SCP-6380


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リチャード・チャペル、1904年頃


特別収容プロトコル: 本件は1940年、GoI-001の解散と共に終結し、死体及び関連する証拠品は安全に処分されました。

説明: このアノマリーは、1925年の冬季にかけてアメリカ合衆国シカゴの様々な場所で発見された、43体のヒト型生物の死体の総称です。41体は同じ過去の種族であり、残り2体は高齢の人間の男女でした。

これらの死体は独特な名辞異常事象の影響を受けており、この文書上での記述も含め、言及する際に用いることが可能な用語や名称が制限されています。さらに、全ての死体は識別できません - 死体は識別可能な特徴を備えてはいる反面、それらの特徴はいずれも、ある死体を他の死体と区別するためや、特定ないし固有のアイデンティティを割り振るために用いることができません。この異常性の厳密な性質や範囲は現在も調査中ですが、善良なる森林民と関連するアノマリーの名辞災害の特徴と一致しています。

質問者: エージェント ソロモン・シェルビー

対象者: ビルケン・“ブラッドハウンド”・ノバコフスキ、GoI-001 (“シカゴ・スピリット”) の元構成員

«抜粋開始»


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ビルケン・ノバコフスキ

ノバコフスキ: 俺は何一つ吐かねぇぞ。

シェルビー: お前は俺たちが何を求めてるかすら知らないだろう。

ノバコフスキ: お巡りめ、たとえ何だろうとクソ食らえだ。何も言わん。

シェルビー: いい加減にしろ。協力しなければどうなるか分かってるな。

ノバコフスキ: いや、そうじゃねぇ、テメェはさっぱり理解してねぇ、違うか? 俺は言えねぇんだよ。チャペルには魔法がある。誰かがサツにタレ込んだら、チャペルはどうにかしてそれを察して始末をつけに来る。

シェルビー: 奴は檻の中だ、ビルク、もう誰も始末できやしない。シンシン刑務所とは訳が違うぞ。俺は警官じゃない。俺たちはチャペルを厳重に閉じ込めて鍵を捨てた。奴は死んだも同然さ — もし質問に答えなきゃ、お前も直にそうなる。

ノバコフスキ: そもそもテメェらはいったい何を知りてぇってんだよ?

シェルビー: 今から… 13年ほど前、1925年の冬を通して、シカゴではギャング流の処刑が相次いだ。俺たちが発見した死体が人間じゃないのはお互い承知の通りだ。俺たちは警察じゃないが、何が起きたか、あの死体がどういう経緯でこの街に辿り着いたかを知りたい。

ノバコフスキ: えい、クソ。ありゃ厄介な抗争だったぜ、お巡り。とんでもなく厄介だった。奴らの正体を知ってんのなら、調べねぇのが得策だって分かってるはずじゃねぇか。

シェルビー: さっさと聞かせろ。

ノバコフスキ: タバコ、いいか?

シェルビー: 好きにしろ。

[合間。]

ノバコフスキ: 出身は?

シェルビー: 生まれも育ちもシカゴだ。

ノバコフスキ: ふん、どういう意味だかね。この街はな、移民の上に成り立ってんだよ。テメェが歩く通りを舗装したのは俺たちだ。

シェルビー: お前は人生で一度もまともな労働をした試しがないだろうが。

ノバコフスキ: 街を建てただけじゃねぇぞ。誰もやりたがらねぇ汚れ仕事を全部やった。その見返りに、小銭を投げ付けられて、川沿いのトタン小屋に住まわされて、汚物の中でもがく生活を送らされたんだ。

シェルビー: お気の毒様。

ノバコフスキ: 文化だって築いたんだ。俺はな、親父がポーランド人だ。ボートと馬車で運んできた文化を長屋で守ってきた。

シェルビー: ヨーロッパでの出来事を考えると、選択肢はそう多くなかっただろう。

ノバコフスキ: まぁそこが肝なんだがな。俺の父方はポーランド人だが、母方はアイルランド人だ。だからチャペルは俺に仕事をさせた。そんで — 俺は腰抜けじゃねぇが、チャペルは凄まじく恐ろしかった。ほとんど面識の無い俺にだって、冷酷非情な男だってのが分かった。部屋に入って来るなり全員が起立するような奴だ。膝をガクガク振るわせて、この悪魔みてぇな男から今すぐ逃げろって本能の叫び声が聞こえてる俺の目を覗き込んでよ、アイルランドの血を引く男が必要だと、そう言ったんだ。

シェルビー: 何のためにアイルランドの血が必要だった?

[合間。]

ノバコフスキ: ポーランド人は文化をアメリカに運んで戦争から救った。でもな。アイルランド人は全く別なもんを持ち込んでたのさ。


«抜粋終了»

死体は6本の体肢を有する二足歩行のヒト型実体に類似します (発達した腕2本、その下により小さな腕2本、趾行性の脚2本) 。いずれも、時代に即し、特異な身体構造に合わせて加工されたスーツやドレスを着用していました。皮膚は体毛に覆われていて、触れると柔らかく、顔には6つの目が等間隔でアーチ状に並んでいました。ベースライン人類との最大の外見的な差異には、細長い顔面構造と、背中から突出した大きな骨棘が含まれます (内部骨格や臓器構造は著しく異なり、数種類の特異な臓器も確認されています) 。

質問者: エージェント ソロモン・シェルビー

対象者: キリアン・オマリー、シカゴ・ノースサイド・ギャング1の構成員

«抜粋開始»


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キリアン・オマリー

オマリー: 何だよ、俺はアイルランド人だから飲んだくれだとでも? そういうことか?

シェルビー: 落ち着け。俺は警察じゃない。

オマリー: ああ、もぐり酒場のドアを蹴破る前の警官はみんなそう言うんだぜ。

シェルビー: 俺の知ったことか。お前が浴槽で密造酒を醸造してようと、違法宝くじを売りさばいてようと構やしない。俺はそんな事を訊きに来たんじゃない。

オマリー: だったら何がお望みだ?

シェルビー: アメリカに来た理由を教えろ、オマリー。

オマリー: あ?

シェルビー: 聞こえたはずだ。お前は従軍してたな?

オマリー: ああ。 ロイヤル・アイリッシュ連隊にな。その後、俺は弾を食らって、とっとと家に帰れと命じられた。

シェルビー: そして当然、お前はそうした。その後、揉め事に巻き込まれた。

オマリー: 何が揉め事だ、ふざけやがって。俺は同胞のために決起したんだよ。イギリス人どもはずっと昔から俺たちを踏みつけてきた、そして-

シェルビー: 分かったよ。お前は復活祭で大活躍し、IRAと一緒になって武器を取った。隅々まで民族主義に染まった。

オマリー: どうしてそんな事まで知ってる?

シェルビー: 助けてもらったんだろ? 革命闘争の最中に。

オマリー: ドイツ人の話か?

シェルビー: いいや。もっと古い、もっと自然界に近い民族の話さ。

[合間。]

シェルビー: 俺は例の死体について知ってるぜ、オマリー。それにハイ・ブラジルはここ3世紀近く、7年ごとにモハーの断崖を通過してる。翠玉の部族はアイルランドと切っても切り離せない関係にある - なのにどうして奴らはシカゴに辿り着いた?

オマリー: いや…

シェルビー: 正直に吐け。

オマリー: 取引をした。小さな集まりとだ、島に住む主流派じゃない。要は反逆者さ。奴らは調子づいてる時は人間を好いてないが、あの戦争は奴らにとっても過酷だった。大勢死んだ。奴らは島を離れたがっていて、俺たちが必要とする魔法を与えてくれた。言っておくがな、俺たちは魔法のおかげで戦争に勝ったんじゃないぞ。魔法は戦局を左右しなかった - 俺や他の立派な連中を、泥にまみれてくたばってもおかしくない状況で生き延びさせてくれただけだ。俺たちは命を救われた。

シェルビー: そして、休戦協定が結ばれた時、お前は立つべき側を見誤った。

オマリー: ああ。俺は銃殺刑になるはずだったが、波止場に知り合いがいたんでね、ニューヨーク港行きの船にこっそり乗り込んだのさ。ところが波止場に着くや否や、奴らが何処からともなく現れ、対価を払うべき時が来たと言いやがった。そんなこんなで船出した - 100人余りの人間を乗せ、40人の高潔な丘の生き物を甲板の下に隠してな。

シェルビー: オーケイ、ニューヨークか。しかし、鉄に触れない塚人どもを40人もどうやってシカゴまで連れていった?

オマリー: 大戦が終わった直後に移住した従兄弟たちがいる。臆病者ぞろいだが、引き際を理解してた。そのうち何人かに頼みこんで、奴らを魚みたいに木箱詰めにした後、セントローレンス島と五大湖経由でシカゴまで船で運んだ。

シェルビー: それはいつの話だ?

オマリー: 1924年だったかな。

シェルビー: 成程、で、シカゴに着いた後は?

オマリー: その後は知ったこっちゃないね。俺は奴らを連れていっただけさ。ノースサイドにも3年後まで参入しなかったし、その頃には例の抗争はとっくに終わってた。良い厄介払いだ。

シェルビー: 何故そう思う?

オマリー: アウトフィットがスピリットみたいに魔法のでたらめを扱わないのには理由がある。だって、チャペルに何があったかを見ろよ。お前、チャペルに会ったことはあるか?

シェルビー: いいや、だが話にはよく聞いている。

オマリー: 俺は一度だけある。チャペルはその日、ウィスキーの密売かなんかについて、ドゥガンとの打ち合わせに来たんだ。奴が入室した時 - この業界じゃ、誰しも多少は手を汚してる。入室してドア枠を埋め尽くした時、チャペルは武器を持ってもいなけりゃ、笑顔でもなかった。それでも奴が極悪非道な事をしてるのは伝わってきたよ。手に何人かの血が付いてるどころじゃない、奴は街単位で血にまみれてて、ほんの一瞬で同じ事をまたやってのけられる。見るだけでそれが分かった。

[合間。]

オマリー: チャペルはノースサイドとのささやかな抗争に勝ったが、それでも結局ああなっちまった。ケダモノとの商売は、呪われた商売なのさ。


«抜粋終了»

死体がシカゴの各所から発見される前の冬、シカゴ・スピリットとノースサイド・ギャングの間では、シカゴ埠頭の支配権を巡る小規模な抗争が勃発していました。構成員の大半をアイルランド系アメリカ人が占めるノースサイド・ギャングがアイルランドにルーツを持つことから、野生の者たちは彼らの傘下に入り、仕事の提供や警察当局からの保護の見返りとして、彼ら特有の魔術的な奉仕を行っていたと考えられています。

質問者: エージェント ソロモン・シェルビー

対象者: SCP-032-ARC: チャールズ・デリンジャー、GoI-001 (“シカゴ・スピリット”) の元補佐役

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SCP-032-ARC

デリンジャー: ノースサイド・ギャングとの抗争だと? もう10年以上前の話だぞ、何故今さら話を蒸し返す?

シェルビー: お前にとって重要な理由じゃない、クズ野郎。ここで質問してるのは俺だ。

デリンジャー: おうおう、分かったよ。ただな、覚えておけ。俺はお前の骨を内側からへし折れる男だ。

シェルビー: そうとも、そして俺はお前が日光を何時間浴びるのに相応しい奴かを監督長に伝える男だ。今のところ、その数字はゼロだぜ。

デリンジャー: [笑う] 気に入ったぜ! さて、抗争の話だったな。抗争とは言うが、実態は虐殺に近かった。だが、煽ってきたのは奴らなんだ、それは忘れるな。スピリットは当然の報いを受けるべき奴ら以外は決して攻撃しなかった。

シェルビー: ああ、盗人界隈にも仁義ありとかそういうやつな。それで、連中は何をやらかしたんだ?

デリンジャー: ミックどもか?2 いや、ありゃごく普通の事だった。俺たちのトラックを押さえて、積荷のウィスキーを埠頭で横取りしやがった。俺たちはサツには行かなかった - 当時はまだアウトフィットがサツの手綱を握ってたからな - だからウチの組員を何人か、清掃屋と一緒に送って、まぁ、問題を片付けたわけさ。

シェルビー: それが報復殺人に発展するとは予想してなかったらしいな。

デリンジャー: してなかったよ。この稼業はそういうもんなんだ。奴らは俺たちを試して - チャペルを試して - 弱点を探ってた。チャペルはあのべらぼうな人生で一度だって弱みを見せなかったし、アイルランド人どもにもそれが分かるように、向こうの組員を何人かぶち殺してメッセージを送った。

シェルビー: メッセージ。

デリンジャー: “スピリットを舐めるな”。スピリットが送るのは、お前が目にしたこともないようなメッセージだ - 俺自身があの一件を処理した。例のパディども3の葬式は安く済んだとだけ言っとこうかね - 死体がピクルスの瓶に入る程度しか残ってなけりゃ、棺は要らんからな。

シェルビー: ジーザス。だったら、何が問題だったんだ?

デリンジャー: 奴らがよりによって草むら育ちと組んでたとは知らなかったんだ。いや、話には聞いていたが、一度も見たことがなかったし、ドンパチをやる前にじっくり相手方を観察してもいなかった。で、5人の人間と1人の… あのあれの死体が出来上がった。俺たちはどう扱うべきか分からなかった。

シェルビー: ノースサイドは引き下がったのか?

デリンジャー: ああ、勿論。さっき言った通り、ノースサイドにとってはあくまでも仕事だ。俺たちのゲームはそういうルールで動いてる。ところが、名誉を至上とする伝説のクソッたれファンタジーランドから来た蛮族どもにとっては、それは血で血を洗う抗争の始まりだった。奴らは俺たちの稼業の流儀を理解しないし、俺たちには奴らの抗争の流儀がまるで分かってなかった。玄関先で最初の死体が見つかるまで、そう長くはかからなかった。

シェルビー: だが、お前たちにとって報復は日常茶飯事だろう。その時はどう違ったんだ?

デリンジャー: 誰なのか分からなかった。

シェルビー: 赤の他人?

デリンジャー: 違う、ウチの組員だった。ただ、これはあいつだ、と言えた奴は誰一人いなかった。

[合間。]

デリンジャー: 名前を奪われたのさ。この稼業に身を置く連中にはな、タマと銃と名前しかないんだ。奴らはウチの組員の名前を奪い、そいつ自身の銃を使って命を奪いやがった。そうなったら、後に何が残る?

シェルビー: 何も残らない。

デリンジャー: その通り、何一つ残りゃしない。そういう死体がもう2つ増えた後、チャペルは補佐役を呼んで会議を開いた。

シェルビー: 誰が参加した?

デリンジャー: 俺と、車輪と、鋸歯と、フィッツ。スピリットの最古参だ。俺たちは全員ガキの頃からチャペルとつるみ、心底からあいつを恐れてた。

シェルビー: お前はチャペルを尊敬してたと思ってたがね。

デリンジャー: 尊敬してたさ。それでもあいつを恐れる気持ちは変わらなかった。リチャード・デイヴィス・チャペルみたいな、人間を内側から完膚なきまでにぶっ壊せる男の隣に座って、一滴たりともションベンを漏らさずにいられる奴がいたら、そいつは世界一勇敢か、世界一イカレてるよ。

シェルビー: 会議の話を聞かせろよ、チャールズ。

デリンジャー: そうだった。とにかく、やるべき事ははっきりしてた。ゲール問題を綺麗さっぱり解決する必要があったんだ。


«抜粋終了»

死体はシカゴ市内の様々な地域から発見され、特に北側の湖岸通り付近に集中していました。発見地点の完全なリストはこちらで閲覧可能ですが、ほとんどの死体は一般市民を刺激したり、警察の注意を引かないようにしつつ、最終的には貧困層や地元の犯罪者によって必ず発見される程度に隠蔽されていました。3体は旗竿に刺さった状態で発見され、1体は磔にされていました。また、ノースサイド・ギャングと提携していた肉屋の冷凍庫や冷蔵箱から発見されたものもあります。検死解剖の結果、大半の死因は配置に際して負った内臓損傷であり、見せしめとして死ぬまで放置されていたと断定されました。この処刑手段は、シカゴ・スピリットが敵対者にメッセージを送る目的で死体を遺棄した数件の過去事例と一致しています。

質問者: エージェント ソロモン・シェルビー

対象者: マザー・アレッシア・リッチ、シカゴ在住のアラディア崇拝派の魔女

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アレッシア・リッチ

リッチ: ここは中立地だよ。あたしゃ街頭犯罪者の諍いには関わらない。

シェルビー: だが、お前は奴らから仕事を受けている。

リッチ: [合間] ああ。呪いに、儀式に、おまじない。

シェルビー: 魂を盗めるらしいな。盗んだ魂を悪魔に売っているそうじゃないか。

リッチ: 噂なんか信じるもんじゃないよ、看守ジェイラー

シェルビー: な-

リッチ: あたしゃ魔女だ。何を予想してたんだい?

シェルビー: …いいだろう。てっきり魔女は徒党を組んで活動すると思ってた。

リッチ: 魔女団カヴンは母国の伝統さ。だけど、あんただってよくよく知ってるだろうが、アメリカじゃ事情が違う。娼婦は通りを歩き、子供は工場で働き、魔女は集会を開かない。

シェルビー: オーケイ。実はな、お前が何年も前に執行した一連の儀式について訊きたい。シカゴ・スピリットのチャペルから受けた依頼だ。

[リッチは素早く何事かを唱える。]

リッチ: 取引した覚えのある悪魔の名前だよ。

シェルビー: 奴は何をした?

リッチ: 知らないね、あたしゃ他人の罪は読まないんだ。でも魂は見える。あいつの魂はねじくれて節だらけで真っ黒さ - 朽ち木の根っこにそっくりだ。それをお上品に着飾って髭剃った背の高い包み紙で覆ってる。あの黒い瞳の奥には何一つ無いって気付いた時の違和感には背筋が凍ったね。

シェルビー: 奴が例の冬にお前を雇った正確な理由は?

リッチ: 妖精族の魔法を払わせるためさね。

シェルビー: ちょっと待て、お前-

リッチ: そうだよ、あたしゃ連中の名前を口にできる。自分にかかってる魔法を払えないようじゃ、他人の魔法払いなんてできやしないよ。だけどね、マザー・アラディアに誓って、それなりに骨折り仕事だったよ。

シェルビー: 魔法の仕組みには詳しくないんで、詳細は勘弁してほしいんだが…

リッチ: 勿論。手っ取り早く言えば、妖精一人一人の血に流れてる命名魔法の対抗呪文を探すのに何週間も費やした。連中を見分けて、標的にできるようにする手段さ。

シェルビー: そして見つけたらしいな。

リッチ: ああ、15世紀のトスカーナ語の古い魔導書からね。アイルランドに渡った後、10年に一度しか現れない浮島を訪れた修道士が書いたんだ。

シェルビー: ハイ・ブラジル。

リッチ: その通り。修道士は古代の - 人類より、妖精より、それどころか“子ら”よりも昔の - 妖精から身を守る秘術を発見して、自分の名前をそのまま保って旅から帰ってきたのさ。

シェルビー: で、お前は具体的にそれをどう応用した?

リッチ: あたしゃ数週間かけて材料を揃え、繁華街の主な区域を覆うのに十分強力な儀式の下ごしらえをした。ところが、土壇場になって事情が変わった。

シェルビー: と言うと?

リッチ: セニョール・チャペルの幹部の1人が部屋に飛び込んできてね、何やら耳に囁いたんだ。あいつは全くの無表情だった。そして、あたしの所まで歩いてくると、計画変更だと言った。たまたま、妖精たちが全員1つの建物に集まってたのさ。あたしゃその建物に儀式を施すだけで、妖精たちの魔法も、力も、個性さえも剥ぎ取ることができたんだよ。


«抜粋終了»

死体のうち2体は、他の死体と同じ名辞異常事象の影響を受けていますが、完全に人間です。どちらも70代後半の白人であり、男性と女性です。他の死体とは異なり、この2体は処刑後に見せしめにはされていません。シカゴ北部の長屋でマシンガン掃射があったという通報を受けた警察が駆け付け、射殺された2体の死体を大量の弾痕で荒廃した一室で発見した後、2体は単純に遺体安置所へ送られました。

質問者: エージェント ソロモン・シェルビー

対象者: SCP-046-ARC: リチャード・デイヴィス・チャペル、シカゴ・スピリットの創設者・元指導者。

«抜粋開始»


シェルビー: 話の残りは他の連中から聞いたんだが、チャペルさん、1つだけ気掛かりがある。

チャペル: 言ってみろ。

シェルビー: 何故、魔法にかけられた森の者たちは突然一箇所に集合して、わざわざ一網打尽にされたんだ?

チャペル: チャーリーから聞いたんだな?

シェルビー: どうしてそれを-

チャペル: 私は行動を起こせないかもしれんがね、エージェント シェルビー、名前が出れば今でも分かる。ともかく、それは奴らにとって戦略的な優位に立つ機会だったからだ。奴らはそうだと思っていた。愚かな連中だ。

シェルビー: 何処の誰とも分からない老夫婦を人質に取るのがどう有利なんだ?

チャペル: 何処の誰なのか分かっていれば事情は異なる。

シェルビー: じゃあ、誰だ? お前の知り合いか?

チャペル: エメラルドの島の住民はな、筋金入りの民族主義者だ。名誉と家族と氏族を大いに重んじている。奴らはそれを当て込んだ。私には手が届かずとも、その1つ下なら仕留められると考えた。

シェルビー: 何を言ってるんだ、チャペルさんよ?

チャペル: 奴らと同じように個性を剥奪されていても、人間2人の身元は分かっていると言っている。

シェルビ█: 誰なんだ?

チャペル: アーサーとエリザベス・チャペルさ。

[沈黙。]

シ█ル█ー: じゃあ-

チャペル: そうだ、エージェント シェルビー。まさにその通り。奴らは私の老父母を利用しようとした。奴らは誰を敵に回したかを理解していなかった。リチャード・チャペルには弱点など無い。

██ル█ー: 怪物め。

チャペル: いいや、セラス・マッカロイ・バロム、尚悪い。私は人間だよ、この妖精のカスめ。

[悲鳴]

█████: なんで… なんでそれが…?

チャペル: 大層な計画があったものだな? エージェントの名前を盗み、容姿をそれらしく変え、クソ忌々しいパディ仲間に何が起こったかを探り出そうとしたのだろう? 檻の中で丸腰の私に復讐するつもりだったか?

█████: うぁ…

チャペル: 馬鹿な獣め。私は貴様の名を奪う、セラス・マッカロイ・バロム、地獄に堕ちるがいい。

[悲鳴が止む。]

[沈黙。]

チャペル: リチャード・チャペルを決して舐めるな。


«記録終了»

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