SCP-605-JP
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回収前に撮影されたSCP-605-JP。

アイテム番号: SCP-605-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-605-JPは、サイト-8122において、3x10x10mの特別収容房の上に標準オブジェクト保護房を被せた形で保管されています。実験をする場合は、レベル3以上の職員二名、あるいはサイト管理官の許可を得た上で行ってください。実験を行う際は、逐一SCP-605-JP-1の内容について記録することが義務付けられています。

説明: SCP-605-JPは、対局の度に未知のルールにより対局が行われる、一見通常のオセロです。SCP-605-JPはその周辺に2名以上の人間が存在するとその効果を発現します。特異性が発現すると、周辺にいた人間が二名以上居る場合対局を強制され、対局が開始されると更に周囲の人間にまで特異性を発現、解説や実況、観客等として引き込みます。これはオセロのルールを全く知らない人間に対しても影響を与え、遊戯の実行を強制させます。この効果はSCP-605-JP周辺、縦3m、横10mに及びます。また、曝露範囲内に居る人間が1名のみの場合でも、何らかの「ひとり遊び」が発生する可能性があります。

上記の効果に曝露した人間は、大抵の場合「対局者」「解説と実況」「それ以外の観客」とに別れます。対局者2名をSCP-605-JP-A、Bとし、解説、実況に立つ者をC、D。それ以外の観客群をE群とします。これらの曝露者群は対局中完全にその場に固定され身動きが取れなくなり、外部からの干渉を無効化します。その上でSCP-605-JPはこれらの曝露者に対し、全く不明なルールと法則性に基づき、未知の遊戯(以降SCP-605-JP-1と呼称)を行わせます。SCP-605-JP-CとSCP-605-JP-DはSCP-605-JP-1についてさも造詣が深いように振る舞い、実際そのように発言、解説を行います。これに加えてSCP-605-JP-E群もSCP-605-JP-1に対し、ある程度理解を持つような傾向を示します。

SCP-605-JPは3時間の対局を行わせ、その後、1時間の「休憩時間」を曝露者群に対し与えます。曝露者群はこの際に特異性から解放されますが、SCP-605-JP-1について何も覚えていません。しかしSCP-605-JP-1に対する「熱中感」は残っていると思われ、大抵の場合再び対局及び観戦に戻ろうとします。これはクラスA以上の記憶処理により影響を取り除くことが出来ますが、何らかの形で決着がついていた、あるいは戦局が対局者のいずれかに傾いていた場合、記憶処理が効果を為さない「達成感」、あるいは「敗北感」が残留するケースが見られ、ゲームを継続する事自体に何らかの中毒性を生じさせているのではないかと推測されています。

SCP-605-JP-1は対局の毎性質を変え、また対局終了後には元の状態に戻ります。同じルールの遊戯が行われることはありません。対局後には曝露者から遊戯に関する記憶が完全に消失するため、SCP-605-JP-1については対局中の会話と様子しか記録に残っていません。SCP-605-JP-1について完全なルールを観客群の1名から聴取しようと試みましたが、インタビューに対し全くの返答を見せず、対局中の情報以外に言及することはありませんでした。

SCP-605-JP-1の対局記録(一部抜粋)

対局日時 参加者 内容 結果
2013/8/20 ██六段、██七段 ████テレビにおいて異様な碁の生放送が行われている、との通報により発覚。開始から██時間が経過していた。██七段が長考に入っていたが、そもそも碁盤ではなくオセロ盤が展開されており、盤上に白石が1つ置かれていた。その状態のまま休憩時間へと入る。 休憩時間中に関係者全員に記憶処理。カバーストーリー[金十字]により収束し、SCP-605-JPはこの際回収された。
2013/9/1 D-605-JP-1 収容房に入るなり石を房中にばら撒き、その上を信じられないほどのバランス感覚で飛び回る。加えて、着地した全ての石を跳躍の度に反転させていた。なお、D-605-JP-1に対する事前調査では、このような運動能力は確認されていない。 148回目の跳躍にて着地の際に足首を挫き、一時D-605-JP-1は蹲る。その後、「八艘飛びが、八艘飛びが」と頻繁に口にしていたが、直後に休憩時間に入ったと見られる。足首をかばいながら盤面の前に着席した。この後、D-605-JP-1は無人機械により回収し、記憶処理を行い回復させた。D-605-JP-1は、「何故怪我をしたのかさっぱり覚えていないが、不思議と気分は良い」と証言している。
2013/9/11 D-605-JP-1、D-605-JP-2 盤面は極端に狭くなり、本来のサイズから10分の1に縮小。にも関わらず石の数が極端に増加。対局開始から数分後、D-605-JP-1は逆立ちをした体勢で黒面を表にした石を指し始め、対してD-605-JP-2は白面を表にした石を合掌するように拾い上げてから指し始めた。D-605-JP-1は体勢を維持したまま頻りに悩むような素振りを見せていたが、D-605-JP-2は終始スムーズに指す様子が見られた。最終的に盤面上には物理的に不可能な形(明らかに重力を無視したアーチ型)で大量の白石が積み上げられていた。 休憩時間中に記憶処理にて終了。 █時間に渡る逆立ちにより、D-605-JP-1は極度の疲労と、オブジェクトの影響と思われる敗北感を訴えていた。
2013/9/20 D-605-JP-1~4 盤面が碗状に変形。対局者2名が碗状の盤内へ石を投入すると、石は碗内部を急速に回転し始めた。D-605-JP-2が「あなや!」と発言すると、内部の石は黒面になった石1つを残し凄まじい勢いで外部へ撒き散らされた。これに対しD-605-JP-1は「かくや!」と発言。猛烈な勢いで飛び散った石が内部へ戻り、石1つが高々と碗から飛び上がる。D-605-JP-3、4はその様子を見るなり顔を覆い涙を流し、「まさか」「まさか」と発言を繰り返していた。 休憩時間に終了済。碗内部から飛び散った石の1つが終了後も消滅せず、その場に残されていたが、突如飛び上がりD-605-JP-1の顔面に直撃、鼻の骨を折った後に盤の下に滑り込み消失。この石は発見されておらず、現在も捜索が続けられている。D-605-JP-2は記憶処理後、「何かとても楽しいことがあったような気がする」と証言した。 
2013/10/2 D-605-JP-1~6 対局者二名、解説と実況、観客二名の構成。解説内容は付録を参照。対局から█時間後、唐突にD-605-JP-2が立ち上がり、「我此処に勝利を宣言し、愚者への降伏を推奨する」と発言。対してD-605-JP-1は「空未だ輝きに満ち、石は天蓋に散る星々の如く。我未だ凶兆見えず。汝如何にして打ち砕かんや?」と発言、D-605-JP-2はそれを聞き納得したように深く頷き、「まっこと愚昧。しかし面白い。汝が吉兆見せてみせよ」と呟く。その後、双方は再び対局に戻った。 石は七色に輝いており、盤面はオーロラの発生した夜空のような様相を示している。2度目の休憩時間中、盤内に太陽のような惑星が観察されており、房内全体に強い光を放っていた。この時点で対局は中断され、盤、石は通常のものに戻った。終了するなり、D-605-JP-1は大量の鼻血を吹き出し昏倒。前述の実験の負傷に何らかの影響があったと見られる。記憶処理後、対局していた2名から特筆すべきような証言は得られず。
2013/10/16 D-605-JP-1~6 同上の構成。対局者二名が不意に盤面の四隅端に座り直すと、実況と解説であった二名も同じく盤面の四隅前に座り、対角線を埋めた。その後、観客群であったD-605-JP-5、6は実況と解説に回る。盤面上には戯画化された妖怪のような3Dアニメーションが4名分表示され、四隅に座ったD-605-JP-1~4は石を固く握りしめていた。その後、アニメーション内において戯画達のオセロによる対戦が行われていた。 対戦が終わらず、その内にD-605-JP-3が卒倒。立て続けに他2名が卒倒し、そのまま休憩時間に入ったと見られる。D-605-JP-4のみ軽い疲労を見せていた。原因は不明だが、検査の結果ほぼ全員の脳に対し強い負担が掛かっていたことが判明している。 D-605-JP-4のみ、「強い達成感」を抱いたと証言。
2013/11/1 D-605-JP-1~6 構成は同様。D-605-JP-1、2、共に盤面上へ載り、その後舌を突き出してその上へ石を積み始めた。その後、D-605-JP-3,4が、舌上に積み上がった石をジェンガ・ゲームのように抜き取り始める。抜き取る度に、D-605-JP-3、4は「無情」「無情」と呟いていた。物理的に無理のある積み上げが崩壊しない理由は全く不明。 休憩時間に入っても、D-605-JP-1,2は舌を突き出し石を積み上げたまま静止していた。この時点でなお二名の舌上に載った石は10段以上を記録しており、対局終了後、2名の舌には強い圧迫を受けた際の壊死と、筋断裂が発生していた。また、積み上がった石は無人機器がD-605-JP-1に触れた段階で弾け飛び、近辺に居たD-605-JP-3、4が軽傷を負った。D-605-JP-1、2は双方とも猛烈な達成感を感じたと証言している。

以下は、2013/10/2において発生したSCP-605-JP-1事案の実況、解説記録です。

補遺: SCP-605-JP█回目の実験後、SCP-605-JPを保管していたと見られる紙箱が発見されました。箱の表面には「異 誤リバーシ」とだけ記載されており、同封されていたルール説明書(内容はオセロのものではなく碁のもの)と、「誤ったケースに入れないでください」との注意書きがありました。これらは元々所有していた████テレビにおいても入手先がわかっておらず、製造元や販売元等も判明してません。保管箱の側面には、「パーティ・アイテムシリーズ」として「称 偽シャトランジ」の文面と、それに付随した、将棋盤上に置かれたチェスの写真が確認されています。

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