SCP-6109

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特別収容プロトコル: 別れてよかったんだって、わたしはそう思ってる。あなたはもう、わたしが婚約を願う相手じゃなくなったんだから。

うん、後悔してることもたくさんあるよ。もっと上手くやれたんだってことも思い当たるし、どうして言っちゃったんだろうってこともある。踏み越えるべきじゃない一線もわたしは越えてしまった。だけど、どうか分かってくれたらって思ってる、わたしのしでかしたこと全部、あなたを恐がってたのが原因だっていうことを。

追い詰められたみたいな気分は好きじゃないのに、あなたのせいで今はそんなつらい気持ちになる。違う関係でいられたらよかった。あなたが対処しなきゃってことを、わたしも応じられるようならよかった。わたしに受け止める余裕があればよかった。でも同時に — あなたからも歩み寄って — 大勢の前で怒鳴り声を上げないでほしかった。何もしないでって私が頼んだときにも泣き出さないでほしかった。同棲してたったの数日で、あなたのこと何でもかんでもわたしに打ち明けてくるのもやめてほしかった。"虫唾の走るような自分だけのヒミツの世界に心閉ざしてる嘘つき女" だって、あなたはわたしのことをそう呼んだけど、だけど、あなたのほうがずっと酷いよ。わたしは言えることはちゃんと伝えてきた。でも、あなたは自分のしたことを誇ってただけでしょ。

だから、関係解消の電話があなたから掛かってきてくれて嬉しく思ってるよ。今にして考えてみれば、わたしのほうからもっと早くに切り出しておくべきだったんだ。でも同時に、あなたとの関係を恋しく想い始める度に、私は思い出すようにしてる。あなたといっしょにいる時のわたしは… つくづく惨めったらしいサイテーの存在だったってこと。

だからもう、わたしたちの間に一世一代のプロポーズなんて決してありはしない。それがクールcoolなんだって、わたしはそう納得してる。でもいつか、20年、30年後にでも、またあなたと偶然に出逢うことがあったなら? そのときはわたしから片膝をついて、あなたにこう訊けたらいいなって思ってるよ。
















































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