SCP-6455

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アイテム番号: 6455
レベル3
収容クラス:
keter
副次クラス:
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撹乱クラス:
dark
リスククラス:
danger
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ロサンゼルスのイーグルロック地区。SCP-6455による殺人事件の主な発生地。

特別収容プロトコル: 財団は現時点でSCP-6455の実行可能な長期収容戦略を策定できていません。現在、収容チームがSCP-6455を恒久的に、もしくは長期的に収容する手段を模索しています。

SCP-6455-Nの遺灰はサイト-19死体安置所の現実性固定セクターに安置されています。

説明: SCP-6455は、SCP-6455-Nと同じ流儀・手口で繰り返し発生する異常な連続殺人事件です。SCP-6455-Nは財団に捕獲される以前、1965年から1976年にかけてロサンゼルス郡で活動していた異常な連続殺人犯でした。かつてはこの人物がSCP-6455に指定されていましたが、1984年に自殺した後、SCP-6455-Nに再分類されました。

SCP-6455事象は平均して3ヶ月に1回発生します。最初の犯行以来、その発生率は徐々に上昇しています。一般的にSCP-6455事象はロサンゼルス大都市圏を主な影響領域としますが、SCP-6455に関連する事件は、北はワシントン州シアトル、東はコロラド州デンバーでも確認されています。

SCP-6455事象の一環として発生する殺人事件では、しばしば身元の特定に繋がらない証拠品が現場に残され、あたかも殺人犯がその場にいたかのように犯行現場が大きく変化し、荒らされます。しかしながら、SCP-6455の一環として発生する事件には実際の加害者が存在せず、関連する証拠は全てSCP-6455によって自然生成されたものです。指紋、生物学的証拠、所持品などの身元を特定できる証拠が残されていた事例はありません。

SCP-6455-Nは、一般社会では “イーグルロック・ドッペルゲンガー”Eagle Rock Doppleganger 及び “ロサンゼルス・ミミック”Los Angeles Mimic (ERD/LAM) の異名で知られるアメリカ国籍の白人男性 (1941年誕生-1984年没) でした。SCP-6455-Nはアリゾナ州ユマに住んでいた1960年に初めて殺人を犯しましたが、1965年にロサンゼルスに転居するまではそれ以上の犯行を控え、その後に連続殺人・暴行事件に着手しました。SCP-6455-Nは、彼と犯行を結び付ける決定的な証拠を無視、誤記憶、誤解させる微弱な反ミーム特性を帯びていました。この反ミーム効果は警察官や探偵に対して著しく強力に作用しました。

ユーセフ・サイードの証言
SCP-6455捜査主任
元 SCP反ミーム部門

俺たちが事件に関与する以前、ERD/LAMはこの国でも指折りの天才殺人鬼だと誰もが思っていた。ところが、実はSCP-6455-Nは決してそこまで頭脳明晰じゃなかった。ああ、確かに奴は9年間で53件の殺人を犯し、確認できただけでも16件の未遂がある — 連続殺人犯としちゃ上出来だよ — だが奴はとんでもないマヌケだった。逃げられたのは警察が手掛かりを結び付けられなかったからだ。

初めて奴の犯罪現場を調査した時のことは忘れもしない、財団があの事件と反ミームを関連付けた直後だった。俺はロサンゼルスに飛び、記憶補強薬でハイになって神経を尖らせていた。記憶補強薬は砥石のように感覚を研ぎ澄まし、俺は砂粒にさえ過集中する日々を送った。チームは4人編成で、ERD/LAMが残したどんな僅かな手掛かりでも見つけるために、犬の群れのような心境で臨んでいたよ。何かあれば見つけ出して調べ尽くすつもりだった。

家に入り、ドア横の小さなテーブルに目をやった。図書館の貸出カードがあったが、その時は別にどうとも思わなかった。だが、同僚の1人が覗き込んでみたら — それは家主の物じゃなかった。カードの持ち主を軽く調べたら、次の日にはERD/LAMが見つかったよ。話を聞きに行ったらすぐさま降参した。

奴は犯行現場に自分の貸出カードを置き忘れてやがったんだ。それも目立つ場所にな。警官はただそれに気付かなかった。あんなに長々と逃げおおせたのは、奴を取り巻く加護があったからさ。警官には特に効果があるという事実、それが更に奴を助けた。奴は何もかも運で、運だけで乗り切ってきたんだ。

SCP-6455-Nの手口は、被害者とその住居を長期間にわたってストーキングし、家を出入りする時間帯を割り出すというものでした。被害者は通常、同居人のいない未婚者でした。被害者が外出すると、SCP-6455-Nは侵入してその帰宅を待ち、拳銃で殺害しました。SCP-6455-Nは大抵、住居を占拠している間は被害者になりすまし、その生活を模倣してペットの餌やり、植木への散水、洗濯などの家事を代行しました。これらの行動から、メディアは当初SCP-6455-Nを“イーグルロック・ドッペルゲンガー”と、そして後には (ロサンゼルス市内のより広い範囲を攻撃し始めたため) “ロサンゼルス・ミミック”と呼ぶようになりました。

理解してほしいのは、SCP-6455-Nが杜撰だったということだ。想像を絶するほどに。奴は他人の家で何時間も過ごした。近所の人々に見られても、異常性のおかげで別人だと思われた。指紋は家の隅々まで付いていた — 奴は室内で手袋を嵌めたことが一度も無かったからな。俺は何度か、奴を侵入者だと悟った犬が噛みつき、その時に流れてカーペットに染み込んだ血痕を見つけることができた。警察はそれを無視した。少しも隠れていないのに、気付けなかったんだ。

奴は全ての犯行を成功させたわけじゃない。それは注目に値するが、だからといって助けにはならなかった。最終的にSCP-6455-Nを捕らえた時、俺は数少ない生存者の1人を訪ね、当時の状況を確認した。彼女は動揺しつつも話に応じてくれた。だが、彼女はSCP-6455-Nの顔や声を記憶していなかった。奴は当時マスクを着けていなかった。発砲して逃げる前に、目の前に立って彼女を見ていた。彼女は奴の顔をしっかり見ていたのに、思い出せなかった。

だからこそ彼女は動揺していた。彼女は奴を目撃していた — それもかなりよく見ていた。だが、それは役に立たなかった。彼女はどうして自分が犯人の顔を覚えていないのか理解できなかった。奴がどんな姿をしているかを知りたがっていた。

連続殺人の最中にマスクを着用しないなんて信じられるか? しかも、奴は被害者の前に姿を見せておきながら、死んだかどうかさえ確認しなかったんだぞ。俺にとっては不可解だが、逃げ切れると分かっていれば痕跡を消す必要は無いんだろうな。

SCP-6455-Nは、1976年に新設された反ミーム部門が発見した最初の反ミームアノマリーの1体でした。潜在的アノマリーの審査中、ERD/LAM事件は何らかの反ミームが関与している疑いがあると評価されました。犯人の行動様式は決定的な証拠を残す可能性が高いものだったにも拘らず (後に実際そのような証拠を残したことが判明) 、この事件では全く手掛かりが発見されていませんでした。ユーセフ・サイードをはじめとする反ミーム部門エージェントが、ロサンゼルス市警に潜入し、この殺人事件の捜査にあたりました。彼らはSCP-6455-Nの身元を速やかに突き止め、SCP-6455-Nは財団に捕獲されました。

SCP-6455-Nの正体が判明し、捕獲されたことは、一般大衆には公表されませんでした。

補遺A: SCP-6455の発生

SCP-6455-Nの捕獲から3年間、それ以上の事件は起こりませんでした。しかしながら、1979年、同一の手口による1件の殺人事件が発生しました。反ミーム部門が捜査に着手しましたが、強力な記憶補強薬の影響下でも証拠は発見されませんでした。

訳が分からなかった。そこに残されたのは、実質的に記憶補強薬抜きでも犯行現場で見つかりそうなものばかりだった。俺たちはまるで警察と同じ立場に立たされたようだった。証拠らしきものは驚くほどに欠落していた。

そこで俺たちは現場を隅から隅まで調べ上げ、見つけられる限りの断片的な痕跡に目を通した。俺たちはお互い、現場の何処かに実際の証拠があるはずだと主張し合ったが、結局見つからず仕舞いだ。今回は自分たちがパンチを食らう側じゃないか、何かが最強の記憶補強薬を凌駕しているんじゃないか、という不安に駆られた。ERD/LAMが二度と日の目を見ることなく独房で朽ち果てていくことを知りながらも、それは頭から離れなかった。

クラスZ記憶補強薬。効き目は最も強烈で、必ず死に至る。だが、あらゆる事を決して忘れなくなる。何人かのDクラスにそれを投与し、家の中で作業をさせた。目の奥で何か感じるものはないか? 忘却不可能な超高画質で視界に映り込まない物体はないか? だが、俺たちが気付かなかった手掛かりは糸1本たりとも存在しなかった。あのDクラスたちをSCP-6455の犠牲者に数えるべきだろうか? それとも、それは責任逃れにしかならないんだろうか?

結局、反ミームは無かった。証拠はただ消えていて、取り返しがつかなかった。何をやっても、その過程でどれだけ多くの命を犠牲にしても。

反ミーム的影響の欠如が明らかになると、エージェント サイードは様々な財団部門のメンバーで構成され、SCP-6455の捜査を唯一の任務とする合同機動部隊を指揮するため、反ミーム部門を離れました。この機動部隊では当初、犯行の継続を説明付けられる仮説が複数検討されましたが、いずれも重大な瑕疵があったために破棄されました。SCP-6455の勃発から10年間 (1979-1989年) に考案された、初期の有力な仮説の幾つかを以下に紹介します。

財団が最初に立てた説は、SCP-6455-Nが肉体的な到達範囲を越えて自らの影響を異常投射する新しい能力を自然に獲得したというものでした。この説はSCP-6455-Nの既知の異常性 (微弱な反ミーム効果) から導き出せるものではなく、またSCP-6455-Nは異常能力の働きや奇跡論に関する知識を持たなかったため、当初から不評でした。また、SCP-6455-Nの収容室を現実性固定チャンバーに変更してもSCP-6455は収まりませんでした。更に、SCP-6455-Nは新たな殺人事件について一切の知識を示しませんでした。

1984年、SCP-6455-Nが収容室内で自殺した時点で、この説は正式に否定されました — その後もSCP-6455事象が続き、この理論には問題があると推測されたためです。SCP-6455-Nが霊体化した可能性も一時疑われたものの、犯行現場にエクトプラズムや霊的干渉の痕跡が無いことから否定されました。

次に浮上したのは、SCP-6455-Nと同様の、しかしより強力な異常性を持つ模倣犯の犯行という仮説でした。そのような殺人犯が存在する場合、その時点で開発されていたどの記憶補強薬をも凌駕する能力を帯びていることになるため、この説も特段有力視されませんでした。この説はロサンゼルス、フェニックス、ラスベガスで同日に3件の殺人事件が発生した際に否定されました。反ミーム部門は、このように類似する反ミーム能力を持つ人間が同時に複数存在することはほぼあり得ないと結論付けました。

俺たちはそれを理解できなかった。10年以上も解明できなかった。俺は反ミーム部門の出身だが、この事件での経験から、合同機動部隊としてこの件だけを調査する特殊な任務に携わることになった。俺たちは財団の各分野から集められた精鋭中の精鋭で、UIUやGOCとも手を組んでいた。事件の真相を究明しようとした。

ただ… 先へ進むための手掛かりは何一つ出なかった。証拠は無い。ただ痛みと苦しみが続くだけだった。犠牲者は増え続けるのに、犯人は何処にもいなかった。そして勿論、一般大衆は奴の仕業だと知っていた。今でも知っている。奴の存在はかつて秘密でもなんでもなかったし、あの頃は隠蔽する価値すらないと思っていた。

新しい犠牲者が出る度に — 俺は葬儀や通夜に出席する。ごく稀に訪れる恐怖の鎮静期間を除けば、数ヶ月に一度だ。公人の立場に就いている機動部隊の一員が顔を出し、次こそ必ずERD/LAMを捕まえ、奴の何十年にもわたる恐怖の支配に終止符を打つと空約束をする。今度こそ解決してみせるとな。最も新しい犠牲者の親の顔を真っ直ぐ見つめ、その後は最も古い犠牲者の親に同じ話を繰り返す。いつまで経っても慣れやしない。

補遺B: SCP-6455の作業仮説

SCP-6455の発生に関する有力な理論が確立されたのは、SCP-6455事象が最初に顕在化してから12年後の1991年でした。財団内会議で、ユーセフ・サイードは経験豊富な叡智圏ノウアスフィア研究者のソロモン・ケラー博士に出会いました。ケラー博士は当時、叡智圏から物質圏への進出 — 即ち、物質圏に影響を及ぼすほど強力な/発展した叡智圏由来の思念体について研究を行っていました。

エージェント サイードは、ケラー博士の理論と殺人事件との関連性を検証するため、ケラー博士をSCP-6455対応機動部隊に招聘しました。ケラー博士の参加後初めて発生したSCP-6455事象の調査中、その可能性を裏付ける重要な証拠が発見されました — 犯行現場に残された証拠は、ケラー博士が提唱していた叡智圏からの干渉の残留物と一致していました。

ケラー博士の理論を支持する証拠が見つかったため、SCP-6455対応機動部隊は犯行に関与した思念体の調査を開始しました。その結果、叡智圏内に転移した複合思念体が発見され、SCP-6455の原因と断定されました。

あれは1991年のことだ。俺は常に機動部隊に加わる新人を探している — 新たな研究分野、俺たちが考えもしなかった新たな角度だ。いくら努力したって、それまでのやり方では埒が明かなかった。そこで、俺は誰もが参加するようなデカい会議に出席した。ある夜、バーで飲みながら、ソロモン・ケラーという名前の博士と話し合い、現場で起きている問題を説明した。この会話で何か収穫があるとは期待していなかった — 不満を吐き出す機会としか考えなかった。

彼は少し間を置いて“一つ考えがある”と言った。俺の分野は反ミームだ。物忘れに対処するんであって、記憶するのは専門外だった。ケラー博士は、俺たちの問題はERD/LAMの悪名、つまり集合的無意識における奴の存在感にあると考えた。彼は、自分をチームに入れて少し調査させてほしい、この事件に当て嵌まるかもしれない理論が幾つかあると頼み込んだ。

1週間。彼がチームに加わって1週間で謎は解けた。そして事態は俺たちの想像よりも遥かに深刻だった。

あの複合思念体は、ERD/LAMを軸とする恐怖心の集まりだ。SCP-6455-Nとの積極的な繋がりはない — 実際、俺たちが奴について知っている情報は一切含まれない。奴の犯行と、俺たちが奴を捕らえた後に起きた犯行だけに基づいている。その全てがあの思念体、事件の後もずっと人々の想像の中に居残っている正体不明の実体を構築した。

俺はずっと犯人を探し求めてきた。そしてようやく見つけてみれば、相手は生きているとは言い難かった。だが、この思念体が活発に維持されているとケラー博士が言った時は“やったぞ!”と思ったね。こいつを思い描いている奴らを捕まえればそれで解決するはずだった。

そこで問題が出来した。思念体は意図して維持されてはいなかった。犯人を思い描いたのは犠牲者の親族だった。もう少しで逃げられそうだった犠牲者たち。十数人の生存者たち。俺と機動部隊。俺たちが犯人を捕らえようと注目してきた焦点、何処にも行き着かない永遠に続く狩り。俺たちは怯えていた。その怯えが蓄積されて、この怪物を形作ったんだ。

ケラー博士の研究は、SCP-6455-Nが公的に逮捕されなかったことによる未解決のトラウマがSCP-6455の発生原因であるという結論を導き出しました。財団がSCP-6455-Nを捕獲した際、その周辺情報を開示せず、また逮捕を公表しなかったことから、SCP-6455-Nは依然として野放しだと信じられていました。初期のSCP-6455殺人事件はこの考えを補強し、SCP-6455-Nがまだ活動しているという観念を定着させました。

SCP-6455事象を引き起こす複合思念体は、その後、SCP-6455-N自身から概ね分離しています。SCP-6455-Nに関する情報は一切公開されていないため、一般社会におけるERD/LAMの概念は、彼の実際の特徴よりも、彼が犯した殺人事件だけに基づいています。また、再帰的な特徴も発達しました — 2022年現在、この思念体はSCP-6455-Nよりもそれ自体の犯行の影響を遥かに強く受けています。

更に、ERD/LAMに関する実録犯罪メディアが憶測を広めることによって、複合思念体の性質は悪化しています。この種のメディアはSCP-6455-Nに関する俗説を誇張し、複合思念体の規模と影響範囲を拡張します。SCP-6455事象の範囲、規模、手口は、SCP-6455-Nによって行われた本来の犯行パターンよりも広範囲に及ぶようになりました。

補遺C: 現状

ソロモン・ケラーの証言
SCP-6455捜査助手
SCP叡智圏部門

さて、次に打つべき一手は何か、とお思いでしょうか。殺人鬼は見つかったが、我々はどうすべきか? 過去、現在、そして未来の犠牲者をどのように救えばいいのか? 収容の問題はひとまず忘れて — とは言え、完全に見当違いな話題ではないのですが — 支援、助力という観点から軽く話しましょう。どのような手助けができるか。それが、私たちが踏み出すべき最初の一歩です。

結局のところ、これは我々自身の落ち度です。我々こそがこの混乱を引き起こしたのです。

実を言えば、できる事はほとんどありません。

例えどれほど望んだところで、過去に遡ってこの不始末に繋がった問題を解決することはできません。財団が1976年にERD/LAMを捕獲した時、我々はそれを誰にも告げませんでした。ベッドに潜り込んで震えるのを止めても問題ないのだと、一般社会に呼びかけませんでした。誰も自分たちが安全だと気付きませんでした。恐怖は残った。痛みは消えなかった。

そして我々は今、ERD/LAMが残した傷痕が、40年後も依然として生々しいことに気付きました。そればかりか、彼は未だに傷を残し続け、墓の向こう側から暴れ回っています。ええ、厳密には彼ではありません — しかし、あれは彼の遺産であり、彼の形に、彼の印象に従って生み出されました。

正直な話、私にはもう収拾がつくとは思えません。ERD/LAMをずっと前に捕まえたという事実は公表できません。もう何十年も経っていますし、我々は最初の一手でそれを隠蔽した。思念体を殺すことが可能な、財団にとっては唯一の銀の弾丸ですが、その選択肢はありえません — ヴェールの維持に束縛されている我々には、それを考慮する余地すら無い。

かつて我々はそうしようと試みました — 少なくとも部分的にはね。死刑囚監房から1人のDクラスを引き抜き、薬漬けにして記憶を破壊し、最近起きた数件の殺人事件の犯人に仕立て上げました。全てを彼の仕業にはできませんでした — SCP-6455による殺人の幾つかは両立せず、人間が双方の責任を負うことはできないからです。最初は上手くいきました。殺人は徐々に減り、やがてSCP-6455事象無しの2年間が過ぎました。しかし、人々は気付きました。“ちょっと待てよ、逮捕された容疑者が同じ日にロスとベガスで2人を殺すなんてあり得ない。別の犯人がいるはずだ”。そして思念体は咆哮と共に息を吹き返しました。

思念体の力を削いで痛めつけるという方法もありますが、何処から着手すべきでしょう? アメリカ史上最悪の連続殺人犯の記憶を大衆の意識から消し去る? 有名な実録犯罪記録を揉み消す? 私が最後に確認した時には、この連続殺人だけを題材に扱う人気のポッドキャストが1ダース以上存在しました。ERD/LAMに関するドキュメンタリーは6本あり、来年にはHBOで新作が公開予定です。そのどれもが苦痛を呼びます。

被害者たちの記憶を消し去る? 彼らにトラウマを抱えさせたまま、その理由も分からない状態にして放置するのですか? 1979年の時点ですらこの惨事を引き起こすのに十分だったというのに、今では当時よりも多くの犠牲者が出ています。我々はどうすればいいのでしょう?

傷が癒えるのを防ぐためにあらゆる手段を講じ、そこから血が流れ出るのを見て衝撃を受けたかのように振る舞っている我々に、いったい何ができると言うのですか?

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