Info
翻訳責任者: FattyAcid
翻訳年: 2024年
原題: SCP-6519 - The Spirit in the Sky
著作権者: HarryBlank
作成年: 2022年
初訳時参照リビジョン: rev. 19
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-6519
推定されるSCP-6519ベクター。
特別収容プロトコル: SCP-6519の存在を実証するため、遭遇者の証言がサイト-43 分光・分霊分析セクションによって収集されます。ヴェールに対する重大な脅威をもたらしていないため、現時点ではそれ以上の収容活動は展開されません。.Etherクラスは、その存在の根拠が遭遇者による未検証の証言のみであるアノマリーに割り当てられます。
説明: SCP-6519は、最近死亡した人物がラジオ放送に干渉し予定外の内容を挿入する現象であるとされています。全ての事例で、影響を受けた放送を監督する責任者は、事象の進行中/集結後の両方において異常現象の発生を認識することができません。挿入される内容は、全ての事例において、既存の単一の商用音楽トラックです。この現象には必ず、死亡した人物を想起している最中の1人以上の生きた対象が遭遇しており、最も一般的には葬儀の式典の間に発生します。
補遺 6519-1 調査: SCP-6519の資料は、分光・分霊分析セクション主席であったアナスタシオス・マタクサス博士によって、2020年のハロルド・ブランク博士との偶然の会話の後に編纂され始めました。ブランク博士は、自身が経験した潜在的に超自然的な再発性イベントについて説明し、これはそれ以降に記録された他の全ての現象のテンプレートとなりました。マタクサス博士はその後、アーカイブ資料で他の死後メディア干渉への散発的な言及を発見しましたが、更なる研究に従事できないままに退職を迎えました。関連する資料は彼の後任であるポリクセニ・マタクサス博士に引き継がれ、サイト-43職員を対象とした予備的な証言の収集がなされました。
| 43NET: SCP-6519事象目録 [選定済/未分類] |
|---|
| RAISAより通達: 以下の43NETリクエスト内には、独自のセキュリティクリアランスレベルと背景コンテキストを持つ既存のSCPデータベース記事とクロスリンクする項目が5つ含まれています。RAISAオフィスの見解では、SCP-6519に関する十分な理解は、これらの項目にアクセスすることなく得ることが可能です。 |
|---|
| 対象: ハロルド・R・ブランク博士、記録・改訂セクション (主席) | 楽曲: 「Spirit in the Sky」ノーマン・グリーンバウム (1969年) |
|
証言: 「最初の遭遇については、ぼんやりとしか覚えていない。恐らくは、後になってから母が話していたのを覚えているだけなんだろう。私は母のバンの後部座席に座っていて、曽祖母の葬列にいた。ほら、知ってるだろ、いくらかの車が列になって霊柩車の後を付いていくやつさ。今でもそんなことをする人がいるのかは知らんがな。その時、母はラジオをつけていた — うちの母はいつでもラジオをつけていた。そしたら、すぐに例の曲が流れてきた。遠くから響くホルンの音は、まるで夜に大きな黒い湖を渡っているかのような、この世のものとは思えない音で、その後にゴスペルロックが始まった。死に対する、かなり楽観的な解釈だ。来世は良いものだという長く続く保証が存在し、そこには誰かさんが先に行って待ってる。その人は前もって君を同じ場所に推薦してくれているから、君の番が来たときには、君のための場所が用意されている、ってな。ありがちなクリスチャンの定型句だが、非常にキレのいい曲でもあって、いつまでも続く感覚を与えてくれる…… 見せている以上に多くのことを知っているような、宇宙の秘密に通じているような、誰も聴かない一発屋のミュージシャンとは別物なような、そういう感覚をだ。それは間違いなく母に大きな影響を与えたはずだ。母が実際、これを祖母の別れの言葉だと思ったかどうかは分からないが、そう捉えたがっていたのは理解できる。母はその話を飽きることなく語って聞かせた。特に…… ああ、そうだな。知っての通り、私の個人的な宗教的信念はそれと違う。私の知る限り、母も違っていた。だが、何か不気味なことが起きているという点では同じ見解を持っていた。というのも、それから何年も経ってから、また同じことが起こったからだ。その時は、母は1人で病院に向かっていた。私の祖母が — つまり彼女の母が亡くなった直後で、例によってラジオをつけていた。するとグリーンバウム氏が再びやって来て、大丈夫だと伝えてきたんだと。母は家に帰ってから私にそのことを話してくれて、私はそれを信じた。今でも信じている。なぜなら…… そう。さらに10年ほど時を進めよう。私が病院から家に車で帰る途中のことだ。その日、私の母は…… そうだ。この仕事をしていると、何度も胃の底が抜けるようなショックを受けるが、同時に心臓が飛び上がるようなことってのは滅多に無い。それまでに見てきた奇妙なもの全てを経てさえ、もう一度、あの遠くから響くホルンを聞く心構えはできていなかったんだ。それでも、その曲が聞こえてきたときには、本当に嬉しい気持ちになった。嗚咽を止め、それを心に染み込ませる時間があった。私を泣かせるのは、相当難しいんだぞ。自分は涙を出すのが下手くそだし、ゴスペルロックは普通、琴線にかするジャンルじゃない。それでも…… な。母がまだどこかにいるのかは分からない、だが心のどこかで、いて欲しいと思ってしまうのも当然だろう。そして、母は今…… 幸せなのだと信じたい。だから、私にはバイアスがかかっている。これが現実のことであってほしいと思っているから、そのせいで私はあまり信頼できる情報源ではない。だが、記録・改訂の界隈でよく言われることがある。曰く、"1回は奇妙、2回は不思議、3回はデータ" だと。私の思っている限りでは、曽祖母と祖母と母は、彼女らが実際どこへ行ったにせよ、全員が家に電話をかけて、自分の無事を知らせてくれたのさ。」 |
|
| ブランク博士は、私が「秘奥蓄積 (esoaccumulation) 」と呼んでいるものの典型的な事例です。これは、幼少期に異常な現象に遭遇した人が、時が経ってもそれを経験し続ける傾向のことです。この特徴が、私の前任者に、この話にはもっと深い何かがあるかもしれないと確信させました。あくまで私の考えですが、彼は正しかったと思います。 [P. マタクサス博士] | |
| 対象: ウド・A・オコリー博士、応用隠秘学セクション (主席) | 楽曲: 「Love The One You're With」スティーヴン・スティルス (1970年) |
|
証言: 「私は…… 2002年に、とても親しかった人を亡くした。その時、私は多くを失った。私が持っていたもの全てを…… ね。当時を思い返すと、私は、自分の幸福のチャンスが完全に吹き飛んでしまったのだと思っていた。彼は私の求める全ての条件を満たしていて…… 同じような人にもう一度巡り会うのにどれだけの行動が必要かを思うと、それは余りに重すぎたんだ。私は何日も眠り続け、友人を避け、仕事に支障が出て、完全に消耗しきっていた。そして…… ある夜、心にモヤを抱えた私は、それをかき消したくて、ラジオをつけた。押し流すために、大音量で……。その直後に、この曲が流れた。ギターと指パッチンの奇妙な集まりが、訥々とした歌声と、ぎこちないハーモニーへと溶け合っていく。拙いけれど心からの歌に思えて、そのまま聴くことにした。共鳴したんだよね…… まるで、曲自体が何かを克服しようと進んでいるような感じがした。私がそうであるようにね。そしてきっと、どうすれば一緒にやっていけるかを見つけることができた。どこか不完全な曲だったけど、むしろ、それこそが根幹なんじゃないかな? "最善は善の敵" なんて格言もあるし。それは単なる音楽で、歌詞は…… ええ、メッセージだった。ただ、そうでなければならなかった。"状況がどれほど悪くても、その中でのベストを尽くすことはできる。挑み続けよう。自分をさらけ出そう。挑戦しよう。素晴らしいものを失っても、別の良いものまで諦めることはない。あらゆる方向に二度目のチャンスが待っている。だから、君がすべきことは…… とにかく動くことだ" と。それで私は動くことにした。そしてどうなったか? そこには何かがあった。それ以来、私は動き続けているんだ。」 |
|
| 死亡から時間が開いて起きた、数少ない例の一つです。外れ値かもしれませんし、そもそも無関係な出来事かもしれません。いずれにせよ、対象は関連性があると信じていますし、我々は未だどんな解釈も捨てられる段階ではありません。 [P. マタクサス博士] | |
| 対象: アラン・J・マッキンス博士 (管理官) | 楽曲: 「The Land of Make-Believe」ムーディー・ブルース (1972年) |
|
証言: 「この曲を演奏しているバンドは、私と — そして私の母と同じく、イギリス人だ。私は、母が死の床につくまでイギリスに帰らなかったので、自分のカバーストーリーの維持は簡単だと思っていた。だが驚いたことに、母は私がいない間に事実をほとんど推測していたのだ。当時の母の状態を考えると、それ以上ごまかす意味はほとんどないように思え、私は母の最期の時にその推測が真実であることを告げた。君も知っての通り、これは一切、プロトコルに違反するものではない。私が母に話したことは、その後の楽曲挿入事象に間違いなく影響を与えただろうが、そこには私が伝えなかった詳細も含まれていたようだった。これは、死者がある種の拡張的知性、あるいは全知を享受していることを示唆しており、それはヴェールの維持において問題となる可能性がある。話を戻そう、「虚飾の世界The Land of Make-Believe」の歌詞は、自分自身の現実を認めようとしない幻想の世界の住人に宛てられたもので、彼らが個人的な困難を乗り越えて幸福を見出す可能性を強調している。この幻想の国は、どうやら不当に広い空間を占めているらしいが — この文脈においては、我々の収容施設が先住民の土地の地下にあることを示すコード化された言及だと考えられる。これは私が共有しなかった詳細の一つだ。加えて、財団が異常な世界の周囲に張り巡らせた網がますます大きくなっていることについての言及でもあるかもしれない。曲中では組織の秘密主義という概念が持ち出され、他の人々が光の中で死ぬ一方で暗闇で生きるという観念をかなり強くほのめかすが、歌い手はそれらを心から拒否する。幻想の中を生きる者たちが心の中で希望を育み、それを宇宙に表現し、それが開花するのを見るだろうという楽観主義が表現される。そして、鍵とシャッターを開けて光を取り入れ、空想と現実の境界を破壊して秘密のない世界を創造するようにと激励する。このプロセスに参加することで、歌の主題は — 恐らく私自身は、アセンションを果たすことができる。最後に歌い手は、聴衆がこのメッセージをより広い世界に伝え、普遍的な愛に身を委ねることを求める。全体的な示唆は、明らかに、合意正常性の終焉だ。個人的には、この特定の寓話を表現するのに、この曲が有用であるとは思わない。あまりにも直接的な比喩であり、本来のメッセージの概念的な曖昧さがかなり損なわれているからだ。」 |
|
| 流石はコミュニケーション博士だな。 [H. ブランク博士] | |
| 意味のないコメントは控えてもらえるかな、ブランク博士! [P. マタクサス博士] | |
| 実際、私はコミュニケーション学の博士号取得者で、PhDと書いてもいい (君も知っての通りだが) 。 [A. マッキンス博士] | |
| 対象: カレン・T・エルストロム博士、管理・監督セクション (主任) | 楽曲: 「End Of The Line」トラヴェリング・ウィルベリーズ (1989年) |
|
証言: 「継父の葬儀のとき、教会の外は交通渋滞でした。暑さのせいか扉は大きく開かれていて、クラクションや野次は聞こえなかったのに、停車した車のカーラジオからこの曲を大音量で流しているのだけが聞こえてきたんです。それは弔辞よりも大きな音でした。ギターの音は暗闇の中に差してきた日光のようで、鐘のように明瞭でした。恐らく、エアコンのない車で、窓が開けられていたのでしょう。この曲からは、一度にたくさんの有名な声を認識できたので、有り得ないことに思えました。まるで現実世界には存在し得ないバンドのように。ディラン、ロイ・オービソン、そして少なくともビートルズの誰か1。それが、私がこの曲を覚えている理由の一つです。もう一つの理由は、最初の車がようやく青信号になって出発した後、すぐに同じ局に合わせられた別の車が止まったことです。」 |
|
| 「End Of The Line」は、自分ではコントロールできない物事を受け入れ、一連の価値観と理想に従って人生を生き、強い性格を表現し、愛に身を委ねることについて歌っています。 [P. マタクサス博士] | |
| メロディーがとても心地良い曲でもあります。 [K. エルストロム博士] | |
| 対象: ウド・A・オコリー博士、応用隠秘学セクション (主席) | 楽曲: 「Forever Young」ロッド・スチュワート (1988年) |
|
証言: 「今どき、ラジオなんか誰が聴くんだろうね? でもハリーが彼のお母さんの話を聞かせてくれたおかげで、私も過去にこのイベントに遭遇したときのことを思い出して、きっと…… そう。そして実際、上手くいった。ちゃんと話せるかどうか…… 分からないけど、さ。この歌を聴いたことはある? ああ、曲名は言わせないで、それだけでも…… ごめん。聞いたことはあるんだね……? 良かった。想像してみて、もしあなたの…… あなたの両親の一人が…… うん。彼は私に、誇りに思っていることを、今も私と一緒にいることを、知ってほしかったんだろうね。それは…… ずっと変わらないこと。永遠のことなんだ。」 |
|
| 対象: トレバー・ブレンメル博士 | 楽曲: 「Stolen Moments」ジム・ウィッター (1993年) |
|
証言: 私はカントリーミュージックが好きじゃあない。ポップ・カントリーはもっと好きじゃない。もっと嫌いなのは他人との交流で — それとガジェット趣味だけが、私と父との数少ない共通点だった。父には父の、私には私のものがあって、その2つが出会うことは決して起こらなかった。2人のどちらも、そのことについて熟考できるほど、長く機械弄りの手を止めたことは無かっただろう。だが…… 父が亡くなったとき、私は選択の余地なくそうすることになった。私の年齢では、"遺族" になると1週間の休暇を取るように強制されるんだ。それで、その1週間はサイトを歩き回っていた。なぜって、じゃあ一体、他に何ができたって言うんだ? 今のは馬鹿げた質問だったが、まあ正直、他にやるべきことが思いつかなかったんだよ。葬儀の直後、助手のオフィスからあの歌が聞こえてくるまではな。白黒はっきりした言い方をするなら、つまり、チャンスは二度と戻ってこないということだ。子供の頃、両親を避けて無駄にした1分1分は、永遠に失われる。だが、もし自分に子供がいるんなら、別の立場からの再演がもう一度だけある。またしくじるか、変化を起こすか、決めなければならない。私は変化を起こすことにした。何某さんを解雇して、その日のうちに、そいつの仕事をジョアンナに譲ったのさ。」 |
|
| 「幽霊がそうするように説得した」というのは、人生で一番興味深かった退職書類の内容でした。 [P. マタクサス博士] | |
| 本当に? それはブレンメル博士が誰かを解雇した理由の中では、特別に興味深いものではありませんね。 [K. エルストロム博士] | |
| 「Stolen Moments」はポップ・カントリーじゃあないだろう、心の無い俗物め。 [H. ブランク博士] | |
| 対象: イグナーツ・T・アフテルベルグ博士 (記録・改訂セクション) | 楽曲: 「Goodbye Stranger」スーパートランプ (1979年) |
| 証言: 「うちの妻のユーモアのセンスってやつが、よく分かるでしょう。」 | |
| 対象: アメリア・O・トロシヤン、清掃・保守セクション (主任) | 楽曲: 「How Can I Help You Say Goodbye」パティー・ラヴレス (1994年) |
|
証言: 「母が亡くなったとき、私は大丈夫だと思っていた。もちろん良い気分にはなれなかったけど、大丈夫ではあった。世の中には、あらゆるサポートがあった。カウンセリングを受けれたし、専念すべき仕事もあった。なんとか乗り越えていると思っていた。もちろん、頭や胃が痛むこともあったし、眠れないこともあったけどね。でも、葬儀場から車で帰宅しているとき、それはついに私の元にやってきた。まるでトラックが衝突してきたような衝撃だった。フィル.フィリップ・E・ディアリング技師。トロシヤン主任の夫。がつけていた車のラジオから、あの曲が…… そう、まるで爆弾のように炸裂した。あの時の私のようにならずに、あれを聴ける人がいるってのは信じられない。私は、道路の上でボロボロ涙を流しちゃったの。実際、高速道路を走っている時の出来事だった。フィルがどれだけ早く車を止めたか、あなたにも見せたかったな。きっと、私が心臓発作か何かを起こしたと思ったんだろうけど、それは…… あながち間違いでもなかったかもしれない。本当に。だけど、ああ、正にあの崩壊こそが、私に必要なものだった。もし私があのまま "大丈夫" を続けていたら、きっと私は、決して良くなることはなかった。私には、あのカタルシスが必要だったの。"より良くなりたいなら、まず一度悪くなること" って言うけれど、あの時の事は、それを実行する最も穏やかな方法だったと思う。あの曲はまるで、母が私に直接話しかけているように感じられた。彼女は、私がまだ母を必要としていることを知っていると告げて、私に…… しばらく崩壊したって大丈夫だと言ってくれた。赤ん坊のように泣きじゃくるのに、年齢は関係ないと。たとえ…… 彼女がその時どこにいたとしても、母はまだ私を助けたいと思ってくれていた。本当に、それを知れただけで私は助けられたの。」 |
|
| ご冥福をお祈りします。 [P. マタクサス博士] | |
補遺 6519-2 潜在的確証: 2022年にアナスタシオス・マタクサス博士が自然死した後、後任のポリクセニ・マタクサス博士は、この出来事を利用し、結果として生じるSCP-6519事象の分霊分析を行うことを提案しました。彼女が葬儀に出発する前に、彼女の個人車両に15台の高感度測定機器が取り付けられ、地元の放送局における異常活動を監視するために研究者が派遣されました。マタクサス博士の車両における音声記録の書き起こしを以下に掲載します。これは、結果の最終報告が提出されるまでの代替的措置です。最初の分霊測定データはコンパイルされ、現在、解析待ちです。
予備的事象記録
記録担当者: ポリクセニ・マタクサス博士 (分光・分霊分析セクション主席)、マリ・ワッタナー博士 (分光・分霊分析セクション副主席)
<記録開始>
マタクサス博士のカーラジオ。
[非異常性の音楽が流れている。].現在82.5%完了している波形分析に基づきます。音楽が非異常性であることは、分霊分析における測定値 ("ランディ値") がベースライン現実の背景異常度に対し、高くも低くもない状態であることとして定義されます。
ワッタナー博士: 本当にこれで上手くいくと思ってるの、ポリー?
マタクサス博士: アノマリー指定が公式かどうかはともかく、ラジオはつけておこう。データは取れた方がいい。
ワッタナー博士: そのデータってやつが実在するんなら、だけど。いや、馬鹿にしてるわけじゃないけどさ。
マタクサス博士: そんなの気にしない。君が皮肉屋なのは公然の事実だ。
ワッタナー博士: 誤解しないで欲しいんだけど、もしこれが本当だとしても、私の今まで経験した奇妙な心霊現象のトップ10にも入らないよ。この現象はあまりにも……
マタクサス博士: 続けて。
ワッタナー博士: いや、ちょっと不適切な物言いだから。
マタクサス博士: ワッタナー博士、発言を続けてください。
ワッタナー博士: 急に上司モードになるのはズルくないかな。うーん…… ええと、この現象は、あまりにも安易で都合が良すぎるんだ、分かるよね? 遭遇したと言ってる人たちは皆、それが起きることを望んでいた。
マタクサス博士: パターンを探していないのなら、それを見つけるのは至難の業だよ。
ワッタナー博士: 逆に言うと、探していれば、存在しない "パターン" を見つけるのも簡単ってこと。ポリー、それが人間の脳ってやつさ。脳はパターン認識を好む傾向にある — それも相当極端な傾向に。私が思うに、この現象が喜ばしい偶然以上のものだと示すのに十分なデータはない。もしこれが本当なら、今持っているよりもはるかに多くの事例が見つかるはずだし。
マタクサス博士: オイラー事案では納得できなかったかい?
ワッタナー博士: 影響を受けた放送局は以前、VKTMに1か月間占拠されていたことがあった。だから知っての通り、あの件はミームの相互汚染で説明できる。
マタクサス博士: では、オコリー事案は?
ワッタナー博士: 私は、コルベニクから発信されたなんていうメッセージはどれも信じるつもりがないから。特に、意味のあるメッセージは。
[マタクサス博士がため息をつく。]
マタクサス博士: 恐らく、この事象は毎日、何度も起きているんだろうさ。だけど、ほとんどの人が君と同じく懐疑的だから、私たちはその報告を聞くことがないんだ。
ワッタナー博士: あなたも私も、世間のほとんどの人が騙されやすいバカだって知っているわけじゃん。彼らはこのアイデアを鵜呑みにするんじゃないかなって…… 繰り返すけど、本当に悪気はないからね。
マタクサス博士: 私たちは、信じたいんだよ。
ワッタナー博士: そうだね。もし分霊分析で何か良い結果が引っ掛かれば、財団全体を調査する許可が下りて、それで何か見つかるかもしれない。
マタクサス博士: 私はただ…… ううん。
ワッタナー博士: 何?
マタクサス博士: 副次クラス: Ether、うちが扱ったファイルの半分くらいにそう書かれてる。これを心霊現象に割り当てる標準的なクラスだと、皆そう思い始めてるんだよ、マリ。たまには本物の証拠が見つかって欲しいんだ。
ワッタナー博士: 証拠はいつでも手に入る。あなたが見た納屋の幽霊とかね?
マタクサス博士: 納屋の幽霊を見つけた功績だけじゃ、女は生きていけないよ。それに…… 君も知っての通り、私はこれが真実であることを願っているのさ。
[楽曲が流れ続けている。]
マタクサス博士: 彼のためにね。
[ワッタナー博士がため息をつく。]
マタクサス博士: マリ、君はまだ胸の内を吐き出せていないようだけど?
ワッタナー博士: そう言うことじゃなくて—
マタクサス博士: 吐き出しちゃいなよ。
ワッタナー博士: あー、その、これは…… 少し不自然なところがないかなって。
マタクサス博士: 技術的な問題かい?
ワッタナー博士: いや違う。ごめん、私が言いたいのは、その……。オーケイ。記録された霊的介入の事例には一つたりとも、怒りや非難の曲をラジオで流すというものは無かった。性的なものさえ無かった。流れる曲はいつも気分を高揚させるものか、酷い場合でも、カタルシスや警告的なもの。結局、私たちが見たいものを見ているだけだとしたら? つまり、皆が聞きたいものを聞いて、聞きたくないものは聞いていないのなら? そして、関係のある曲が聞こえなかったり、好きではない曲が聞こえたりした場合には、それをメッセージとして捉えられないから、パターンのように見えているだけだとしたら?
マタクサス博士: 確かに、それも一つの可能性だ。
ワッタナー博士: もっと良いアイデアがあるって感じ?
マタクサス博士: まあね。なぜゴーストたちが平和と希望のメッセージばかり発信するのかについて、私は別の説明を考えているし、そっちの方が気に入っている。
[楽曲が終了する。]
ラジオ番組の司会: マザー・マザーで「The Sticks」でした。まだまだ続きます、FM96.5 ノンストップ・ミュージック・ミックス「The Vibe」。
[次の楽曲が開始する。].分析待ち (2/2)
[マタクサス博士が笑い声を発する。]
マタクサス博士: 父さんだ。
ワッタナー博士: 知ってる曲?
マタクサス博士: 知らないのかい、君? これは父のお気に入りだった、ジャーニーの1981年の曲。
[楽曲が流れ続けている。]
マタクサス博士: 「Don't Stop Believin'」— 信じることをやめないで。
<記録終了>
最終的な分霊分析の結果は現在解析中です。
« Two Two Two Two Two | 力と毒の言葉 | SCP-6643 »


