SCP-644-JP
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アイテム番号: SCP-644-JP

オブジェクトクラス: Safe

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回収時のSCP-644-JP。(画像右。左は通常のトイレットペーパー)

特別収容プロトコル: SCP-644-JPはサイト-8181のトイレに設置されます。清掃員は個室トイレごとに設置されたSCP-644-JPを毎日使用して掃除を行ってください。SCP-644-JPを無断で持ち出した場合、処罰の対象となります。

SCP-644-JPによるものと思われる行列が財団内で発生した場合、発露していない職員は特異性が解除されるまでサイトから避難してください。避難時、安全圏まで他の職員と会話をしないでください。

説明: SCP-644-JPは通販サイトにおいて限定発売された████社製トイレットペーパー108個です。一般的な無地のロール紙タイプと同じ見た目をしており、トリプル巻きで巻かれています。紙と芯には香りがついており、香りをかいだ人物の多くはお香のような匂いと述べています。

SCP-644-JPは紙部分を無制限に引き出すことが可能です。引き出された後の紙には特異性は存在せず、一般的なものと比べても香り以外に目立った違いは確認されませんでした。SCP-644-JPの紙部分は除去及び破壊が可能です。しかし、芯の部分を破壊する試みは全て失敗に終わっています。芯のみにした場合では5秒以内に新しい紙が生成されますが、生成される瞬間を観測する試みは全て失敗に終わっています。

2つ目の特異性はSCP-644-JPが使用されない期間が2週間続いた場合に発揮されます。この特異性が発揮された場合、SCP-644-JPが存在する付近の人間はSCP-644-JPに最も近いトイレを使用しなければならないという思考を持つようになります。この特異性はSCP-644-JPが存在する地点から半径300m圏内にいる人物が対象となり、対象人物は速やかにこのトイレの使用を試みます。この思考は争いを強制させるようなものではないため、結果として対象人物たちによる行列が発生します。1発生した行列はSCP-644-JPの紙部分を10000m使用するまで解消されません。対象人物に話しかけると、話しかけた人物が効果範囲内にいない場合であっても同様の思考を示すようになります。財団が回収を行った際には行列の発生が8件報告されており、行列は短いもので約1400m、長いものでは約8000m程でした。また、対象となった人物がトイレとの距離がある場合では一旦行列から離れて再度並びなおすといった行動が見られます。行列を離れる原因の多くは、トイレもしくは食事です。

財団が最初に発見したSCP-644-JPは███博士の私物として使用されていました。███博士はトイレットペーパーが一向に無くならないことからオブジェクトの疑いがあるとして財団に調査を申請しました。この2日後には個人宅前等に行列ができているという通報が警察に多数寄せられています。███博士の証言からSCP-644-JPを製造した会社が判明しましたが、製造会社には不審な点が見当たりませんでした。財団はSCP-644-JPを購入した人物全員から回収し、行列ができた家の所有者及び行列に参加した人々にはクラスB記憶処理を施しました。残りの購入者にはカバーストーリー『不良品回収』が適用されました。

補遺: SCP-644-JP回収時の記録です。当時、他の場所でも同様の回収作戦が同時に行われていました。

回収人員: エージェント大川(休暇中だったが、対象となった人物に話しかけたことにより3時間前に行列に加わっていた。そのため、急遽回収人員として採用された)

インタビュアー: 千島博士

付記: ███氏の自宅から2km程行列が続いている。今回、エージェント大川とは携帯電話のテレビ電話機能を使用することで意思疎通を行っている。この方法では特異性が発生しないのは、別のSCP-644-JP回収班が1時間前に発見した。

<録音開始>
(エージェント大川はトイレの前にいる)

千島博士: エージェント大川、そろそろですね。できれば中の様子を撮影していただけたらありがたいです。

エージェント大川: わかりました。

(トイレを流す音の後に、前にいた人物がトイレから出てくる。エージェント大川が中に入った)

千島博士: トイレの様子を映してください。

エージェント大川: 了解です。

(映像にトイレットペーパーが映し出される。量は残り少なかった)

千島博士: ……あれ。このトイレットペーパー、オブジェクトではありませんね。

エージェント大川: みたいですね。周囲を探してみます。

(エージェント大川は一旦カメラを置き、周囲を簡単に探す。しかし、SCP-644-JPや通常のトイレットペーパーは見当たらなかった)

エージェント大川: トイレットペーパー自体がありません。

(トイレの窓がノックされる。エージェント大川が開けると、50代程と思われる笑顔の男性がトイレットペーパーを差し出していた。息が荒く、額に汗をかいているため、走ってきたと思われる)

男性1: よろしければ、はあ、使います?

エージェント大川: ありがとうございます。

(エージェント大川はこのトイレットペーパーを受け取るとすぐにセットした。後のインタビューではエージェント大川及び千鳥博士共に一連の出来事に違和感はなかったと主張している)

エージェント大川: 新しいトイレットペーパーをセットしました。ですが、その、これ、先ほど送られてきたオブジェクトの特徴と一致します。これを回収すればいいのでしょうか?

千島博士: いえ。今しがた送られてきた情報によりますと、一定量使用しないと行列が無くならないそうです。ですので、そのままで大丈夫です。

エージェント大川: わかりました。

千島博士: ところでトイレはしないのでしょうか?

エージェント大川: 実を言うと全然したくないんです。とりあえず、オブジェクトを使わないと……。

(エージェント大川は汚れを一通りふき取り、トイレに流した)

エージェント大川: よし。じゃあ、私はもう出ます。

千島博士: わかりました。では支部に一時帰還して、報告書をお願いします。

エージェント大川: ……えっ?

千島博士: どうかしましたか?

エージェント大川: 何言ってるんですか? もう一度並ばないと。

千島博士: ……何のためにですか?

エージェント大川: トイレを利用するためです。

<録音終了>

終了報告書: その後、エージェント大川は列の最後尾に3度並びなおしました。18時間後、行列は無くなり、財団はSCP-644-JPを回収しました。また、今回回収されたSCP-644-JPの持ち主は行列ができていた住宅の隣に住んでいた男性でした。この男性は映像記録においてSCP-644-JPを持ってきた人物です。本人は『買い置きのトイレットペーパーを使い切ってからSCP-644-JPを使用するつもりだったため、物置においていた』と主張しています。このことから、この男性の家ではなく隣家に行列ができていた原因はSCP-644-JPが置かれていた場所が隣家のトイレに近かったためであると考えられます。

追記: 今回発生した一連の事象により『対象となったトイレからトイレットペーパーが無くなった場合、並んでいた人間が近隣よりトイレットペーパーを持ってくる』という特異性が確認されました。しかし、基本的に持ってくるトイレットペーパーは持ってくる人間の記憶に依存しており、上記の映像記録で発生した事例において、すぐにSCP-644-JPを持ってくることができたのは偶然によるものと考えられます。

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