アイテム番号: SCP-6311
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 収容を容易にする目的で、SCP-6311は元の位置からレンガ単位でサイト-93に移されています。SCP-6311の構造安定性を維持させるべく、検査と整備を週に1度実施します。SCP-6311-1と誤って遭遇する危険性を減らすため、前述の作業は遠隔操作ドローンを介して行います。
SCP-6311-1との交渉は、事前に承認を受けたレベル3以上の職員のみが担当するものとします。SCP-6311-1と交渉する職員は、事前に利用を許可された分の食肉のみを用いて交易を行います。それ以外の個人的な資源の提供は固く禁止されます。
交渉を試みた後も職員がSCP-6311から退出しない場合は、ロストしたか、今後の交渉の結果次第では食肉になったと見なされます。
説明: SCP-6311はかつてノルウェーのフォスビー村郊外に所在した石橋です。歴史的文献が欠如しているため、SCP-6311の建設年代や本来の建築者は不明です。
SCP-6311の上を直に歩いて渡っても異常現象は発生せず、その他の手段で関わっても何も起こりません。ただし、橋の弧の真下を歩いて通った場合は例外です。橋の下を通った人物は即座に消失します。消失後は被験者の証言から、未知の空間に移送されると考えられています。
証言によれば、この空間は全方向に暗闇が広がっているとされています。何度も探査を試みたにも拘らず、帰還した被験者のうち、この空間の中で何らかのランドマークを始めとする場所に到達できた人物はいません。そのため、この空間内に存在する実体は、進入した人物とSCP-6311-1のみであると考えられています。
SCP-6311-1はSCP-6311内に存在する、形状や大きさが定まらない実体です。
これまでの被験者はSCP-6311-1の首尾一貫とした描写を提示することができておらず、大抵の場合、多数の矛盾した特徴を挙げて説明します。SCP-6311-1を写真や映像に残す試みも同じく失敗しており、真っ黒な画像しか生成できていません。
SCP-6311-1は知性を有しており、意思の疎通が可能です。SCP-6311-1は通常、進入してきた人物と会話し、情報を提供しますが、その引き換えとして同価値の対価を要求します。SCP-6311-1の価値観はやや原始的であり、人間の命の次に食料 (具体的には生肉) を非常に価値ある物と見なします。人間を生贄に捧げることを拒否された場合、SCP-6311-1は求められた情報と引き換えに大量の食肉を要求するのが通例です。
能力の計測実験により、SCP-6311-1は幅広い知識を有していると判明しており、歴史、地理、軍事機密、いくつかの別なアノマリーに対する収容の改良可能性について正確な情報を提供しています。ただし、特定個人のみが知っている情報を提供する能力はありません。このことから、知識を得るのに用いている手段が何であれど、テレパシーや読心術にまでは及んでいないと見られています。
補遺6311-1 (伝承分析)
SCP-6311は現在、伝承部門の管轄下にあるため、アノマリーの初期理解はキャンベル・プロトコルの下で図られました。キャンベル・プロトコルでは、地元地域に伝わる伝承や都市伝説に加え、その遠方で伝えられる派生物を統合し、それを事実と見なして初期収容に利用します。SCP-6311に関する以下の要約は、一次資料となる『三びきのやぎのがらがらどん』および27の派生物を統合したものです。読者の理解を円滑にするため、マリー・コホート博士による注釈が付与されています。
3匹の無邪気な生き物が橋を渡る。 (ここでの「渡る」は、文字通りに橋を渡るという意味ではなく、橋を用いてSCP-6311の領域に侵入するという意味である可能性があります。)
敵意のある生き物が3匹を順々に止める。 (この場合、敵対実体がSCP-6311-1を指すと容易に推測できます。この実体は大半の文献でトロールと名付けられており、本要約の残りでも同様の名で呼称します。)
3匹それぞれが、次に来る者がもっと大きい、だからもっと肉付きがいいとトロールに保証する。 (これがSCP-6311の具体的な関心とどう関わっているのかは、明示するまでもないでしょう。)
3匹目の生き物が物理的手段でトロールを打ち倒す。 (この部分がアノマリーの理解にどう役立つのかは不明です。これまで観測してきた交渉という手段以外にも、何かしらの関わり方があるのでしょうか?)
トロールが打ち倒され、3匹の生き物が何の妨げもなく通過する。 (私の見立てでは、これは2つの可能性を示していると思います。一つは、実体が "打ち倒されれば" 恐れずに橋を利用できる可能性。もう一つは、もっと単純な説明として、実体がいなくなれば普通に橋が利用できるようになるという可能性です。)
補遺6311-2 (初期接触記録):
Dクラスによる進入およびSCP-6311-1との交流を3回経て、マリー=アンナ・ジェイムソン主任研究員が、SCP-6311の真下の通過と、実体との個人間の交流を希望しました。空間内では記録機器の有効性が一貫しないため、交流内容の大まかな記録は、ジェイムソン主任研究員が帰還した後に書き起こされました。
私が何を見たのか、その正確な説明は未だに難しく思います — 一通り観測して以降は、気が付いたら目を瞑っていました。ですが、あの時を思い返すと言葉が思い浮かんできます。他に言えるどんな言葉よりも的確なのが。
そいつは、冷血という点では爬虫類でした。温血という点では哺乳類でした。
鱗があるという点ではトカゲでした。毛皮があるという点ではライオンでした。金属製であるという点では機械でした。石造りであるという点では記念碑でした。輝いているという点では星でした。
野生的という点では動物でした。残虐という点では人間でした。全てであるという点ではモザイクでした。
そいつは、トロールでした。
そいつは言葉では表現できないほど一瞬で私に挨拶し、この領域でそいつが提供するもの全てに、対価が必要になると前もって教えてくれました。私は対価を支払うことに同意しました。そいつはどうやら満足したようで、何を望むか訊いてきました。
私は事前に話し合って決めた質問から始めました。まず、名前を教えてもらえないか尋ねました。すると、その情報と引き換えに60億人の命を支払うか訊いてきました — 私はすぐに質問を取り消しました。次に私は、どういう原理で機能しているのか教えてほしいと尋ねました。そいつは羊の目玉1つと引き換えに承諾してくれました。対価を渡すと、そいつは情報を提供する引き換えとして栄養物を得ていて動いていると教えてくれました。これは私の愚問だったかもしれません。
それから何時間も話し合いが続き、例の食料源から提供された分の食肉をほとんど食い尽くされました。私はこれまで、我々が考案した収容改定案を関連研究チームに送ってきましたが、受けてきた報告はどれも非常に肯定的なものでした。SCP-6311-1は継続的に利用可能な資源として、財団にとって明白な恩恵となるでしょう。
これこそが、我々がこの伝承部門で仕事をする理由なのですよ、皆さん。一見すると、こういう物語は子供に言い聞かせるための怖い話の類に感じるかもしれませんが、それは大きな間違いです。この伝承は、その昔、自分たちが理解しがたい危険を人類が教訓とした手段であり — 我々が学ぶべきことはまだまだ沢山あるのです。
さあ、仕事に取り掛かりましょう。
インシデント6311-1
SCP-6311-1との交流から帰還して3日後の2021/09/13、ジェイムソン主任研究員が突如としてサイト内宿舎から失踪しました。ジェイムソン主任研究員の部屋の調査により、ベッドシーツからは血痕が、隣接するバスルームの排水口からは当人のものである数本の歯が発見されました。失踪したと思われる時間帯には、室内の監視カメラは作動していませんでした。
天井には以下のメッセージが焼き付けられていました。
私の時間はタダだとでも思っていたのか?
実験は一時保留されています。