SCP-6099

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監督評議会命令

以下のファイルはレベル6/6099機密情報です。無許可のアクセスは禁止されています。

6099

アイテム番号: 6099
レベル6
収容クラス:
esoteric
副次クラス:
thaumiel
撹乱クラス:
dark
リスククラス:
notice

特別収容プロトコル: SCP-6099はサイト-120 内に保管され、O5評議会の承認でのみ運用されます。SCP-6099の運用結果が記された虚偽の報告書が当ファイルの別版としてレベル3クリアランスの下で公開されます。SCP-6099の研究チームは当ファイルへのアクセスが許可され、その運用はO5評議会の要請に応じて承認されます。

あらゆる新発見の時間異常はSCP-6099のそれと類似する性質を持つか否か調査が実施されます。歴史的文書の内容がSCP-6099と同等の正確性を持つと判断された場合、それら全ての文書が機密指定を受けます。実験に関する虚偽の報告書が作成され、低クリアランス向けの文書に追記が行われます。当該分野についての研究に関わっているものの、権限を持たない全職員には記憶処理が施されます。

SCP-6099の文書内の情報が財団の許容する範囲を越える規模で知れ渡った場合、正常性は維持されなければなりません。財団スタッフによる正常性の定義に関する一切の反論は活動指針に反映されません。

説明: SCP-6099は未確認の、もしくは信憑性のある情報または情報源のない歴史上の出来事の観測と記録を目的として、財団が建設した円筒型実験室です。完成には複数の時間異常、奇跡術的儀式、そしてスクラトン現実錨を活かした視覚フィルターが投入されました。

稼働下において、実験室は入力された日時通りの目的の場所を映し出します。SCP-6099内の空間は当該地点の探索や分析が可能な広さに変化します。過去の出来事への干渉が不可能である一方で内部の物体との接触は可能なため、当該時点と同様の観測及び実験が可能です。

補遺: 完成後に稼働下で正確な情報が表示されるか確認する目的で、SCP-6099で複数回実験が行われました。下記を参照してください。

日時と出来事 実験結果 備考
1963/8/28: リンカーン記念堂にて行われた、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアによる公民権運動演説。 正確な映像 SCP-6099より得られた映像が既知の情報と一致するか確認するために行われた実験。
1929/3/20: 連邦大陪審に出廷前のアル・カポネ。 正確な映像 当時のニュース報道での描写と類似した光景を映し出した実験。
1838/6/28: ビクトリア女王の戴冠。 不正確な表示 参照せよ―ビデオ転写6099-A。

ビデオ転写 6099-A

日時: 1838/6/28

所在地: ウェストミンスター寺院、ロンドン、イングランド

序: ビクトリア女王の戴冠。

<記録開始>

ビクトリア女王が楽団の演奏するファンファーレに合わせて大聖堂へ入場する。ファンファーレが終わると、女王は祭壇前の席に腰を下ろす。ウェストミンスター寺院内部の空間は外観よりも数倍の広さを有し、その結果、平時の式典にて来場し得る以上の数の参列者が居合わせている。群衆の中には客席の各所にて一塊になったSCP-1000妖精の集団がいる。群衆の手前付近に、フリッツ・ウィリアムズ博士1が確認できる。奇跡論的手段で光源が浮かんでいる。カンタベリー大司教が女王の前に立ち、口を開く。男の声は寺院内に響き渡っていた。

カンタベリー大司教: 陛下には宣誓の意志がございますか?

ビクトリア女王: あります。

カンタベリー大司教: グレートブリテン及びアイルランド、オーストラリア、そして他の支配下もしくは属する地域たる王室領から構成される、連合王国の人民を統治すると固く誓いますか? それぞれの地の法と慣習に従い、神の叡智を通じて隠秘学と神秘学を導き、統治すると誓いますか?

ビクトリア女王: 固く誓います。

女王は宣誓書に署名する。聖エドワード王の玉座へと就く際、女王の長衣は外される。宝剣、王室の紋章、宝球と聖エドワード王の王冠が「神は女王を助けたまう。」との宣言と共に授けられる。儀式の最中に、ウィリアムズ博士が寺院から出ていく。戴冠式は尚も続くが、女王が人々に誓い、出席者もまた女王に誓うと閉式を迎える。女王は今一度のファンファーレに合わせて、寺院を後にする。

<記録終了>

結文: 予期されていた映像からの逸脱の原因に関する調査は現時点で最優先事項と見なされる。当該映像でのフリッツ・ウィリアムズの存在も同様に調査の対象となる。SCP-6099が確実に機能するよう、整備が実施される予定である。

上記の出来事が観測された後で、研究チームにより複数回に渡るSCP-6099の運用が行われました。チームはCK-クラス現実再構築シナリオが1839/1/15に発生したと結論付け、その結果が大衆からの異常性の隠蔽だったという仮説を立てました。当該イベント以前、アノマリーの存在は当時の世界の大部分で普通と見なされていました。この現在における改変の原因は不明ですが、注目すべき点として当該イベントから数週間後に最初期の財団が結成され、ウィリアムズはその管理者の地位に就いていました。しかしながらウィリアムズは現在では故人であり、管理者の席は空席になっています。

ビデオ転写 6099-B

日時: 1838/7/3

所在地: 王立研究所

序: 先行する観測記録でのフリッツ・ウィリアムズの動向に関する調査によれば、彼は当該期間中、携わっていた研究に関するスピーチを行う目的でロンドンに滞在していた。この研究の内容は前述のCK-シナリオが原因で変化したと考えられる。

<記録開始>

ウィリアムズが壇上の中央に向かう。一本のマイク型の物体2がウィリアムズの前に置いてあるように見える。

ウィリアムズ: こんにちは、みなさん。健やかならんことを。フリッツ・ウィリアムズ博士と申します。本日は日常生活のあらゆる局面で使う機会がある魔法の起源に関し、私が仲間たちと共に取り組んできた研究についてお話しします。

ご存じでしょうが、今日の人類文明は数え切れぬ年月の間続いており、世界の驚異は私たちの成長の足取り、その一歩一歩と常に共にありました。けれども常にそうだったわけではありません。かつての人類は闇の只中で身を寄せ合い、目の前に現れた、動き回る岩や多頭の鳥に恐怖を抱いていました。理解の範疇を越えた光景から逃れたいと、洞窟にて祈りを捧げ、身を縮こまらせていました。

けれども人口の増加に伴い、人類は恐れる必要など無いと理解しました。人類は立ち上がったのです。恐怖が徐々に薄れていくにつれて、世界はより理解しうる対象になりました。この世界についての紛れもない真実を理解した時、調和を手に入れたのです。宇宙には不条理さと不可能が必要でした。世界には今尚、洞窟で暮らしていた時と同じく、我々が理解していない事象に満ち溢れています。けれども人類が恐怖に戻ることも、これらの真実を盲目的に信じ込んで現状に満足を覚える事もあってはならないのです。光の中で暮らすべく、人類が知らねばならないのは闇—

ウィリアムの前に置かれたマイクが床に落ち、機能を停止する。しばらく後で、スタッフによって空中から新しいマイクを支給されたように見える。ウィリアムが続ける。

ウィリアムズ: 失礼。先ほど申し上げた通り、人類は恐れる必要は無いと理解しました。人類の認識の中で大きな進展が起きました。来る日も来る日も、人類は説明のつかぬ事象に出くわしましたが、それでも必ずや使い道を発見し、日々の暮らしの改善に繋げていきました。我々の命を救ってくれる不死鳥の灰、一角獣の角の数え切れぬ性質、もしくは文字通りに必ずや喜びを与えてくれる驚嘆すべき芸術になったのです。

けれども、私どものチームはこれまでで最大の発見をしたと考えています。我々の研究によれば、今やこれら驚異のオブジェクトの効能を再生産できる能力が手に入ったのです。その通り、我々はオブジェクトを一つ一つになるまで切り刻み、新たに生み出す術を見出だしたのです。人の手で生み出された、大量生産を可能にする魔法の真髄です。どんなアイテムであれ、たとえ起源について全く分からなくとも、再生産が可能なのです。我々の実験と研究は現時点で完成へと至りました。既にラボ内の設備や、必要があれば我々の私物に対しても運用を始めました。ですが近々、世界中にこの技術を提供できるでしょう。

聴衆が立ち上がり、盛大な称賛の拍手を送る。

<記録終了>

結文: 当該映像内で言及された技術についてO5評議会に調査要請が出された。承認は保留となっている。

当該映像内での出来事の後、SCP-6099を用いた観測によれば、前述の技術で生み出されたアノマリーの利用は世界中の工場での生産に伴って遥かに高い割合で増加していくと報道機関によって報じられました。観測の結果、これら「大量生産された」アノマリーはオブジェクトを解体し、他のアイテムに異常性質を付与するリバースエンジニアリングの手法で生産されていました。このプロセスは異常並びに神秘学に関する現在の既知のあらゆる研究と矛盾します。当該プロセスが可能になった経緯については現在調査が進行中です。

補遺 6099-B: SCP-6099の研究チームは異常物品の流通を目的として建てられた工場に関する調査を行い、関連するプロセスの更なる情報収集を行うよう指示を受けました。下記の転写を参照してください。

ビデオ転写 6099-C

日時: 1838/8/8

所在地: ミルウォール、アイルオブドッグス、ロンドン

序: 前述の技術の利用が判明していた工場の観測を通じ、このプロセスの内容の更なる測定を目的とした調査を行った。

<記録開始>

轟音が室内に響き渡る。小さな藁の欠片が床面に敷き詰められた広大な建物の内部には、大型機械の部品が散在している。ゆったりした服を身に着けた若者中心の労働者たちの下で、機械は稼働している。発動機のフレームのあちこちが突如として膨張し、フラクタル図形に分裂する。それから機械機構は元の形態に戻り、より大型なパターンを形成しながら稼働を続ける。このプロセスは本来の形に戻るまで続き、本来の機械機構を再構築するまで続けられる。高い擦れ音が聞こえる。モーターの設けられた区画が溶け落ち、沸騰し、多様な非ユークリッド幾何学図形へと形を変え、その後モーターの形が元に戻り、先ほどのプロセスを繰り返す。それぞれの機械から排出された様々な物品が木箱の数々に収められていく。それらはその後、工場から出荷される。

室内の中心に奇跡術的魔法陣が粉末で描かれ、周囲には機械が配置されている。

それから後に、ウィリアムズ博士のチームから来たアーロン・シーガル博士が複雑な緑のパターンの装飾の付いた黒のナイフを携えて室内に入る。シーガル博士はナイフを目の前の机に置く。

シーガル: おはよう、みんな。新しい物品が丁度届いたところだ。中身は特殊な小刀一本らしい。

シーガル博士はナイフを掴み、テーブルへと突き刺す。テーブルが崩れて腐敗し、べとつく汚れが地面に形成される

シーガル: 君たちにはこの品を注意深く扱ってもらいたい。私がその気になれば、こいつの一マイル圏内に足を踏み入れる事も出来なくなるだろう。何をやるべきか分かっているね?ここに留まって君たちの無事を確認するつもりだったが、私は明日が締め切りの書類仕事を抱えている。失敗すれば首が飛んでしまう。

シーガルは退室し、オフィスへと戻る。

一人の工員がナイフを手に取り、奇跡術陣の中心にナイフを置く。彼女はそれから部屋の脇へと向かい、正体不明の粉末の入ったボトルを手にする。工員がボトルを開けて、魔法陣に粉末を注ぐと、緑色の炎が上がった。ゆっくりと、ナイフは床のシンボルの方へと溶け落ち、金属を思わせる輝きが下の炎から放たれる。魔法陣の周囲で火花が徐々に増えていく。炎が燃え上がるにつれて、周囲の空間は薄暗くなり、歪んでいく。金属の層が広がり、分裂する。それから金属は粉々になり、室内で燃え上がる。

藁越しに中央へと延びる炎は輝きを増し、より鮮明になる。炎が激しく輝く。中心へと延びる部屋中の機械に繋がる線が藁越しに見えるようになる。炉に火が灯される。金属が完全に燃え尽きるまで儀式は続けられる。火が消えると、機械は一時停止する。魔法陣の中心の最後に残った火の勢いが衰えていくと、機械が再び稼働を始めて軋み、轟音を上げ始める。再始動後は、ナイフは今や工場で生産される何の変哲もない品となっていた。室内の中心に位置する奇跡術陣は儀式前と変わらず残されている。

<記録終了>

結文: SCP-6099稼働中に行われた当該領域での調査からは、周辺地域のEVE3の放射が部屋の中心以外では一定の値にまで低下した事が分かっている。この結果、周辺地域のエネルギー量が一時的に不足し、工場の設備停止の原因となった。火が消えると、EVEの放射も止まった。


多くの人々の元へ異常物品が大量流通した後の数ヶ月の間、当時の報道機関は今の時代を繫栄の時代だと謳いました。しかし異常コミュニティとその住人の間で災害が報告されるようになったのは注目すべき事実です。特に注目すべき災害としては以下の事例が挙げられます。
  • 一角獣の角や不死鳥の灰の採取のような、数種の異常生物を狙った狩猟頻度が個体数の維持が不可能な水準にまで増加し、いずれの種でも劇的な個体数減少に至る。
  • "大地の満ち引き"4として知られる超自然現象の発生頻度が増加し、その結果、沿岸地域に多大な被害が発生している。
  • エネルギーの供給元や水質浄化のような役割を持ち、超常コミュニティの維持に必要不可欠と考えられていた複数のアノマリーが機能を喪失する。元々の居住地の短期間での荒廃の結果、多くの集団の難民化を引き起こす。
  • 多くの妖精のコミュニティ内にて感染爆発が発生。感染力は無いように見える一方で、症状を治療する試みはほとんど成果を上げられずにいる。

ビデオ転写 6099-D

日時: 1839/1/11

所在地: デトロイト、ミシガン

序: SCP-6099により見つかったF・ウィリアムズ博士とA・シーガル博士の間で交わされたやり取り。

<記録開始>

ウィリアムズ博士とシーガル博士は研究室内に腰掛けている。室内には煙が立ち込めている。

シーガル: フリッツ、先頃都市郊外で妖精のコミュニティが出現したとの報せは聞いたか?

ウィリアムズ: 触りしか聞いてはいないけどね。だが推測するに状況は芳しいとは言えない。

シーガル: その通りだ。僕は事態の深刻さをこれっぽっちも分かっちゃいなかった。多くの人々が住む場所を追われ、新しいコミュニティ以外には行く当てが無い。かつての人類との間の脆弱な関係性は悪化している。

ウィリアムズ: どんなふうに?

シーガル: 報道によると、周囲の世界に対して血みどろの諍いを繰り広げた小規模集団も中にはあるそうだ。彼らは今の窮状を自分たち以外のせいにして、褒められたものじゃない行いに手を染める原因になっている。だが何より最悪なのは連中の悪事が人々の賛同を得ている点だろう。

ウィリアムズ: 驚くべき話でもないが、お互いの溝が一層と広がっていくのを見るに堪えん。今の仕事が分断を跨ぐ橋の支えとなり、そこから双方を輝かしい未来へと導いていければいいと望んでいるが、遅きに失したかもしれない。

両者の間に沈黙が立ち込めた

シーガル: 君はさ…こんな状況になるのを防げたはずの手段が何かあったと思わないか?

ウィリアムズ: おいアーロン、一体全体何を言っている?

シーガル: それは…僕が言いたいのは、こんな状況になるのを君は分かっていたのか?って。これまでの出来事は必ず前触れがあった上で発生している。全てが起きる前に知る方法が、解決できる方法があったに違いないんだ。

ウィリアムズ: 全てがそこまで単純明快な訳じゃない。そんな事君も私も分かってる。実際に起きない限り、知る事も出来ない。全ての結末を知っていると思い込み、苦難を一つずつ引き剥がしていく方法も出来なくはないが、それでも不可能性の類に阻まれて、未来の一切のアイデアが吹き飛ばされてしまうだろう。

シーガル: けどその通りだった。災厄は一つだけじゃなかった。じ、実際は一斉に襲い掛かる数え切れぬ災厄だ。始まった災厄は、僕に手を伸ばそうとしている。この研究室で新しい品を最後に見たのがいつなのかも覚えていない。これってイカれてるんじゃないか?ほとんど毎日、新しい品に触れて研究していたのが今や一つでも入手できれば幸運な程だ。何が起きたんだ?

ウィリアムズ: それは…分からない。今考えているのは―

シーガル博士が突然胸を押さえ、床に崩れ落ちる。

ウィリアムズ: アーロン!大丈夫か?何があった?

シーガル博士は床で悶え苦しむ。その腕の周囲の空間に一瞬光を放ちながら、亀裂が生じる。光が消え失せると、腕は骨が露になる程深い傷でズタズタになっていた。痛みの余り、シーガル博士は叫び声を上げるも、その顔も溶けて、滴り落ちる。溶け落ちた肉は地面を動き回り、3つの顔へと形を変えると、それぞれまたも叫び声を上げる。この状況はウィリアムズ博士がシーガルを助けようとする間、1分ほど続く。シーガルの身体は元に戻る。床に座っており、吐く息は浅かった。

シーガル: い―今のは一体?一体全体何だ?

ウィリアムズはシーガルの両肩を掴む。

ウィリアムズ: アーロン、大丈夫なのか?

シーガル: 多分。身体がバラバラになったみたいだ。

ウィリアムズ: 君の周囲の空間が不安定になっていたようだな。今この瞬間、世界に尋常でない問題が生じたのではないか。

シーガル: 君そんなこと言った?殆んど何も分からないよ。

ウィリアムズ: 悪かった、断言できる事実なんてほとんどない、そうだろ?だが四の五の言わずに私たちの手で調べねばならない。世界の均衡の補正が発生し続けている気がするんだ。

シーガル: 補正って?

ウィリアムズ: 諸都市の力が衰えつつあると聞いた時から懸念していた。魔法の崩壊だ。崩壊だよ!宇宙の口出しが無ければ、魔法は崩壊一辺倒に向かわない。反発が生じて更なる崩壊が引き起こされたんだ。とんだ悪循環だが、大きな刺激の類が無ければ始まる事さえないだろう。もし、このサイクルを放置し続けてしまえば、後戻りは絶対に出来なくなる。

シーガル: だったらどうしろと?

ウィリアムズ: 目の前の出来事を精査して、戻す方法を見つけ出すんだ。すぐにでも。

<記録終了>

このやり取りの後で、ウィリアムズたち研究チームは前述の物品の人為的な複製品生成用のエネルギーがアノマリーの破壊を引き起こしており、彼らが開発した技術こそ地球環境の変容及び現実性の様々な局面での被害の原因であると結論付けました。この発見の結果、研究チームは(複数の政府並びに組織と協力しつつ)ヴェールを設けて異常存在から全人類を守護する作戦を考案しました。この作戦で発生したCK-クラスシナリオにより全人類の大半から異常性についての知識が消滅し、複数の異なるメディアを介して隠蔽が行われました。この儀式に関する情報は以下の通りです。

ビデオ転写 6099-E

日時: 1839/1/15

所在地: デトロイト、ミシガン

序: 研究所の一室にて、フリッツ・ウィリアムズ博士が始めたCK-クラス現実再構築シナリオの最終段階

<記録開始>

ウィリアムズ博士が複雑な模様と幾何学的にあり得ない図形から構成された奇跡術陣の前に立っている。ウィリアムズは黄の粉末の入ったスモールビーカー1個を脇から手に取り、床の魔法陣へと撒き散らす。魔法陣内部で図形が小さき2つに分裂し、続けて4つに分裂する。その進行と同時に部屋がくすんだ青色の光で満たされていく。それぞれの派生体がお互いに見分けがつかなくなるまで、分裂は繰り返された。ウィリアムズが話し始める。

ウィリアムズ:世界が最早真実を知らずにあらん事を、虚言が我らの現実たらん事を、盲目の内にある世界が安寧を得ん事を。

粉末のかかった模様が宙に浮き上がり、床は緑の光を放ちながら亀裂を生じさせていき、ウィリアムズの足元にまで迫る。彼は喋り続けている。

ウィリアムズ: 魔法を守らんとすれば、知られてはならない。魔法は世界から切り離されて、魔法それ自体を受容する世界の内に収められなければならない。私の信頼できる者達が目を光らせられる。私たちは完全なる安寧が約束された聖域を生み出すだろう。今以上の世界はないにせよ、これからは一切が同様の安寧を得られるだろう。

小さな金属缶を手に取ると、ウィリアムズは魔法陣へと足を踏み入れる。粉末が身体の周囲で舞い上がり、顔の周囲に浮かぶ。ウィリアムズが容器を床に落とすと割れて、青白いガスが魔法陣内部に立ち込める。青いエネルギーが魔法陣から放出され、周囲に溢れていく。

ウィリアムズ: すまない。君たち全員を守るなんてできなかった。

ウィリアムズの周囲で、室内に漂う青いエネルギーが球体を形成すると突如として膨れ上がって周りの空間を包み込んでいく。球体は勢いを増して膨らんでいき、呑み込まれて出来た新しい現実の領域の全てを包み込んでいく。膨張する球体の領域内に呑み込まれた異常物品の全てが異常性を喪失していく。光は世界全体を覆いつくした後に拡大を止める。CK-クラスシナリオが終結。ウィリアムズ博士は室内にて項垂れたまま座っている。

<記録終了>



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