SCP-6270
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アイテム番号: SCP-6270

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 財団フロント企業のシャッター・ホーム・メディカル・グループ(Sutter Home Medical Group)は、SCP-6270に罹患した対象を収容する施設です。施設では、前述の対象に緩和ケアを提供し、家族が訪問するさい対象が適切に鎮静していることを確実にします。SCP-6270の心理学的・生理学的鎮静障害に加え、サブリミナル効果により、これまでのところ家族が在宅ケアを選択することが効果的に抑止されており、対象の永続的な留置および研究が可能になっています。職員には、健康のためノイズキャンセリングイヤホンが提供されていますが、施設に一般人が存在するときは着用されません。

説明: 両耳溶解症(Diauralysis)は、ハービンジャー放送(The HARBINGER Broadcast)を視聴した37名が罹患している、異常な疾患です。ハービンジャー放送とは、2月15日01:23にロッキーマウンテンズPBSチャンネルを乗っ取り、コロラド州全域に向けられた海賊テレビ放送です。本疾患は、対象の耳鳴もしくは身体から発せられる内部ノイズの変化を特徴とします。初期段階では、心音、胃の蠕動運動、また骨を鳴らす音さえも完全に非可聴になり、代わりに超低周波音を発します — ノイズはヒトの耳には可聴ではありませんが、聴者は無意識下に恐怖、悲しみ、不安の感覚を覚えます。本疾患は罹患していない観察者にとって顕著に異常ではなかったため、初期収容は外来的な観察で構成されていました。しかしながら、発する超低周波音への日常的な曝露による有害な心理的影響を理由とする不快な社会的相互作用のため、最初の3ヶ月以内に、対象が常に引きこもるようになったことが注目されました。

7月に両耳溶解症の第2段階が始まり、疾患の進行が対象の発話が聞こえなくなるほどになったため、入院による収容が開始されました。音波は実際には対象が随意に発生させていましたが、対象から発生する全ての音は超低周波音のみで構成されていました。これは、咳嗽、くしゃみ、曖気、他といった反射的な音声を含みます。大衆に向けて、この適切なコミュニケーションができないことは神経変性失語症の一形態として特徴付けられ、入院治療のため患者はSHMGに委託されました。

続く数週間におよぶ対象とのインタビューにより、両耳溶解症の別の症状が判明しました。それは、対象には聾の性質があるにもかかわらず、各対象の自身の耳鳴に対する知覚力が時間をかけて強くなることです。さらに、各対象は微細な身体の音さえも目立って明瞭に聞こえると主張しており、対象#22は目の動きの音を「穴がきしんでる……(まるで)何かが大きい何もない部屋のコンクリートを通って引きずられてるみたい」と表現しました。同様に、対象#5は血液が血管を流れる「疲れたうめき声」が常にあることによるストレスのため、ビニール袋による窒息自殺を試みたのち、自殺警戒に置かれなければなりませんでした。

これらのノイズは本来完全に主観的なものですが、研究員はコンピューター断層撮影(CT)スキャンにより原因である可能性のあるものを特定することが可能でした。研究員らは、内耳に異常形成の穴を認め、対象が上半規管裂隙症候群に罹患していると診断することが可能でした。この判明したものを受け、この穴を全対象から外科的手段で直すべきか、もしくは研究目的のため進行を許すべきかに関する議論が進行中です。

補遺: ハービンジャー放送

以下は、オリジナルのハービンジャー放送の全体を複製したものです。Dクラス被験者を用いた試験により、これは両耳溶解症を発症させず、視聴は安全であると示されました。

転写

当時放送されていた番組の「キャシー・スーザーフィールドとの正しいガーデニング(Proper Gardening with Kathy Sutherfield)」がノイズに覆われる。番組は放送そのものにより妨害され、情報の記載されているカードが表示される間、空襲警報の音が再生される。画面には以下のように書いてある。

緊急放送警報

あなたの地域に緊急警報が発令されました 刮目してください

このメッセージは到着まで繰り返されます 備えてください 備えてください

以下のことはあなたの生存と長寿を意図したものだと心してください


これに続いて、画面が遷移し「ハービンジャー・プロトコル」というタイトルの一連の無意味な指令を映す。常に、画面の下部に「HARBINGER」という語句がバイナリで複写されている。指令は以下のように書いてある。

• 全ての体の穴を塞げ
• プラスチックがそれを中に保つ *
• 次に周波数を合わせろ: 天使の恩寵(32.678)
• 内側でそれを聞け。 音量が大きくなったなら必ず

(ページ2に続く)


(*この語句は、指令が記載されるとき0.5秒間「プラスチックプラスチックプラスチック」に変化する。)

指令は不明なソースの音声と組み合わされており、音声は以下の文章を読み上げるロボットを伴う。

(音声)彼らは巣穴で身を寄せ合い祈ったが、嵐は容赦しなかった。巣穴は今や空である。巣穴は取るよう熟す。

それはスミレの色合い。スミレが似る —

その後映像は突然終了し、一方放送局は技術的問題を示す画面を放送する。この時点から通常の番組を続行するが、「スタンバイ」カードが海賊信号に影響されたように見えることは注目すべきである — 「揺籃は空」と「到着はさっせまる」(原文ママ)という語句が画面上に短時間映る。

勤務中のエンジニアが、完全に放送される前に信号を除去することが可能であったため、放送の「ページ2」に含まれている情報や指令は不明です。FCCとの合同調査では、犯人の発見は無駄であると判明しました。

補遺: 対象#31

対象#31は、頻繁な頭痛のためCTスキャンが行われ、脳に相当な大きさの腫瘍であると思われるものが発見されました。それを除去し対象を救命するため、覚醒下開頭術が行われました。脳組織が外気にさらされると脳が振動し始めたため、外科手術は困難となりました。脳の微細な動きにより、対象の生命の危機や永続的な脳の障害のリスクなしに切除を成功させることが不可能であったため、主任外科医は当初手続きを実行することを拒否しました。それは代理サイト管理官により却下されました。

対象#31は、切除試行中に脳を外傷したことに続き、死亡を宣告されました。脳組織から除去されたものは、短い棒に2つの尖った部分がU字状に付き、音叉を想起させる形状になった、石灰化した骨組織の沈着物でした。それは鳴らされると、対象の声で単一の引き伸ばされた音調を発し、まるで嘆くような音を鳴らしました。

解剖の間、頭蓋骨の顔面の内側に他の各対象と同じ指紋に一致する複数の陥没があり、それとともに外耳道の錐体稜の正中線側に多数の引っかき傷があることが発見されました。

対象#15が、より頻繁に片頭痛を訴え始めました。

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