SCP-6523

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DAMOCLES
INITIATIVE
Sic itur ad astra
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 アイテム番号: SCP-6523

オブジェクトクラス: Thaumiel

レベル4/DAMOCLES

最重要機密指定

特別収容プロトコル

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SCP-6523のCG表現。詳細を省いた設計図を元にコンピュータで生成された。

SCP-6523の指揮権は、財団 星間収容部門と世界オカルト連合 (GOC) 星間脅威対応機動部隊の両者により共有されており、GOC決議523号及び監督指令TAROT MARTELにより設立された独立機関ダモクレス・イニシアチブの包括的支援下にあります。

SCP-6523及びダモクレス・イニシアチブの統制は、星間収容部門 管理官、星間脅威対応機動部隊 指揮官、ジョワユーズ艦長からなる、三者管理評議会 (TCC) によって行われます。

SCP-6523がファーポイント基地を出発した後、TCCは監督評議会、108評議会及び地球上のあらゆる国家の集合体を代表して行動する完全な権限を付与されます。この時点以降、SCP-6523やダモクレス・イニシアチブとのコンタクトは不可能であると想定されています。

GOCのPSYCHE部門は、地球上における情報抑制キャンペーンを支援する責任を負っています。国家的・国際的な宇宙機関、学術的な天文学プログラム、営利的な民間宇宙事業に所属する特別オブザーバーに、SCP-6523や関連する異常現象がヴェール外の人物・団体によって検出・公開されることを防ぐ任務が与えられています。

財団のWATCHDOG監視ネットワークは、アマチュア天文学者によるSCP-6523の目撃を特定・検閲する任務を割り振られています。ただし、SCP-6523の電磁放射プロファイルを考慮すると、そのような発見がなされる確率は極低いものです。

SCP-871とSCP-786の収容プロトコルは、ダモクレス・イニシアチブの常時任務に組み込まれています。

修復不可能な壊滅的な障害が発生した場合、SCP-871の全実例は1つの塊に纏められ、重力崩壊を引き起こすためにSCP-786に繰り返し通されます。

説明

SCP-6523は星間航行船ジョワユーズです。現在はアルラ・ボレアリス1への航路の途上にあり、400年後に到達すると予測されています。

     経緯

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小惑星 (532) ヘルキュリナの写真。プロメテウス研究所のアーカイブ資料から取得された。

ダモクレス・イニシアチブの設立以前、SCP-6523は小惑星 (532) ヘルキュリナの軌道上に位置する未収容の異常オブジェクトでした。このオブジェクトは未完成の星間科学研究船であり、プロメテウス研究所の有人宇宙飛行計画 "プロジェクト・ダイダロス" のために設計されたものでした。

船の建造は1996年に開始されたものの、技術的な問題及びプロメテウス研究所が抱えていた経営上の困難を背景として、計画は1997年に打ち切られました。この時点で、上部構造および船体外郭の大部分は完成していましたが、内部システムは未設置でした。1998年のプロメテウス・コングロマリットの解体により、ヘルキュリナの研究施設は退去し、船体は未完成のまま放棄されました。

プロジェクト・ダイダロスに関するデータや資料は、プロメテウス社の解散に伴う資産買収の一環として財団が入手したものです。2

指令TAROT MARTELに基づき、この船はダモクレス・イニシアチブが使用するために選ばれ、SCP-6523として指定されました。GOCとの協力の下、船を制御し、ジョワユーズへと改造するための収容・回収作戦が開始されました。

     設計

プロジェクト・ダイダロスの当初の宇宙船設計は、ダリウス-スミ・シンギュラリティ・ドライブと呼称される、崩壊するマイクロブラックホールから発生するホーキング放射3を利用する先進的な光量子推進機構を中心としたものでした。プロジェクト・ダイダロスの最初期の提案によれば、質量675000メートルトンのブラックホールで平均1gの連続加速が可能であるとされていましたが、この数字は誤りであった、あるいは過度に楽観的なものであったことが判明しました。

プロメテウス社のエンジニアらは最終的に、プロジェクトにはより巨大なブラックホールが必要であるが、それに伴って寿命が長くなり、出力が低下するため、加速度が大幅に低下し、航行に要する時間が長くなるという結論を出しました。プロジェクト責任者は、乗組員を冷凍保存することで超長時間航行の問題を回避できると考えていましたが、最終的には必要な人体冷凍保存技術の改良が実現不可能であることが判明しました。

プロジェクト・ダイダロスで選択された性能パラメータは、ダモクレス・イニシアチブには不十分と判断され、元の設計に大きな変更を加える必要が生じました — 特に、ジョワユーズはより高い加速度を維持する必要がありました。これを実現するため、ダリウス-スミ・ドライブに高い出力と短い寿命を持つより小さなブラックホールを使用しました。

ブラックホールの消滅を防ぐため、SCP-8714SCP-7865から派生した質量再供給システムが構築されました。これはホーキング放射による損失を補うためにブラックホールに質量を追加投入し、その大きさと出力を一定に保つシステムです。

加えて、多くの艦船システムをコンパクトな亜空次元内に配置することと、奇跡術を用いて特定の構造要素の有効質量を削減することによって、性能の向上を実現しました。

     人員

ダモクレス・イニシアチブに配属された全人員は志願者です。

乗組員の選定プロセスは、以下の因子を元に行われました。

  • 年齢ジョワユーズの任務は長期に渡り、恐らく無期限です。従って、若さは有利に考慮されました。乗組員の大多数は26から35歳の間です。
  • 技能 — 有用な分野での技能習熟が全乗組員に要求されました。ほとんどの人員が複数の科学的・学問的分野に精通し、多くが超常的な能力や専門知識を有します。
  • 人格 — 任務の遂行には、乗組員同士の長期的な社会的結束が不可欠です。心理テストにおいて、協調性や共感性が高いことが好ましいとされました。
  • 必須性の無さ — 収容や正常性維持の継続に必要不可欠と判断された人物は、選考の対象から外されました。
  • 関係性の無さジョワユーズの乗組員は、地球に戻ることはありません。地球に家族やその他の人間関係を持たない人材が優先されました。

ヴェールについての予備知識あるいは異常存在への慣れは、有用ではあるものの、要件としては余りにも限定的であると判断されました。このような背景から、財団外からの大規模な採用が行われました。こうして選ばれた人員の大部分は、財団の一般的な採用ルート15に由来しますが、その多くは、過去に不採用となった者を含め、財団による雇用を考慮されることのなかった人物でした16

ジョワユーズの改造中、乗組員全員が集中的な加速訓練プログラムを受けました。この訓練は、恒星間航行に必要な全ての技術を習得させるだけでなく、新人を肉体的・精神的な限界に挑戦させ、厳しい訓練に耐えられない者を排除し、残留者に仲間意識を植え付けるためのものでもありました。

この訓練を受けた約1000名のうち、最終的に合格して星間収容部門に配属されたのは250名弱でした。

同様の人員選定・訓練プログラムはGOCでも行われましたが、その人員の大部分は加盟組織から内部採用されました。

星間収容部門

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機動部隊プサイ-1 ("レッドシャツ") の徽章。

ダモクレス・イニシアチブの財団派遣隊は、ジェシカ・フォーダイス管理官17の指揮の下、星間収容部門として組織されています。この部門の最も重要な役割は、サブシステム "アントワネット" の保守・運用ですが、一般的な技術的・科学的な業務の大部分も引き受けます。機関長の宋 榛浩ソン・ジンホ博士18がこの部門所属であることは、この事実を反映しています。

また、三者管理評議会が必要と判断した場合、任務中に遭遇した異常物体の収容も委託されます。

軌道上及び地球外環境での作戦を専門とする機動部隊プサイ-1 ("レッドシャツ") が、アントン・オルロフの指揮の下、部門内に常設されています。MTF プサイ-1は、本部門の唯一の戦闘専門部隊ですが、大規模で長期的な戦闘は想定しておらず、安定したアノマリーの偵察と回収を主な任務としています。

星間脅威対応機動部隊


GOC派遣隊は星間脅威対応機動部隊であり、指揮官はミシェル・ダール博士19です。部隊は、艦載されている兵器システムの大部分を担当し、オカルト的・深妙的な超常科学の専門家を多数抱えています。特に注目すべきは、世界的に有名なサイバネティクスの専門家である主席医務官レイラ・ウィクストロム博士とICSUTチューリッヒ分校の多元宇宙研究学科長リリス・ソーントン博士です。

サタニストのウォーロックであるピエール・デュヴァルに率いられる、PHYSICS部門 排撃班2112 ("スターシップ・トゥルーパーズ") が、この機動部隊に割り当てられています。強力な超脅威や他の超自然戦部隊との激しい戦闘を想定した兵装と訓練経験を有し、排撃班2112はダモクレス・イニシアチブの主要な歩兵戦力として機能します。

機動部隊に人員を提供しているGOC加盟組織のうち、著名なものが以下に纏められています。

  • 高貴なる古代ゴルモゴン教団 — ゴルモゴン教団は当初、フリーメーソンに対抗するために設立された団体であり、異常建築の破壊と防御結界の解除に特化した解体専門家のエリート部隊です。かつては連合国オカルトイニシアチブの主要な構成団体であり、現在は108評議会の常任組織です。教団のアンチメーソンらは船のブラックホールの点火を監督し、数名が技術専門員としてジョワユーズに乗船しています。
  • 国際統一奇跡論研究センター (ICSUT) — ICSUTは世界最大のオカルト大学であり、GOCの有力な研究パートナーにして、108評議会の常任組織でもあります。GOC、星間脅威対応機動部隊、あるいはダモクレス・イニシアチブ全体に対する奇跡論研究者の主要な供給元であり、ICSUTの卒業生や教員がオカルト専門員や魔導戦闘員として多数乗船しています。
  • 幸運を生き延びし者の同胞団 — "幸運な事件" でイェニチェリやベクタシュ教団が強制的に解散・鎮圧された後、その生存者達は組織を再編し、潜伏していました。その後、第六次、第七次オカルト大戦に参戦し、神秘的・深妙的脅威と戦い続けた彼らは、より強力な独立した戦闘的神秘教団へと発展しました。ダール博士20の要請により、同胞団から派遣された多数のイェニチェリ兵がジョワユーズに駐留し、機動部隊の戦闘および警備に関する職掌の大部分を占めています。
  • バヴァリア啓明結社啓明結社イルミナティは、人権と福祉の向上を使命とする国際的な政治的陰謀であり、その使命を秘密裏に達成することが最善であると考えています。結社の構成員数名は部隊のメンバーであり、外交及び法律顧問として活動しています。
  • サタンと科学者の統一教会 — 神の捜索と殺害を中心的な教義とする、ラヴェイ派サタニズムの分派。機動部隊には、反神論、戦闘認識論、対神格作戦の専門家として、数名のサタニストが参加しています。

艦長直属の人員


三者管理評議会の3番目のメンバーが、ハイラム・ダグラス艦長です。彼はプロメテウス研究所の潜水艦の元艦長であり、テストパイロットでした。プロジェクト中止以前はダイダロスの指揮を執る予定だった人物であり、ジョワユーズの復旧・改造の際には技術コンサルタントとして参加しました。プロジェクト・ダイダロスの下で訓練を受け、また艦内システムにも精通していることから、高齢にもかかわらず21TCCの無所属メンバーの候補に選ばれました。

ハイラム・ダグラスは艦長として、ジョワユーズの基本業務 — 主に航行と船内管理 — を監督し、船の機能と安全に関する内部事項については絶対的な権限を持ちます。TCC決議が行き詰まった際にタイブレーク投票を求められる場合もありますが、それ以外の戦略的な問題については、フォーダイス管理官とダール博士に従うことが期待されます。

ジョワユーズには、艦長直属の幹部職員として、無所属の士官や補助員が少人数乗船しています。これらの人員はジョワユーズの運営に必要な業務を行いますが、ダモクレス・イニシアチブの全体的な任務には関与しません。全員が独自のスキルセットと技術的専門性を持つ人物としてダグラス艦長によって選ばれ、その多数はプロジェクト・ダイダロスに関与していた経験を有します。

     任務

SCP-6523とダモクレス・イニシアチブの主要な任務は、インシデント: ISHMAEL BREAKAWAYで確認された異常な宇宙船を、三者管理評議会が適切と判断する手段を用いて迎撃し、無力化することです。

インシデント: ISHMAEL BREAKAWAY 概要

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クインテッセンス・エアロスペースのロゴ。

2016/12/23、世界オカルト連合のEUDOXUS占星掃天観測が、アルラ・ボレアリス星系を由来とする強力なアスペクト放射のピークを検出しました22。この検出は、地球外知的生命体の証拠である可能性が高いと解釈されたものの、その時点では、正常性に対する小規模な脅威の1つに過ぎないと見做されました。

民間宇宙飛行企業クインテッセンス・エアロスペースもまた、彼らの所有する非認可かつ未報告の超常技術を利用し、この放射ピークを検出していました。当該企業の創設者・CEOにして、第五教会の信者でもあるヘクター・キャンヴェラ (PoI-11238) は、この事象を彼の第五主義者としての信仰の証明であると解釈しました。クインテッセンス社は、第五主義者が有する現時点で未解明の現実改変技術を用い、木星の衛星アマルテアを周回する星間宇宙船クインカンクス秘密裏に建造しました。

2017/02/26、インシデント: ISHMAEL BREAKAWAYが発生しました。ソーシャルメディア上にアップロードされた現在は検閲済みの映像において、ヘクター・キャンヴェラは自身の太陽系離脱計画について公表しました。その直後に、クインカンクスが木星軌道を出発したことが判明しました。ヘクター・キャンヴェラは、他の未知数の第五主義者らと共に、この宇宙船に乗船していたと考えられています。

この船の現在の軌道は、太陽系を出てアルラ・ボレアリスに向かうものであり、継続的な加速と適切な減速操作によって、400年余りでアルラ・ボレアリスに到着すると見積もられています。彼らは自身らの宗教的な悟りのために、地球外知性を捜索していると考えられています。

監督指令TAROT MARTEL 全文

インシデント: ISHMAEL BREAKAWAYに対応するため、直ちに監督評議会の緊急会議が開催されました。その結果、コードネーム: TAROT MARTELとして、以下の指令が発されました。

監督評議会指令

確実に、地球外知性とのファーストコンタクトは、地球人類にとって最も重要な事業である。

明らかに、異常な危険からの保護という我々の使命には、非ヒト知性を可能な限り保護する義務も含まれる。

断固として、第五教会は過激な超常信仰であって地球と地球外生命体の双方に不利益となるため、彼らがファーストコンタクトを起こすことは許容できない。

故に、世界オカルト連合の助力を要請するべく、ケルン合意 第13条が発動された。

従って、この第13条作戦の監督のため、財団と世界オカルト連合の合同機関が新規に設立される。

然して、この合同機関の任務は、第五主義者の宇宙船を迎撃・無力化することである。

以上の指令は
監督者 01、03、04、06、08、09、11、13 によって発令された。23

任務概要

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ジョワユーズが利用する最短軌道のアニメーション。ノンスケール。

ブラックホールへの着火と同時に、ジョワユーズは太陽系外への加速を開始しました。発射から11日後に冥王星に接近飛行し、ファーポイント基地から最終物資と人員を補給しました。

ファーポイント基地とのランデブーの後、ジョワユーズは内部時間で2122日間加速を続け、最高速度は光速の99.998%に達し、約200光年を移動します。この間、特殊相対論的な影響のため、地球上では201年が経過することになります。

中間点に到達すると、ジョワユーズは180度回転し、その時点の速度ベクトルに沿って進行します。その後、2133日の内部時間をかけて減速し、ヘルキュリナを出発してから地球時間で402年後にアルラ・ボレアリスに到達します。

アルラ・ボレアリス到達後の全ての活動は、三者管理評議会の裁量に委ねられます。

主要任務の終了後、ダモクレス・イニシアチブは、他の天文学的異常の収容または無力化を追求することが奨励されます。

地球への帰還は行われません。

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