アイテム番号: SCP-641-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-641-JPに通じる扉が存在する2か所のサイトは財団フロント企業の私有地およびフロント企業の施設として外見を偽装し、財団職員以外の人間の侵入と注意を引くことを防止してください。また、財団職員についてもセキュリティクリアランス3以上の職員および該当職員に許可された職員以外の立ち入りを禁止します。
説明: SCP-641-JPは合計およそ██████m2の総面積を持つ異空間です。SCP-641-JPへの侵入口は現時点では山梨県██市にある閉店した書店『████』の2階にあるトイレの扉、岡山県████市の閉店した書店『███ ██支店』のバックヤードへの扉の2か所が確認されています。
SCP-641-JP内部は近代的な図書館のような内装1をした空間です。窓などから観測できるSCP-641-JPの「外部」は常に非常に濃い霧に覆われており、目視では観測できません。観測機器等での観測の結果では観測可能な範囲では建築物や樹木のような物体は一切観測できませんでした。「入口」2か所を除く「外部」へ続く扉や窓などは未知の手段で固定されており、開くことはできません。また、窓ガラスも異常な硬さを持っており、窓ガラスを割って「外部」へ行く試みもすべて失敗しています。
内部には照明や図書検索用端末、ウォータークーラー、トイレなどのような設備も存在しますが、電力や水道水がどこから供給されどこへ排出されているかは不明です。水道水は分析の結果鹿児島県███市で供給されている水道水の成分と一致しました。
SCP-641-JPの異常な点は、収蔵されている資料はすべて過去、あるいは現在いずれかの国や組織によって「禁書」とされている資料であるという点です。もっとも古い年代のものとしては、紀元前213年に秦の始皇帝により行われた焚書坑儒により焼却された物と同じ内容の書物が発見されています。なお、資料は書籍だけにとどまらず、9mmフィルムやビデオテープ、絵画などのような物も含まれています。現時点で確認された資料の一覧はファイル:SCP-641-JP内部収蔵資料一覧にまとめられています。
追記:現時点で確認されている資料は公式に「禁書」とされ流通が制限・禁止されたものだけではなく、有害図書指定された資料なども含まれています。現在「収蔵」の対象となる基準について調査中です。
SCP-641-JP内部から資料を故意に持ち出したり資料を損壊しようとする試みは失敗しています。資料を持ったまま人間(以下被験者)が「出入口」へ向かい通り抜けると直ちに被験者と資料は消滅します。消滅した資料は直ちに元置かれていた場所に戻され、被験者はSCP-641-JP内部に戻されSCP-641-JP-1と定義される存在に変化します。資料を損壊しようとする試みも同様です。
SCP-641-JP-1は、SCP-641-JP内部に存在する人型実体で、外見は様々な服装・年齢・性別をした人間です。活性化しているSCP-641-JP-1は司書などのような図書館職員のような振る舞いをしており、資料の検索などに対しては協力的です。元はSCP-641-JP内部で破壊活動や図書の持ち出しをしようとした人間であると考えられていますが、人間だったころの自我は存在しないことが確認されています。
非活性化状態のSCP-641-JP-1はSCP-641-JP内部の随所にある図書閲覧用の机や椅子などに座ったまま動きません。以前は非活性化状態のSCP-641-JP-1はSCP-641-JP-2と分類されていましたが、別の日程での調査の際SCP-641-JP-2に分類されていた個体がSCP-641-JP-1と同じ振る舞いをしていた事が何度も確認されたため、両者は同一の存在であると判断され再分類がなされました。
携帯型の検査機器で活性化・非活性化双方のSCP-641-JP-1を検査したところ、体組織や遺伝子などは人間と同じでしたが、脳死状態にあることがわかっています。なぜ活性化中のSCP-641-JP-1が脳死状態にも関わらず活動しているかは不明です。また、活性化ないし非活性化する条件等もわかっていません。
SCP-641-JP内部で発見された資料の一部
書名:我が闘争
著者:アドルフ・ヒトラー
発見場所:「政治思想史」の本棚
補遺:ドイツ語版が収蔵されているほか、出版が禁じられているか有害指定されている国の言語訳版が収蔵されている。
分析:どうやら具体的に禁じている場所以外の版ならば、原版が禁書とされていてもここには収蔵されないようだ。 -███博士
書名:春色梅児誉美
著者:為永春水
発見場所:[編集済]の本棚
補遺:出版年相応の経年劣化が確認されている。
分析:ジャンルに制限はないようだ。公的組織により出版・流通が制限された事があるならば何でも構わないらしい。 -███博士
作品名:青い馬の塔(Turm der blauen Pferde)
作者:フランツ・マルク
発見場所:館内ギャラリー
補遺:絵画。原版はナチスにより退廃芸術として没収された後行方不明になっている。
分析:行方不明になった原版がなんらかのルートでここに収蔵されたのか、それともここにあるのは複製なのか…どっちだ?どちらにせよさらなる調査が必要だ。 -███博士
概要:SCP-717-JPに酷似した書籍
著者:不明
発見場所:児童書コーナー
補遺:資料調査中の研究員が発見。Dクラス職員に比較的無害な項目で実験させた結果、オリジナルのSCP-717-JPと同一の特性を持つことが判明。
分析:どうやら財団が収容し、一般には出回らないようにしている資料もここに複製が収蔵されているようだ。間違っても一般人や要注意団体関係者がここに入るような事態が起きてはならない。収容方法をより厳重にすべきであると考える。 -███博士
特別監視記録641-1
20██年██月█日、██████国において[削除済]という理由で█████ ███ █████氏の著書である『█████████████』の出版の差し止めの可能性が濃厚となりました。財団は『█████████████』がSCP-641-JPに収蔵される可能性が極めて高いと判断、どのようにして蔵書がSCP-641-JPに収蔵されるのかを調査するため███人体制でSCP-641-JP内部およびSCP-641-JP-1の監視をすることを決定しました。
対象:SCP-641-JP内部およびSCP-641-JP-1全個体
実施方法:███人体制での監視
結果:監視にあたる全職員が配備された3時間29分後、『█████████████』の出版差し止めが確定。それと同時にSCP-641-JPのエントランスに『█████████████』1冊が出現。エントランスそばにいたSCP-641-JP-1が該当書籍を回収し、『█████████████』が該当すると思われるジャンルの本棚に収蔵した。なお、印刷が完了していた『█████████████』すべてが保管されている██████国の[編集済]に潜入していたエージェントからの報告で、保管されていた『█████████████』の部数は変化しておらず、1冊も減っていない事が判明しています。
分析:どうやらSCP-641-JPに収蔵される物はどれも複製らしい。ただ、どのようにして禁書にされたのかをリアルタイムで感知したのかなどは不明なままだ。引き続き要調査であると考える。 -███博士
確認されたSCP-641-JP-1の一部
番号 | 外見 | 備考 |
---|---|---|
SCP-641-JP-1-6 | 旧日本軍憲兵曹長の制服を着用した中年のアジア人男性 | 所持していた身分証から19██年に左翼団体の捜査に向かったまま行方不明になった███ █憲兵曹長と判明。 |
SCP-641-JP-1-14 | 終戦直後のアメリカ陸軍伍長の制服を着用した若い白人男性 | 所持していた身分証から19██年に旧日本軍の施設の調査中に行方不明になったGHQの██████ ███伍長と判明。 |
SCP-641-JP-1-27 | スーツ・中折れ帽を着用した中年のアジア人男性 | 所持していた警察手帳から19██年に無政府主義団体の捜査に向かったまま行方不明になった特別高等警察に所属していた███ ██警部補と判明。 |
SCP-641-JP-1-38 | 灰色のジャケットに青いジーパンを履いた若いアジア人男性 | 所持していた免許証などから19██年に行方不明になった左翼活動家の███ ███氏と判明。 |
SCP-641-JP-1-47 | 和服の中年のアジア人男性 | 詳細不明だが、服装などからおそらく江戸時代、天保年代の人間であると考えられる。 |
SCP-641-JP-1-52 | スーツを着用した中年のアジア人女性 | 所持していた健康保険証から19██年に行方不明になった教師の███ ██氏と判明。 |
SCP-641-JP-1-65 | ぼろぼろの衣服を着用した初老のアジア人男性 | 詳細不明。財団では迷い込んだホームレスが何らかの理由で変異したと推測している。 |
SCP-641-JP-1-79 | 学生服を着用した若いアジア人男性 | 所持していた学生証から199█年に行方不明になった█ ██氏と判明。なお、学生服からは煙草とライターも発見された。 |
SCP-641-JP-1-82 | D-47628 | SCP-641-JP内部の書物を持ち出すよう指示したところSCP-641-JP-1に変異。 |
補遺:SCP-641-JP-1との接触記録
対象: SCP-641-JP-1-82(元D-47628)
インタビュアー: ███研究員
付記: 接触時、SCP-641-JP-1-82は活性化しており、書棚の周囲の見回りをしていた。
<録音開始>
███研究員: ちょっとよろしいですか?
SCP-641-JP-1-82: 何でしょう。
███研究員: この本を借りたいのですが、どこでどう手続きをすればいいでしょうか?
SCP-641-JP-1-82: 申し訳ありませんが、当図書館では貸出は行っておりません。
███研究員: どうしても必要なのですが、何とかなりませんかね?
SCP-641-JP-1-82: 貸出はできませんが、コピー機での複製ならば認められています。所定の申込用紙に必要事項をご記入いただいた上でご利用ください。
███研究員: そうですか、ありがとうございます。ところでもうちょっといいですか?
SCP-641-JP-1-82: 何でしょう。
███研究員: あなたの名前と、この施設について教えていただけませんか?
SCP-641-JP-1-82: 私はここの職員です。それ以上でもそれ以下でもありません。また、この施設は知識を収蔵する場所です。
███研究員: と、言いますと?
SCP-641-JP-1-82: 都合が悪い、という理由で隠された知識を収蔵する。それが当図書館の役目です。
███研究員: なるほど。ところで、ここは誰が運営しているのですか?
SCP-641-JP-1-82: 申し訳ありませんがお答えできません。███研究員: そうですか。ありがとうございます。
<録音終了まで省略>
終了報告書: ███研究員は引き続きSCP-641-JP-1-82に対し資料の入手方法や施設の存在する場所、SCP-641-JPの発生時期などを質問しましたが、いずれの質問も「申し訳ありませんがお答えできません。」という返答でした。███研究員はこれ以上の会話は無意味と判断し、打ち切りました。
私はSCP-641-JP-1-82の元となったD-47628の性格などをある程度把握していましたが、今の彼の性格は以前とはまったく異なるものになっていました。D-47628は粗暴な男で丁寧な言葉づかいを一切しない男でしたが、SCP-641-JP-1はSCP-641-JP-1-82を含めて総じて丁寧では有りますがロボットのような無機的な性格をしているように思われます。このあたり、人間がSCP-641-JP-1に変異する際に精神影響を及ぼしているか、なんらかの存在が素体となった人間に憑依しているかしているように思われます。 -███研究員
結局運営者や起源などはわからずじまいだった。ただ、奴の言っていた「知識を収蔵するのが役目」、という表現が引っかかる。役目、という事は当然何者かが何らかの目的で設置した、という事になるだろう。要注意団体が関与している可能性もまた否定出来ない。さらなる研究と警備の厳重化が求められる。 -███博士