機動部隊ガンマ-6により調査中のSCP-6055。
特別収容プロトコル: 機動部隊ガンマ-6 "大食らい" はSCP-6055上に位置する海洋の監視保護にあたります。財団船舶の防衛線はSCP-6055の現在の境界から周囲1.6kmを常時維持する必要があります。SCP-6055の周辺海域への進入を希望する民間人には、第二次世界大戦から残留する不発機雷が当該海域に存在することを通告しなくてはなりません。SCP-6055への進入の要請は最低2名のレベル4研究員による承認が必要です。
SCP-6055-2に類似する種が8 - 11月に発見された場合、鯨類イベントが宣言されます。
鯨類イベントの期間中、SCP-6055-2実例がSCP-6055への渡りを行う間、財団指揮下の軍船の小規模艦隊が同行する必要があります。民間人には所定の軍事演習として伝達されます。SCP-6055-2実例を目撃した無許可の人物は状況に応じて記憶処理が実施されます。当該イベント中におけるSCP-6055-2実例との接触は禁じられています。
説明: SCP-6055はバルト海内に位置する余剰次元空間で、スウェーデンのストックホルムの海岸から80kmの距離に存在します。当該空間は地域的な周囲の幾何学との論理的な整合が不可能であるにも拘わらず内部が極度に大きいことが知られます。
SCP-6055内への唯一既知の進入口は指数関数的比率で縮小する現在直径4mの小さな洞穴の開口部です。発見時における当該のギャップは直径約95mであり、徐々に縮小しています。当該空間は"極限の自然の美しさ"を有するものとして言及されるエリアを包含しており、豊富な珊瑚・水生植物相・極度に密集した海棲哺乳類を伴います。
最初に記録されたSCP-6055-2が出現した湖。
SCP-6055-2は鯨類イベントの間に出現した異常生物です。毎年地球の海洋生物の5%がSCP-6055への回遊を開始し、鯨類イベントに指定されます。この時、影響された動物相は大規模な魚群として集合します。これらの構成種は通常別個体との作用を持たず、また捕食性の生物は食欲を示しません(ただし厳密な植物食性の生物は継続して植物を消費します)。全ての動物相は2 - 3日の間SCP-6055を周回しますが、当該空間に進入する個体は認められていません。
加えて、未知の場所から未発見の種が少数出現し、鯨類イベントに影響を受けた他の生物に加わります。これらの種は既知の種と類似しますが、典型的には劇的なサイズ・プロポーション・複数の生物学的特徴を持ち、非異常生物と異なります。そして大部分の事例で生物発光が見られます。
SCP-6055が基底現実に存在する期間の長さは現在不明ですが、SCP-6055-2の特徴と合致する"海の怪物"の記載が汎世界的に存在しており、鯨類イベントは500 – 600年前に発生した可能性が示唆されます。SCP-6055の直接的な進入口の直上には、現代スウェーデン語の小さな碑文が認められており、Här är vi, skickade till våra gravar, begravda under havsvågor.(探査ログ6055-1を参照)と記されています。当該文の意味は不明です。
補遺 6055.1: PoIインタビュー
1995/03/12、46歳のスコットランド人の釣り人ブロディ・キャンベルが、SCP-6055-2実例に関連する彼の過去の体験についてオンラインの釣りフォーラム上のスレッドを投稿していることが発覚しました。財団が異常の実在を察知する以前から彼がSCP-6055-2を把握していたことが判明しました。財団の担当者は早急にインタビューを手配しました。
インタビュー対象: ブロディ・キャンベル
インタビュアー: エージェント・カーター
付記: 本インタビューはSCP-6055-2に関連するキャンベル氏の最初の投稿の3日後、スコットランドのクレイルの町に位置する彼の住居で実施された。
<記録開始>
エージェント・カーター: どうも、キャンベルさん。
キャンベル氏: こんにちは。どうぞ、ブロディと呼んでください。
エージェント・カーター: お望み通りに。"北海の奇妙な野獣"についての貴方の近日のネットの投稿についてお尋ねに参りました。
キャンベル氏: ああ、覚えてますよ。あれを削除した方ですか?まずいことしちゃいましたかね。
エージェント・カーター: 大丈夫ですよブロディ。我々は貴方が見たと主張する生物たちについてもう少し知りたいだけです。
キャンベル氏: 何故?あなたも見たんですか?スレッドに私の経験の大半を書いたと思います。
エージェント・カーター: ええ、そうですね、私も見たことが。現在あの生物たちの調査と記録をしようとしていて、彼らに関するさらなる知見が貴方に無いか知りたくて。
キャンベル氏: ああ、そういうことでしたら知っている全てをお話ししますよ。ええと、全てが始まりは、私が生まれた時のことで……
エージェント・カーター: そんなに昔から話さなくても結構ですよキャンベルさん。あの生物たちとの最初の出会いからで十分です。
キャンベル氏: おっと、そうですね。えー、最初は1972年の秋、私が海岸からおおよそ8km離れて釣りをしていた時です。海は荒れていました。いつもの獲物と一緒に、種類は覚えていませんが、メキシコかどこかにしかいないような魚も大量に獲れたので不思議だと思いました。浜辺に戻ると、この……[小休止] どう説明すればいいのか、あらゆる種類の魚の大群が私のボートの下を泳いでいったのです。つまり魚だけではなく、カメやクラゲ、クジラ、イルカ、それに……もっと大きい……
エージェント・カーター: 詳しくお願いします。
キャンベル氏: そこには巨大な……サメ……シュモクザメがいました。でも肌は正しくありませんでした。
[キャンベル氏が座ったまま15秒間沈黙する。]
キャンベル氏: 鱗が奇妙なふうでした。肌を覆っていて、動いた時にその下が見えたんです。そして物凄く巨大でした。普通のシュモクザメなら6mくらいでしょうか?あれは40か50は間違いなくありました。目は薄暗く、淡く青色に光りました。あれは間違いなく私を見ていて、あの目は私の心を真っ直ぐに見つめていました。
エージェント・カーター: このことは他の誰かに伝えませんでしたか?
キャンベル氏: 本当に誰にも伝えていません。両親は私が幼い頃に他界し、兄弟もリアルの友人も居ません。ちょっと飲みすぎたときにパブで誰かに話した記憶はあるのですが、彼らが信じたかどうか。
エージェント・カーター: 分かりました。他に遭遇したことは?
キャンベル氏: ありますね、ええ、83年にスウェーデンの漁業会社に就職しまして。ここで釣りをして見た時よりも、多くの群れをバルト海で目にしました。毎年秋ごろに起きてるんですよ。海にいる獣たちは、スウェーデン、ノルウェー、デンマークあたりの地域に移動し始めます。
エージェント・カーター: 分かりました。貴方が遭遇した生物についてさらに情報を集めはしましたか?
キャンベル氏: 彼らはゴミが嫌いですね。
エージェント・カーター: 彼らは……何と?
キャンベル氏: ええと、ある時、飲み終えたボトルを脇に投げただけなんですよ。当時は汚染の心配をあまりしていなかったんです。大きな群れがやってきて、背中に奇妙な形の岩を乗せた巨大な亀が1匹水面に上がってきて、鼻でボトルをつついて、そしてまあ……死にました。
エージェント・カーター: すぐにですか?
キャンベル氏: はい、なんだかだらりとして、海底に沈んでいきました。
エージェント・カーター: なるほど、分かりました。これでインタビューを終了します。[無線に向かって] 記憶処理の準備を。お時間ありがとうございました、キャンベルさん。
<記録終了>
補遺6055.2: 発見
SCP-6055は最初に記録された鯨類イベントに続き、1987年秋に発見されました。
背部に莫大な苔・海藻・植物相を示す、異様な巨体(全長約60m)のほぼ黒色のザトウクジラ(Megaptera novaeangliae)3頭が、北バルト海に繋がる大型の湖に出現しました。当該の湖は地元で人気の観光地であったため、地元の警察署に潜入していたエージェントに当該生物に関する報告が殺到しました。これが財団の介入に繋がり、当該生物は小型漁船を用いて330km追跡されました。
渡りの間、魚類とその他の海棲生物の群れは300万体を超えて集合し、SCP-6055-2のクジラが生物群を誘導しました。26時間後、当該実例は当時直径約95mであったSCP-6055に到達しました。存在する全ての生物は"巨大な水中の舞踏のよう"と表現される行動を開始し、パターンやフォームを変えてSCP-6055を周回しました。この時点でより広域の財団部隊が招集され、スウェーデン政府は当該領域を隔離しました。SCP-6055-2のクジラは海藻・苔類・藻類さらには未発見の水生菌類を瞬時に増殖させ、周囲に出現させたことが指摘されました。
2日後、全ての生物が当該領域から逃亡し、SCP-6055-2のクジラは急速にバルト海に沈み、財団職員の視界から姿を消しました。
この後、SCP-6055の調査は機動部隊ガンマ-6 "大食らい"により実施されました(探査ログ6055-1を参照)。
補遺 6055.3: 探査ログ
SCP-6055の位置は遠く離れていますが、余剰次元空間を探索する試みが実行されました。その多くはROVを介して実施されており、以下は現在までの全ての有人探査です。
付記: 当該遠征は機動部隊ガンマ-6の財団ダイバーにより、最初の鯨類イベントの開始から2日と23時間後である1987/10/19に実施された(当該遠征に至るイベントの説明については補遺6055.1を参照)。
<記録開始>
G6-1: 総員用意は?
[機動部隊が肯定的に応答し、SCP-6055への進入を開始する。SCP-6055-2のクジラの声が背景で流れる。]
G6-2: 光が……光が下から届いている?
G6-3: ありうる。何も分からんさ、数時間前に見つけたばっかりだ。
G6-2: いいね……
[SCP-6055の中へ15m降下する。]
G6-1: 司令部?司令部聞こえますか?
サイト-115司令部: ああ、ダッシュ1、聞こえている。
G6-1: よし。洞穴内約15mに小さな碑文があります。Här är vi, skickade till våra gravar, begravda under havsvågor と記されています。
サイト-115司令部: それをコピーしろ、ダッシュ1。すぐに翻訳させる。
G6-1: ありがとうございます、司令部。
[ガンマ-6がさらに10m降下する。]
G6-1: よし、行き止まりかもな。トンネルの先は ⸺
[カメラの映像ではG6-1が角を曲がり、SCP-6055内の空間が見えている。当該空間は非常に大型の地質構造のように見え、特徴は入り江に類似する。周囲は大量の植物と岩石で被覆され、異様に鮮やかな海藻や珊瑚が存在し、魚類・クジラ・サメの様々な種が景色を横切る。太陽光に照らされており、浅瀬に類似する環境が広がる。]
G6-1: 待て、あ ⸺ オーケイ司令部、我々は対処しているのは特殊な、あるいは非ユークリッド幾何学的アノマリーかもしれない。巨大な渓谷かクレバスがある。
G6-4: 信じられん。
サイト-115司令部: ガンマ-6、我々は君たちのトラッカーをロストしたが、無線信号はまだ拾っている。余剰次元空間に入ったのかもしれない。入口はまだ使えるか?
G6-1: はい。
サイト-115司令部: よし、この先も入れる空間の探査を継続してくれ。
G6-1: 了解。
[ガンマ-6が空間の主要部に進入する。]
G6-3: これは光る海藻と植物が……こんなにも。壮観だな。
G6-2: 生物発光だ、ダッシュ3。
[ガンマ-6が当該領域を調査する。カメラ映像は左に移り、直方体の形状の集合を映し出す。]
G6-1: 建築物か?
[G6-1が建築物を乗り越えて回避する。]
G6-2: 何が見える?
G6-1: 寝台……かこれは?それに椅子がいくつか。妙だな、絶対にここに人が住んでる。
G6-2: 他にも何かあったぞ。
[カメラ映像では、G6-2が崖の岸壁の平坦な広い面を見せる。]
G6-2: ここに字が、岩に彫られてる。
[カメラ映像は完全に平坦な広い岩の面を映す。]
G6-2: おかしい。こんな小さな碑文には大きすぎる。
G6-1: 何と書いてある?
G6-2: "Havsvågor"。
[背景でイルカの小群の鳴き声が聞こえる。]
G6-1: 司令部、より大規模な調査チームが必要だと考えます。いろいろなことが。
サイト-115司令部: 分かった。ガンマ-6、今入口周辺の生物が去り始めている。戻って報告を。
<記録終了>
注記: この後、当該領域のより大規模な調査が実施され、以下が判明しました。
. 洞穴と周辺領域に散在する73棟の小型家屋
. 用途不明の大型かつ石造の壁
. 著しく錆びた船
. その多くが自然には遭遇しないものである、100種を超える水棲生物
. 洞穴の進入口の反対側に位置する、用途不明の大型かつ金色の輪
これらのイベントの後、ダイバーはSCP-6055の中で太陽光の見える上方へ泳ぐことを試みました。下からの目視では短い距離でしたが、遊泳には3時間を要しました。ダイバーは見かけ上一定速度で遊泳しましたが、非常に緩慢に動いているように観測されました。浮上時には広大な水面が広がり、視界に入る距離に陸地は存在しませんでした。帰路はわずか3分でした。
付記: 本遠征は機動部隊ガンマ-6のダイバーにより1988/07/06に再度決行された。無数の無人ROVミッションの後、SCP-6055内に脅威は存在しないと判断された。当時SCP-6055の幅は約52mで、有人船を配備した、より広域の調査が可能であった。以下は当該空間への第二次有人遠征のログである。
<記録開始>
G6-1: 目標地点に到着。司令部、潜水艦の配備を願います。
[曖昧な水飛沫が聞こえる。]
G6-1: ありがとうございます。ダッシュ5、ダッシュ6、乗船しろ。我々全員が乗り込んだら、コンパスが使えるなら2名は北へ向かい、可能な限り遠くへ行け。食料と水は用意してある、酸素はリサイクルしろ。
G6-5: はい。
G6-2: 潜水開始。
[ガンマ-6がSCP-6055の進入口に降下し、洞穴内に進む。]
G6-3: 光が一切見えない。
G6-2: 変だな。
[角を曲がり、SCP-6055に進入する。]
G6-2: おお。
G6-1: これは初めてだな。ここに昼夜のサイクルを示すものはこれまでなかった。
[カメラ映像では当該領域が顕著に暗い様子が映され、上を向いて空に月が存在する様子が映される。]
G6-1: 司令部、ここで夜が観察されたことは?
サイト-115司令部: いや無いな、ダッシュ1。向こうでは時間の流れが違うのかもしれない。
G6-3: 面白くなってきたな。
G6-2: 植物が魅惑的だ。多くは僅かに生物発光をしているらしい。
G6-1: 総員分かれろ、エリアをよりカバーできる。サンプルを確実に採取しろ。ダッシュ5と6はあっちから移動を始めろ。[大型の岩のアーチを指差す] 何か発見次第知らせてくれ。
[G6-5およびG6-6が要求された方向に潜水艇を操縦する。ガンマ-6は11分間に渡って周辺を調査し、異常の情報を探索する。]
G6-3: あれは何だ?
[カメラ映像にはG6-3が金色を呈する幅3mの球体を発見する様子が映される。当該球は常に低音と微量の光を放つように見える。それは小さな台座の上に置かれている。]
G6-1: 司令部、ダッシュ3が何か発見した。
サイト-115司令部: 見えている、ガンマ-6。可能ならサンプルを採取してくれ。
[ドリルの音が聞こえ、球体の小さな破片が除去される。]
G6-1: これをボートに持ち帰れ。
G6-4: 了解。
[球体が発光と回転を開始する。]
G6-1: おお、おお、おお、総員、武器を上げろ。
不明: お願いです。その必要はありません。
G6-1: [銛を球体の方へ向ける]
不明: 私は危害を加えません。[声はやや人工音声のようなトーンで話す。]
G6-1: お前は何だ?
不明: まだあなたには教えられません。
[球体が13秒間沈黙を維持する]
不明: あなたは人間ですか?
G6-1: ああ。
不明: 確認してください。手を私の上に置いてください。
G6-1: 自分は手などどこにも置かな ⸺
不明: 確認を待っています……
<記録終了>
SCP-6055の進入口の直上で船が待機しており、その後ガンマ-6は帰船しました。未知の存在との会話を記録し、また会話を促すため、G6-1はより適した記録装置を収集しました。G6-5とG6-6は潜水艇で北上を続けました。
ガンマ-6が当該領域を去る数分前、パイパー・アルファ・インシデントが発生しました。当該空間からのガンマ-6の脱出に際し、進入口はその大きさを顕著に減少しました。
補遺6055.4: 異常知性体とのインタビュー
1988/07/06、SCP-6055内への第二次有人遠征の間に、金色の球体は会話を継続できる高い知性を示すことが判明しました。オブジェクトの発見から32時間後、機動部隊ガンマ-6の司令部は球体へのインタビューを計画しました。彼らの会話はインタビューログ6055-1に掲載されています。
インタビュー対象: 未同定の異常知性体
インタビュアー: G6-1
<記録開始>
G6-1: もう一度やろう。なあ、もし名前があるなら名乗っていただけるかな。
不明: その情報は機密事項です。
G6-1: 何故だ?
不明: あなたが人間であることを確認できません。確認のため、手を私の上に置いてください。
サイト-115司令部: ガンマ-6、球体に手を置くことを君たちのメンバーの1人に要請する。
G6-1: [溜息] 了解。
[G6-1がグローブを装着した手を球体の上に置く。]
不明: 手の防具を解除してください。
G6-1: もし外せばスーツが水浸しだ。
不明: なるほど、分かりました。お許しください。
// [G6-1の手の周りに局所的な気泡が形成され、手袋を安全に外すことが可能となる。彼が球体の上に手を置く。]
G6-1: //[甲高い声] 何だ今のは?自分を焼くか何かしたのか?
不明: デオキシリボ核酸試料採取。ホモ・サピエンの起源を確認。ようこそ、人間。
G6-1: お前の名前は?
不明: 私はUbiです。
G6-1: Ubi?
Ubi: はい。それが私の発言内容です。
G6-1: 誰に作られた?
Ubi: 私はファイル削除により製作されました。はい。不確定です。当該ファイルは遠い昔に削除されました。
G6-1: ファイル?お前はコンピュータの類か?
Ubi: いいえ。私はデータ破損により製作された知性体です。私の思考能力は人工的なものですが、私はコンピュータを超えた存在です。
G6-1: 分かった。それでお前はどうやってここに来た?そしてそれは何故だ?
Ubi: ここは私の住居です。私は海洋から人類を守るため生み出されました。
G6-1: 我々を海洋から守る?
Ubi: はい。私の時代では、それが人類を呑み込み始めたのです。自業自得とも言えます。私は彼らに逃げ道を提供するためにやって来ました。ですが……
[5秒間の沈黙]
Ubi: 失敗しました。全ての変数を予想していましたが、1つ抜け落ちていました。
G6-1: それは何だ?
Ubi: 汚濁です。潮汐、サーペント、レヴィアタンがそれに呻きます。何かが私の創造物を、世界間のゲートウェイを壊したのです。私は逃げ道を与えるため金の裂け目を創造しましたが、誤算がありました。私が完成させた時には、皆居なくなっていたのです。
G6-1: なるほど。
Ubi: 申し訳ありませんが、私は仕事に戻らなくてはなりません。
[球体は回転を止め、周囲の光を弱める。]
<記録終了>
この後、ガンマ-6はUbiとのコミュニケーションを2時間に亘って試みましたが、いかなる声にも応答しませんでした。
注記: 本インタビューの終了の後、G6-5とG6-6が潜水艦遠征から帰還しました。彼らは帰還までにSCP-6055の進入口から134km北上しました。2名はマッコウクジラ(Physeter macrocephalus)の小群が渡りの間に同行していたことを報告しました。彼らはSCP-6055が大きな丘か海底の山の上にあると指摘しました。
SCP-6055が位置すると思われる大型の丘の基底部に辿り着いた際、チームは遠方に大型の市街地の跡を発見しました。当該領域は現代のストックホルム市街に類似しますが、重度の腐朽を示します。なお、当該の丘は基底現実に存在しません。
インタビュー対象: "Ubi"に指定された異常知性体
インタビュアー: G6-1
<記録開始>
G6-1: どうも。質問に答えてくれ、さもなくばここを去る。
Ubi: はい、人間?
G6-1: 結局、今もう我々は1日中コミュニケーションを取ろうとしている。気付いてるか?
Ubi: はい。
G6-1: よし。もう少しお前に質問する。まず、我々のダイバー ⸺
[1頭の巨大なリュウグウノツカイ(Regalecus glesne)がG6-1とUbiの間を遊泳する。その顕著な長さのため、G6-1の視界が曖昧になる。]
G6-1: ダッシュ3、できればこいつをおびき寄せてくれ。
Ubi: お許しください。
[Ubiが共鳴を開始。リュウグウノツカイは対象物を向きを変えてUbiを視認し、反対方向へ遊泳する。]
G6-1: あれとコミュニケーションを取ったのか?
Ubi: 見方によれば、そうです。
G6-1: そうか、じゃあ。まず、我々のダイバーが劣化したストックホルムの残骸を発見した。何があったか知ってるか?
Ubi: 海は人類の振る舞いに辟易しました。最初に人口の多い地域から破壊したのです。
G6-1: 海……海が牙を剥いたと。
Ubi: 正確ではありません。
G6-1: やめてくれ、Ubi、謎かけはやめてくれ。何を言ってるのか物凄く分かりづら ⸺
Ubi: 申し訳ありません。私は会話用にプログラムされていません。
[Ubiが大きく平坦な岩の面に向かって未知の手段で移動を開始する]
Ubi: [スウェーデン語で話し、「我々はここに、波の下に埋もれた、我らの墓の中に居る」と繰り返し発声する。]
この時点で、知性体は再び質問への応答をしなくなり、岩肌の手前にある台座の中の球状の彫刻へ緩慢に漂着する。ユビは当該の空隙に自身を挿入し、回転を開始する。ゴロゴロと音がし、岩肌が持ち上がり周囲に拡大する。高さ約30メートル、幅および奥行き約15メートルの大きな部屋が岩陰から姿を見せる。壁には古代の墓や寺院を想起させる色彩の絵が描かれている。
<記録終了>
Ubiは彼らが領域に留まることを希望しましたが、ダイバーたちはこの発見を受けて当該領域から退去しました。
補遺6055.5: 部屋の分析
発見後、当該室内の壁の内容は財団のスペシャリストが撮影・調査を行いました。その特徴から、当該の壁は古代の墓に見られる絵画と同様の読み方を想定していると判断され、意味の解明のため外部協力が要請されました。以下は当該室内の壁面の重点的分析結果です。
最左の壁: 大量の建築物を象形文字様の構図で描く。それらの多くは現代の都市、特にシドニー、ロンドン、ニューヨーク、香港に類似する。加えて基底現実に存在しない未同定の3都市が存在する。直下には海域が存在し、SCP-6055内で見られるものに類似する植物相を伴う。SCP-169・SCP-1126・SCP-3000の漠然とした影が存在しており、特に全3体とも白衣を着た潜水艇のクルーに観察されている。
中央の壁: 前述の海域の直上に存在する全てが黒色物質で浸されつつあり、黒色物質は直上の陸地から分泌されている。先に言及したアノマリーは最早存在しないが、最初に発見された個体に類似する無数のSCP-6055-2がおり、物質と他の瓦礫片に被覆される。夥しい数のSCP-6055-2は死亡して海底で腐敗しているように見える。平均海水準は左の壁のものよりも顕著に高い。O5評議会に類似する人影がその様子を見渡している。
最右の壁: 完全に水没した都市が見られる。右にはいまだ水面上に山が存在し、明瞭なクレーターあるいは渓谷が存在する。斜面を走る財団の記章が彫られた乗り物にO5評議会の構成員全員が乗っているように見える。粘土と木材で構成された小屋(山頂の大型の湾にある小屋の1つ)に居住しているように見える、O5-4に類似する実体は、2つの金色の半円を両手に握っている。半円は輝いており、部分的に構築された金色の輪が近傍の崖に彫られている。白衣を纏った人影はそれを無心に見つめている。
天井: 2つの半円は現在1つの完全な円である。大型の金色の円が中央に配置され、周囲に黄色の光を放射している。かつて実体が居住していた湾全体は現在水没しており、珊瑚と海藻が生育し、風景はSCP-6055の至近領域に類似する。先に記載した輪は現在は岩ではなく洞穴の進入口を示しており、より暗い海域へ接続している。数多くの魚類・甲殻類・鯨類および頭足類が当該領域に居る一方、現在廃屋と化した小屋には生命の気配が無い。
天井の芸術様式には他の面から識別可能な差異があり、異なる実体により製作された可能性が示唆されています。
現時点でUbiは部屋に関する質問への応答を拒否していますが、台座に戻る前に天井を見つめる様子が観察されています。
サイト管理官ムーアのメモ(1999/06/08):
<音声記録開始>
ごきげんよう、私はサイト-115の管理官、SCP-6055調査の責任者だ。第二探査ログの後、我々は機動部隊ガンマ-6をSCP-6055に何度も派遣したが、"Ubi"に指定された異常知性体UF-11は、SCP-6055やその起源、あるいは鯨類イベントに関連する質問に最早応答しない。あれは会話を楽しんでいるように見えるが、そうではなく……よりありふれた話題の議論を好む。財団の現状、世界経済、海洋への関心、そしてあれが最も重要視しているのはO5評議会の現状だ。
あれが示しているのはとてつもない……その……思いやりだ。O5-4のための。O5-4はこのアノマリーについて何も把握していないようだった。彼のファイルを調べるよう、Ubiの情報が無いか見るよう、私はO5の他の構成員と管理官に要請した。
彼はUF-11に関して何も知らず、述べていたことは事実だったらしい。だが我々は……Undersea Balancing Initiative海底均衡化構想と命名された、彼の個人的なプロジェクトの中止を決定した。海水準上昇を抑制できると彼は主張しているが、SCP-6055での出来事を鑑みるに、中止が最善であると思う。構想では、物理的に製作されたものが人工知能UF-11 "Ubi" と酷く構成が類似することが示唆されている。直近のこれらの発見から、SCP-6055がアクセスした次元は我々の次元とほぼ同一たる鏡映しの次元であり、起源不明のXK-クラス:世界終焉シナリオを経験したと考えられている。XKシナリオの原因がどのような事象や実例なのか、また対応するものが基底現実に存在するかは、現在のところ明らかではない。
O5-4は、SCP-6055のO5-4に相当する人物がしたであろうことを、彼自身知らないうちに始めていただけに過ぎない。それは "Ubi" 別名「海底均衡化構想」の策定だ。我々の次元でUF-11 "Ubi"の創造主に相当するO5-4の注意を引くために奴が鯨類イベントを利用したことは、証拠から示唆されている。なぜ"Ubi"が彼と話したがっているのかは分からない。UF-11とO5-4との接触は彼自身の安全のために断つべきだ。
<音声記録終了>
補遺6055.6: 更新(2021/05/06)
現在SCP-6055の進入口の幅は空間内部へのダイバーの派遣が次第に難化しており、またROVの大きさゆえに当該領域のさらなる探査は現在困難です。SCP-6055の閉鎖と海洋汚染との間には直接的な相関関係があり、海洋の状態に対処する組織への資金援助が行われています。当該の試みと海洋汚染に対する社会的認知の向上によりSCP-6055の閉鎖速度は大幅に低減していますが、それにも拘わらずSCP-6055の進入口が著しく閉鎖されているため、研究は保留を余儀なくされました。
インド洋でのモーリシャス石油流出に応じ、SCP-6055の進入口はさらに3m閉鎖されました。12日後、財団が支援した大規模浄化作戦中、異常知性体UF-11 "Ubi" から発信されたと思われる無線信号がSCP-6055から放送されました。当該信号は巡視船により傍受されました。メッセージは以下の通りです。
O5-4の命令により、それ以上の通信は試みられていません。