配属サイト |
サイト管理官 |
研究責任者 |
担当機動部隊 |
N/A |
N/A |
N/A |
機動部隊イオタ-12 "明晰夢想家" |
特別収容プロトコル: SCP-6330の性質上、物理的な収容は現状不可能です。SCP-6330 "スリープウォーカー" イベントを検出および目撃するため、カメラ付きベビーモニターの販売と購入を推進する企業に資金が提供されます。
スリープウォーカーイベントの目撃談が広まった場合、機動部隊イオタ-12 "明晰夢想家" はSCP-6330関連の一般メディアの流通やニュース報道の調査と抑制を任されます。SCP-6330-1やSCP-6330-2を目撃した民間人には、直ちにクラス-A記憶処理剤が投与されます。
常に1つのSCP-6330-1が回収場所に最も近いサイトの小型アイテムロッカーに保管されます (現在の研究対象はサイト-44に保存されています)。各実例は週に1度検査し、変化があれば最寄りのレベル3研究員に報告してください。スリープウォーカーイベントの影響を受けたSCP-6330-1は、これまでイベント後に何の異常活動も記録されていないため、該当実例が発見された家族の手元に残しますSCP-6330-1を所有する家族は、今後活性化した場合に備えて監視されます。
説明: SCP-6330は世界中の動物のぬいぐるみに影響を及ぼす現象ですが、テディベアに影響した事例が最も多く見られます。この現象の発生はスリープウォーカーイベントと呼称されています。
スリープウォーカーイベントは低年齢の、典型的には1〜14歳の小児がいる親族世帯でのみ発生します。イベントはSCP-6330-2と指定された実体の出現から開始します。この実体は概して影と混ざっており (この機序はほとんど判明していません)、ファンタジー作品を連想させる生物、例えばドラゴンやオーガに幾分か類似しており、必ず子供用ベッドの下から出現します。SCP-6330-2実例は、睡眠中の子供の狩猟もしくは捕食を意図したと思われる行動を表現します。SCP-6330-1は子供部屋に元から存在していた動物のぬいぐるみであり、SCP-6330-2が出現するまでは非異常であったように見受けられます。
SCP-6330-1はSCP-6330-2と戦闘するため、そして恐らくは子供を保護するために、小さな木製 かつ中世風 の武器を瞬時に出現させると観測されています。戦闘は最長で20分続き、いずれの事例でもほぼ無音です。観測された 全ての ほとんどの事例でSCP-6330-1は勝利を収めますが、戦闘中に深い "外傷" を負います。多くの場合ウールや詰め物が引き裂かれており、イベント後の既知の全事例において、SCP-6330-1は負傷が原因で "死亡" しています。"死亡" する前に、実例はSCP-6330-2の死体をベッドフレームの下へと引き摺り、姿を消します。
しばらくするとSCP-6330-1は姿を現し、ベッドに上がろうとします。その後、SCP-6330-1は子供を抱擁して "死去" します。
補遺6330.1: 実験記録
SCP-6330の事案は概して無作為かつ不定期に発生するため、制御下での実験は総計で1回実施されています。以下は当該イベントの記録です。
場所: サイト-44
日付: 1987/7/14
前書: 以下の実験はサイト-44内で実施された。███研究員の7歳の娘 (以下、"対象" と表記) をヒト型実体収容室に入れ、███研究員曰く対象が強い愛着を抱いているテディベアを用いて気持ちを落ち着かせて眠らせた。この実験は以下の夢遊イベントが発生するまで計13回実施された。必要であれば即座に介入するため、機動部隊イオタ-12は部屋の出入り口に配備された。
[ログ開始]
パインズ研究員: 対象がレム睡眠に入りました。
対象: (静かないびき)
3時間の間、異常活動は見られない。太平洋標準時で01:40、SCP-6330-2が対象のベッドの下に観測される。
01:40: ベッドの下からカサカサという静かな音が聞こえ、大型動物の呼吸を思わせる音が聞き取れる。鱗に覆われた爪を備えた一対の大きな手がベッドの縁を掴む。西洋の竜に似た生物が姿を現す。実体が二足歩行と匍匐を切り替えながら、地上3 mほどの高さに位置取る。
01:45: それから5分間、SCP-6330-2は監視カメラに気付かないまま、静かで整然とした動きで室内を巡回する。
01:50: SCP-6330-2が対象の方を向き、ベッドの足元の方で構え、対象に向かって両腕を伸ばす。実例が顎を大きく開き、鋭く巨大な歯と濃いピンク色の舌を見せる。この時の動きはヘビのそれと類似している。実例が恐らくは対象に突進しようとしていると、対象が胸に抱いていたクマのぬいぐるみが立ち上がり、不明な発生源から小さな剣と盾を取り出す。SCP-6330-1が剣の先を下に向け、盾を脇に構える。SCP-6330-1がSCP-6330-2と目を合わせたまま、少しかがみ込んで剣を振り回す。10秒後、SCP-6330-2が顎で対象に攻撃を仕掛け、それに応じてSCP-6330-1が攻撃者に飛びかかり、SCP-6330-2の目に切り傷を付ける。SCP-6330-2が静かに唸り声を上げ、傷に触れる。傷からは粘性のある黒い液体が漏れている。SCP-6330-1がSCP-6330-2に向かってジャンプし、ベッドシーツの布を用いて速やかに傷を覆う。恐らくはその存在を示す汚れや痕跡を最小限に抑えようとしているものと思われる。
01:59: 両実例が戦闘を始めてから9分後、SCP-6330-1に初めて損傷の形跡が見られる。背棘の一つを切断されたSCP-6330-2が、SCP-6330-1を力強くはたき、部屋の端まで叩きつける。SCP-6330-1が腹部を抑えながら立ち上がり、今やウールと詰め物で覆われている手を見る。両者が再び突撃し合うが、その際に就寝中の対象がわずかに動いたように見受けられる。両実例が止まって対象の方を素早く向き、やがて対象が落ち着く。両実例が戦闘を再開する。
02:10: 20分間の戦闘の果てに、両実例が大きな傷跡を残し、重傷を負う。SCP-6330-2の鼻を起点にジャンプしたSCP-6330-1が、部屋の端からSCP-6330-2の方へ疾走し、飛び上がって致命的な一撃を加え、首を切断する。SCP-6330-2が息絶えたように倒れ込み、SCP-6330-1にベッドの下へ引き摺られる。
02:15: しばらくして、SCP-6330-1が姿を現す。片目のボタンの喪失や、詰め物の露出、裂けたウールなどの損傷が見て取れる。SCP-6330-1が剣と壊れた盾を近くのテーブルに置く。その後、SCP-6330-1が対象に向かってベッドシーツをよじ登る。対象はこの実験を通して安らかに眠っていた。SCP-6330-1が子供の側で動かずに横たわる。恐らくはカメラを直視すると、ウールでできた小さな親指を丸い手から突き出し、研究者に "サムズアップ" を送る。SCP-6330-1が頭を子供の頬に乗せ、動かなくなる。
[ログ終了]
実験の終了とともに、機動部隊イオタ-12がベッドを徹底して調査しました。SCP-6330-2の死体はベッドフレームの下には発見されませんでしたが、上述の黒い物質が微量ながら残されていました。サンプル採取の結果から、この物質が生のヘモグロビンと水で構成されていると判明しましたが、粘性などの物性はこの知見を支持するものではありません。
SCP-6330-1実例は回収され、安全貯蔵庫に安置されました。現在のところ、他に異常性は見られていません。
補遺6330.2:
2001/07/07に発生したスリープウォーカーイベントの後、新聞の見出しに以下の表題が付けられました。
この新聞はオレゴン州ポートランドの民間人の間で大量に流通しました。捜査員が現場に到着すると、少年の部屋の壁に粘性のある大量の黒い液体が筋状に残されていたと判明しました。捜査員は直ちに財団の介入を要請し、機動部隊イオタ-12が派遣されました。実験からこの物質はSCP-6330-2と一般に関連するものであると確認され、イオタ-12はこのイベントの全面的な調査を実施する許可を申請しました。この申請は監督司令部によって承認されました。
以下のファイルは機動部隊イオタ-12自らが執筆したものである。非公式なコメントは全て無視するよう推奨する。~ ウッズ管理官
イベント131インシデントレポート
報告: 6330-131
全体の撹乱度: 高 (かなり悪い感じだ)
概要: スリープウォーカーが2001/07/06の夜に発生。カメラ映像や目撃者証言、何があったのかを明確に示す証拠は存在しなかったが、当時起きていた隣人らは部屋からドスンという音が聞こえたと報告した。SCP-6330-2の内臓と疑われる跡が壁に残されていた。
子供の行方は不明。加えて、その子供のシャチのぬいぐるみが部屋の隅で発見された。いや、実際には破片が部屋一帯に散らばっていたのだが、本体と頭部は丸まった状態でベッドの近くに置かれていた。少量の黒い物質が付着していたが、両目は水で湿っていた。これがSCP-6330-1実例であったと思われる。
付記: 地元の自治体や報道機関がこの一件を取り上げている。市民は失踪の原因究明に大きく関心を寄せている。我々は市民に次のように説明した — 動物か何かが部屋に忍び込んで、子供が抵抗、あの物質は血で、しかしながら子供は負けて連れ去られたという見解であると。残念ながら市民はその答えに納得せず、我々に「嘘をつくのはやめろ」と迫る有様だ。
スリープウォーカーイベントから2日後、行方不明の少年が実家の庭にある垣根の陰に意識不明の状態で発見されました。簡易インタビューにより、この少年はイベントの最後の数分間を目撃していたと判明しました。少年は「僕のシャチが大きなモンスターと戦ってて、そのモンスターが僕を掴んで窓から連れ出したんだけれど、誰かがその様子を見てたおかげで僕を落っことしたから、僕は茂みに隠れてたんだ」と主張しました。2度目のインタビューでは他に判明した事柄はなかったものの、少年は「モンスターが僕の靴下を食べた」と主張しました。
子供を連れて逃走に成功していた場合のSCP-6330-2の意図は不明です。全ての関係者は記憶処理され、カバーストーリーが捏造されるとともに、イオタ-12は当該地域の親にビデオ監視カメラを購入するよう呼びかけました。
補遺6330.3:
2008/11/18、イングランド、ケンブリッジ在住の一家から地方当局に通報が届きました。一家は息子の部屋におけるスリープウォーカーイベントの映像を発見したと主張しました。機動部隊イオタ-12 "明晰夢想家" が調査のために派遣されました。映像は職員が押収し、一家にはクラス-A記憶処理剤が投与されました。
場所: イングランド、ケンブリッジの████一家の住宅。
日付: 2008/11/19
前書: 以下はベビーモニターが撮影したイベント内容の書き起こしです。留意点として、スリープウォーカーイベントがデジタルで記録された例は、制御下での実験を除けば本事例が初めてです。
[ログ開始]
12:01: 子供のベッドが軽く揺れ、SCP-6330-2実例が出現する。実例は未知の生物を模しているが、筋肉質で大きな体格をしていると形容され、直立している。実例は部屋の反対側へと歩き、腰をかがめて子供を正確に10分間観察する。
12:11: SCP-6330-2がまた直立し始め、恐らくは収納可能な爪を広げる。子供の隣に置かれていたテディベアが突如として立ち上がり、弓と矢筒を取り出す。SCP-6330-2が四足歩行の体勢を取って唸り、ベッドに向かって突進する。SCP-6330-1がSCP-6330-2目がけて矢を1本放ち、実例のイヌのように突き出た鼻に命中させる。それに応じてSCP-6330-2が雄牛やウシ属動物を思わせる大きな吐息を漏らす。
12:28: 実例が30分間戦闘を続ける。これは今まで記録されたスリープウォーカーイベントの中で最長である。両者ともに他のSCP-6330-1実例および-2実例と一致する能力と技能を見せる。やがて、SCP-6330-2がSCP-6330-1を近くの壁に押し付け、"締め殺す" かのようにする。その後、SCP-6330-2が腕からSCP-6330-1の矢を1本引き抜き、-1の胸に突き刺す。SCP-6330-1が激痛を受けたような挙動を示す。SCP-6330-2が勝利したかのように見受けられる。
SCP-6330-2がSCP-6330-1に頭をもたげ、実例の右耳に "囁いて" いるように見えるが、音声記録では何を発声したのか正確に判断できない。SCP-6330-1が頭を上げ、SCP-6330-2の目をぼんやりと見つめる。SCP-6330-1が背中に手を伸ばし、全体が木でできた、小さなGlock-19ハンドガンを取り出す。その武器をSCP-6330-2の額に向け、素早く発砲する。銃声はほとんどせず、SCP-6330-2の身体が力なく倒れる。粘性のある黒い液体が壁に撒き散らされる。-1が目に見えて力をなくしたSCP-6330-2の死体をベッドまで運ぶ。大きな前腕で死体を引き摺り、ベッドの下に到達した途端に消失する。
12:40: SCP-6330-1が帰還し、部屋を軽く見渡してから、子供の方を向く。実例が机をよじ登ると、1枚の紙とペンに気付いたように見受けられる。SCP-6330-1がメモを書き始め、それをベッド脇のデスクの上に残す (フィールドレポート6330-184参照)。重傷を負った-1が足を引き摺りながらベッドに向かい、両腕を大きく広げて子供の胸に倒れ込む。それ以上は何の動きもなく、子供の隣で息絶える。
[ログ終了]
以下はイベントの終結後に機動部隊イオタ-12が執筆した調査報告書です。
イベント184インシデントレポート
レポート: 6330-184
全体の撹乱度: 低
概要: 12:01にスリープウォーカー開始。戦闘は30分近く続いた。12:40にスリープウォーカー終結、影響を受けたSCP-6330-1が無力化。我々が子供だった頃にも、このようなことが幾度もあったのではないかと疑問に思わされた……
付記: SCP-6330-1がメモを書き残した。記録の中で、英語を理解できた唯一の-1実例。内容は以下の通りである。
やあ、ティモシー。
いつもぼくを見守ってくれてありがとう、本当に楽しかったよ。きみを守ることで、ぼくはその優しさに報いられた。残念だけど、ぼくはケガをしてしまった。もう行かないと、ぼくは弱り果ててここにはいられないんだ。きみがぼくのことを覚えていてくれたらうれしいな。
きみのお手伝いができて楽しかった。きみの世話になった日々は楽しかった。こうなるのは初めから分かってたよ — スリープウォーカーがきみのもとにやって来ることは。自分の仕事ができて、ぼくは幸せだ。
さようなら、ぼくの友達。
また近いうちに会えたらいいな。