
SCP-665-JP出現地域
アイテム番号: SCP-665-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-665-JPの出現する周辺地域は機動部隊そ-6(”夜警”)によって監視され、SCP-665-JPの出現する時間帯に敷地内部に侵入した人間は拘束し、尋問後にAクラス記憶処理を施したうえで退去させてください。SCP-665-JPの出現が確認された場合は必ず2人以上で会話を行い、SCP-665-JPの要求は全て拒否してください。
説明: SCP-665-JPは██県██市█丁目の屋外で、現地時間の0:00頃から4:00頃まで出現する人型実体です。見た目は60代の日本人男性のように見え、大きさ74 × 50 × 33cm程度のキャリーバッグを所持しており、常にボーラーハットを深く被っているため顔面及び頭部の詳細は確認出来ていません。SCP-665-JPは出現地域内を移動し、人間(以下、対象者と記載)を発見した場合接近し、対象者に対し「このバッグの中身をあなたに使って欲しい」と訴えかけます。この要求は弱い強制力を持ちますが、他者の説得によって拒否する事が可能です。
要求に対し対象者が承諾、あるいは拒否を示した場合、SCP-665-JPは消失し、その翌日まで再出現が確認されていません。
要求を承諾した場合、SCP-665-JPはキャリーバッグから食物を取り出し、対象者に渡した後に消失します。食物の種類、量は取り出す度に変化し、明らかにキャリーバッグの許容量を超えた量を取り出す事例も確認されています。この食物は常に十分な鮮度を保った状態を維持していますが、それ以外の異常性は確認されていません。対象者が食物を受け取ってから24時間後、対象者が消費していなかった食品は全て消失し、対象者を中心とした地域一帯に原因不明の事故・災害が発生します。消失後の食物を追跡するあらゆる試みは全て失敗に終わりました。この事故・災害の規模は対象者が消費した食物の量で変動し、消費量が大きい程影響を受ける範囲と規模が拡大しますが、対象者が受ける被害はより軽度な物となり、反対に消費量が少ない程周囲の被害は減少し対象者が甚大な被害を受ける事になります。要求を拒否した場合には災害の発生は確認されていません。
SCP-665-JPが物理的損傷を負った場合、SCP-665-JPは即座に消失し、出現地域内のランダムな地点に全ての負傷が回復した状態で再出現します。この時SCP-665-JPは自身の負傷に対して無反応であり、再出現後は自身を攻撃した相手にも再度要求を行います。
SCP-665-JPは██県で起きた不可解なマンションの倒壊の調査中にその存在が確認されました。この倒壊はマンションの102号室の真下10kmを震源としたマグニチュード6の地震によって引き起こされた物であり、その規模にも関わらず影響を受けたのは倒壊したマンション1棟のみでした。生存者の一人の「仕事帰りに変な男から饅頭を貰い、一人では食べ切れなかったから隣人に配って回った」という証言からエージェントが調査を進めた結果、SCP-665-JPが発見されました。関係者にはAクラス記憶処理を行い、マンションの倒壊に関してはカバーストーリー「違法建築による欠陥」を流布しました。これまでにSCP-665-JPが関与したとされる事案は██件確認されています。
実験記録665-JP-1 日付19██/██/██
対象: D-665-JP-1、D-665-JP-2、D-665-JP-3
実施方法: D-665-JP-1に要求を承諾させ、出現した食品をD-665-JP-2、D-665-JP-3に完食させる。実験時の周囲への影響を考慮し、D-665-JP-1、D-665-JP-2、D-665-JP-3は財団の所有する太平洋上の無人島内で監視される。この時D-665-JP-1とD-665-JP-2は互いに100m以上離れないように指示し、D-665-JP-3のみ2km以上離れた状態で監視する。
出現した食品: アルミ箔に包まれたチョコレート2.5kg
結果: D-665-JP-2、D-665-JP-3は出現した食品を問題無く完食した。承諾から24時間後、D-665-JP-1の周囲█km圏内で森林火災が発生。消火後、D-665-JP-2は死亡が確認されたが、D-665-JP-1は衣服の一部が損傷していたものの、人体への被害は見られなかった。D-665-JP-3周辺の被害は確認されなかった。
分析: 摂食するのは対象者以外でもいいようだ。また、D-665-JP-2が死亡したにも関わらずD-665-JP-3が無傷だった事から、対象者以外の人物は摂食による被害の規模の変動は無いと考えられる。
実験記録665-JP-2 日付19██/██/██
対象: D-665-JP-4、D-665-JP-5
実施方法: D-665-JP-4に要求を承諾させ、出現した食品を10%のみD-665-JP-5に摂食させる。その後D-665-JP-4及びD-665-JP-5を互いに2km以上離れた状態で財団の所有する太平洋上の無人島内で監視する。
出現した食品: 加熱処理されたトウモロコシ(Zea mays)5kg。摂食したD-665-JP-5は「塩で味付けされていて美味だった」と報告している。
結果: D-665-JP-5は問題無く規定量を摂食した。承諾から24時間後、D-665-JP-4の周囲200m圏内で風速350km/hに達する風が発生。D-665-JP-4は死亡が確認されたが、D-665-JP-5及びD-665-JP-4の周囲200m圏外は影響を受けなかった。
分析: 摂食したのが対象者以外だとしても、対象者を中心とした異常現象が起こる。
実験記録665-JP-3 日付19██/██/██
対象: D-665-JP-6
実施方法: D-665-JP-6に要求を承諾させ、出現した食品を摂食させず財団管理下の焼却炉にて処分する。その後D-665-JP-6を財団の所有する太平洋上の無人島内で監視する。
出現した食品: 保温された状態のフランスパン7kg
結果: 出現した食品は問題無く焼却された。承諾から24時間後、D-665-JP-6の上空で嵐雲が形成され、1時間後に消失するまでに約100回の落雷が観測された。監視カメラの映像を確認したところ、全ての落雷がD-665-JP-6に誘導されるような軌道を描いていた。D-665-JP-6は落雷の直撃による死亡が確認されたが、それ以外の島内の被害は確認されていない。
分析: 摂食以外で消費した場合、対象者が消費したとは見なされないようだ。
実験記録665-JP-4 日付19██/██/██
対象: D-665-JP-7
実施方法: D-665-JP-7に要求を承諾させた後、SCP-665-JPに食物の出現量を指定可能か要求する。
出現した食品: 実験結果を参照してください。
結果: SCP-665-JPは了承。その後、エージェントの指示を受ける前にD-665-JP-7が「どうせならくれるだけくれ」と発言。結果、SCP-665-JPはエージェントの攻撃により消失するまでに加熱処理されたウサギ(Leporinae Trouessart)、シカ(Cervidae)、ウマ(Equus caballus)、[編集済]の肉を██t出現させた。この際、SCP-665-JPは翌日まで再出現が確認されていない。出現した肉は全て焼却処分され、D-665-JP-7は財団の所有する太平洋上の無人島内で24時間体制で監視された。承諾から24時間後、[データ削除済]。
分析: 今回の事案で財団が失ったのがDクラス1名のみというのは奇跡だろう。これ以降のSCP-665-JPの要求を承諾する実験は禁止とする。
インタビュー記録665-JP-1 日付19██/██/██
対象: SCP-665-JP
インタビュアー: エージェント・岸田、エージェント・三沢
<録音開始>
エージェント・岸田: こんばんは。少しお時間よろしいでしょうか?
SCP-665-JP: おや、こんばんは。どうしました?
エージェント・三沢: あなたは会った人にいつも何らかの食べ物をプレゼントしているらしいですが、何のためにそんな事をしているのですか?
SCP-665-JP: 私の事をご存知だったのですね。これは全て私の贖罪の為にやっている事なのです。
エージェント・岸田: 贖罪?
SCP-665-JP: はい。私はかつてある少年達に怪我を負わせました。彼らは私に謝罪を要求し、人々も私に罪を償うように言いました。だから私は償いとして未来ある人達の手助けをしているのです。私にはこれくらいの事しか出来ませんが。
エージェント・三沢: あなたが食べ物をプレゼントした人々が全員明らかに異常な災害に遭遇し、中には命を落とした人もいます。あなたの渡す食べ物に何らかの異常性があるのではありませんか?
SCP-665-JP: [溜息]それは残念な話ですね。恐らくその死んでしまった人は使い方を間違えてしまったのでしょう。
エージェント・岸田: 使い方、ですか?
SCP-665-JP: そうですよ。私が渡した物は全て食べる為に使う物です。溜めておいたりなんてしたら勿体無いじゃありませんか。全て使い切ってしまうべきなんですよ。そうだ、あなた方もこのバッグの中身を使いませんか?[その後、エージェント三沢が拒否した為SCP-665-JPは消失した]
<録音終了>
補遺: SCP-665-JPの関与が確認された最も古い事案の1年前である19██年に、SCP-665-JPの出現地域での目撃情報を最後に消息不明となっている人物の存在が明らかになりました。消息不明となった██ ██氏は1█歳の少年3名に対し所持していたカッターナイフで切りつけたとして現行犯逮捕され、懲役5年の判決を受けており、消息不明となる前日に刑期を満了していました。被害者である少年3名を調査した結果、1名がSCP-665-JPの関与した災害に巻き込まれて死亡しており、2名は199█年に起こした暴行事件で逮捕され、現在も服役中です。2名に対するインタビューでは有力な情報が得られませんでした。██氏とSCP-665-JPの関連性については現在調査中です。