SCP-6182

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アイテム番号: 6182
レベル2
収容クラス:
neutralized
副次クラス:
none
撹乱クラス:
none
リスククラス:
none

特別収容プロトコル: 2022年1月におけるリチャード・バルト博士の行為の結果、SCP-6182は暫定的にEuclidからNeutralized (今後の研究待ち) に再分類されました。現状では特別収容プロトコルは必要ありません。Neutralized状態のSCP-6182は、サイト-19の文書保管ロッカーに保管された文書6182-Final (以下を参照) に収容されています。

2013年にSCP-6182が発見されて以降、ヴェールを保護するために、"マンデラ効果".マンデラ効果とは、数か所のオンライン・コミュニティーで共有される偽記憶のことを指す用語です。例として、名前の由来でもある反アパルトヘイト運動の主導者 ネルソン・マンデラは、1994年に釈放されたのではなく獄中死したという偽記憶などが挙げられます。コミュニティー内では、この現象は並行現実の記憶を指し示しているという憶測も建てられていますが、実際には、並行現実はマンデラ効果の事例のうちごく一部にしか関わっていません。 を主に取り扱う数か所のオンライン・コミュニティーに財団偽情報エージェントを潜入させています。

説明: SCP-6182はかつて書物・演劇・詩・映画・歌曲などの様々なメディアに出現していた物語実体です。

SCP-6182は2人の人物、SCP-6182-1とSCP-6182-2の形態を取っていました。SCP-6182-1とSCP-6182-2の描写は全ての出現事例で一貫していました。

  • SCP-6182-1は30代前半の無名男性であり、背が高く筋肉質で、オリーブ色の肌と黒髪をしており、短い顎髭を生やしていました。
  • SCP-6182-2は20代半ばの無名女性であり、背が低く、色白の肌と黒髪をしており、植物状態あるいは昏睡状態にありました。全ての事例で、SCP-6182-2はSCP-6182-1の妻として描写されていました。

SCP-6182の出現事例は一貫したパターンに従っていました。

  • 車椅子に座ったSCP-6182-2を押した、もしくはベッドで眠っているSCP-6182-2を介抱したSCP-6182-1が物語に登場し、SCP-6182-2の詳細不明な病気を治療できるか別の登場人物に尋ねる。
  • 登場人物は知識もしくは能力の不足を告げるか、SCP-6182-2の治療を試みるも一様に失敗する。
  • いくらかの時間 (たいていは数週間) を経て、SCP-6182はその物語から消失し、別の物語に再出現する。

SCP-6182は医者や病院を主とした物語に最も頻繁に出現していました。

SCP-6182が物語に出現する際には、それと同時にその物語の現存する全てのコピーにも出現しました (例えば、SCP-6182が小説に出現する場合には、その小説の原本を含む全てのコピーに同時に出現しました).場合によっては、翻案や批評、二次創作小説も改変されていました。。同様に、SCP-6182が物語から消失する際には、その物語の全てのコピーが元の状態へと戻されました。このため、SCP-6182は当初Euclidとして分類されており、ヴェールに対して重大な脅威を呈していました。

一方で、SCP-6182は曝露に付きまとう危険性をある程度軽減する、軽度の反ミーム効果も有していました。SCP-6182が物語に出現すると、大半の閲覧者はそれまでSCP-6182がその中に登場していなかったことを覚えておらず、同様にSCP-6182が消失すると、閲覧者はたいていの場合SCP-6182が登場したことを覚えていませんでした。しかし、約25,000人に1人は反ミーム効果に対する先天的な耐性を有しており、SCP-6182の出現や消失を記憶できていました。その結果、SCP-6182は少数の "マンデラ効果" の事例と関わっています (上記の特別収容プロトコルを参照)。

SCP-6182は、2013年9月に、アメリカの連続ドラマ『ジェネラル・ホスピタル』の再放送に出現していたところを財団が偶然発見しました。リチャード・バルト博士 (物語・ミーム実体を専門とするサイト-19主席研究員) は並外れて高い認知抵抗値を有していたためにドラマの差異に気付き、アノマリーの可能性があるとして直ちに報告を入れました。r/MandelaEffectサブレディットの利用者も幾人かこの出現に気付いていましたが、財団の積極的な偽情報活動によって信憑性を毀損されました。SCP-6182は同年11月に『ジェネラル・ホスピタル』から消失し、バルト博士は直ちにSCP-6182の調査と収容を担当する任務部隊の責任者に任命されました。

『ジェネラル・ホスピタル』での発見以降に確認された、SCP-6182の出現事例の抜粋リスト.推定される出現事例と時系列を含む完全なリストは、付録6182-06として本書に添付されています。は以下の通りです。

物語 出現日 詳細
イアン・マキューアン著『土曜日』 (小説、2005年発行) 2014年12月 主人公である脳神経外科医、ヘンリー・ペロウンが語った記憶に登場。
オリバー・サックス著『妻を帽子とまちがえた男』 (ノンフィクション、1995年発行) 2015年3月 神経学者である著者が語った逸話に登場。
『Dr.HOUSE』第7シーズン12話 "色あせない記憶" (医療ドラマ、最初の放送日は2011年2月14日) 2016年10月 サブプロットの一部を構成 — SCP-6182は、主人公のグレゴリー・ハウスが診療所で短期間治療に当たったものの失敗に終わった脇役として登場した。SCP-6182-1の服装に関する些細なことがある発見を促し、そのおかげでハウス博士は本エピソードの主役となる患者の治療に成功する。
ジョン・グリーン著『さよならを待つふたりのために』 (青春小説、2012年発行) 2017年9月 主人公のヘイゼル・グレイス・ランカスターが、恋人であるオーガスタス・ウォーターズとの夕食中の会話で言及した記憶として登場。2015年公開の映画版には登場していない。
『アナと雪の女王』 (2013年公開のアニメ映画) 2018年2月 トロールたちにSCP-6182-2を魔法で治療できないか尋ねる脇役として短時間だけ登場。トロールたちは要求された治療法を提供できなかった。
『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』 (2017年公開の映画) 2019年12月 映画の中盤にかけて、病院にて脇役として登場。SCP-6182-2は映画に登場する医師の一人から治療を受けたが、失敗に終わる。
テイラー・スウィフトが2019年にリリースしたアルバム『Lover』の12曲目 "Soon You'll Get Better" 2020年6月 スウィフトの母親と同じ病院で治療を受けている、SCP-6182の描写と一致する夫婦を表した余分な歌詞。特筆すべき点として、この歌曲は丸1分延長されていた。出現と同時にアルバムの批評もいくつか僅かに改変され、SCP-6182を表した歌詞が "印象的" で "記憶に残る" と称賛し、スウィフトの母親の病状との類似性を指摘したものとなっていた。

マンデラ効果に対する市民の関心は2010年代後期に高まりを見せ、SCP-6182が公衆の目に晒される危険性が増したために、バルト博士の任務部隊はSCP-6182の収容試行を早めました。しかし、この試行はいずれも完全に失敗し、どのような対策を施しても、SCP-6182は監禁された物語から消失しました。

2021年12月末に、バルト博士はここ数回のSCP-6182の出現事例において、SCP-6182-1がやつれて疲れ果てているように見え、複数の文章中で "絶望的" もしくは "希望がない" と表現されていたことに気付きました。SCP-6182-1の死亡や恒久的な無力化を恐れたバルト博士は、SCP-6182の収容に向けた研究や計画立案を早めるべく、倫理委員会に緊急要請を行いました。

2021年12月30日、倫理委員会は定例会議で以下の通り合意しました。

決議: 希少な財団資源に過度のコストがかかるため、緊急対応は行われない。SCP-6182からヴェールを保護するための現在の施策は、SCP-6182の反ミーム効果も相まって、依然として適切である。

備考: SCP-6182現象の見掛け上の劣化は、財団が最優先とする使命にとって有益であると思われる。アノマリーの劣化によって、関連する物語現象が終結する、もしくは単一の物語内に収容される結果となる可能性がある。したがって、SCP-6182は収容が容易となる可能性が高いか、場合によっては自己無力化すると思われるため、ヴェールへの脅威は限られたものとなる。

追加備考: バルト博士はSCP-6182に対して明確な愛着を示しており、SCP-6182-1とSCP-6182-2を "救助" したいという思いを繰り返し見せている。新たな収容方法として提示しようと試みているようだが、博士の提案は収容の必要条件を遥かに超えている。

宣言: バルト博士に対し、アノマリーへの愛着を避ける義務があると再認識するよう求める。財団の目的はSCP-6182のようなアノマリーを収容することであり、援助することではない。それに加えてバルト博士に対し、財団のプロトコルは合意的現実を保護するために存在しているのであり、O5の許可を得た極限状況でない限り、そのプロトコルからの逸脱は認可されないと再認識するよう求める。

決議: これを以て、バルト博士は今後の調査結果が出るまで、本日よりSCP-6182の監督を停止される。これを以て、バルト博士に対し、SCP-6182関連の職務を即刻中断し、関連する全ての研究資料をSCP-6182任務部隊に引き渡すよう命令する。

バルト博士は当初こそ命令に従い、何事もなく研究資料を引き渡しました。しかし2022年1月4日、バルト博士は (SCP-6182任務部隊に連絡もせず) 重大な命令違反を犯し 、SCP-6182-2の病気を "治療" しようと試みる目的で短編を執筆しました。内容は以下の通りでした。

昔々、バルト博士はSCP財団を説得して、ある特別な若い女性の奇病を治療しようと、サイト-19に小さな医療施設を設立させました。そこには最先端の医療設備と、SCP財団が探し出した最高峰の医師たちが揃っていました。さらにバルト博士は大変な困難を経て、病棟からSCP-500を1錠保持する許可を得ました.誤解を避けるために明記しますが、サイト-19を含むいかなる場所にもこのような施設は存在しません。現存するSCP-500は全てカンに残ったままです。。SCP財団は、この特別な若い女性に必要である限り病棟を開放することを決定し、バルト博士は彼女が来るのを座って待ち続けました。

おしまい。

その後、バルト博士はこの短編をA4用紙に印刷し、それをデスクの引き出しに保管しました。

2022年1月11日、バルト博士がデスクの引き出しを開けると、SCP-6182が文書に出現していたことに気付きました。内容を一読すると、バルト博士はその文書をSCP-6182の収容に携わった元同僚に手渡し、即座に裁判所へと出頭しました。

SCP-6182に割り当てられたチームによる査読を経て、SCP-6182はNeutralized (今後の研究待ち) に再分類されました。バルト博士は降格処分と厳重注意を受け、さらに裁判所から今後一切の擬人化アノマリーの取り扱いを禁止する旨を言い渡されました。

バルト博士が執筆し、SCP-6182の影響を受けた文書は文書6182-Finalに指定され、以下に添付されています。SCP-6182の最後の出現によって文書に書き込まれた箇所はでハイライトされています。

昔々、バルト博士はSCP財団を説得して、ある特別な若い女性の奇病を治療しようと、サイト-19に小さな医療施設を設立させました。そこには最先端の医療設備と、SCP財団が探し出した最高峰の医師たちが揃っていました。さらにバルト博士は大変な困難を経て、病棟からSCP-500を1錠保持する許可を得ました。SCP財団は、この特別な若い女性に必要である限り病棟を開放することを決定し、バルト博士は彼女が来るのを座って待ち続けました。

そしてついに、男がバルト博士のもとに妻を連れて来ました。彼はSCP財団なら他にない薬があると聞いていました。あまりにも長く探し回り、あまりにも長く待ち続けたために疲れ果てていましたが、最後にもう一度だけ試してみようと決心したのです。

バルト博士は検査という検査を繰り返し、スキャンにスキャンを重ねましたが、分かったことは何もありませんでした。この特別な若い女性の治療にあたったSCP財団の医師たちはみな途方に暮れ、首を横に振って去っていきました。

そこで、バルト博士は1錠のSCP-500を保管した箱のもとへ向かいました。箱を開けて貴重な錠剤を取り出すと、彼はそれを女性の夫に手渡しました。男はそれを手に取り、少しの間だけ裏返して確認しました。それから男はこれまでの治療で幾度もそうしてきたように、妻の身体を起こして口を優しく開かせました。根気よく、それでいて落ち着いた様子で、男はルビー色の錠剤を妻に飲み込ませました。そして再び妻を横にさせ、待ちました。

数秒が経過し、数分が経過し、1時間が経過して。バルト博士は不安そうに時計を見つめながら、男に — そして自分自身に — SCP-500の効果が出るまでには時間が掛かると言い聞かせました。時計の針が2周目を終えようとするにつれて、バルト博士は心が沈んでいくのを感じました。効果が出なかった、出るはずもなかった、もう何も効果は出ないのだと。男が妻の手を黙って握りしめたのを見て、バルト博士は恥ずかしさのあまり顔を背けました。

すると、まるで夢から覚めたかのように、彼女は両目を開けて起き上がり、夫の名前を呼んだのです。

それから2人はずっと幸せに暮らしましたとさ。

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