SCP-6060


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私が置いてきた場所だ。覚えてる通りの場所。

どんな古い罪が待ち構えてるか見てみようか。

覚えてる通りの静かさだ。日中は活気があっても、夜には必ず恐ろしく静かになったんだ。


シュー

記憶よりも暗いな。メインの発電機は大昔に壊れちゃったんだろうな。多分予備はまだ動くはず。

確かこの辺りに……。


バン、フィッ
ブルルルルルルル

光あれ!

ああ、これかな…これだ!


バリ バリ

カリーが瓦礫の中で見つけた「権限のない訪問者」のサイン。まだそこにある。こんなにたくさん植物が生えてた記憶はないんだけどな。


ギシッ
コツ コツ コツ……

ああ、ねえ、旧友よ……なんでよ?ドアの後ろにどんな記録があるのか見せてよ。


ギシッ

私、本当にここをこんなに散らかしたままにして出てったの?不法占拠者が来たのかもしれない。


カサッ

私のカードキーだ。何の役にも立たなそうだけど。


コツ コツ

他の人はここを離れる前に何してたのか気になるな。


ギシッ

彼らの頭に何がよぎったのかほんとに気になる。


バン!

おっと。ああ、もう壊れてたのか。……これ私の昔の端末だ。まだログインできるかな……


カチッ カチッ
ブーーーーーン……
ビーッ!

まだ覚えてて。

ターミナル #006


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ようこそ、プレスコット氏
------

人事ファイル:

氏名: スーザン・"スージー"・C・プレスコット

セキュリティクリアランス: レベル 3

経歴: プレスコット研究員はプロメテウス・プロジェクトの元、長年財団に勤めてきました、そして、彼女の顕著な成長と、称賛に値する研究能力のため、6060-GHイベントの直後、研究員として迎えられました。

代表的な任務:
SCP-6060
プロメテウス・プロジェクト
SCP-5825
EE-6210-C

現在の任務: SCP-6060


スージー・C・プレスコット。最近聞いてない名前だ。

大昔のことみたいだ。全く違う個性、全く違う人生。全く違う人間。

本当に時間の無駄だな。そのプロジェクトは何だっけ?SCP-6060……

アイテムタグ: SCP-6060

アイテムクラス: Euclid

保存重要性: ⬤⬤⬤⬤⬤

収容プロトコル: SCP-6060は何としてでもサイト-40に収容する必要があります。SCP-6060の健康はプレスコット研究員によって保たれます。週に一回、プロメテアンの再構築のため、組織サンプルがプレスコット氏によって採取されます。 SCP-6060は出来るだけ早く収容される必要があります。

アイテム説明: SCP-6060は、「カンデラ」と名乗る女性の二足歩行生物です。SCP-6060のDNAはHomo sapiens と完全に一致し、異常性は持っていないと考えられます。SCP-6060は6060-GHイベント(口語では「災厄」)の数十年後に生まれました。


ああ。これで合ってた。

終わってなかったんだ。

補遺 6060-A: SCP-6060 インタビュー

回答者: SCP-6060
質問者: スーザン・プレスコット研究員、クリーブランド・オズワルド博士
序: 次のインタビューはSCP-6060が自らの起源とそれに関連した情報について何を知っているのかを調査するために行われた。
<ログ開始>


オズワルド博士: SCP-6060。私はオズワルド博士だ、こちらはプレスコット研究員。今日は君がどこから来たのかついて話し合おう。
SCP-6060: お前に捕まった時何も知らないって言った。なんでここにいるのかわからない。なんで生きてるのかも。
プレスコット研究員: どうして捕まらずにこんなに長いこと過ごせたのか教えてくれる?
オズワルド博士: ああ、君が全く変化していないことに誰かしらは気づいていただろう。
SCP-6060: お前には関係ないでしょ。
オズワルド博士: お前は俺たちの支配下にあるんだぞ、SCP- [SCP-6060は拳でガラスの仕切りを叩き、彼を遮る。]
SCP-6060: そんなの私の名前じゃない!私はカンデラ。そう言ったでしょ。
プレスコット研究員: 申し訳ないけど、プロトコルに従ってあなたのその……呼び名を使わなきゃいけないの。


振り返ってみよう。この時の私が従わなきゃいけなかった操り糸が感じられるな。

[SCP-6060は目に見えて怒っており、返事をしない。]
オズワルド博士: 君の名前については分かった。捕まったこと、それか何故捕まらなかったのかに話を戻そう。
SCP-6060: 他の人が気にしなかっただけって考えたことあるの?私が人間だとしても、彼らを傷つけたりしない。
プレスコット研究員: 説得力があるね。
オズワルド博士: そうだな、スージー。
SCP-6060: 何?私なんて言った?
オズワルド博士: 今日は終わりだ。


<ログ終了>
終了報告: SCP-6060の存在を一般に公開する計画が進行中。


他の知的生命体と仕事をするのにはわくわくしたな。この世界であんなアノマリーを見つけることなんてないと思ってた。悲しいかな、カンデラ。実の所、私は彼女がどんな風だったのかあまり思い出せない。


補遺 6060-B: SCP-6060が6060-GKイベント後に存在していることについて

「災厄」として知られるGH-クラス「デッド・グリーンハウス」イベント後には普通の人間は存在しないという事が一般的に受け入れられていたため、SCP-6060の存在は注目すべきものです。SCP-6060が6060-GK後に生まれたということは明らかに異常であり、その誕生自体が異常です。SCP-6060の存在が意味することは現在知られていませんが、注目を浴びています。

財団は研究を一般に公開する前に、SCP-6060が存在する可能性について一般の民衆がどう考えるのかを評価するための一連のインタビューを実施しました。実施されたインタビューの全体は、SCP-6060-AUIを閲覧してください。

回答者: ドミニク・アラニア
質問者: スーザン・プレスコット研究員
序: アラニア氏は、クモが優占種である異なる時間軸から来たと主張する大きなクモ綱の生物です。
<ログ開始>


プレスコット研究員: お時間を頂きありがとうございます、アラニア氏。よろしければいくつか質問をさせて頂こうと思います。
ドミニク・アラニア: 何でもいい。早くしてくれたまえ。
プレスコット: 「災厄」について何をご存知ですか?
アラニア: 他の人と同じくらいには。全ての人間を消し去り、人間以外のものが地球を支配した。私が来た時間より前に起きたことで、私が覚えているという訳では無いがな。
プレスコット: あなたは災厄が全ての人類を消し去ったと信じていますか?
アラニア: 私がシヴ1を信じているか聞いているのかね?[笑う] いいや、シヴを信じてなどいない。そんなの小さな蜘蛛を怖がらせていい子にするための作り話に過ぎないさ。
プレスコット: 普通の人間だと考えられる誰かに会った時どう反応すると思いますか?
アラニア: 彼らを潰す。[再び笑う] 分からないな。なぜそんな仮説を?
プレスコット: 研究の一環です。もしかしたら、もしあなたが……シヴに会ったらどう感じますか、と言った方が良いかも知れませんね。このようなことがあったらどうお考えになりますか?
アラニア: [数秒の沈黙] 怖がるだろうな。
プレスコット: 怖い?何故?
アラニア: 奴らが戻ってくるということだからな。

回答者: サミュエル・バロス氏
質問者: クリーブランド・オズワルド博士
他の参加者: スーザン・プレスコット研究員
序: バロス氏はホオジロザメ(Carcharodon carcharias) を彷彿とさせる特徴を持つヒューマノイドで、頭髪の部分に小さな生きたサメがいるように見えます。バロス氏は、自らを災厄を事前に異常な性質をもつことで生き延びた「クリーチャー」であると主張しています。
<ログ開始>


オズワルド博士: 私と話すことを承諾していただいてありがとうございます、バロス氏。いくつか質問をさせて頂きたいのですが。
バロス: サムって呼んでくれ。質問は構わないよ。
オズワルド博士: 「災厄」について何をご存知ですか?
バロス: 俺はその前から生きてたんだ。人間だった。俺はサメと話ができたし、怪我をさせられることはなかった。サーフィンをするにも危険が少なかったよ。俺の記憶の大半ははっきりしないんだ。[くすくす笑う] だけど多分彼らが俺を生かしてくれたんだろうな。多分俺はいつだってサメの仲間だったから。
オズワルド博士: [頷く] あなたもご存知のように、全ての人間は災厄によって殺されました。もし私が全ての 人間が死んだ訳では無いと申し上げたらどうしますか?
バロス: [関心を示す] シヴのことか? [くすくす笑う] シヴはただの作り話だぜ。[間] 君が見たことあるってんじゃなければな?
オズワルド博士: これは仮定的な状況です。この状況で、人間に会ったらあなたはどうしますか?
バロス: [笑顔が消える] それは……色々な答えがあるな。[間] つまり、俺は人間が死に絶えてなかったことを嬉しく思うだろう。だが、羨ましくも思ってしまうだろうな。なんで彼らは人間でいられるんだ、俺の頭には奇跡的に俺の首を折ってない、50ポンドのサメが乗ってるのにってな。
プレスコット研究員: あなたは自分にはどうにもできないことで、嫉妬されたり怒られたりしたいんですか?
オズワルド博士: スージー、君はこのインタビューで質問するなと言っただろう。
プレスコット研究員: すみません、ただ関係があると思っただけ……
バロス: いいや。
オズワルド博士: [数秒の沈黙] 正直に言っていただきありがとうございます。今日はこれで終わりです。

補遺 6060-C: SCP-6060の人間性検査

SCP-6060の発見・収容後、それが異常な性質を保持していないことを確認するために多くの検査が行われました。検査の内容:

  • 組織サンプルの検査
  • 血液サンプルの検査
  • バイタルサインの測定
  • 人間にとって異常だと考えられる物品や生物との接触

検査は毎週行われ、プレスコット研究員の必要に応じ、プロメテアンの再構築のために組織の採集が同時に行われます。

これらのログは無関係であるため削除されています。拡張されたログをリクエストするためには、オズワルド博士に面会してください。


そうじゃない。そのファイルがどこかにあったはず……

さあ、考えて。そんなに昔じゃないよ。どこに保存しておいたっけ?
私の人事ファイルくらいしか思い当たらないんだけど……

人事ファイル:

氏名: スーザン・"スージー"・C・プレスコット

セキュリティクリアランス レベル 3

経歴: プレスコット研究員はプロメテウス・プロジェクトの元、長年財団に勤めてきました、そして、彼女の顕著な成長と、称賛に値する研究能力のため、6060-GHイベントの直後、研究員として迎えられました。

代表的な任務:
SCP-6060
プロメテウス・プロジェクト
SCP-5825



現在の任務: SCP-6060

待って……EE-6210-Cなんてやった記憶はないな。

私もたまには天才だね。

これを調べてみよう。組織のやつが……かなり初期だったはず。

音声ログ: SCP-6060 組織検査

参加SCP: SCP-6060

参加職員: プレスコット研究員

他の参加者: n/a

音声:

[ドアが開く。少しの間沈黙が続く。]
プレスコット研究員: ああ。こんにちは、SCP-
SCP-6060: 私をそう呼ぶのはやめて!そんなの私の名前じゃない。
プレスコット研究員: 分かった。私……私はそう呼ばないよ。
SCP-6060: 何しに来たの?またバカみたいな質問をするの?
プレスコット研究員: いや、違うよ。私は……私はちょっと検査をしに来たの、申し訳ないけど。
SCP-6060: 検査?
プレスコット研究員: あなたに。
SCP-6060: そんなの分かってる、どんな検査かって聞いてるんだけど?
プレスコット研究員: 大したことはないよ。あなたに危害を加えたくはないから。
SCP-6060:よく言うよ。
プレスコット研究員: ……今日は組織サンプルだけ。皮膚を少しだけね。
SCP-6060: それって痛い?
プレスコット研究員: 少しだけね、でもあなたの擦りむいた膝よりは痛くないよ。
SCP-6060: 擦りむいた膝まだ痛いんだけど。
プレスコット研究員: うん、そうだろうね。
[プレスコット研究員がサンプルを採る準備をする間沈黙が流れる。SCP-6060が顔をしかめる。]
プレスコット研究員: ごめんね。
SCP-6060: そんなにひどくは無いよ、ただ……うん。
プレスコット研究員: そうだね。
[2人が話し始めるまでに少しの時間が流れる。]
SCP-6060: あんたはあいつらといなかったよね。
プレスコット研究員: 何?
SCP-6060: あんたはあいつらが私を捕まえた時一緒にいなかった。この施設で見た他の人は、全員私を捕まえた奴と一緒にいた。でもあんたは違う。
プレスコット研究員: あの人たちはいつも私をフィールドに連れて行ってくれないんだよね。
SCP-6060:なんで?
プレスコット研究員: サンプル採取は終わったよ。さあ、私の代わりにここを押さえて。
[プレスコット研究員が離れるのと同時に少し会話がある。]
SCP-6060: ……ありがとう。
プレスコット研究員: 何が?
SCP-6060: わかんない…他の奴ほど私に酷くしないことにかな。
プレスコット研究員: ずいぶんハードルが低そうだね。
SCP-6060: まあ、そうしてくれてありがと、博士。
プレスコット研究員: 私は博士じゃないよ。
SCP-6060: じゃあなんて呼べばいいの?
プレスコット研究員: えーと……うーん……財団の他の人はスージーって呼ぶかな。
SCP-6060: じゃあ、最低限のことしてくれてありがと、スージー。

ああ、そうだ。彼女は人間性に感謝してたんだ、これまで誰にも与えられなかった人間性に。私は正しいと思うことをしただけ。彼女は結局……人間だった。だから誰も私のようには振る舞わなかったんだと思う。

音声ログ: SCP-6060 血液検査

参加SCP: SCP-6060

参加職員: プレスコット研究員

他の参加者: n/a

音声:

プレスコット研究員: こんにちは……
SCP-6060: ……「SPD 6060」だか何とかって呼んどけばいいじゃん。
プレスコット研究員: あなたが嫌がると思ったんだけど。
SCP-6060: じゃあなんで名前で呼んでくれないの?
プレスコット研究員: 財団はそれを気に入らないと思うんだ。
SCP-6060: じゃあ誰が怒るのが怖いの?
プレスコット研究員: 誰を怒らせるかってわけじゃないんだ。
SCP-6060: じゃあ何のことなの?
プレスコット研究員: [間] 組織サンプルと一緒に血液サンプルも取らなくちゃ。そんなに…時間はかからないよ。
SCP-6060: メェーーー。
プレスコット研究員: [数秒の沈黙] え?
SCP-6060: メェー、知ってるでしょ、羊の真似。いくつか映画を見たの。
プレスコット研究員: うん……でも何でそんなことを?
SCP-6060: 羊は群れに着いてくでしょ。あんたは疑問も無く言われた通りのことをしてるの。
プレスコット研究員: え?つまり……私は何だと思われてるの?
SCP-6060: あんたにも自分の精神があるって分かってるよ。
プレスコット研究員: どうやって……待って、私にお説教しようとしてるの?
SCP-6060: 別に。どっちにせよあんたは私と話して、実際に私の気持ちを聞いてくれる。他の人は誰もそんなことしない。
プレスコット研究員: そうだろうね……私はただ、私がこの状況で扱われたいようにあなたに接してるだけだよ。
SCP-6060: それが言いたかったの。誰もそんなことしない。
プレスコット研究員: 私は……気づいてなかったんだと思う。組織サンプルを採るために腕を出してもらってもいいかな?
SCP-6060: 別に気にしないよ。[間] 何でこんなにたくさん検査をするの?
プレスコット研究員: 普通の人間と違いがあるのか見るためだよ。
SCP-6060: でも何でこんなに?
プレスコット研究員: ただ私たちがやらなきゃいけないことだから。
SCP-6060: 財団が?
プレスコット研究員: 私たちはアノマリーを見つける。それで、確保して、収容して、保護するの。
SCP-6060: 面白いね。確保されてるとも保護されてるとも思えないけど。
プレスコット研究員: そうだろうね。よし、終わったよ。腕はちょっと痛むかもしれないけど、数分したら包帯は取っていいよ。もし想定外の副作用があったりとか、1時間以上痛みが続いたら教えてね。
SCP-6060: ……ありがと、スージー。
プレスコット研究員: どういたしまして。


音声ログ: SCP-6060 バイタル検査

参加SCP: SCP-6060

参加職員: プレスコット研究員

他の参加者: n/a

音声:

SCP-6060: おはよ。
プレスコット研究員: おはよう。
SCP-6060: 今日は何するの?
プレスコット研究員: バイタルチェックと組織サンプルを採るよ。
SCP-6060: 装置がたくさん……あるね。
プレスコット研究員: うん。正直言えばやりすぎだって思うんだけど。EKG2から始めた方がいいかな、準備がいちばんめんどくさいし。よし、これをあなたの体に貼らなきゃ。どっちがどっちだか全然覚えられないんだけどね……
SCP-6060: うーん、やだ……違う、やりたくない……
プレスコット研究員: どうしたの?[間] 違うの、ほら、痛くないよ。見た目は怖そうなのは分かるけど、これはただ……体にステッカーを貼るだけだから。ただちょっと力がかかるだけ、終わったあとになんか残ったりもしないよ。分かった?
SCP-6060: 分かった……
プレスコット研究員: よし。これはここに付けて……それでこれはここに、これは……うん、大丈夫、あとこれは……これはあなたのお尻の右側に貼ってもらえるかな。よし、完璧。1秒ちょうだいね……
SCP-6060: ……スージー、私……!
プレスコット研究員: 深呼吸して、吸って……吐いて……また吸って……吐いて……落ち着くことだけを考えるの。
SCP-6060: 例えば?
プレスコット研究員: 何でもいいよ。私が不安になった時には、急流のそばにいるって想像するの。澄んだ水が流れてて、動物が水浴びをしてて、鳥がさえずってて……
SCP-6060: それ……妙に役立つね。
プレスコット研究員: いいね、いいね。EKGはほぼ終わったよ。そっちの方が落ち着くなら、次は組織サンプルに行こうか。
SCP-6060: 分かった。……なんで川なの?
プレスコット研究員: 私……分かんないや。[間] うん、分かった。ある日、遠い昔、サイトを離れたの。それでただ歩き始めて、その川に出くわした。川を見たことあったとは思えないんだけどね。その瞬間私は、それが今まで見た中で一番美しいものだって誓ったの。
SCP-6060: ……じゃああいつらは、あんたも外に出してくれないの?
プレスコット研究員: うーん……そうじゃない……いや……そうだよ!いや……それは……複雑なんだ。
SCP-6060: あんたもあいつらのうちの一人だとばかり思ってたよ。
プレスコット研究員: そうだよ。
SCP-6060: でもあんたは残りの奴らとは違う……でもあんたは奴らみたいに思われようとしてる。なんで?
プレスコット研究員: ……それは複雑なの。今日はこれでおしまい。何か問題があったら教えてね。
SCP-6060: ……ありがと。
プレスコット研究員: たくさんそう言ってくれるよね。私がそれに値するのか分かんないけど。
SCP-6060: そんなの関係なく言ってるの。ありがとう、スージー。
プレスコット研究員: どういたしまして……カンデラ。

この後にも会話があったような気が……気がする。確かこの辺りに……

音声ログ: SCP-6060を異常と接触させる検査

参加SCP: SCP-6060

参加職員: プレスコット研究員

他の参加者: n/a

音声:

プレスコット研究員: こんにちは。
SCP-6060: こんにちは、スージー。何しにきたの?
プレスコット研究員: うん、普通に思えるけど、あなたにとっては普通に思えないものを揃えてきたの。あなたがこれにどんな反応をするのか見なくちゃいけないの。
SCP-6060: [沈黙] オズワルド博士もそれやった……そ、それとクライン博士も……もうそれやりたくない。
プレスコット研究員: ああ、それならやる必要ないよ。2回もやれば十分でしょ。
SCP-6060: [間] ありがとう……
プレスコット研究員: どういたしまして。
SCP-6060: [間] あのさ、他の人からのインタビューで、あいつらがあんたをどう扱ってるのか気づいたの。あんたが説明するように、あんたは孤立してるみたい。あいつらはあんたを下に見てる。私……みたいに。
プレスコット研究員: 私は…… [沈黙]
SCP-6060: 本当なんでしょ。
プレスコット研究員: そうだよ。
SCP-6060: え?違う、あんたは違……
プレスコット研究員: そうだよ、カンデラ……[ため息] そろそろプロメテアンが何かを話さなきゃいけないね。
SCP-6060: プロメテアン?
プレスコット研究員: 災厄の前に作られたゾンビ映画を見たことある?
SCP-6060: あるよ……待って……それってつまり……
プレスコット研究員: [間] そうだよ。私は生き返ったの。財団によって。プロメテアンはゾンビとはちょっと違うんだけどね。私たちは科学の力でこの世に連れ戻された。そして……私たちはいつも腐敗と戦ってるの。この……この組織と血液サンプル。財団が、あなたが血の通った人間だと確信するために使ってるこれは、私を生かしておくのにも使われてるの。
SCP-6060: [沈黙] あんたって本当に面白いね。まるで私みたい、ほとんど唯一無二の存在。どうして私たちは恐るべき存在みたいに扱われてるの?なんでそんな素晴らしい奇跡の科学の力を、そんな欲しくもないクソのために使ったの?あなたは奴隷になるって思われてたの?もしそうなら、裏目に出てる。あんたはそうあいつらに知らせなきゃ。
[20秒の沈黙が流れる]
SCP-6060: ご、ごめん、そんなつもりじゃ……
プレスコット研究員: その通りだよ。でもそんなに簡単でもないんだ。私みたいな人を生き返らせるのに使われる手順は、記憶を消してしまうって分かったの。プロメテアンになる前の私がどんな人だったのか何も思い出せない。この場所は、本当は怖いところだけど、私が知ってる唯一の場所。あの人たちは私が知ってる全てのことを教えてくれた人。ただ離れることは……出来ないの。
SCP-6060: ううん、出来る。
プレスコット研究員: 私はどこに行けばいいの?私が知ってる唯一の場所から外に出て、何をすればいいの?
SCP-6060: ……小さいことから始めよう。川に行って。[間] それで、もしあんたが望むなら、伝説にある安息の地に。
プレスコット研究員: 安息の地?誰のための?
SCP-6060: 行き場が必要な全ての人のための。悪意を持ってそこを探す人にとっては、見つけるのがとても難しい安息の地。人間の女の子が、誰にも気づかれずに普通の子供時代を送れる安息の地であり、万一彼女がそこを離れたら、危険にさらされる場所。彼女は外に踏み出すべきではなかった場所。
プレスコット研究員: その場所はあると思うし、私はそこに行きたい。どうやって行けばいいの?
SCP-6060: 心に従って。きっと道の途中halfwayで分かる。

手動入力ログ

音声ログ: SCP-6060のセキュリティログ

参加SCP: n/a

参加職員: プレスコット研究員

他の参加者: カンデラ

音声:

プレスコット研究員: カンデラ、カンデラ起きて。
カンデラ: スージー……?今何時?
プレスコット研究員: カンデラ、起きて。行かなくちゃ。
カンデラ: 行く?
プレスコット研究員: 他の人はまだしばらく寝てるはず、でもセキュリティシステムはすぐに復活しちゃう。行かなくちゃ。
カンデラ: どういうこと…?
プレスコット研究員: あなたはここを出ていくの。
カンデラ: 嘘だ。嘘でしょ、信じられない、私……ありがとう、スージー。信じられないよ、私たちがここを出て行って、あんたは財団から逃げ出せるなんて、私の家を見せてあげるよ!
プレスコット研究員: 違うの、カンデラ。あなたは出ていくの。私は残らなくちゃ。
カンデラ: ……え?でも、なんで?
プレスコット研究員: そんなことを話してる時間はないよ。
カンデラ: でも私の組織がなければ……あんたは死ぬんでしょ。
プレスコット研究員: 大丈夫だよ。
カンデラ: 嘘つけ。
プレスコット研究員: 私はあなたがいなくても何年もやってこれた。サンプルも取っといてあるし、ちょっとの間は大丈夫だよ。
カンデラ: でも財団はあんたを疑う。
プレスコット研究員: もし私もいなくなったら疑うでしょうね。それに、もし私があなたと行ったら、財団はまたあなたを見つける。絶対に探すのを止めないでしょうね。お願い、カンデラ、あなたにはこの場所を離れるチャンスがある。そして私には財団がもう誰も傷つけないようにさせるチャンスが。
カンデラ: それはあんたの責任じゃない。
プレスコット研究員: 分かってる。でも私にしか出来ないの。
カンデラ: ……ありがとう、スージー。私……あんたがしてくれたこと絶対忘れない。
プレスコット研究員: 行って。


私……きっと何が起きたのかを思い出した方がいいよね。

手動入力ログ

音声ログ: 解散

参加SCP: n/a

参加職員: オズワルド博士、クライン博士、ユール博士

他の参加者: スージー・プレスコット

音声:

オズワルド博士: SCP-6060が逃げたと聞いた。名指しするのは嫌なんだが、証拠から……
プレスコット研究員: 私です。引き伸ばす必要はありません。
クライン博士: 6060に関わったプロメテアン を信じるべきでないと思ってたんですよ。
オズワルド博士: おい、スージーの財団での役割は我々と同じだ。
プレスコット研究員: 私が?
オズワルド博士: どういう意味だ?もちろ……
プレスコット研究員: カンデラと過ごすうちに、気づいたことがあるんです。
クライン博士: カンデラ?今名前を使ったか?
プレスコット研究員: そしたら私をSCP-6060-1とでも呼んでください。私たちに違いはありませんから。カンデラ……彼女は私に似ているんです、世界の理想に背いて生み出され、見捨てられた存在。
オズワルド博士: 君は見捨てられてないだろう。
プレスコット研究員: あなたたちは私を普通には扱ってくれなかった。まるで…私はまだ表向きには人間なのに!私……私が何でカンデラよりもいろいろな権利があるのか聞きたいですけど、そうはしません。私はここを去ることすら許されていないんです。私はあなたたちが管理しなければいけないアノマリーに過ぎない。
ユール博士: でも君は僕達の友達じゃないか!そ……そんなことを言わないでくれ![間] 一体何があったんだ?
プレスコット研究員: 何があったということではないんです。ずっと抱えていたことなんです。私はあなた達に命を救ってもらったから、この不平等にも文句は言ってきませんでした。でもカンデラ……私は彼女と話すことで沢山のことを学びました。私がしなければいけなかったことは、彼女が私の注目に値するかのように彼女と話すことだけでした。彼女にはその価値があったから。収容されなければいけないオブジェクトではなく。
ユール博士: スージー……
プレスコット研究員: 私たちは何をしてるんですか?今の世では異常となったものを2つか3つ見つけて、何も分かりはしないのに馬鹿らしい検査をするだけ。向き合ってくださいよ、もう財団なんて必要ないんです。
クライン博士: 馬鹿らしい!これまでに色々なことがわかった!そして我々は収容でき……
オズワルド博士: スージーが正しい。
ユール博士: え?
オズワルド博士: どうしてお前は財団のことを気にかけるんだ?もうお前は生きていないのに。
クライン博士: どうして私がその時生きていなかったからというだけで、文明を取り戻そうとしてはいけないんです?
プレスコット研究員: あなたは生きていることを罪だと感じてるんですか?
クライン博士: 何?それはどういう質問……
ユール博士: 君は僕達が6060を見つけた時からもっと敵意をもって振る舞い始めたよね。
オズワルド博士: お前もだ、ジャン。
ユール博士: これ以上引き伸ばしたくはないんだけど。うん、僕は6060に嫉妬してた。みんなそうなんじゃない?僕たちがこんな愚かな理由でこんな風に立ち往生してる間にも、彼女は人間性を保ってた。
オズワルド博士: 残りのチームメンバーにも話したことは無かったな。だが、我々は望むものへの憧れだけで動いていたようだ。この組織への尊敬なんてない。
クライン博士: クリーブランド……
プレスコット研究員: もうカンデラを保護する必要なんてありません。それがしたのは、私たちが持っているように偽っていた安定性を粉々にしたことだけ。気づくのにこんなに時間がかかったのは悲しいですね。
ユール博士: 何を……私たちは今何をすればいいんだ?
オズワルド博士: 偽るのはやめよう。
[ログ終了]


この記憶を振り返るのは大変だったな……でもやってよかった。どうやって全てが終わったのかを思い出さないと。

バリ バリ

彼女が来た。

カチ カチ……カチ

……やあ。あんたから連絡があってびっくりした。あんたが会いたがった場所を聞いた時にはもっとびっくりしたけど。

ここで向き合わなきゃいけない過去の亡霊がいたんだ。ここでまたあなたに会えるって分かってたから、私はそうする勇気をもらえた、なんでそうしなきゃいけないのかも思い出させてくれた。

……会えて嬉しいよ、カンデラ。

私も会えて嬉しい。でも正直、罠なんじゃないかって半分怖かった。

なんでそう思ったのかはわかるよ。でも違う。財団はとっくの昔になくなったんだ。

知ってる。噂で聞いたけど、確証は持ててなかった。これが私がここに来なきゃ行けなかった理由。自分で見てみるの。

……変なの。ここがこんなに荒れ果ててるなんて。ええと、そんなに長い時間が経ったわけじゃないのに。

自然はすぐに移り変わる。物事もすぐに変化する。

変化したのは自然?

ああ、変化したのは人間。まだ人間性というのは消え去ってはいなかったみたい。あなたがその証明。

あんたがその証明だよ、スージー。

変化といえば……

ん?

色んなことが変わった。 も変わった。私はもうあなたが知ってた人間じゃない。

そしたらあんたは誰?

私は財団が蘇らせたと思ってた女性じゃない。私は全く新しい、定義されてないもの。面白いでしょ。そして私は明らかにスーザン・C・プレスコット研究員でも無い。

私、あんたをなんて呼べばいい?

リバー。私の名前はリバー。

リバー……いいね。とても……

とても人間らしい。

……ありがとう。ただ……しっくりきただけなんだけどね。

じゃあ……財団が無くなって、あんたは何をしてるの?あんたには行くあてなんて……

本当に優しいね、カンデラ。でもできないよ。

まだ何言おうとしてるか聞いてもないじゃん。

じゃあ、私間違ってた?

……あんたはきっとハフウェイHaphwayを気に入るよ。とても住みやすい場所で、支えてくれるコミュニティもある。もう組織をあさる必要もない。

そしてあなたは二度と安全だと感じることは無い。本当じゃないけど。間違ってたら教えて。

私はあなたを大切に思いすぎて、あなたをそんな目に合わせたくない。よりによって、プロメテアンなんかの安全のためじゃなくて。

すごいね。見てすらいないのに。

何を?

あんたが私にどれだけのことをしてくれたのかを。どれだけ生きることや気配りをすることについて教えてくれたのかを。

あんたという人間がどれだけ素晴らしいのかを。

また会えてほんとにうれしいよ。この後忙しい?

財団が無くなってから忙しくないよ。

私と一緒においでよ。友達に会わせてあげる。

カンデラ、言ったでしょ……

ハフウェイじゃない。少し行くだけ。川まで行くだけ。あんたを……あんたを作り上げた場所が見てみたい。

……私も見せてあげたい。

それじゃあおいで。行こう。ここを離れて、自然は自然に任せたままで。

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