SCP-6080

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こっち来やがれ スポンジ・ボブ

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封がされた状態のSCP-6080

アイテム番号: SCP-6080

オブジェクトクラス: Euclid-exsequi

特別収容プロトコル: 不活性状態を維持するため、サイト-433の寝具備え付きの子供部屋を模した特化収容室にSCP-6080は保管されています。収容室には監視カメラを設置し、SCP-6080が示す行動の変化全てをモニターします。

SCP-6080-1実例群はサイト-433内の異常メディア保管室に格納されており、実験中のDクラス職員にのみ視聴が許可されます。許可を経ずにSCP-6080-1実例が視聴された場合、映像を視聴した被験者を退避した上で再放送Rerunイベントが終了するまで標準人型実体収容室に対象を収容します。

再放送イベント実験中の全ての要求はリクエスト房6080に提出される必要があります。現在、ハリス・ウィルキンス研究員がリクエスト房6080に配置されています。再放送イベント最中に収容室への立ち入りを要求する職員には各書類への事項記入が義務付けられます。

説明: SCP-6080は使い古された大型のダンボール箱です。SCP-6080の右側面には黒色のシャーピーペン1"エリックのEric'sカートゥーン・ボックス"Cartoon Boxと書かれています。当該のダンボール箱前面には極めて簡素な顔がシャーピーペンで同様に描かれており、インクは著しく経年劣化しています。

SCP-6080には生命が宿っており、自身の力で短い距離を移動することが可能です。一定の知性も呈し、声帯を持たないにもかかわらず発声を介したコミュニケーションが可能です。発声に合わせて前面に描かれた顔をアニメーションさせることで多彩な感情の表現が可能です。

SCP-6080が感情的に高ぶった状態にあるとき、現実改変を介して周囲の物理環境を自身の精神要素が反映されたものへ変化させます。SCP-6080を不活性状態に戻す方法が複数確立されていますが、慣れ親しんだ環境へ置かれることで '郷愁' の情を想起させることが大抵の場合において最も実践的です。

SCP-6080は上面に貼られたテープの剥離および再封印が可能であり、これにより自身の内にあるSCP-6080-1実例群を外に展開することが可能です。開封する度に独立したSCP-6080-1のコレクションが生成され、SCP-6080はその場にいる人物に対してどのSCP-6080-1の視聴を望むかを尋ねます。

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再放送イベント最中のD-2521の視点

SCP-6080-1はSCP-6080が生み出したDVDやVHSテープを呼称したものであり、様々な子供向けのテレビアニメ番組・アニメ映画で構成されています。既知とされるほぼ全てのSCP-6080-1実例には改変されていない既存メディア断片が含まれます。23

SCP-6080-1の視聴者には内容に関連する異常性が発現します。(再放送イベントとして言及) 再放送イベント発生とSCP-6080-1視聴における時間差は人により大きく異なります。4 発現する異常性は元となるメディア断片内で扱われる外観的・テーマ的要素を時限性を以て反映したものとなります。再放送イベントは些末かつ無害なものから重大な悪影響を及ぼすものまで、その影響度合いに幅があります。

再放送イベントは巻き込まれた人物に対して致死的なものではありませんが、肉体的および精神的変化が残存する可能性があります。(詳細は再放送イベント後遺症ログに列記) 記憶処理療法で緩和される当該イベントの精神的影響はわずかであることが明らかとされています。

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パラウォッチのフォーラムに投稿された画像

SCP-6080はウェブサイト parawatch.net での一連の投稿をもとに発見されており、『ロッコーのモダンライフ』Rocko's Modern Lifeの "呪われた" VHSテープの存在が当該の投稿内で言及されていました。"トゥーンコレクター"tooncollector5 というユーザー名の出品者とeBayでの取引を行い、当該のテープは投稿者の手に渡ったと報告されています。

出品者の特定と位置同定をすべく調査が実施され、即座にカリフォルニア州ベーカーズフィールド所在のヤコブ・ソーヤーが捕捉されました。ヤコブ・ソーヤー宅の調査により、当該人物は行方不明にあることが判明しました。テレビとともに数本のVHSテープおよびDVDソフトがソーヤー宅から発見されており、6 これらはSCP-6080-1実例であることが後に明らかとなっています。様々なカートゥーンへのレビューおよびコメントを収録した短編映像群161時間分が、当該人物のパーソナルコンピューターに外付けされたハードディスク内から発見されています。主要な動画ホスティングサイトのいずれにも該当するコンテンツは発見されていません。

SCP-6080は当該の家屋の地下室に閉じ込められていました。SCP-6080は激しい精神的苦痛を呈し、自身に近接する職員から逃れようとしました。SCP-6080およびに家屋にあったSCP-6080-1の全実例群は財団の管理下に置かれました。


インタビューログ:

SCP-6080の確保に追って、当該オブジェクトが苛まれている精神的苦痛の根源およびにその適切な対処法、両項の理解を目的としたインタビューが予定されていました。以下に内容を記します。

インタビュアー: ローワン・ラスター研究員7
インタビュー対象: SCP-6080


[ログ開始]

ラスター博士: こんにちは、SCP-6080。アイテム番号で呼ばれることは嫌じゃないかな?

段ボールが床面に擦れる音がインタビューマイクに拾われる。

SCP-6080: そんなのどうでもいいよ。僕はただ—

ラスター博士: ちょっと!ねぇ。どうか落ち着いて!やり過ぎると自分を痛めることになるんですよ。ストレスフルな状況にいることはこちらも理解してます。でも、もっと君の助けになれるようにその原因を教えてくれないと。

SCP-6080: すぐにここから出なきゃなんだ!あなたわかってない!

ラスター博士: 問題があるのかい?何がそんなに気になるの?

SCP-6080の発話が理解不能な程に加速する。

ラスター博士: お—

ダンボール箱前面に描かれた顔が発話する度に高速で表情を変える。

ラスター博士: お願いだから、SCP-6080、何に苦しんでるのか言ってくれなければ君の力にもなれないよ。

SCP-6080の動きが止まる。疲弊しきった表情を浮かべる。インタビュー室内の照明が明滅する。

SCP-6080: ご… ごめんなさい。ただ… とても怖くって。とてもさみしいの、あの子がいないと何もできないんだもん!

ラスター博士: エリックのこと?

SCP-6080が息を飲む。

SCP-6080: うわぁ!な、なんで知ってるの?

ラスター博士: いや、根拠はないんだよ、ただのまぐれ当たり。

照明の明滅が止まる。

SCP-6080: ごめんなさい、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの。

ラスター博士: 気に病むことはないんだよ!少し落ち着けたなら、何があったか話してくれるかな?

SCP-6080: 他に選択肢はないんだ…

ラスター博士: あ、いや、したくないのなら今すぐにやらなくちゃってわけじゃあないよ。

SCP-6080: だ— 大丈夫。おはなしするよ。

SCP-6080が深呼吸をする。

SCP-6080: 落ち着いてっていうのは僕には難しいや。あなたは自分の存在が… その、誰かのためのものなんだって想像できる?僕はそう感じられたんだよ、僕の存在しだした頃に。

ラスター博士: 存在しだした?

SCP-6080: うん、たぶん。僕もまだしっくりきてないんだけど。キラキラしたおもちゃとポスターとでいっぱいのベッドルームで目が覚めて、僕は… 僕が何のために作られたのか、僕が誰に作られたのかが分かっちゃった、ただそんな感じ。最初は怖かったんだ。ほんのちょっと叫んじゃったと思うけど、そしたらエリックが心配そうな顔してた。それでやめたよ。

ラスター博士: どうしてやめたの?

SCP-6080: 困らせたくなかったから。いろんなことが頭をよぎったけど、一番に大事なのはあの子を困らせないことだった。ただそうすることが僕の使命みたいなものだったんだ。

ラスター博士: なるほど。その子がさっき言ってた 'エリック' かな?

SCP-6080: そだよ!

ラスター博士: できる範囲でいいから、その子について説明してくれるかな?

SCP-6080: うまくできると思えないよ。

ラスター博士: えーと、それはどうして?

SCP-6080: あの子がどんな見た目だったか僕が説明しようとするときはいつだってみんな混乱するし怖がってた!

ラスター博士: それは、別の理由でその人たちを怖がらせたんじゃないかな?

SCP-6080: どゆこと?僕、あなたとそっくりだよね?僕の顔はちょっと青白いかもだけど—

ラスター博士: 私が思うに… 君はその…

SCP-6080: どしたの?

ラスター博士: 気にしないで。言ってくれても怖がることはないって約束します。

SCP-6080: わかったよ… うーん、エリックはとってもカラフルだった。体が青くて、頭に4本線の髪があって、赤いストライプが3本のシャツを着てて、僕みたいな鼻が1つあって、でも紫だった!それに、目と口は暗い赤色!

ラスター博士: 君が見えている人はいつもそんな感じなのかな?

SCP-6080: うん?みんないつだってカラフルで— 待って。それって変なの?

ラスター博士: いや…

SCP-6080: そんな、まさか。たった今、ガツンって衝撃が僕の頭の中を通り抜けてった!

ラスター博士: それは、よかった、じゃあ続けてくれるかな。

SCP-6080: だからつまり、僕があの子を見つめてるとスポンジボブを見たいと言うんだ。それで背中を開けるとスポンジボブのDVDがあるの。

ラスター博士: 痛くない?

SCP-6080: 本当にい、痛いのは、誰かが無理やり開けるときだけだよ。

SCP-6080が一瞬沈黙する。

SCP-6080: えと、とにかく、僕ら一緒に『スポンジ・ボブ』SpongeBobを見て楽しい時間を過ごしていたんだけど、エリックが悲しそうな顔しているのに僕は気づいた。どこか悪いのって聞いたら、スポンジ・ボブが友達だったらよかったのにって言ったんだ。そこで思いついた!

ラスター博士: 何をしたの?

SCP-6080: 僕がテレビに集中しだすと部屋の中に水がいっぱいたまり始めて、スポンジ・ボブとボブの友達みんなと一緒にいたんだ!これまでで最々々高の瞬間だったよ!ビキニ・ボトムを冒険したときほどにハッピーなエリックは見たことない!

SCP-6080がため息をつく。

SCP-6080: ほんとのところ、ずっとあのままだったらなぁって思ってるんだ。くそぅFudge8、あの頃が凄く恋しいよ。

ラスター博士: ファッジ?

SCP-6080: エリックはいつも言ってたよ、罰当たりな言葉は良くないって!

ラスター博士: なるほど。続けてください。

SCP-6080: それで僕とエリックはいっつも一緒に冒険に出かけたんだよ。カートゥーンの世界を全部探検しようって、素敵だった。冒険の途中で会ったキャラクターとおはなしするのが僕の一番好きなことだったかなぁ。

SCP-6080: ところで、これは僕から出てきたんだから、キャラクターも僕が動かすんだろうって最初は思ってたんだ。けどコントロールしてたって感じは一度もないんだよね。みんな思い思いに行動してたよ。

ラスター博士: つまり、君の異常性はカートゥーンメディアに関連したものであるにもかかわらず、そのメディア内のキャラクターをコントロールすることはできなかったと?

SCP-6080: 僕にはなんにもコントロールできないんだ。エリックがいなくなってからは、特にね。

ラスター博士: いなくなった?

SCP-6080: どのくらい前のことだったかな。ある日、僕が目を覚ますといなくなってて。バカンスに行ったんだと思うよ、僕以外のエリックのお友達も探したけどいなかったから。まるで… わけわかんない。エリックが… あんな風に僕のこと忘れたみたいに置いてくなんてありえない。あんなに冒険したんだもん!そんなことするはずないよ。

ラスター博士: 私が思うに、彼はそんなつもりで—

轟音がインタビュー室に一瞬鳴り響く。

SCP-6080: 知ってるよ、そんなのないって分かってる!続けていいかな!

ラスター博士: 私は、あー、君の心を乱したくなくて、申し訳ない。

SCP-6080: ううん、僕こそ、ご、ごめんなさい。こんなつもりじゃなかったの…

SCP-6080が再び深呼吸する。

SCP-6080: それで、うん。僕は一人ぼっちだった。どうしていいかわかんないし、パニックだし。憎んだっていうのは大げさかもだけど、まだ自分を憎たらしく思ってるよ。おうちから出て、出てっちゃった!そのままいるべきだったんだ。そしたら、帰ってきてたのかもしれないのに。

SCP-6080: おそとにいたときのことは今でも思いだせるよ。走って目にする端から声をかけたんだ、けどみんな怯えてた!みんな僕から逃げだした。僕を蹴った人も1人いたんだ。混乱にも慣れるだろうって思ってたけど、これは楽しいものじゃなかったよ。音と、光と、人と、すごい圧倒されて、そしたら、そしたら道に迷ってた。

SCP-6080: それで彼を見つけたんだ。ヤコブだよ。

ラスター博士: 話の腰を折って申し訳ないんだけど、ヤコブの見た目について説明できるかな?

SCP-6080: 彼は体全部が色んな赤とオレンジだけだったよ。見てるとちょっと頭痛がした。

ラスター博士: わかった。

SCP-6080: 最初に彼に会ったときは他のみんなと同じように僕を怖がってるように見えた。僕は怖くなって、さっきの男の人みたいに攻撃してくるみたいに見えたからそれで… ちょっとだけ僕を開けたんだ。そうすれば彼が怖がるだろうと思って。彼はただそこに立ってて、ほんの一瞬、こっちを見たら歯を剥きだしてあの気味悪い笑みを浮かべたんだ。僕のことを「使える」って言って、力づくで僕を掴んだ。

SCP-6080: どれだけ蹴ってももがいても、彼の手から逃げることできなかった。ただ放してほしかったのに、ゆ、許そうとしてくれなかった。グイって引っ張られて… こ、壊れちゃうって思ったの。どんどん遠くに連れてかれて、どんどんどんどん気持ちも沈んでった。吐いちゃいたいって思ったけど僕のおなかの中には何にもなくて。たくさんの建物と路地を通って、彼のおうちに連れてかれた。

SCP-6080: 中に連れてかれたとき、エリックのおうちをたくさん思い出したの。ポスターにおもちゃに、たくさんのDVDとVHSテープに囲まれてたから。ほんの少しの間、ここがエリックの新しいおうちで、またエリックに会えるんだって思ったよ。で、でも… 地下室に押し込まれて、そこは完全に空っぽだった。白のコンクリートと白いレンガの壁だけ。僕は床に置かれて、彼は前みたいに冷たく笑って、僕に「開けろ」って言った。

SCP-6080: だから僕はしたよ。開いて、彼は中にあるもの全部引っ張り出した。そうしたら僕のこと放してくれるんじゃないかって思ったけど、彼は出てってドアに鍵をかけるだけだった。何時間か経って、彼は戻ってきて、また開けるように言ってきて、それで僕言った— いやだって言った— それで ―僕。

インタビュー室内の温度が下がり、ペンキが壁から剥がれ落ちだす。

SCP-6080: 彼、引っ張って僕を開けた!やだって言うたびに僕を引っ張って開けるんだ!何度も何度も!僕、何度も何度も空っぽにされた。どうしてあんなにするの!出てきたので何してたのか僕は知らない、「おしごとだ」としか彼は言わなかった。僕、ディスペンサーだった。彼の用済みになったらポイって捨てられるんだ。

SCP-6080: 壁に模様が見え始めて。壁が白くて。天井は白くて。床も白くて。覚えてるよ、はっきり。白くて、白くて、白くて、白くて。

インタビュー室の内壁が白色に変換する。

SCP-6080: 眠るたびに悪夢にうなされた。いつも同じ夢。エリックと一緒にいて、僕にとって一番の時間なのに、どこかから出てきた何かに襲われる。何かは毎回違った。シェフに指を一本ずつ切られたり、毛糸の塊に絞められて真っ赤になった両目が飛び出したり、ペーパーマンに内臓を抉られてお腹の中を指で掻きまわされたり、あの酷い電卓に怒鳴られて頭が熱くなって沸騰したり!

SCP-6080: でも最悪だったのは?僕に起きてるだけなら、我慢できたよ、多分。でも、僕だけじゃなくて… 全部が… 白くて… それで… 白くて、白くて、白くて、白くて… 僕… お願いだから…

ラスター研究員がSCP-6080を抱擁する。室内の異常現象が収まる。SCP-6080はブルーベリーシロップに類似する組成の粘液を目から流し始める。

ラスター博士: 頼む、6080、もう安全なんだ、約束する。堪らないようなら少し休もう。

SCP-6080: つらかった、ただ、すごくつらかったんだ。ありがとう、本当にありがとう、おはなし聞いてくれて… ずっと続くんじゃないかって気がしてたの。エンドレスな白い世界から抜け出せないって思ってたし、僕がやったことへの罰だって。もう助けは来ないって思ってた。ごめんなさい…

ラスター研究員がSCP-6080への抱擁を止める。

ラスター博士: 君の経験したことがすごく、すごくトラウマになっているんだ。さっきみたいな反応を責めるつもりは全くないから。謝ることはないんだよ。でも、このことについてもうひとつ聞いてもいいかな?

SCP-6080: いいよ。

ラスター博士: ここに来るより前に何があったかを思い出せるかな?

SCP-6080: えっと… ある日に、しろ… 地下室にまだ僕が閉じ込められてたときに、突然ヤコブがとても怒った顔で部屋に入ってきたよ。僕を怒鳴りだして、彼が引っ張り出したカートゥーンに僕が何かしてるか聞いてきて、どういう意味なのか僕が聞いたら持ち上げていつもみたいに床に叩きつけられたよ。すごく機嫌悪そうな顔してた。彼はよく怒ってたんだ、けど… 僕、そこで死んじゃうと思った。気持ち悪くて、頭がぐるぐるして、僕の背中から彼がDVDか何かを取り出したのも全然気づかなかくて、僕はパニックで何かを中にしまったと思うけど、ヤコブが戻ってった後にはもうなかったよ。彼のテレビからノイズが聞こえてきて。そうだ、彼はカートゥーンを見ていたよ、なんでも見てたよ。

SCP-6080: ドアの前まで行って聞いてみたんだけど、それは… 説明できないや。いつも聞こえてくるのとは似てなかったはずだよ。静電気のバチッて鋭い音とひどい悲鳴が聞こえた。ヤコブのだと思う。

ラスター博士: 協力してくれて本当にありがとう。君の体験したことみんなを説明するっていう素晴らしい仕事をやってのけたね。これから君を部屋に戻すけど、何か他に質問はあるかな?

SCP-6080: 部屋はどんな感じ?

ラスター博士: どうしてほしいかな?

SCP-6080: ベッドルームみたいにできる?エリックの部屋みたいに?

ラスター博士: 他の人と相談することになるだろうけど、君のためにやりましょうとも。

SCP-6080: 本当にありがとう!あぁ、本当にうれしいよ!ありがとう、ありがとう、ありが—

ラスター博士: あ、移動する前にもうひとつ質問が。君の好きなカートゥーンは何?

SCP-6080: 難しい質問だね!そうだな… 『ブレイブ・リトル・トースター』The Brave Little Toasterかな。

ラスター博士: それはどうして?

SCP-6080: わかんない、僕と似てるようなキャラクターってたくさんいるけど… 僕は— 僕、本当にランピーが好き。

SCP-6080が一瞬興奮したように見える。

SCP-6080: あー、うん、もう終わりにしない?

ラスター研究員がクスクス笑う。

ラスター博士: よろしいとも。

[ログ終了]

注記: この直後にSCP-6080の収容プロトコルが導入された。言及されたDVDはヤコブの家屋から見つけられなかった。


実験ログ:

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SCP-6080収容室のダイアグラム

以下の実験は予測不可能な再放送イベントの性質を十分に理解することを目的としています。実験のほぼ全てがSCP-6080の収容室内で実施されており、幼児のベッドルームに典型的な物品や付属品が備え付けられています。精神的苦痛を与えないよう、通常は実験中の収容室からSCP-6080が連れ出されます。

注目すべき再放送イベントを以下に列記します。




注目すべき再放送イベントNo.6の開始6時間後、SCP-6080収容室のカメラ複数台が一時的に故障しました。全てのカメラがオンラインに復旧された時、SCP-6080は消失しており、代わりに黄色の付箋と1枚のDVDが収容室に残されていました。

DVDに記録された映像はデジタル的にわずかな破損を有しており、映像の質も悪く、Windowsムービーメーカーにより作成されたと見られています。

当該の消失事案を受けて、収容プロトコルとオブジェクトクラスの見直しが現在進行中です。

DVDの内容を以下に書き起こします。

[映像ログ開始]

"A MESSAGE TO THE FOUNDATION"財団へのメッセージ と書かれた白色のテキストが、デフォルトとなる青色の背景にフェードインする。

何者か (ボックスと推定) の口を開ける音が聞こえる。

数秒間の無音。

ボックス: どうか僕を誇りに思ってくれればって願ってます。よくやったって、自分ではそんな感じ、全部含めてね。せめてそう思いたいんだ。

ボックスがため息をつく。

軟質の砂か土に何かが擦れる音がする。

ボックス: でもそうだね、財団のあなたたち、あなたたちが、あー、やろうと励んでくれたことをうれしく思ってます。少なくともヤコブに対してよりはね。僕はユークリッドEuclidだったから、その意味が何だっていいけどさ。うまくやってることを祈ってます。

ボックスが動作を止める。

ボックス: でも、4年が経ってたんだね。

肯定する音声が別の声で発せられる。

ボックス: それで僕は、あの人が言うには、僕は今いちばん変化が激しいお年頃なんだって。

不明: そうだね。

ボックス: それに物事は変わるんだって、僕は思ってる。僕も変わる。

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場面が変わり、窓の外に広がる異国の景色が映し出される。濃い黄色の霧の中で珊瑚のような植物が風に揺れている。

ボックス: あなたたちは僕を怖がってたね。僕に— 僕はそれに慣れちゃったし、今はなんだか理由がわかるよ。

ボックスが深呼吸する。

ボックス: わからなかったのは、ヤコブも僕を怖がってたってことだよ。僕があんな— あんなことしでかす前からね。もしかしたら彼が正しかったのかな。

不明: 彼が怖がってたのは君じゃない、自分自身を怖がっていたんだと思う。これは全然別のことだよ。

ボックス: あなたたちがカートゥーンを好きで…

不明: "好き" なんて言葉が適切とは思えないな。

ボックス: じゃあ— あなたたちがカートゥーンをコレクションしてるとき、どこから来たのか知るのは怖いことだよね。

不明: 君にとっては?

ボックス: いや— うん、どうだろう— カートゥーンはboxesから来るんだよ。カートゥーンは何百もあって、必要としてる人がいるから出続けるんだ、それで—

不明: むしろ、彼は自分のためにカートゥーンが作られてるんだって最初からずっと考えてたんじゃないかな?

ボックスがため息をつく。

ボックス: うん。そうかも。僕は子供だったし、

不明: 君は今も—

ボックス: そうだね。だから、あなたたちが僕を捕まえたとき、向かうのがどこだろうと、誰と一緒になろうと構わないって気でいたし、あなたたちもそれを承知していたんだと思う。

間があり、風の音がする。

ボックス: それで、あなたたちは僕のためにハコを用意した。それは上等なものだったし、良いテレビもついてたね、でもあなたたちの仲間が…

不明: 心地が悪かった?

ボックス: 悪かった、そう。ごめんなさい、ローワン。お仲間の1人は僕を使って逃げちゃった。彼は無事だよ、ところで—

破れたDクラスのユニフォームを着用したトゥーンレンダリング調のカメレオン様生物が描画されている。緑豊かな熱帯雨林を背景に尻尾を垂らし、見る側に向かって片方の腕を振り微笑んでいる。

ボックス: — あなたたちみんなが自分の小さな箱の中に閉じこもっていたんだって、僕は思ってる。

ボックス: だからしなくちゃいけなかった、僕は—

不明: 君は—

無音。

ボックス: 僕は出て行かなくちゃいけなかった。

場面が夜間の公園に変わる。ボックスは包帯を巻いた若年の人間の姿をしており、少し離れた場所にある椅子に座っている。不詳の人物がカメラを構えており、持ち手を変えるたびで定期的にカメラのフレームが動く。

ボックス: それで、僕たちは今ここにいます。

ボックス: ネモ— えと—

不明: ニーモシネ・エクスパンスMnemosyne Expanse25のどこかだよ。帰り道の途中だね。

ボックス: ありがと。

ボックス: それで財団のあなたたち、僕を探したいんだって知ってるよ。でも構わないで。僕は安全safeだし、それに— それに信頼できる人といっしょだから。どのみちあと何年かして成長したときにこの体も脱ぐことになるし。そしたらもう子供じゃないんだ。

不明: けど君がその体でいるのも今の内だよ。楽しもう。

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ボックス: 遊び場!ニーモシネの中に!こんなの初めて!

不明: うん、初めての経験だね。

ボックス: だからまだ大人になれてないのかな。僕はどこか、成長しない部分があるんじゃないかって思ってるんだ。あの— あの後も。

不明: 大人になる途中ってこと?知っておくべきかな。僕が思うに、同い年の誰とも違う、君は沢山のことを経験してきたんだよ。

ボックス: 不公平だよ。

長い沈黙が続く。ため息を吐いたボックスが木の枝を手に取り、砂場に絵を描く。

ボックス: でもねうれしいんだ、そんな部分を見つけられて。まだ残ってくれてることも。本当になくなっちゃうかどうか分かんないけど。

同意する声が聞こえる。

ボックス: でも僕見つけられた。前からあったんだよ、見えてなかっただけなんだ。

ボックスが立ち上がり、公園を歩き回る。カメラがボックスを追って動く。

ボックス: 僕の中に残ってるのなら、まだ子供でいられるのかな?

不明: いられるよ。

ボックス: それに、僕、子供じゃなくなっても成長できるのかな?

不明: 確かにできる。

ボックス: それじゃあ、ここにほんの少し留まってさ、ブランコでちょっとだけ遊んでもいい?

不明: そうだなぁ、いいよ、もちろん。

ボックス: そしたら僕を押してくれる?

不明: うん— そうしようか。

ボックスがブランコに飛び乗り、地面を蹴って揺れ始める。

ボックスが手招きしている。

ボックス: ほら、早く早く、僕ら取り戻さなきゃいけないことがたっくさんあるんだから!

[記録終了]

以下はDVDとともに残されていた付箋に書かれていた内容です。

どうかわかってくれればって願ってます

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