SCP-6275
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RAISAより通達

以下の資料は████/██/██に財団のデータベース内に出現し、SCP-6275のスロットを占めました。それ以前には、このスロットにファイルは存在しませんでした。以下で説明されるアノマリーは、財団が把握しているどのアノマリーにも類似していません。適正なSCP資料の作成は、SCP-6275の出現と同時に発生した別な異常事象の調査が終わるまで保留されます。詳細は補遺を参照してください。


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沢山の笑いが君を待っている収容室A19

アイテム番号: SCP-6275

オブジェクトクラス: Joke

特別収容プロトコル: このファイルを読んでいる冗団職員には他の何よりも誰のためにもケーキみたいな喜びが不可欠だ。君の背骨がブラックライトの下でスパゲッティ化してバラバラになるまで笑おう。それからもうちょっと笑ってみよう。

SCP-6275は財団施設エリア-███にある標準的なヒト型生物水族館風バウンスハウスの塩類平原で煮えている。SCP-6275と交流する職員は財団の延長で、読者に贈られるものを経験することができないから、真面目であるように指示される。SCP-6275のインタビューはめっっっちゃ面白くてめっっっちゃ簡単だ。SCP-6275は君に会いたがっている。

説明: SCP-6275は大声で叫ぶことができる面白い男だよ。彼は君が知っていて大好きな他の滑稽なもの全部に似ているけれど、多様性のために航海用のコーティングがしてあって、それはつまり、彼がとってもとってもユーモラスだって意味なんだ。

SCP-6275は水中ピエロだ。SCP-6275を水中ピエロ以外のものと見間違えちゃったりすることはまず無い。彼の髪の毛は紫、青、もちもち、もしくはハッピーな味がする。彼はピエロスーツを着ることも、君スーツを着ることも、全身地獄スーツを着ることもできる。ある時は君の心の目に映るあらゆるものの大きさで、またある時は永遠に潜り続ける不可視のドリル。SCP-6275は絵画であり得る。SCP-6275は現実であり得る。でもSCP-6275はいつだって水中ピエロだ。

SCP-6275を見たり、摂取したり、近くにいると、君はまるで太陽フレアのように大声で遠吠えできるよ! 彼はおバカな男みたいにおバカな事をやるかもしれない。ファンキーな男みたいにBR-BR-BR-BR-BRやWOO-WAHをやるかもしれない! 彼は何もしないかもしれないけれど、それでも君は笑うだろう、だって彼は愉快だもの。それが君を惹きつける! お祭り騒ぎは君の顔を愚者へと彫り上げ、外側の泥を溶かしてくれる。ネクタイを緩めて、同僚たちがおどけ者に変身するのを見て、感情を捨ててしまおう。SCP-6275と一緒に笑い始める時だ! もし誰もSCP-6275と一緒にふざけなければ、彼は脚を生やして泳ぎ去っちゃうかもよ!

シロナガスクジラから受付係、Candidatus Pelagibacter communisに至るまで、全生物が実は細胞レベルで笑っているって知ってたかい? SCP-6275はそれを知っているから、普通なら人がしないような不条理な事をやってのける。時には海軍の駆逐艦の一家と言い争ったり、数字の7とお昼を食べたり、鼻の上でグレート・バリア・リーフのバランスを取ったりする! SCP-6275は1921年、ジョン・アダムの夏の別荘の床板を突き破って、目についた鉢植えを一つ残らず舐め回したんだ、その人の飼い犬も含めてね! この話は君を楽しませてくれるだろう。

SCP-6275は前時代から今と変わらず愉快だったよ! 彼は陰気臭くてヌルヌルした海綿畑に笑い方を教えた! ヒトウオ族を訪ねて地上に招き、ネジと紙石膏のスープをご馳走してあげた。内側世界の王様たちはSCP-6275を宮廷道化師にしたんだ、彼が踊る限り王様たちの木材と藻類の難破船王国が繁栄するようにね! そんな不思議なことが君の目と鼻の先で起きているって知ってたかい? 池の中で? 嵐の後の水溜まりの中で? コップ1杯の水の中で? 水面下で?

そして今、SCP-6275は研究者である君の所へやって来た! 最後にオチをつけて、笑って浮かれ騒ぐために来た。SCP-6275の冒険と秘密の世界を記録し、分類し、販売し、読み、評価し、管理し、自分なりの言葉で消化し、収容するのは君の役目だ。彼の過去の生活について (ハッ!) 、好色トロール漁船との闘いについて (ハッ!) 、さもなければ大いなる全ての何も無きもののリヴァイアサンについて (オー・ノー!) 訊いてみよう。笑えるインタビューが示すように、笑えるはずさ。

男博士: 私は真面目です。

SCP-6275: オレハオバカダ。

男博士: あなたはおバカです。

SCP-6275: デモオレハモットオバカニナレルゼ。

男博士は巨大な針を振りかざしてSCP-6275の頭をつつく。パァン! 男博士は濡れている。

男博士: おバカになってはいけません。

SCP-6275: オチ。

財団はおバカになっちゃダメだけど、SCP-6275はなるだろう。

それが彼の存在意義だ。彼は今、君のために面白くなるつもりだ。

だから胃がねじれるまで笑おう!


上記ファイルの出現と同時に、エリア-███の保安プログラムは、地下3階にあるヒト型生物収容室S19の収容機構に生じている複数の不具合を報告しました。職員が速やかに派遣され、収容室の外部が荒廃しているのを発見しました。入口は僅かに仕切られており、ドアには大量のChthamalus stellatus (イワフジツボ) が繁殖していました。職員は問い質された際、かつて収容室S19が使用されていたか、仮にアノマリーが収容されていたならばどのようなものだったかを思い出せませんでした。サイトの資料は、当該収容室が1997年の建造以来使われておらず、空室であることを示しました。収容室の内部は奥行き、幅ともに可能な寸法を超え、際限なく伸びていることが確認されました。内部に設置された光源はいずれも機能していませんでした。有人探査に先立って、FD6-ハービンジャーシリーズのドローンが収容室の探査に用いられました。関連資料は以下に添付されています。

00:00 - 測定値が記録される。収容室の天井の高さは18m。長さは不確定。ドローンは1時間41分、完全な暗闇の中を前進する。探査開始から40分後、イギリスのロックバンドであるビートルズの楽曲 “オクトパス・ガーデン” が聞こえる。この楽曲は探査中を通して継続する。

01:21 - 室内の壁が狭まっていく。全方向からギザギザの朽ちたサンゴが生えているのが見える。きらめく緑色の気泡が存在する。サンゴの一部が、体節のような動く刻み目を枝に形成し、音楽に合わせて歌う。司令職員の一部が軽く笑う。

01:39 - サンゴは密集して成長し、ドローンの動きを制限している。やがて十分な大きさの開口部が見つかる。その先の空間はより広々としている。壁は様々な色合いの青色で、回転しているように見える。床は数え切れないほどのPterois volitans (ハナミノカサゴ) で埋め尽くされている。水が不足しているので、ミノカサゴは身をくねらせ、のたうち回っている。床のミノカサゴの群れから低いハム音が聞こえる。ドローンは前進する。

02:01 - ドローンが進むにつれて、ミノカサゴの棘が長くなっていく。やがてミノカサゴは巨大な棘の塊となり、野原のように全方位に広がる。棘の先端には顔をしかめた黄色の海綿が付いている。海綿の目線は前進するドローンを追う。ある時点から、海綿は泣き始める。

04:55 - 棘の野原が開けて、巨大な朽ちたクジラの骨格がある空き地が現れる。周囲には、損傷の激しい大理石の柱や水浸しの木片が複数見受けられる。ヒレから人間の足が生えた魚のような実体群が必死に走り回り、時折周囲の瓦礫や壁にぶつかっている。1匹の魚型実体が木板に刺さった錆びた釘を踏み、笑ってから倒れ込む。これを見た観測職員4名が抑え切れずに爆笑する。不特定種の大きなチョウチンアンコウが視界に漂ってくる。アンコウは繰り返し咳込む。方向転換すると、このアンコウは段ボール製であることが明らかになる。職員のリチャード・ラメンズは、アンコウが「置き換えられたんだ、他全てと同じように」とコメントする。

05:32 - 収容室は少しずつ特徴を欠き始め、完全な暗闇へと移行する。

08:49 - 何らかの音が聞こえるが、司令職員はそれが笑い声か、叫び声か、“他の何か”かを判断できない。音量は時間と共に増大する。観測職員ジャック・ハイテンが司令室から姿を消す。

10:12 - 全ての司令職員は、問題の音が叫び声であると確信する。観測職員カビール・ヌーが司令室から姿を消す。

10:30 - ドローンが前方に物体を検出するが、この時点ではまだ何なのかを識別できない。残っている2名の司令職員は、腐敗した塩水の臭いがすると報告する。

11:29 - 叫び声の送出源であるオブジェクトが視界に入る。当該実体はピエロの姿をした巨大な肥満した実体であり、伝統的な多彩色の衣装を着用し、収容室の奥の壁にもたれかかっている。実体の手足にはヒレに似た水掻きがある。実体の顔は口を開けた表情を維持しており、両目から涙が流れている。叫び声は笑い声に変わるが、実体はそのまま動かない。

全ての職員が司令室から姿を消す。

ドローンは実体に向かって下方に引っ張られ、旋回する。探査を担当していた職員4名 — ハイテン、ヌー、サンダース、ラメンズ — が突如として収容室内に現れる。彼らの身体は著しく変形し、皮膚にフジツボの群れが付着し、深刻な穿孔から絶え間なく水が漏れている。ハイテンが自らの口からサンゴの欠片を取り除くと、水玉模様の風船が彼の喉から出てくる。職員たちは笑うが、彼らの笑い声は先ほど聞こえた音と区別がつかない。

職員たちは次々に前進し、ピエロ型実体の身体に入って通り抜けていく。ドローンが後を追う。

内部は暗い。判別できる特徴は無い。

ハイテン: (笑う) こいつはむちゃくちゃ面白ぇ。でも前はこんなんじゃなかった。

ゴボゴボという音と、荒い息遣いが聞こえる。

ハイテン: まるで — ジョークを思い出そうとしてる時みてぇだ。前に沢山聞いたことがあるし、沢山の人に話してきた。でも何だかピンと来ない。面白くなくなってる。伝えたいことが全部途中でくたばっちまう — (笑う)

笑い声が全ての音声をかき消す。

ハイテン: かつて何を笑ってたのか分からねぇ。時には設定が丸ごと変わっちまう。そこにあったのが何であれ — ここにあったのが何であれ。ファック。 (笑う) マジでウケるぜ!

笑い声は数分間続き、やがて沈黙に変わる。波が打ち寄せる音が聞こえる。

ハイテン: オチがどうだったかすら思い出せねぇや。

通信途絶。


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