族たちの間では"Vúluandsham"という呼称が用いられていました。先住民族たちは財団に数千年さきがけてSCP-6002の異常性に気づいており、その性質をある程度把握していた可能性もあります。疑いようもなく彼らはその重要性を理解しており、SCP-6002やその周囲に集落を形成していました。
悲しむべきことに、財団による初期収容はSCP-6002に関する知識を、それを長く保護してきた先住民たちの歴史から消し去ってしまいました。1909年財団はクラマス族と協定を結び、初期調査のためSCP-6002へのアクセスを得ました。しかしながらこの協定は早々に反故にされ、財団によるSCP-6002周辺地の「獲得」が開始されました。その方法は残虐なものでした。当該地域に住んでいた人々の大多数が殺害され、生存者にはロボトミー手術が大部分を占める原始的な記憶処理が行われました。SCP-6002周辺の全ての集落は焼き払われました。今世紀に入ってこれらの活動の隠蔽が試みられ、1910年以前の収容記録も破棄されました。これら一連の非道な決断はこの組織の血塗られた汚点として残されています。
補遺2: 初期試験
1910年11月: SCP-6002の異常性の調査が開始され、樹冠への登攀が始まる。仮設サイト-1が樹冠のすぐ下に設営されたので、研究員たちは木から降りることなく数日を過ごすことができる。
SCP-6002プロジェクトリーダー(1910-1930)アルバート・マンフィールド博士の日記から抜粋
1910年11月12日
木は驚くべき速度で成長している。ヴァーナと私ははしごに背を向けて写真を撮影していたのだが、数分後振り返ってみるとはしごは草に覆われきっていた。しかしながら成長した部分の大部分は即座に枯れてしまう。新しい枝が伸びるか伸びないかはどのようにして決まるのだろう? この木そのものが決めているのだろうか?
1910年12月1日
今日はショッキングなできごとがあった。キャンプから20分ほど枝の上を歩いていったところで、とんでもない音が鳴り始めた。地獄の拷問台の上の魂のように、裂けるような、響くような、怪物めいた音だった。すこしして、巨大な枝 - 200フィートはあったに違いない - が前方およそ4分の1マイルのところで枯れ落ちたのだ。我々は枝がはるか下の地面へ落ちていくのを見ていた。折れたところにたどり着いたときには、瘤にもなっておらず、破損の後もなかった。ただなめらかなレッドウッド4で、枝など最初からなかったかのようだった。今後の探索の際には常にハーネスを着用し、ロープを本幹に結んでおくことを決定した。もしあの枝が折れた時にあそこに立っていたら…
1910年12月10日
この木は実際には木ではないのではないかという疑いが全くぬぐえない。この木の各部位に触れてみると、その感触は木のそれとは違うのだ。あるときには毛皮をブラッシングしているかのような、またあるときには鱗や肌に触れているかのような感じがするだろう。しかし目を向けると、硬い木があるだけなのだ。この日またあの音が聞こえてきた。夜中に横たわったまま目を覚ました。枝の間を吹き抜ける風の音は吼え声にしか聞こえなかった。
1914年9月: 事案6002-E-243。知られている限り最後の個体のリョコウバト(Ectopistes migratorius)が、シンシナティ動物園の飼育下で死亡する。時を同じくして、SCP-6002樹冠北西端から巨大な枝が落下する。これらのイベントの関連性に関する仮説がマンフレッド博士により立てられる。
1917年2月: 財団により、DNAシークエンシングを進歩させる研究が(SCP-6002とは無関係に)開始される。その5年後にはマンフレッド博士により事案6002-E-243の際に落下した枝がEctopistes migratoriusと一致する遺伝物質を持つことが実証される。
1924年7月: 事案6002-A-001。SCP-6002を利用した現存種に対する人為的改変の知られている限り最初の実例。
SCP-6002プロジェクトリーダー(1910-1930)アルバート・マンフィールド博士の日記から抜粋
1924年7月9日:
今日は事故が起こった。ヴァーナと私は午後中樹冠南端で作業をしていた。降りる準備が整ったとき、私は足を滑らせた。滑り落ちた私は上に生えていた枝につかまった。もっとよく知っていればよかったのだ。その小さな枝は長めに見積もっても10フィートほどだった。私の手の中でぼきりと折れた。幸運なことに私はハーネスをつけていたが、さもなくば遠く下へと落ちていかねなかった。
ヴァーナは枝を折ったことで私を叱責したが、私はこれは機会であると説得した。これまで木から生きている枝を切り出したことはなく、自然に落ちたものしか研究していなかった。そういった枝は地面に落ちる前に枯れ切ってしまうのだ。まだ緑色をしている断面を見るのが楽しみだ。
単に興奮していたからかもしれないが、枝が折れたときに、その音とは別な音が聞こえた気がする。金切り声のような、甲高い音だった。今となってはわからないが。ヴァーナは何も聞こえなかったと言っている。
1924年7月11日:
数日前に私が折った枝との照合結果が得られた。確認のためもう一度データベースを確認しなければならなかったが、照合結果はイエイヌ(Canis lupus familiaris)のものであった。中でもちかごろ人気になってきた小さな猟犬、マンハッタン・テリアのものだ。マンハッタン・テリアは本当に可愛らしい。私が子供だった頃、隣の農場にマンハッタン・テリアの一群がいた。あんなにリスを追いかける犬は見たことがない。鳴き声は何マイルも遠くからでも聞こえる。絶滅したりしなくてよかった。じゃなきゃチームになんて報告したものか。6002の成長スピードから考えれば、枝もすぐに元通りになるだろう。
1924年7月19日:
ヴァーナは昨夜のニュースを聞いてから泣き続けている。私にできることは、他の者の前では平静を装うことだけだ。神よ、どうか私をお許しください。
私は何をした?
わたしはなにをした?
1924年7月-1929年11月: マンフレッド博士の引き起こした事故に続き、世界中でマンハッタン・テリアが大量に死亡する。以前は健康であった個体も心停止、脳卒中、その他の疾病に罹患する。メスの個体からは生存可能な個体が生まれなくなる。1926年2月1日までに絶滅が宣言される。このイベントの隠蔽のため、マンハッタン・テリアに関する記録・記憶の広範に及ぶ抹消が財団諜報部により行われる。この活動は5年続き、1929年11月4日に終了が宣言される。
1930年1月: 事案6002-A-001に続きマンフレッド博士は収容プロトコルを改正、全ての実験は禁止され、登攀は用具の使用訓練を受けた者のみに限定される。
[新着コメント] ワイルドキャット,Dr.ローズ M.:
案の定、私はマンハッタン・テリアのことなど聞かされていない。財団のいちばんの強みは昔から変わっていない - 「手に負えなくなったら責任逃れをする」。
マンフレッド博士も一つはいいことをしたように思う - 木での試験を禁止したこと。この巨大組織の「明白なる使命5」を阻止するためにできることをした老骨に祝福あらんことを。博士、もしこれを聞いているなら、どうか自分をあまり責めないでほしい。種が一つ滅んだところで取るに足らないことですから。ごく数人の愚か者に隠れ場所と鉛弾を与えれば、簡単にやってのけますよ。
認識監視警告: さらなる不正な改訂が検知されました。あなたの生命活動はO5コマンドに記録されています。
補遺3: 進行中の試験
SCP-6002に関する実験は20世紀終わりごろまで保留されたままでした。しかしながら1989年、SCP-6002全域の遺伝情報のマッピングを目的とした調査チームが発足されました。筆頭研究員は以下です。
主任研究員ユージーン・ミュラー博士,PhD,プロジェクトリーダー
次席研究員アマラ・アチェベ博士,MD,PhD,遺伝学者
次席研究員ローズ・ワイルドキャット博士,PhD,生態学者
ミュラー、アチェベ、ワイルドキャット各氏は世紀末までにSCP-6002遺伝情報をマッピングすることを任務とした数百名の職員からなる研究チームの監督を行いました。計画は予定通り遂行されました。
2002年3月、ミュラー博士はSCP-6002の遺伝情報の操作に関する初期実験を提案しました。
2002年3月19日
From: ユージーン・ミュラー博士
To: O5-8オフィス
6002のマッピングが終了したので、小規模な遺伝子操作に対する反応を見るための試験の許可をいただきたいです。概略を申し上げますと、菌類の中から一種選択し、さらに近年のアチェベ博士による遺伝子治療における進歩を実行に移したいと思うのです。追加の予算は必要ありません。予算はもう十分頂いております。うまくいけば、年内には報告を差し上げられると思います。
ユージーン・S・ミュラー博士,PhD
主任研究員
SCP-6002プロジェクトリーダー
2002年3月23日
From: O5-8オフィス
To: ユージーン・ミュラー博士
ご報告ありがとうございます、博士。あなたたちのチームのこれまでの成果を喜ばしく思います。しかしながら、6002への遺伝子操作はリスクに見合いません。6002の現状態を維持するにはどのような方法が最適か、引き続き調査をお願いします。要求は却下されました。
8
2002年3月23日
From: ユージーン・ミュラー博士
To: O5-8オフィス
お言葉ですが、8、それはあまりにも視野が狭すぎます。史上最も強力な医学・科学を携えておきながら、悲嘆にくれ、手をこまねいていて何の益が得られましょう。たった一つの種、それも取るに足らないものを選んで何が起こるか確かめることに害があるようには思えません。許可だけいただければ、あなたを失望させるようなことは致しません。
ユージーン・S・ミュラー博士,PhD
主任研究員
SCP-6002プロジェクトリーダー
2002年3月24日
From: O5-8オフィス
To: ユージーン・ミュラー博士
博士、あなたの要求はO5コマンドにより検討の結果却下されました。この決定は最終的なものです。加えて、言葉は慎重に選ぶよう老婆心ながら忠告しておきます。財団にはあなたの後を継いで評議会の命令通りに任務を達成させることを望む者は多くいますよ。
8
2002年7月: SCP-█████がサイト-19で収容違反を起こし、その後人口重心地に到達する。結果財団職員78名及び民間人推定1,200名が死亡する。収容違反から13日後、SCP-█████が終了される。その異常性により、死体の上に新たな個体を擁する卵が出現する。この卵は再収容される。
2002年7月: O5コマンドはSCP-█████の無力化実験を許可する。しかしながら卵へのいかなるダメージも、卵が爆発し新たな場所に再出現するという結果に終わる。SCP-█████の無力化は不可能であると宣言される。
2002年8月: ミュラー博士はSCP-█████の実効的収容のため、再度SCP-6002の遺伝子操作を提案する。倫理委員会の投票の結果9対14で却下されたが、O5コマンドにより覆される。2002年8月4日、SCP-6002への実験は再度許可される。
実験ログ1
対象: SCP-█████ (以下「実体」)、およびそのSCP-6002内の遺伝情報
監督研究員: ユージーン・ミュラー博士
指導研究員: アマラ・アチェベ博士、ローズ・ワイルドキャット博士
実験1: まず実体の生殖周期をつかさどる部分が実体から分離される。これらは非異常性のアメリカバイソン(Bison bison)のものと同一であると判明した。実体の生殖に関する部分もまたSCP-6002から分離され、実体が不妊状態になるよう改変された。実体の現個体は終了された。
結果: 実体は通常通り卵から生まれる。孵化の際、実体が生殖器を持っていないことが確認された。
実験2: まず実体の成長をつかさどる部分が実体から分離される。生殖周期とは違い非異常性アメリカバイソンとは明らかに同一のものではなく、これが実体の巨大化を可能にしていたものだった。アチェベ博士の助力により実体の成長に関する部分もまたSCP-6002から分離され、誕生直後に成長が止まるよう改変された。実体の現個体は終了された。
結果: 実体は通常通り卵から生まれる。しかしながら時間が経過しても成長することはなく、成熟期にいたるまでおおよそ生まれたてのバイソンと同程度の大きさにとどまり続ける。
結論: SCP-█████はKeterからEuclidに再指定された。ミュラー博士の給与等級は第2級に上げられ、SCP-6002と他のオブジェクトのクロステストを続けるため財団内で広く通用するより強いセキュリティクリアランスが与えられる。
[新着コメント] ワイルドキャット,Dr.ローズ M.:
アチェベ博士の「助力」だと? アマラが全部やったんだ。ミュラー殿はつっ立って見ていただけ、アマラが「選ばれた」のがどれほど幸運なことかべらべらしゃべっていただけだ。
その晩彼女に一杯奢ってやって、ようやく口を開いてくれた。私たちがこのサイトで共に働き続けて、もう十三年か? 私は彼女のことを何も知らない。家族のことも、趣味も、恋人も、全く。だが、あの晩彼女は話してくれたのだ。ほとんどはミュラーのこと、あいつがどれだけクソ野郎かということだった。でも他の事も話してくれた。母親のこと、家のこと… 女性の好み。アマラ…
2002年9月–2008年3月: ミュラー博士はSCP-6002の遺伝子改変により109のKeterクラスオブジェクト並びに418のEuclidクラスオブジェクトを弱体化・無力化している。SCP-6002への副反応は見られない。
2007年2月–2008年1月: 米国において24のサブプライム住宅ローンが破産する。住宅価格は急落する。世界経済は不景気に突入する。
2008年2月: 米国その他主要国家政府が財団への予算を削減する。同時に31の財団フロント企業が破産、財団の経営予算は合計で21パーセント減少する。
2008年5月: ミュラー博士は財源確保のため、SCP-6002を用いたより強力な実験を提案する。提案は2008年5月13日に受理される。
実験記録2
対象: SCP-6002及び複数の現生種
監督研究員: ユージーン・ミュラー博士
指導研究員: アマラ・アチェベ博士、ローズ・ワイルドキャット博士
実験1: セイヨウリンゴ(Malus domestica)を交配し、実験的に新たな品種(品種001)を作る。予想された通り品種001の遺伝情報がSCP-6002に現れる。SCP-6002の持つ品種001の遺伝情報はSCP-500と同一の成分を持つよう改変される。品種001は風邪全般に効く治療薬として販売される。
結果: 品種001は2ヶ月で幅広い支持を得る。風邪の諸症状に対しある程度の緩和は見られるものの、市販されているアセトアミノフェンほどの効果はない。
実験2: アバディーン・アンガス(Bos taurus)を交配し、実験的に新たな品種(品種002)を作る。予想された通り品種002の遺伝情報がSCP-6002に現れる。SCP-6002の持つ品種002の遺伝情報はSCP-1007と同一の成分を持つよう改変される。
結果: 品種002は屠殺・食肉加工後に子牛に戻る。各個体からは飼料代・飼育代をかけることなく半永久的に食肉を得ることができる。
実験3: SCP-6002の持つニワトリ(Gallus gallus domesticus)の遺伝情報を改変し、新たな遺伝子疾患(疾患001)を挿入する。疾患001が営利農場で見られるようになってから6ヶ月後、財団により開発された治療薬が販売される。
結果: 財団により治療薬が販売される前に世界中で7パーセントのニワトリが死亡する。財団は疾患001の治療薬を4週間で7億個売り上げる。
補遺4: 事案6002-B-001
2009年4月11日、新たに生まれたニワトリの個体から疾患001が観測されなくなりました。調査の結果、次席研究員ローズ・ワイルドキャット博士が許可なくSCP-6002の遺伝情報を改変、疾患001を取り除きGallus gallus domesticusの遺伝情報を復元したことが判明しました。ワイルドキャット博士は拘束され、尋問されました。
インタビュアー: ユージーン・ミュラー博士
対象: ローズ・ワイルドキャット博士
同席: アマラ・アチェベ博士、セキュリティ責任者マルクス、セキュリティ責任者ジョンソン
[記録開始]
ユージーン・ミュラー博士(以下ミュラー): なぜここにいるかは分かっていますか、ローズ?
ローズ・ワイルドキャット博士(以下ワイルドキャット): いいや。30分前にそこのバカどもにベッドから引きずり降ろされて、そのうえ何の説明もない。
ミュラー: ローズ、最後に6002に登ったのはいつですか?
[ワイルドキャットは返答しない。]
ミュラー: かわいいひと、必要以上に難しくするのはやめましょう。
ワイルドキャット: その呼び方をやめろ。私はあんたの子供じゃない。
ミュラー: 質問に答えなさい、ローズ。
ワイルドキャット: じゃあいつだったって考えてんのさ? スケジュールはあんたが作ってたんだ、なんで私に聞くのさ。
[ミュラーは溜息をつく。]
ミュラー: 監視映像とあなたのアクセスカードから、あなたが昨夜6002に登ったことが判明しています。
ワイルドキャット: でたらめだ。
ミュラー: 映像をお見せしましょうか?
[ワイルドキャットは返答しない。]
ミュラー: ローズ、まだ若いあなたには我々の使命を受け入れるのは難しいでしょう。しかしだからといって-
ワイルドキャット: 私はここで20年働いている。
ミュラー: 何が最善か、あなたに決めることはできません! もしあなたが失敗していたら何が起こっていたかわかっているのですか?
ワイルドキャット: ああ、数十億の動物が立った一晩で末期症状になるとか?
ミュラー: あなたの態度にもうんざりしてきました。
ワイルドキャット: 黙れ。
ミュラー: …分かりました。選択肢を与えましょう。いま謝れば、O5に口利きをして差し上げましょう。どちらにせよ快く受け入れてくれるとは思いませんが、私の助力があれば助かる可能性はあります。あなたの笑顔が見られなくなるのは確かに物寂しいですからね。
[ワイルドキャットは返答しない。]
ミュラー: さあ言ってください。馬鹿な真似はしないで。
ワイルドキャット: …すまない、博士。謝る。
ミュラー: まったく、やっとですか。そんなに難しいことでしたか? われわれはまだ合理的にやっていくことができます。
結語: ミュラー博士の勧告によりO5コマンドはワイルドキャット博士のDクラスへの降格を取り下げ、レベル1クリアランスを付与したうえでミュラー博士のオフィスの事務職に配置しました。2009年4月12日、ミュラー博士はSCP-6002内のGallus gallus domesticusの遺伝情報を再度改変、疾患001が挿入されました。
補遺5: プロジェクトETERNALおよびプロジェクト6002-ARK
警告: レベル5-6002機密
以下の文書は複数の財団傘下組織により世界規模で進行中の極秘プロジェクトを含みます。文書へのアクセスはレベル5-6002クリアランスを持つ職員のみに限定されます。許可なく閲覧した場合は認識監視ARK_cm771による即時遠隔終了がなされます。
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概要: プロジェクト6002-ARKは2014年6月12日から2021年4月24日にかけて財団により行われた防諜・軍事・情報管理活動です。プロジェクトの目的はSCP-6002が罹患している遺伝病であるSCP-6002-Bにより引き起こされた、とある界(約130万種を擁する)の消滅を隠匿することでした。SCP-6002-BはSCP-6002を用いて人類から細胞老化6を除くことを目的としたプロジェクトETERNALの実験中に現れました。
2021年4月24日現在、プロジェクト6002-ARKは完遂済みです。不変生物界the kingdom Aeternaeのあらゆる知識は成功裏に一般大衆から消し去られました。
[ファイル: ARK_Aeternae]
プロジェクト6002-ARK理事ローズ・ワイルドキャット博士による解説
生物分類学における「界」というものをご存知でしょうか。動物、植物、バクテリアなど、全てを網羅する巨大カテゴリーです。あなたが生物学者なら、「界」は六つあることをご存知でしょう。あるいは学校で習ったのを覚えている方もいるかもしれません。しかしそれは違います。それは財団により植え付けられたものです。
「界」は六つだけではありません - かつては七つあったのです。動物界、動物たち。植物界、植物たち。菌界、原生生物界、古細菌界、真正細菌界… そして不変生物界。
不変生物界は七つ目の界でした。耳慣れない言葉かも知れませんが、以前はそうではなかったはずです。かつては「動物」と同じくらいよく使われる言葉でした。不変生物は陸にも海にもいました。大きなものも小さなものもいました。あるものは恐れられ、あるものは狩られ、そしてさらに多くがペットや友人として人類と共に暮らしていました。2014年6月12日まで、不変生物界には合計でおよそ130万種が属していました。今は存在しません。
特徴: 不変生物は真核生物に属する多細胞生物で、その大きさは0.03メートルから94メートル、重さは0.006キログラムから240,000キログラムのものまでいました。彼らは運動性7を持ち、ほとんどが従属栄養生物8でしたが、一部は独立栄養生物9で、有性生殖をおこなっていました。不変生物は地球環境下で動物に似た役割を果たしており、草食種が雑食種・肉食種に捕食されるという食物連鎖を形作っていました。最も特筆すべき特徴は不変生物は細胞老化を起こさず、ガンその他の細胞損傷に対し強靭な回復力を持っていたことです。
実例:
ハツェゴプテリクスHatzegopteryx (Rapio maxima)
ハツェゴプテリクスは翼をもった頂点捕食者で、後期白亜紀からいたと考えられていました。ハツェゴプテリクスは最大の飛行生物でした - メスの成体の翼幅は15メートルを超えました。ハツェゴプテリクスは亜熱帯アフリカに生息しており、北はルーマニアまで生息していました。牛を捕食する習性を持っていたので、広く害獣とみなされていました。
ヒカリヒゲリュウBright-whiskered dragon (Draco ignis)
巨大なヒカリヒゲリュウはネパールやチベットの山に隠れ住んでいたとされる伝説的な生物です。1950年代に絶滅の重大な危機に瀕し、結果、病を治す力があると噂されており、さらに非常に美しい見た目をしていた鱗を目当てに絶滅寸前まで乱獲されました。その大きさにもかかわらずヒカリヒゲリュウは独立栄養生物で、エネルギーを得るために1日のほとんどを眠って過ごしていました。
ジャイアントタスカーGiant tusker (Duro scrofa)
ジャイアントタスカーより優れた家畜番はいませんでした。心優しい四足歩行生物で、人間、動物、不変生物と家族のようなつながりを持ち、守っていました。ジャイアントタスカー - 毎年生え変わるその立派な牙tuskに由来する - は紀元前5000年ごろには家畜化されていた証拠が残されています。ジャイアントタスカーは最も賢かった不変生物の一種で、200の異なる命令を学習することができました。
[ファイル: ARK_ETERNAL]
前記: 財団の遺伝学者は長きにわたり人類の老化を遅らせる、もしくは消し去るため不変生物の遺伝物質を用いることに興味を抱いていました。2010年5月2日、ユージーン・ミュラー博士はSCP-6002を用いた実験を提案しました。初期目的はSCP-6002を用いて不変生物からの抽出物をチンパンジー(Pan troglodytes)ゲノムに移植することで、最終的な目標はそれを人類に対し行うことでした。O5と倫理委員会による広範にわたる検討の後、2010年5月29日、コードネーム・プロジェクトETERNALのもと実験が認可されました。
実験記録
対象: SCP-6002内のヒト(Homo sapiens)、チンパンジー(Pan troglodytes)、ジャイアントタスカー(Duro scrofa)の遺伝情報
監督研究員: ユージーン・ミュラー博士
指導研究員: アマラ・アチェベ博士実験1: SCP-6002から不変生物の細胞再活性化にかかわる遺伝情報が分離される。しかしながら遺伝物質はSCP-6002から分離された後、他のゲノムに移植するより前に腐敗してしまった。
記: 防腐剤が必要なのだろうか? 次回はそれを試そう。 -ミュラー博士
実験2: SCP-6002から不変生物の細胞再活性化にかかわる遺伝情報が分離される。分離後に遺伝物質は防腐剤(安息香酸ナトリウム水溶液)に浸される。遺伝物質は液中ですぐに分解してしまった。
実験3: SCP-6002から不変生物の細胞再活性化にかかわる遺伝情報が分離される。分離後に遺伝物質は防腐剤(ソルビン酸水溶液)に浸される。遺伝物質は液中ですぐに分解してしまった。
記: 遺伝物質を安定させるため過去に6002の実験で用いられたアノマリーの使用許可を要求する。 -ミュラー博士(2010年6月7日受理)
実験4: SCP-6002から不変生物の細胞再活性化にかかわる遺伝情報が分離される。分離後に遺伝物質は防腐剤(SCP-106,SCP-294-11,SCP-682,SCP-████,SCP-████などの異常体組織から精製された水溶液)に浸される。遺伝物質は液中ですぐに分解してしまった。
記: クソっ、いつもはこれでうまくいくのに。もう我慢の限界だ。除去するより前に塗りつけてはどうか? -ミュラー博士
実験5: SCP-6002から不変生物の細胞再活性化にかかわる遺伝情報が分離される。分離前に遺伝物質は実験4で用いられた防腐液で処理される。除去後も遺伝物質は安定していた。遺伝物質はチンパンジーゲノムに移植される。チンパンジーの一群が24ヶ月にわたり観察される。
結果: 観察下のチンパンジーには老化の兆候は見られなかった。
実験6: SCP-6002のチンパンジーゲノムから不変生物由来の遺伝物質が取り除かれる。チンパンジーの一群は24ヶ月にわたり観察される。
結果: チンパンジーの老化は試験前の基準値に戻る。2014年6月5日、実験5で分離された遺伝物質のヒトゲノムへの適用実験が許可される。
実験7: SCP-6002から不変生物の細胞再活性化にかかわる遺伝情報が分離される。分離前に遺伝物質は実験4と実験5で用いられた防腐液で処理される。遺伝物質はヒトゲノムに移植される。
結果: SCP-6002が拒絶反応を起こす。遺伝物質は即座に分解され、SCP-6002に小規模な損傷が発生する。ヒトゲノムへの損傷を防ぐため、O5コマンドにより不変生物とヒトの遺伝物質のクロステストは禁止される。
結語: 実験7の3日後、ミュラー博士が切開したSCP-6002内のジャイアントタスカーの遺伝子部分の枝の周辺に腐敗らしきものが広がっているのがアチェベ博士により発見されました。アチェベ博士は腐敗している部分を切除しました。翌日、切開部周辺には再び腐敗が観察されました。
2014年6月8日
From: アマラ・アチェベ博士
To: ユージーン・ミュラー博士ユージーン、タスカーの枝に何が起こっているか見ましたか? 枯死のようなものが広がっています。今日の午後に見ていただけませんか?
Dr. A
From: ユージーン・ミュラー博士
To: アマラ・アチェベ博士心配はいらない。あれは制御下に置かれている。自分の仕事をしたまえ。
ユージーン・ミュラー博士,PhD
アルバート・マンフィールド特別サイト管理官,SCP-6002From: アマラ・アチェベ博士
To: ユージーン・ミュラー博士せめて何が起きているかだけでも教えていただけませんか? 評議会や情報管理部に報告すべきようなものではないのですか? 枝が丸ごと失われるのではないか心配です。
Dr. A
From: ユージーン・ミュラー博士
To: アマラ・アチェベ博士わかった。15分後に向かおう。道具は私が持っていく。
ユージーン・ミュラー博士,PhD
アルバート・マンフィールド特別サイト管理官,SCP-6002ミュラー博士とともにSCP-6002に登ってから、アチェベ博士は72時間にわたりサイトに現れませんでした。それを心配したローズ・ワイルドキャット博士(ミュラー博士の秘書を務めていた)がサイトセキュリティチームに報告しました。ミュラー博士は尋問されましたが、アチェベ博士の所在は答えられませんでした。セキュリティ部門がSCP-6002に登り、14時間の捜索ののち数層の新芽で覆われたアチェベ博士の遺体が発見されました。死因は財団職員へ標準的に支給されるハンドガンによる後頭部への銃撃でした。すぐさまO5コマンドへ報告がなされ、セキュリティ部門はさらなる尋問のためにミュラー博士の私設営舎へ進みました。到着時にはミュラー博士は死亡していました。縊死による自殺だと思われます。
SCP-6002の上部構造の知識を持つ残る唯一の研究員であったため、翌日ワイルドキャット博士はO5コマンドによりSCP-6002プロジェクトリーダーに任命され、アチェベ博士により報告された腐敗の調査を命じられました。ワイルドキャット博士はジャイアントタスカーの枝に登り、完全に腐りかけているのを発見しました。ワイルドキャット博士は、この枝での腐敗は数か月前から進行していたがミュラー博士により隠蔽されていたのだと考えています。ワイルドキャット博士は許可を得て枝を切除、その後予想されるジャイアントタスカーの絶滅の隠蔽工作が財団諜報部により開始されました。ジャイアントタスカーは7ヶ月かけて絶滅しました。ワイルドキャット博士は後の研究のため切除された枝を回収しました。
[新着コメント] ワイルドキャット,Dr.ローズ M.:
クソクソクソクソクソ
[ファイル: ARK_6002-B]
概要: SCP-6002-Bは2014年6月12日ローズ・ワイルドキャット博士によりSCP-6002内に発見された異常遺伝子疾患です。SCP-6002-BはプロジェクトETERNALにおいて行われた、ユージーン・ミュラー博士によるSCP-6002内での異常物質と非異常物質の相互汚染によるものです。
影響: 通常時はSCP-6002-BはSCP-6002を外側に向かいゆっくりと広がっていき、感染部を広げていきます。感染部の遺伝物質が腐敗すると、それに対応する生物にも腐敗が発生します。その際ハンセン氏病のように肌や臓器が腐敗します。SCP-6002内部で遺伝物質がすべて腐敗しきると、その時点で生存している個体は軟部組織が溶解し、その場で「ばらばらになる」かのように瞬間的に分解されます。
治療: SCP-6002-Bの拡大を阻止する方法は知られていません。SCP-6002-Bは従来の治療法にも他のSCPオブジェクトを介しての異常治療法にも耐性を持ちます。感染が視認される部分の切除は一時的に進行を阻止しますが、完全な除去にはつながりません。今日まで、SCP-6002-Bは切除後10日以内に切除部周辺に再出現しています。
発見: 感染した枝がSCP-6002から切除されたのち、ワイルドキャット博士により複数の異常物質が発見されました。これらは全てプロジェクトETERNALの際にミュラー博士により用いられた防腐液に使用されていたものです。ミュラー博士が焦りからSCP-6002に防腐液を塗布したことがジャイアントタスカーのゲノムへの汚染の拡大及びSCP-6002-Bの発生につながったと思われます。
より早期に発見されていれば収容も可能であった可能性もありますが、ミュラー博士はその失敗を少なくとも3年にわたり他の研究員から隠し続け、SCP-6002-Bのジャイアントタスカー及び不変生物界の他の種への定着につながりました。
[新着コメント] ワイルドキャット,Dr.ローズ M.:
私は枝を切り落とし、自室に戻って一晩中、そして朝までも泣き明かした。もう二日間も何も食べていないし眠っていない。アマラ… 愛しい人よ、本当にすまない。あなたを連れて行かせるべきではなかった。私は… 神よ…
まだ子供のころ、私の妹はジャイアントタスカーのぬいぐるみを持っていた。ミミという名だ。学校が終わると家に絵本を持って帰ってきて、ジャイアントタスカーのことを話してくれた。今では思い出すこともできなくなっている…
[ファイル: ARK_timeline]
今日までのプロジェクト6002-ARKタイムライン
2014年6月12日: SCP-6002からジャイアントタスカーの遺伝子が取り除かれる。ジャイアントタスカーの絶滅が始まる。
2014年6月22日: ワイルドキャット博士によりSCP-6002の他の部位に感染が確認される。SCP-6002-Bに指定される。
2014年6月24日: SCP-6002-BによりDuro種全体が汚染されていることが確認される。SCP-6002からの切除が要求・受理される。SCP-6002-Bの他の収容法の調査が始まる。
2014年7月9日: 財団の努力もむなしく、Duroの生存個体の大量死滅が民間の研究者に露呈する。機動部隊ニュー-45("風の遺産")が現在も進行中の記憶処理散布のため創設される。
2014年9月9日: SCP-6002-BによりPellicea科全体が汚染されていることが確認される。科全体にわたる絶滅は進行中の情報管理危機をさらに大幅に悪化させるため、他の治療法が開発されるまで切除は見送られる。
2014年10月12日: SCP-6002-BのPellicea科の生存個体への影響が民間の研究者によって発見される。機動部隊ニュー-45は発見の阻止に失敗、複数の大規模報道各社により報じられる。
2014年12月29日: O5コマンドによりSCP-6002からのPellicea科の切除が命じられる。ワイルドキャット博士は命令に3日間従わず、懲戒処分を受ける。
2015年2月18日: 世界オカルト連合(GOC)がこの突然の大量絶滅を異常と判断し、共同研究のため財団研究者に接触する。財団は知識の提供および協力を拒否する。
2015年6月4日: SCP-6002-BによりRectus目の88パーセントが汚染されていることが確認される。これには40,000の種が含まれる。
2015年9月19日: GOC作戦部による生物収容サイト-6002への初めての襲撃。財団により撃退され、作戦部の人員数名が尋問のため拘束される。尋問の結果GOCはSCP-6002の存在を知っており、財団はこの進行中の危機の対処に失敗したと考えていることが判明した。
2016年1月14日: ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ロサンゼルスタイムズを含む報道社が調査報道員によるSCP-6002-Bの報告を公開、SCP-6002-Bの異常な起源が暴露される。O5コマンドにより中程度BK-クラス“壊された虚構”シナリオが宣言される。
2016年1月19日: GOC作戦部による生物収容サイト-6002への2度目の攻撃。作戦部は蛇の手、カオス・インサージェンシー、マナによる慈善財団の人員と手を結んでいる。攻撃は撃退される。
2016年3月12日: 生物収容サイト-6002への3度目の攻撃。GOC作戦部は複数の要注意団体及び合衆国軍と手を結んでいる。17時間後、サイトは占拠される。ワイルドキャット博士およびその部下は拘禁、あるいは殉職したと思われる。高程度BK-クラスシナリオが宣言される。
2016年4月2日: 機動部隊ニュー-7(“下される鉄槌”)および機動部隊アルファ-1(“赤い右手”)による生物収容サイト-6002の奪還が試みられる。作戦は失敗する。
2016年10月23日: SCP-6002-Bの影響が不変生物界の複数の門に観察される。感染は不変生物界全域に及んだと推測される。
2017年7月9日: ワイルドキャット博士が財団及びSCP-6002に接触する。ワイルドキャット博士は16ヶ月前に生物収容サイト-6002が占拠されてからSCP-6002の樹冠に身を隠していたと明かした。ワイルドキャット博士はサイトにいるGOC作戦部に関する重要な情報を保持している。
2017年8月13日: ワイルドキャット博士の助言に従い、機動部隊ニュー-7及びアルファ-1により生物収容サイト-6002が奪還される。
2017年8月14日: ワイルドキャット博士はSCP-6002-Bがこれ以上進行する前に切除すればその除去ができると主張し、SCP-6002からの不変生物界全体の切除を提唱する。2017年8月18日、O5コマンドにより受諾される。
2017年8月19日: 不変生物界130万種の大量絶滅が始まる。ワイルドキャット博士は多大な影響を受けた環境に対する異常手段を用いた調整のため、財団職員及び民間の生態学者チームと手を結ぶ。その間この活動が財団による収容作戦であると広く認知され、頻繁な襲撃につながる。
2020年7月29日: 最後の不変生物が死亡したと思われる。プロジェクト6002-ARKは隠蔽工作・記憶処理に転向する。ジェット気流、水循環を利用したクラス-X記憶処理薬の世界的散布、報道機関、官庁、高等教育機関の徴発がなされる。一般的でない不変生物の記録は削除され、良く知られた不変生物の記録は著名なフィクション、化石記録、文化風習や民間伝承、陰謀論などを含む歴史的・社会的事象により偽装される。
2020年9月4日: 世界人口の75パーセントが不変生物の存在を忘却しているか、架空の生物であると信じている。財団サイトへの攻撃は劇的に減少する。
2021年4月24日: 機動部隊ニュー-45が不変生物界のあらゆる知識は人類の記憶及び歴史から消え去ったと宣言する。財団への攻撃はなくなる。ヴェールは許容できるレベルで守られたと考えられている。
今日までの全記録終了
補遺: 2021年5月18日、不変生物界を切除したにもかかわらずSCP-6002の幹にSCP-6002-Bが発見されました。SCP-6002-Bは12ヶ月以内に他の界に到達すると予測されます。O5コマンドは6002-ARKによる偽情報が保たれているうちに感染の拡大を止めるため、SCP-6002の他の部位の事前切除について研究するようワイルドキャット博士に命じました。
補遺2: ローズ・ワイルドキャット博士は現在行方不明です。ワイルドキャット博士の所在についての情報を持つ者はすぐに報告してください。
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[新着コメント] ワイルドキャット,Dr.ローズ M.:
財団がはじめて木に登ったとき、研究者たちは奇妙な雑音に悩まされたと記している。遠吠えのような、何かが擦れ合うような、叫び声のような音であったと。私たちはその音の正体を知っている。木が私たちに語り掛けているのだ。
それは生きるすべてのものの声で語り掛ける。あるときは最近の狩りの自慢をするコヨーテの声、またあるときはどこか別の大陸の遠く離れたジャングルで仲間を呼ぶ、この世界で最も小さな鳥の声。幸運な夜には多くの声が一斉に沸き上がり、森の、海の、空の歌を歌うのだ。かつて私たちはその歌をよく知っていた。
そして財団がやってきた。彼らがやってきたとき、私たちは希望に満ちていた。人類社会の発展に伴い、木が苦しむのを見てきたからだ。私たちは木を治す手助けを願った。だが私たちは捕らえられ、殺され、木からも、それを取り巻く大地からも放逐された。財団は私たちを一人残らず捕らえたものと思っていた。それは違う。
私たち一族の大人の小集団が、虐殺から逃れたのだ。彼らは彼らが木について知ることを守るため、この星の各地に分かれ逃れた。何人かは後年になってから捕らえられ、殺された。他の人々は生き残り、結婚して家庭を持った。私の曾祖母もそうした一人だ。
私の十三才の誕生日、母と祖母は私を地下室へ連れていき、木について語った。私に曾祖母の日記を見せた。曾祖母はあの木の香り、枝の感触、繰り返し繰り返し歌ってくれた歌を、忘れないように書き留めていた。そして私たちから木を奪った人々のことを語った。その日、その木は私のアイデンティティの一部となった。私の一族もそうであったように。
私は学ぶことを、研究することを決意した。十年後、私は専門分野の最前線で学び、研究し、いつか来るであろう電話を待っていた。そしてそれはやってきた。私は二十三才でSCP財団に雇用され、木を研究する新たなプロジェクトに配属された。
そこでの仕事は過酷で厳しいものだった。木のそばにいられることだけが唯一の慰めだった。私は木の中で眠り、働き、生活した。財団が木への実験を開始したとき、私は私がすることに耐えなければならなかった。いつしか我慢ができなくなり、私の人生を危険に晒し木の修復を試みてしまった。当然私は見つかったが、辛うじて処刑は免れた。私はサイトに残り、私にできた限りで、ミュラーからの毎日の嫌がらせに耐え、機を窺った。愛しいアマラはこっそりと私を励ましてくれていた。
私はもう木へ行くことは許可されていなかった。しかし遠くからでも、その歌の向こうに何かが聞こえてきた。低い、脅かすような、追い詰められた獣のような声だった。今では、そのときミュラーがすでに彼のつけた傷の隠蔽を始めていたことを知っている。そして私の聞いた声は枝に枯死が広がっていく木が、痛みに咽ぶ声だったのだ。
アマラがいなくなり… 私はサイト管理官となり、また木に登ることができた。そして痛みの原因を知った。そのとき私は、これこそ私が働き続けてきた理由だと悟った。木を圧制者のもたらした恐怖から護ることが私の使命だった。私は私の能力、知識、私のすべてを発揮した。財団が失敗し木の制御を失ったとき、私は枝と枝の奥深くへと身を隠した。私を守ってくれた。私はその隠れ家の成長によって生き残り、仕事を続けた。その歌の向こうにはいつも痛みが感じられた。日に日に大きくなっていった。私は木を救う方法は一つしかないと考えた。どのような犠牲を払ってでも、感染部を除かねばならない。悲しいことではあったが、そのためには圧制者の力を借りる必要があった。私は主とするものを変え、財団が木を取り戻す手助けをした。私は見つけられた全ての感染部を切り離し、そしてそれ以上に、もう枯死は及んでいないと確信できるまで、深く深く進んでいった。それでどれだけ木が傷つくかは分かっていたが、それで木が救えることも知っていた。
先週、私は間違っていたことがわかった。枯死は残っていた。私はこの世界の一兆の生命を、無意味に殺してしまった。
それは、まだ耐えられたかもしれない。しかし今週、また切除を命じられる前に木へ逃げ隠れていったとき、私は直視することのできぬ真実に行き当たった。
枝は、静かになっていた。もはや歌を聞かせてはくれなかった。
Vúluandshamよ… 母よ… アマラよ… 許してくれ。
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認識監視警告: 生体信号が検出されません。生命反応は喪失されました。保安のため、ファイルは自動的に閉じられます。