アイテム番号: SCP-6587
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-6587はサイト-24の異常アーティファクト棟にある標準的な保管ユニットに収蔵されています。本書の内容のデジタルコピーは、要請に応じてレベル3クリアランス以上の職員に開示されます。
説明: SCP-6587はフランスのアヴェロワーニュで編纂された中世の動物寓意集です。経年にも拘らず、SCP-6587は良好な状態で、目に見える染み汚れや損傷はありません。
SCP-6587の著者は依然として不明ですが、分析によって、12世紀後半のある時期に一個人が執筆したことが示唆されています。序文に次のような記述があります (中世ラテン語から翻訳) 。
万人をして神を褒め称えさせよ、
彼が私に示してくださったこれらの不思議の故に。
物理的には非異常ですが、SCP-6587はその内容の特異性から収容対象と見做されています。類似する写本と同様に、SCP-6587には様々な動物の詳細な説明が挿絵付きで記載されています。しかしながら、SCP-6587に記載されている動物種は、いずれも中世ヨーロッパ人に存在を知られていなかった動物種に対応しているようです。その中にはアメリカ大陸やオーストラリア大陸の在来種も含まれており、現代のあらゆる歴史認識と矛盾しています。留意すべき点として、これらの説明書きは著しく粉飾されており、科学的根拠に乏しく、多くは寓意と宗教的象徴主義に依拠しています。
SCP-6587はエステート・ノワール1によって1872年に取得されました。内容の信頼性が確認された後、SCP-6587は1900年に財団の管理下に入りました。
補遺: SCP-6587の翻訳された文章の一部が、神話・民俗学部門によって以下に書き起こされています。
ペレグリンについてOf the Peregrine2
南方大陸テラ・アウストラリスの未開の原野に暮らす数多くの珍獣の中でも、無粋で粗野な者たちの敵である誇り高きペレグリンほどに奇怪な容姿のものはいない。この生物は鴨の嘴、獺の身体、海狸の尾を持ち、創造物の中で唯一、乳を出しながらも卵を産む獣だと伝えられる。ペレグリンの活動は川辺や湖に限られ、灌木や小魚を餌とする。敬意を払う限りにおいて、ペレグリンは例え人が近付こうとも危害を加えない。
ペレグリンの怒りは、その非凡な姿を笑い、嘲る者にのみ向けられる。嗤われた時、ペレグリンはその毒爪で不運な馬鹿者を打ち、剣や蛇さえも匹敵しない刺し傷を与え、最も遅い苦痛の中で死に至らしめるであろう。
イグナウスについてOf the Ignavus3
アンティリア島の活力に満ちた森林に、生物の中でも一際厭わしきもの、怠惰なるイグナウスが潜む。疑いようもなく創造物の中で最も無精者であるこの獣は、熊の顔と猿の身体を持ち、厚い毛皮は顧みられもせずにもつれている。この生物は魂の悩みと全く無縁であるため、地上を足で踏むことさえ一度も無く、代わりに樹上に引きこもって、巨大な鉤爪で無気力に枝からぶら下がる。イグナウスは日がな一日を無頓着な眠りの内に過ごし、月に一度だけ食事と交尾のために目を覚ます。
季節が廻るにつれて、この怠け者な動物の手入れされない毛皮は、ある種の緑色の黴に覆われ、ありとあらゆる地虫と蛆を呼び寄せるようになる。イグナウスの悪臭芬々たる皮を食い尽くすと、害虫たちは更に肉と内臓をも食らい続けるが、この動物は実に大人しく、己の身が破壊されてゆくこともほとんど気に掛けないほどである。
ボレアエについてOf the Boreae4
極北に広がる厳寒の荒野に、飛ぶことはできないが泳ぎが巧みな、ボレアエと呼ばれる背の高い鳥の一種がいる。種子も果実も実らぬ地であるため、ボレアエはただ魚のみを食べて生きており、動きやすいように凍てついた平原を腹這いで滑る。これらの鳥は全くの正義ではないが、さりとて邪悪でもない。人と同じように、ボレアエは善と悪の両方を行う可能性を秘めており、黒と白に等しく分かれた厚い羽毛がそれを物語る。ボレアエは七年生きると夏至に羽根を落とす。
一たび羽根が抜け落ちると、ボレアエは丸裸のままで宿命へ向かう旅をし、切り立った大理石の断崖の上に集まると、その岩棚から一斉に身を投げる。軽率にも堕落した生を送ってきたボレアエは、眼下の荒磯に為す術も無く叩きつけられ、砕けた死骸は貪欲な海豹に貪られる。しかし、謙虚で高潔な生き方をしたボレアエは、神の恩寵によって翼を授かり、南方の緑溢れるプレスター・ジョンの王国へと飛び立ち、暖かく豊かな土地で永遠に生きることができるのである。