章タイトル: “導入”Introduction
(SCP-6591-Aが遠くにある紫色のカーテンの前でスツールに座っている。床面は光沢のある硬材で造られており、これは床よりも一段高いステージに典型的な素材である。ベートーヴェンの“月光ソナタ”のディスコ版演奏が背景音楽として重ねられている。)
SCP-6591-A: ハーイ、私は (ゴボゴボという音) 、“サイズ・アップ”へようこそ。これは全力でその沢山の手足をブラブラ揺らしたり、その心臓をドキドキさせたりするための特別な運動ダンス・ルーティーンよ!
(場面転換; SCP-6591-Aは立っており、スツールは消えている。)
SCP-6591-A: さぁ、進み方が速いと思うかもしれないけれど、大丈夫! もし分からなくなったら、ただ私のやる事に従えばいいの。私に従って!
(SCP-6591-Aの背後で何かが動くのが見える。カーテンの下から、SCP-6591-Aの複製体がカメラに向かって這ってくる。)
SCP-6591-Aの複製体: 私たちに従って!
SCP-6591-A: この運動を最大限に活用したければ、自分を限界まで追い込むのが大切よ。よく“苦痛なくして得るものなし”って聞くじゃない。忘れないで、もし泣きたい気分になったら泣いていいのよ! そして泣きながら運動し続けて!
(更に2体の複製体がカーテンの後ろから、今回はカーテン上部から転落する形で出現する。)
複製体、一斉に: 私たちに従って!
SCP-6591-A: 正直に言うけれど、これを見ているあなたは多分どん底にいる。悲しくて、悲しくて、悲しくて — ダンスが面倒になってしまうほど悲しくて堪らないのね。同情するわ。
(最後に、3体のSCP-6591-A複製体が画面内に歩いて入って来る。)
複製体、一斉に: 私たちに従って!
SCP-6591-A: 何を待ってるのかしら? レッツ・サイズ・アップ!
章タイトル: “祈祷”Prayer
(ダンサーたちが点火された蝋燭を持ち、無言でスタジオに入ってくる。大半は女性だが、男性も若干名おり、SCP-6591-Aと似た色合いのレオタードまたはレギンスを着用している。ダンサーたちの顔は見えているが、無表情である。どの人物の身元も特定されていない。)
(ダンサーたちは数列に並び、全員が床よりも約1.5m高いメインステージに顔を向ける。SCP-6591-Aは腕を広げて跪き、両手に松明を持っている。)
SCP-6591-A: (小声で) これはあなたの意思のエクササイズよ。輪ゴムと同じで、ひたすら引っ張り続けると、いずれは切れてしまう。そこまでやってみましょう。腕を外側に広げて床に膝を突きなさい。きっと苦痛でしょうね。筋肉が萎縮して膝が痛くなるかもしれないけれど、それは全てが終わった時にどれだけあなたが改善されるかの証なのよ。
(映像は23分間無言で続き、カメラは身動きしないダンサーたちの間を歩く。地面には過去の視聴実験で床に落ちた蝋の乾いた跡が散見される。また、ダンサーたちの指の一部には火傷が見られる。この章はSCP-6591-Aのロングショットで唐突に終了する。)
章タイトル: “トーナメント”Tournament — この章のタイトルカードには“カット”CUTという単語が重ねられている。
(この章は3分間のスノーノイズで始まる。様々な歪曲した映像がノイズの間に差し挟まれている。最も鮮明な映像は、前述したダンサーたちが手を繋いでSCP-6591-Aを取り囲んでいる様子である。)
(ノイズが唐突に途切れ、屋外から窓越しにスタジオ内を覗き込む手持ちカメラの映像に切り替わる。2人のダンサーが全速力でSCP-6591-Aから遠ざかる姿が映っており、他のダンサーたちは床に座って息を荒げたり、怪我の手当てをしている。)
(突然、スタジオ内のドアの開閉音と思われる、金属質なバンという音が聞こえる。)
(外の歩道に通じるドアがカメラマンの右手で開き、カメラ視点が素早くそちらへ動く。ダンサーたちが歩道で身動きせずに立ち、不安と恐怖の表情を浮かべてカメラを見つめている。映像が途切れ、スノーノイズになる。)
章タイトル: “エク殺サイズ”Homicize
(“サイズ・アップ”のテーマソングが再び流れているが、今回は音が少し小さくなっている。)
SCP-6591-A: 昔ながらのサイズの時間が来たようだわ。たまには我を忘れてのめり込みましょう!
(ダンサーたちは再び、お互いに腕を広げた程度の間隔を空けて数列に並んでいる。彼らは全員、SCP-6591-Aの動きに従い、音楽のリズムに合わせて左右にステップを踏んでいる。ダンサーの1人である若い女性は、脳組織と血液らしき大きな液体溜まりの中でステップしている。)
SCP-6591-A: 踊って踊って! このエクササイズはね、実を言うと、効果は無いのよ。でも自分が何かしら意味のある事をやってると思い込んでるあなたたちを見るのは笑えると思うわ!
(グループは肩を前後に揺らし始める。)
SCP-6591-A: そのまま続けて! 気を緩めればリーダーに従うのはとても簡単だって気付いたでしょう。その場でジョギング!
(ダンサーたちはその場でジョギングを始める。)
SCP-6591-A: あなたたちは自分をダメな奴だと思ってる。そして私にそれを解決する力があると思ってる。私はあなたたちの神。私は答えを持っているから、あなたたちは私に従う。このビデオを消すのを誰も止めないけれど、あなたたちは消さないでしょうね。深入りし過ぎているから。あなたたちはこれを日課にしなきゃいけない — 自分の脳を騙して、これが好きだと思わせて、続けなきゃいけない。
(SCP-6591-Aは運動を前後ジャンプに切り替える。ダンサーたちは即座に従う。)
SCP-6591-A: さぁ、やっていきましょう! わたしはこの人たちを所有してる。彼らは私の物。彼らは私を信じる、そしてあなたたちもよ。あなたたちは1ヶ月で諦めるような達成不可能な目標を目指してこれを見続ける。でもそれでいいの、私たちがやるべき事はサイズ・アップだけ! もう一度その場でジョギング!
(SCP-6591-Aはステージから降り、ダンサーたちは左右屈伸運動に移る。SCP-6591-Aはジョギング歩調でダンベルラックへと移動し、10ポンドのダンベルを掴んで、体液溜まりで踊る女性の下へと運んでいく。)
SCP-6591-A: そのまま頑張って! 前回のテープでは、有酸素運動と一緒に幾つか他の筋肉成長エクササイズを取り入れてほしいという意見が寄せられたわ。肩を鍛える運動なら、腕を振り回すのがやっぱり一番効果的よ。特に重量物を持っている時がね!
(SCP-6591-Aはダンベルを後ろに引き、近くのダンサーの顔面目掛けて振り回す。ダンベルの衝突時に映像はスノーノイズになる。湿った打撃音の中で音楽が流れ続ける。)
(映像は3秒後に復帰する。SCP-6591-Aは跪き、ダンベルを頭の後ろで抱えている。)
SCP-6591-A: これは三頭筋を鍛えるのに最適よ!
(映像がまた2秒間スノーノイズになってから復帰し、右半身に血液が飛び散った男性ダンサーが左右にステップを踏む姿を映す。)
(また場面転換を挟み、カメラはステージ上に走って戻るSCP-6591-Aを追う。その後、カメラ視点は上昇し、角度の付いた鳥瞰図からスタジオを映し出す。SCP-6591-Aが話している間、全てのダンサーはカメラに向かって手を振っている。別な体液溜まりがカメラ視点の左下隅に見える。)
SCP-6591-A: 今日はお疲れ様、みんな! 明日はきっとそれを感じられるわ! 忘れないで、エク殺サイズしてないのは、つまり努力してないって意味なの! 私たちと一緒にサイズ・アップしてくれて有難う!