特別収容プロトコル: SCP-6051の収容は理論上可能ですが、本オブジェクトの能力とその現在地への距離のため、本オブジェクトに対する収容行為は過度に資源を消費することから、不要です。全ての収容試行は無期限に猶予されます。SCP-6051の挙動は人工衛星を通じて追跡され、シベリア内部の財団の監視ステーションは地域のあらゆる異常な温度低下を監視します。
人口密集地に向けたSCP-6051の移動が観測された場合、機動部隊イプシロン-6 ("村のアホ") はSCP-6051を阻止し、過疎地に引き戻さなければなりません。これが失敗し、SCP-6051が人口密集地に進入した場合、機動部隊イプシロン-9 ("火喰らい") と機動部隊パイ-1 ("シティ・スリッカーズ") がSCP-6051を撃退するため展開します。その後、全ての目撃者を記憶処理し、特殊な吹雪に関するカバーストーリーをメディアを通じて流布します。
説明: SCP-6051は第3親衛狙撃師団のヴィクトル・クズネツォフ上級軍曹として知られていた人型実体です。本実体の身長は6フィート3インチ1で、重度の白皮症に罹患しています。1911年に誕生したにもかかわらず、SCP-6051は1941年からいかなる明確な加齢の兆候も示していません。SCP-6051は強度の冷却能力を有しています。SCP-6051の深部体温は摂氏マイナス5度2程度と記録されています。SCP-6051は周囲の温度を摂氏マイナス50度3まで低下させることが可能です。SCP-6051が集中した場合、本オブジェクトの視界内の1マイル以内の物体や人物をほぼ瞬時に冷凍可能なようにこの影響を増幅可能です。
SCP-6051の影響は妨害可能であり、高温下では完全に阻止されます。GRU-Pの実験によると、SCP-6051の能力は摂氏600-800度4またはそれ未満でわずかに妨害可能でした。摂氏1000度5でSCP-6051を弱体化させるのに効果的だということが分かっていましたが、SCP-6051の側に十分な時間と集中力が存在していればこれは克服可能でした。摂氏2204度6またはそれを超える温度のみによりSCP-6051を完全かつ即座に阻止可能でした。
補遺-6051-1: SCP-6051の来歴
以下はSCP-6051の初期収容業務中にGRU-P7から提供された文書群です。これらの文書はSCP-6051を製作したプロジェクト: 赤い蚤の経緯を略述していますが、SCP-6051の製作に関係していたものの大部分は1948年に破壊されました。
OSI 「きよしこの夜」 "P"部局 第二課
承認済 11.III.1935 印字 NR: 1
署名 .................. S
課長 III-P-9-GRU D.NR: 14-III-1936
責任者: メフォディ・クズミン к.т.н.8
詳細: OSI「きよしこの夜」は認知されていなかったヴィラ9の名称であり、ここ一世紀のあいだ高位・低位の軍人により頻繁に目撃・記録されてきた。「きよしこの夜」のもっとも注目すべき特徴は吸熱性であり、周囲の冬の厳しさを増す。フランスがロシアから撤退した1812年に大陸軍10とロシア帝国軍が初めて公式に記録した。厳密な身体的特徴は証言ごとに異なるが、以下の3点のみが全てに共通している。
- 「きよしこの夜」の体は熱を一切発さず、冷気のみを発した。
- 「きよしこの夜」は目がくらむほど白く、冬のあいだはそれ自身の頻繁な動きと空中に戦闘で立ちのぼる煙・塵のみにより認識可能だった。
- 「きよしこの夜」は微弱な「くすくす笑い」の音を発すると記録されていた。
戦闘を観察することで生じる「興奮」のために「きよしこの夜」は主要な戦いに出現していると理論化されており、これは「きよしこの夜」が発した音についての妥当な説明を提供する。周囲への影響は非意図的なものだと理論上予想されている。
物理的な拘束に向けた全ての努力が失敗に終わったため、異教徒の拘束の儀式を活用して「きよしこの夜」の拘束に成功した。現在、「きよしこの夜」は保安サイト、コードネーム「ヴェラ」の巨大な花崗岩に長期的な収容体制が確立可能になるまで拘束されている。
提言された用途:
（i） 農業改良 - 却下 - 「きよしこの夜」を対象とした制御または協力が可能だと推測する。「きよしこの夜」は農地から冷気を除ける可能性があるため、シベリアの営農環境向上とそれに続く収量増加に活用できるかもしれない。加えて戦時により安全だろう東部にウクライナから主な食料源を移せる。秘匿は過度の資源を要し、また根本的な環境変化のような長期的かつ生態学的に不測の結果を招くと考えられる。その上、「きよしこの夜」が冷気を吸収可能だと示す証拠はない。現状、「きよしこの夜」は冷気を撒き散らすのみである。
（ii） 軍事利用 （大規模） - 承認 - 「興奮して」いる「きよしこの夜」は敵の全軍を撃退可能だと示してきた。仮にこのような興奮に「きよしこの夜」を集中させられた場合、我々は天候の急変とさらに厳しい冬をもたらして、完全かつ即座に阻止することは不可能でも、それによりあらゆる侵略軍を遅滞させられるだろう。ソヴィエト連邦万歳。
プロジェクト更新 "P"部局 第二課
05.V.1938 D.NR:08-X-1939
文書14-III-1936に添付
送付者: ソ連共産党書記局
受信者: メフォディ・クズミン к.т.н.
詳細: ヨーロッパの緊張が高まるにつれ、書記長は「きよしこの夜」の軍事的存在感をさらに検討する必要性を確信している。この目的のために軍事費の増額が承認される。また、「きよしこの夜」担当の全研究員は新たなプロジェクトに再割り当てされる。その正式名称は「プロジェクト: 赤い蚤」である。このプロジェクトの目標は「きよしこの夜」の軍事的能力を測定し、最大限活用することである。あらゆる追加の研究はこの目標の補助を志向しなければならず、補遺Aに概説されていない全ての研究業務はGRU-P指導部および/または書記長の承認を受ける必要がある。
ソヴィエト連邦万歳。
プロジェクト更新 "P"部局 第二課
08.IV.1940 D.NR:08-IV-1940
文書08-VV-1938に添付
送付者: ソ連共産党書記局
受信者: メフォディ・クズミン к.т.н.
詳細: 以下はメフォディ・クズミン к.т.н.による「プロジェクト: 赤い蚤」の今般の更新に対する回答である。現時点において、本実体に対する意思疎通ないしは協力を目的とした全ての試みは成功していない。仮に「きよしこの夜」に会話もしくは筆談能力があるとしても、それらを行うことにいかなる興味も有していない。以前の研究記録の概要によると、認識および確実に観察可能な唯一の反応は戦闘・戦争が付近で発生している際の興奮である。この背後に存在する理由は不明である。以上の問題に対し、2個の解決策が提言されている。
提言された解決策:
（i） 意思疎通の努力を改善する - 却下 - 「きよしこの夜」がいかに意思疎通するかを正確に理解できた場合、GRU-Pと活動するように説得することもおそらく可能である。ほぼ2年間の研究からなにも得られていないことに鑑み、この試みが徒労に終わるのは明らかである。
（ii） 「きよしこの夜」をヒトに拘束する - 承認 - 数人の職員が急進的だが、効果を発揮しうる解決策を提言している。「きよしこの夜」は物理的対象に拘束可能で、当該対象と周囲の温度に影響を与えられると実証されているため、ヒトに拘束することで能力を活用可能になるだろうと理論上予想されている。拘束の儀式を準備する前に、身体が壮健でイデオロギー的に忠実な人物を宿主に選出しなければならない。過去にこれが試みられた記録は発見されていないため危険性は高い。しかし成功を保証するのに必要なあらゆる予防策を講じる予定だ。ソヴィエト連邦万歳。
面接記録 "P"部局 第二課
20.X.1940 D.NR:20-X-1940
文書12-III-1940に添付
この添付文書は「プロジェクト: 赤い蚤」の候補者22番、ヴィクトル・クズネツォフ上級軍曹への面接の書き起こしから抜粋したものである。面接官はエージェント「マクシム」である。M: 氏名・年齢・生年月日をどうぞ。
VK: ヴィクトル・クズネツォフ上級軍曹です。1911年4月23日生まれの29歳です。
M: では今日の日付をお願いできますか？
VK: 1940年10月20日です。
M: この面接はプロジェクトに心理的に適合するか判定するためのものです。質問に正直に答えてください。虚偽の情報を提供すると厳しい処分が下ります。ご理解いただけましたか？
VK: はい。
M: 結構です。なぜこのプロジェクトの候補者になろうという勧誘を受け入れたのですか？
VK: 主な理由は2つあります。まず、前線のいち歩兵でいるよりも、それ以外の手段でソヴィエト連邦と同志スターリンにより貢献したいからです。今までが不満だというわけでは全くないのですが。
M: 2つ目の理由は？
VK: 要請されたからです。
M: このプロジェクトについて聞いたことはありますか？
VK: 噂がほとんどです。確かなのは最高機密だということのみです。スーパーソルジャーの計画だと聞いています。しかし新型戦車を設計するのだとも、バーバ・ヤーガかヴォジャノーイ11を作るのだということすらも聞いています。馬鹿みたいなことですよね。これらを思いついた人たちは酔っていたに違いありません。
M: このプロジェクトについて知りたくありませんか？
VK: 多少は。しかし採用されれば答えは分かります。辛抱はできます。
M: 結構です。丸腰の男を殺せますか？
VK: はい、国家の敵なのでしたら。
M: そうでなければ？
VK: …正直に、ですか？
M: はい。
VK: おそらく無理です。
M: 指揮下の兵士みなを守るために上官に背けますか？
VK: いいえ、上官が長期的な計画を立てているのは間違いありませんから。
M: あなたが知る限り国家の敵ではない、丸腰の男を処刑せよと上官が命じていたとしたら？
VK: …いくらかためらいますが、従うでしょう。
M: 理解できます。トルキスタンのバスマチ12へのあなたの対応によく表れていますね。ともかく必要なことは全て分かりました。お時間をいただきありがとうございました、ヴィクトル・クズネツォフ上級軍曹。
候補者22番は「プロジェクト: 赤い蚤」の身体的要求に適合しているのみならず、共産主義的理想への献身を示している。採用決定は私の職分ではないと理解しているが、個人的には候補者22番を推薦する。本件を考慮してくだされば光栄に思う。
プロジェクト更新 "P"部局 第二課
12.IV.1941 D.NR:12-IV-1941
文書D.NR:08-IV-1940に添付
送付者: メフォディ・クズミン к.т.н.
受信者: ソ連共産党書記局
詳細: 衆目の一致するところ、拘束の儀式は1941年2月12日に成功裏に行われた。「きよしこの夜」は今後「赤い蚤」と呼称されるヴィクトル・クズネツォフ上級軍曹に成功裏に拘束された。この手順にともなう身体的および感情的な負荷を除けば、「赤い蚤」は新たに見出した能力を広範に制御してみせている。手順後に「赤い蚤」の体に現れた記録上の身体的差異は、髪色と皮膚色調が白皮症罹患者のものに変化したことのみである。また、「赤い蚤」は特定の標的にその影響を指向してみせている。例を挙げれば、数分以内にT-26戦車を完全に冷凍可能である。
現在、「赤い蚤」の能力の限界を試験中である。1942年3月までには大規模な軍事作戦に向けた「赤い蚤」の準備が整うと予測されている。
ソヴィエト連邦万歳。
プロジェクト更新 "P"部局 第二課
28.IX.1941 D.NR:28-IX-1941
文書12-IV-1941に添付
送付者: ソ連共産党書記局
受信者: メフォディ・クズミン к.т.н.
詳細: この更新文書はプロパガンダの義務を免除されているため、率直かつ明確に書く。キーウの失陥にともない、赤軍がナチの大群の波を食いとめることがますます難しくなっている。スタフカ13は数週間以内にドイツ国防軍がモスクワに到達するだろうと予測している。勝利を得てソヴィエト連邦を守るため、可能な限り早く「赤い蚤」を配備しなければならない。書記長が訓練の進行を速めるよう公式に命じているため、今年の冬までに「赤い蚤」を配備する必要がある。貴官がこれを遂行不可能だというのなら、書記長が可能な誰かを見出すだろう。
ソヴィエト連邦万歳。
プロジェクト評価 "P"部局 第二課
20.VIII.1944 D.NR:20-VIII-1944
文書15-V-1941に添付
送付者: メフォディ・クズミン к.т.н.
受信者: ソ連共産党書記局
詳細: ドイツ国防軍に対する今般の連勝にともない、過去3年にわたる「赤い蚤」の有効性の大枠を調査することが賢明だと考える。ドイツそのものに向け進軍している際にはなおさらである。「きよしこの夜」に酷似して、「赤い蚤」の能力は天候に大きく影響を与えられると判明した。もっとも注目すべき例はスターリングラードの戦いにおけるものであり、後に100年に1度の冬と特定されたものをもたらすため、この作戦中に「赤い蚤」は能力を使用した。残念ながらこの極端な冬は自軍の障害ともなり、スターリングラードのドイツ国防軍部隊を包囲殲滅する作戦に参加予定だったソ連空軍部隊の大部分が離陸不能になった。
さらに、往々にしてそっけなく冷淡な友軍から、「赤い蚤」はますます距離をとっているように見える。多くの職員は凍傷の懸念から「赤い蚤」と身体的に接触することを恐れている。質問をされた際にさえ、「赤い蚤」はこれに関してほとんど意見をしていない。添付した作戦後の面談の書き起こしに、この分離のさらなる例が見てとれる。にもかかわらず数回の主要な攻防双方の作戦で「赤い蚤」は決定的な役割を演じている。しかしながら行動の変化は忠誠心が将来動揺するかもしれないことを示しているため、「赤い蚤」への慎重な監視を継続するよう推奨する。
ソヴィエト連邦万歳。
面談記録 "P"部局 第二課
24.V.1942 D.NR:24-IV-1943
文書20-VIII-1944に添付
この添付文書は「赤い蚤」との面談の書き起こしから抜粋したものである。面談はモスクワ戦略攻撃作戦14の終了後に実施された。面談者は儀式後優先的かつ直接的に「赤い蚤」の訓練を補助していたエージェント「マクシム」である。M: 記録のために氏名をお願いします。
RF: ヴィクトル・クズネツォフ上級軍曹、コードネームは赤い蚤です。
M: では今日の日付をお願いできますか？
RF: 1942年5月24日です。
M: 素晴らしい、精神は大丈夫なままですね。
RF: なにか問題があるんですか？
M: いや、任務報告後のただの単純な質問ですよ。結局あなたは普通の兵士じゃ全然ないんですから、大丈夫か確認したいんです。
RF: そうですよね。
M: もっとも直近の作戦中にドイツの戦車旅団を撃破せよと命じられましたね。あなたには簡単な芸当ですよね。間違いないですね？
RF: はい。
M: この作戦中にAlaric15のエージェントがあなたを攻撃し、我々の儀式と似たやり方で懐中時計に拘束しようとした。間違いないですね？
RF: はい。
M: だから反撃としてこれらAlaricのエージェント3人のうち2人を凍らせた。間違いないですね？
RF: はい。
M: 3人目のエージェントになにが起きたか説明してくれますか？
RF: 脚だけを凍らせたので奴は逃げられませんでした。そうしたら、尋問もできるかと。
M: できたでしょうね。そいつを殺さなければ。しかも我々が捕まえて尋問する前に。それに、殺すとき頭を凍らせたのは緩やかで残忍なやり方だったとみな言っています。これらの証言は正確ですね？
RF: はい。
M: エージェントを拘束しようとしていた兵士についてはどうですか？ 凍ってましたね。間違いないですね？
RF: はい。
M: 彼らはなにをしたんですか？
RF: 邪魔になったんです。味方が数人いたからってだけで砲兵が撃つのをやめると思いますか？
M: ではそもそもなんでエージェントを凍らせたんですか？
RF: ロシアにあれほどのことをした後で、ドイツ人は苦しむ必要があると認識していました。
M: 理解できる反応ですが、あなたはこう報告されてるような事案を何度も起こしてて、しかも毎回似た口実で正当化してますよね。なんで尋問の意図やらなんやらでこれらの出来事を正当化する必要性を感じたんですか？
RF: 公式報告書では復讐の印象がよくありませんから。
この注目すべき行動の変化を除けば、「赤い蚤」は効果的な戦時の戦闘にふさわしい。ドイツ人の人間疎外16のなかで助けとなる。したがって措置の必要はない。
プロジェクト中止の通達 "P"部局 第二課
18.XII.1948 D.NR:18-XII-1948
文書11-XII-1947に添付
送付者: ソ連共産党書記局
受信者: メフォディ・クズミン к.б.н.
詳細: ソ連共産党書記局の直命により、1948年12月18日をもって「プロジェクト: 赤い蚤」を中止し、担当部門を解散する。以上の措置は直ちに発効する。本件中止は1948年12月15日の事案を受けて発令された。当日に「赤い蚤」が保安施設「ヴェラ」から逃走したのである。本件事案の正確な原因は現在調査中だが、事案の結果は明確である。現在、「赤い蚤」は自身の強化に最適な環境であるシベリアの荒野を徘徊している。逃走中ないし直後に「赤い蚤」の位置の特定および/または拘束を試みた全てのGRU-P職員が殺害されている。
したがって、「赤い蚤」がGRU-Pの制御下に復帰し、さらなる通達があるまで「プロジェクト: 赤い蚤」および「赤い蚤」の再収容に無関係な全研究を中止する。
本件プロジェクトに関して以下の通り要請する。
- ソ連共産党書記局による特段の命令がない限り、「きよしこの夜」および「赤い蚤」に関係する一切の公文書を破棄せよ。
- 軍人および民間人による「赤い蚤」のあらゆる目撃報告を隠蔽せよ。
「プロジェクト: 赤い蚤」に関係する全職員は「赤い蚤」の位置の特定と再収容の任務に再割り当てされる。「赤い蚤」の既知の最終地点に向かう複数の巡察隊を直ちに組織せよ。仮に「赤い蚤」が存在していた場合、拘束の儀式を試み、拘束される実体「赤い蚤」を貴官の裁量で処遇せよ。
ソヴィエト連邦万歳。
これがGRU-Pの公文書中でSCP-6051に関係する最後の既知の文書です。この事案後もSCP-6051はシベリアにとどまり、GRU-Pによる数度にわたる再収容の試みは全て失敗しました。
SCP-6051は1987年9月15日に財団に認知されました。ソ連崩壊が迫るにつれてさらなる再収容業務に使用する資金と資源が不足したため、SCP-6051の管理責任を移譲する目的でGRU-Pは財団に接触しました。GRU-Pは破棄されていなかったSCP-6051に関係する全文書を明け渡すと提案し、引き換えに短期の財政的援助を提供するよう求めました。これらの条件に対する合意が成立し、財団はSCP-6051の収容を直ちに試みましたが、全ての収容試行が失敗に終わりました。
以下は現行の収容プロトコルが導入される前の最後の収容試行の書き起こしです。
映像記録書き起こし、第5回収容試行
日付: 1989/11/26
探索部隊: 機動部隊イプシロン-9 ("火喰らい")
対象: SCP-6051
部隊長: EP-9 ダニエルズ
部隊員: EP-9 ウォーカー / EP-9 プーシキン / EP-9 ダラス / EP-9 レイン
補注: 記録開始時、MTFイプシロン-9は記録上のSCP-6051の最終地点に向かっていた。輸送車には当時試作品だった映像・音声記録システムが装備されていた。また、MTFイプシロン-9の部隊員は暴力的衝突の際にSCP-6051との戦闘を補助する電熱服と焼夷兵器を装備していた。
[記録開始]
EP-9 ダニエルズ: 無線機作動中、みんな聞こえるか？
EP-9 ウォーカー: チェック。
EP-9 プーシキン: チェック。
EP-9 ダラス: チェック。
EP-9 レイン: はっきり聞こえる。
EP-9 ダニエルズ: 監督司令部、聞こえるか？
監督司令部: こちら司令部、聞こえる。
EP-9 ダニエルズ: 了解した司令部、我々はSCP-6051の予測地点に接近中、ETA17は3分後。
EP-9 ダラス: そんで、俺たちを送るのが財団にできたベストなのか？ APC181両にMTF5人？ ヘリコプターかなんかないのか？
EP-9 プーシキン: あるけどもう試したんだ。うまくいかなかった。
EP-9 ウォーカー: この服が俺たちを守ってくれるって思ってるのか？
EP-9 レイン: 白衣の連中は間違いなくそう考えてるらしいし、俺は彼らの意見を信じる。
EP-9 ウォーカー: なに考えてんのか自分でも分からんが、つまり、これの前に5回試行があったわけだ。全く励まされん。なんで今でもやりあおうとしてんのか分からん。
EP-9 レイン: 分かってる限り奴が挑発されずに攻撃したことはない。まだ理性を持ってるに違いないってことだ。慈悲深いこった。
このとき輸送車が急に停止する。
EP-9 ダニエルズ: ダラス、状況報告！
EP-9 ダラス: なにが起きてるか分かりません。車が完全に止まって、タイヤはびくともしません。
EP-9 ダニエルズ: 司令部、こちらダニエルズ。輸送車が動かないため、ダラスとウォーカーを調査に送る。プーシキンと自分は輸送車の中にとどまる。了解したか？
監督司令部: 了解。できる限り速く修理しろ。外でやられたくない。
EP-9 ダニエルズ: じゃ言った通りダラス、ウォーカー、行って見てみろ。
EP-9 ダラスとEP-9 ウォーカーが輸送車を出て、車両のエンジンを調査する。
EP-9 ダニエルズ: ウォーカー、この車は動けそうか？
EP-9 ウォーカー: うーむ…望み薄です。凍ってます。
EP-9 ダニエルズ: どのくらい凍ってる？
EP-9 ウォーカー: カチカチです。
EP-9 プーシキン: 凍らせないためにエンジンを温めてたんだとばかり。
EP-9 ウォーカー: そうだ。
EP-9 プーシキン: まあ、はるか上空でこれが起こってたらって想像してみろ。
EP-9 ダラス: 参るね。
EP-9 ダニエルズ: 司令部、SCP-6051が車両を使えなくさせた。すぐに遭遇しそうだ。既知の奴の最終地点から5マイル離れた場所だと見積もってる。帰還を試みるが…約束はできない。
監督司令部: 了解。輸送車の周りに防御線を築き、SCP-6051を警戒せよ。健闘を祈る。
EP-9 ダニエルズ: 感謝する司令部。
EP-9 ダラスが修理を試みているあいだ、EP-9 ダニエルズ、ウォーカーおよびプーシキンは指示通りに行動し、輸送車の周囲に防御線を構築する。
EP-9 ダニエルズ: ダラス、温められるか？ 氷を溶かせるか？
EP-9 ダラス: 火を使えばおそらく。でも時間がかかるでしょうし、こんなに凍った後でエンジンが動くか疑問ですね。
EP-9 ウォーカー: ダニエルズ！ 2時方向に動き！
MTFイプシロン-9の部隊員は全員EP-9 ウォーカーの向いていた方を見る。接近するSCP-6051が見える。MTFイプシロン-9の部隊員は全員防御陣地に入り、SCP-6051に照準を定めている。
EP-9 ダニエルズ: 司令部、SCP-6051を視認中、命令通り進める。
司令部: 了解。
EP-9 ダニエルズ: プーシキン、出番だ。
EP-9 プーシキン: （ロシア語で） ヴィクトル・クズネツォフ！ 我々はSCP財団の者です。我々の組織から安全と安心を提供したい。収容を受け入れてください。誰も傷つく必要はありません。
SCP-6051: （ロシア語で） ほっといてくれ。
EP-9 プーシキン: （ロシア語で） 今なんと？
SCP-6051: （ロシア語で） なんでおまえらの上官どもはこんなに人を送りこむんだ？ 俺は人間世界の近くにいられないし、収容房にもだ。今すぐ逃げれば誰も死ななくていい。
EP-9 プーシキン: （ロシア語で） 動き回るのを認められないだけです。信じてください。財団ではるかに安全に過ごせます。
SCP-6051: ここからSCP-6051は英語で話し始める…残酷演劇19って聞いたことあるか？
EP-9 プーシキン: 今なんと？
SCP-6051: それについて一回読んだんだ。観客にショックを与えて役者との関係を混乱させてたはずだ。そのバリアを壊して正体を見せろ。おまえらにも当てはまるかどうか確かめよう。忘れるな、逃げろって頼んだからな。
この文が終了した直後、SCP-6051はEP-9 ウォーカーとEP-9 ダラスが即死するところを目撃した。映像解析は凍傷による死亡だと示した。EP-9 ダニエルズとプーシキンがSCP-6051に発砲を開始するが、効果はほとんどない。EP-9 プーシキンが投擲したテルミット手榴弾が爆発し、SCP-6051を撃退する。
EP-9 ダニエルズ: あれで寄りつかんだろ。なにか考えは、プーシキン？
EP-9 プーシキン: 素早くやれば逃げられるかもしれません。
EP-9 ダニエルズ: シベリアに？
EP-9 プーシキン: もっといい案ありますか？
EP-9 ダニエルズ: やってみるか。
この計画が実行可能になる前にSCP-6051が反転して異常性を発揮し、EP-9 プーシキンは殺害され、ひとえにテルミットの適時の燃焼により一命をとりとめたEP-9 ダニエルズは瀕死の重傷を負った。
SCP-6051: もう火が消えそうだ。その前に話すぞ。待ってるあいだ他にできることはそんなにないからな。
EP-9 ダニエルズ: こうしてる必要はない。我々といれば安全だ。
SCP-6051: 逃げるチャンスをやったのに受け取らなかっただろ。にしても鍵のかかった部屋で余生を過ごせって？ また拘束されるつもりはない。できたからって俺たちの時間と労働力を節約できるわけじゃないぞ。
EP-9 ダニエルズ: ほっといてほしいんならなんで攻撃する？ たたきだすのは簡単だろ。
SCP-6051: なんで火は燃える？ 水でおぼれる？ 人の手にあまるものの副作用にすぎない。制御できないんだ。
EP-9 ダニエルズ: じゃどうしたいんだ？
SCP-6051: おまえら財団が俺を箱に入れたがってるのは、怪物になって世界征服をたくらむんじゃないかって心配してるからだ。そんなでかい計画はない。
このときSCP-6051は視線をそらし、輸送車のカメラの方を見ている。
SCP-6051: 赤い蚤について調べたんだろ。クレムリンもホワイトハウスも襲ってない。ここ以外のどこにもいられないんだ。収容しようとしつづけてもいいが、たくさん金と人が消えるぞ。それか居場所に残るのを単純に認めてくれてもいい。人間のどの街にも一歩も入らないって約束する。この約束を破ったら好きなだけナパームをぶちこんでくれ。
EP-9 ダニエルズ: だからなんだ？ ほっといてほしいのか？！ それだけか？！
SCP-6051: まとめろと？ そうだ。テルミットが消えかけてる。楽しかったぞ。話の終わりにたどりつけんことはほぼないんだが、話しつづけられんのが残念だ。それじゃ、прощание.プラシャーニェ20
寒さが強まり、映像終了まで記録機の視界が雪に覆われる。
[記録終了]
末文: SCP-6051の最終的な確保は理論上可能だが、収容試行失敗時の人的・財政的損失とシベリアの荒野での効果的な自己収容を考慮して、当該措置は不要だとみなされている。収容試行よりもSCP-6051への監視を優先するため収容プロトコルの更新が決定されたが、収容違反時の直接的介入は選択肢として残る。 - ヴァシーリー・クズミン博士、SCP-6051研究主任。