SCP-6677


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SCP-6677のタイトルカード。

特別収容プロトコル

SCP-6677はサイト-43の大容量データストレージ施設1号に保管されます。

METATRON.aicはエンターテインメント業界のプロデューサー、ネットワーク、配給会社の関連サーバーをスキャンし、SCP-6677が存在しないかを探ります。SCP-6677の受信が確認された人物は記憶処理されます。

機動部隊カッパ-43 (“メディエーターズ”) はSCP-6677の発信元からの電子メールを妨害し、IPアドレスを追跡するための対策を講じます。


説明

SCP-6677は、GOI-5889 (“ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディア”) によって制作・配給された子供向け番組、“フィンズ・ホロウ”のパイロット版が収録されたデジタルファイルです。この番組は幾つかの操演人形を使って撮影されています。

登場する人形は、通常のマリオネットやハンドパペットに期待されるよりも遥かに精密に動いているように見えます。作中にデジタル加工の形跡は確認されていません。人形は、完全な知性体ではないにせよ、自律活動能力を持っていると考えられます。これらの潜在的実体群が存在する証拠は、SCP-6677以外には発見されていません。SCP-6677の撮影に利用された場所やセットは現時点では不明です。

SCP-6677を視聴しても即時の異常効果は発現しません。しかしながら、24~48時間以内に、視聴者は (該当する症状の既往歴が無いにも拘らず) 広い空間を激しく忌避する傾向を発達させ、そのような環境にいることを強制されるとパニック発作を起こすようになります。また、視聴者は重度の相貌失認を発症し、過去に付き合いがあった人物の顔を識別することさえもほぼ不可能になります。これらの影響は72時間~1週間ほど持続します。それ以降も残存する異常効果はありません。

発見:
W・ウェットル博士が自らのSCiPNETアカウントにて、ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディアの新たな制作物に関する以下の電子メールを受信しました。

唯一既知のSCP-6677ファイルが上記のメールに添付されていました。ウェットル博士はこれをマッキンス管理官に報告し、異常な影響を有する可能性についての研究が始まりました1


補遺 6677.1: SCP-6677の書き起こし

: 以下は唯一既知のSCP-6677ファイルの完全な書き起こしである。

登場人物:
悪魔のフランク (Frank, the Demon)
サディ (Sadie)
ベニングス町長 (Mayor Bennings)
シャルルマーニュ・ケプラー3世 (Charlemagne Kepler III)
グリス巡査 (Officer Gris)
フリジッツさん (Ms. Frizits)
哲学者 ボエティウス (Boethius, The Philosopher)
サビタ・ガイコツ, Esq. (Rusty Skeleton, Esq.)
冒涜合唱団 (The Profane Chorus)


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悪魔のフランク。

[導入場面は農村地域にある納屋のドア。タンブルウィードがカメラの視界を横切り、続いてドアが開く。フランクという名前の人形がドアの奥から踏み出し、空いた手で頭を掻きむしって毛皮に付いた藁を取り除こうとする。]2

フランク: この [検閲] 野郎。3

[フランクは前屈みになり、藁が全て取れるまで頭の毛を掻き回す。彼は両手で身体から埃を払い、納屋の外壁に立て掛けられていた剣を手に取る。]

フランク: [カメラを見上げ、目を見開く] うわ [検閲] 、ごめんね君たち。気付かなかった。心臓が [検閲] 止まっちゃうかと思ったよ! 君たちはどうしてフィンズ・ホロウTMに来たの?4

[フランクは時折頷いたり、“ふむふむ” “続けて”などの相槌を打ちながら熱心に耳を傾ける。フランクが実際に何を聞いているのかは不明確である。約3分間これが続く。]

フランク: ああ、そういう事ならおいらに任せて! みんな言うんだ、“フランクはこの渓谷ホロウ一のツアーガイドだ”って! おいでよ!

[フランクはサイドカー付きのバイクに向かって歩き、カメラはそれを追う。フランクの操り糸は画面外の空に向かって伸びているが、カメラ視点から、少なくとも数メートルの長さがあることは明白である。周辺の土地は乾燥した低木地帯で、アースカラーに塗られた農場が数百ヤード離れた場所に見える。農場も納屋もかなり劣化した状態にある。フランクはバイクに跨ってヘルメットを被り、サイドカーを身振りで指す。彼はもう1つのヘルメットを取り出し、それをカメラに装着する素振りを見せる – カメラ視点がヘルメットで囲まれる。]

フランク: [カメラに向かって親指を立てる] 必ずヘルメットは付けなきゃね、君たち!

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冒涜合唱団。

[町への移動中、スウェーデン語のアリアを歌う3人組の歌声が聞こえる。当初、歌唱はサウンドトラックの一部のように思われるが、フランクはバイクの右側を指差す。3体の人形が数フィート離れた場所に浮かび、歌いながらバイクに合わせた速度で移動している。いずれも漠然と動物に似ているが、かなり様式化されたデザインになっている。]

[フランクが手を振る。]


田舎町のセットへの場面転換。

[フランクはバイクを雑貨屋の正面に停めて降りる。カメラはフランクを追って店内に入る。中年女性の人形がカウンター裏の陰の中にいる。]

フランク: 紹介するよ、この人は地元のお店を経営してるフリジッツさん。この町には大きな量販店が無いから買い物はフリッズからするといい。

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フリジッツさん。

フリジッツさん: [唸り声] その呼び名はやめろと言ったはずです、異教徒。

フランク: あっ、ごめんねフリッジー。 [カメラに向き直る] 町で暮らすうちに何かが必要になったら、食料品からガムテープ、憲法の修正第2条で認められた護身武器まで、何でもこの“フリジッツの質素なお店”で揃うんだ。

[フリジッツは生き生きと軽い足踏みを始める。足踏みの音は、窓越しに通りから聞こえる冒涜合唱団のくぐもった歌声とテンポを合わせている。フリジッツは腕組みをして目を細め、注意深くフランクの動きを目で追っている。]

フリジッツさん: 一体、何をしに来たのですか? お前の種族はヒトの食べ物さえ食べないでしょう。

フランク: そんな事ないさ、フリッズ。おいらはデビルドッグとエンジェルケーキが大好きだよ。

[フランクは含み笑いし、カメラにウィンクする。]

フリジッツさん: そこの子供たちはどうしたのです? お前のような輩と一緒にいるのは相応しくありません。早速子供たちを堕落させるつもりですか?

フランク: [検閲] な事言わないでよ! [再び笑う] 他に誰が新入りに町を案内するんだい? おいらはフィンズ・ホロウTMの大使でしょ?

フリジッツさん: ベニングス町長がお前を大使職に任命した覚えはありませんが。

フランク: [声を落とす] これは [検閲] 名誉称号だから…

[フリジッツがカメラを見つめる。]

フリジッツさん: いいですか、子供たち。もし彼が何か迷惑を掛けるようなら、このカレン・フリジッツをお呼びなさい。

[フランクはカメラを通りに戻すが、立ち止まってフリジッツに手を振る。]

フランク: じゃあね、カレン!

[冒涜合唱団はよりゆっくりとした物悲しい歌を歌い始める。]

フランク: 良い仕事してるよ、君たち!


[フランクは通りの向かいにある郵便局を指差す。]

フランク: 次はあそこに行ってみよう!

[カメラはフランクを追って、老朽化したアスファルト舗装路を渡り、郵便局に向かう。郵便局の正面にあるポーチで、劣化した女性の人形が揺り椅子に座っている。]

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サディ。

フランク: この人はサディ。女手一つでこの [検閲] 広いホロウ全体に郵便を配ってるんだ!

[サディは数秒間咳込み、タバコに火を灯す。]

サディ: やぁ、フランク。いったい [検閲] 悪魔が子供たちと何をしてるんだい?

フランク: やぁ、サディ! そりゃ、みんなにホロウを案内してるんだよ。

サディ: 何処を見せたんだい?

フランク: えっと… おいらの家をちょっぴり、その後はフリッジーのお店。

サディ: あの鬼婆はどうしてた?

フランク: あんまりおいらが好きじゃないみたい。

サディ: そりゃ、アンタは悪魔で、あっちは長老派教会の信者だから当然じゃないか。無視しな。

フランク: おいらが悪魔ってだけで? こんな風に生まれたのはおいらの責任じゃないよ。

[サディは肩をすくめ、タバコを揉み消す。彼女はすぐに2本目に点火する。]

サディ: あんな了見の狭いバカ女のことは心配しなくていいんだよ。アンタは誰を傷付けたわけでもないし、あの農場だって、アンタが越してくる前はクモがたかってるだけだった。アタシに言わせりゃ、アンタは良い子の悪魔さ。

フランク: ありがと、サディ。

[フランクは背を向けようとするが、素早くサディを振り返る。]

フランク: ちょっと待って、郵便配達はどうしたの?

サディ: [叫ぶ] アタシが悪魔の心得をアンタに教えたことがあったかい? 無いだろ? それはね、アタシは自分の仕事だけ気に掛けて、アンタたち悪魔がどういう事をやってるか知ったかぶりしないからさ… だからアンタも郵便配達をどうやるべきかなんて利いた風な事を言うんじゃないよ。 [検閲] 。

[フランクは両手を挙げて降参を表明する。冒涜合唱団が騒々しいアイルランド語の飲酒の歌を歌い始める。サディは合唱団に向かって親指を立てる。]

サディ: とっとと [検閲] 出てって、その子たちに町を見せてやんな。

フランク: [笑う] はーい!


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グリス巡査。

[フランクは郵便局から歩き去り、カメラがそれを追う。レンガ造りの建物を通りかかったフランクは、立ち止まって窓から覗き込む。建物内では、警察官の人形が独房で別な人形を暴行している。フランクは窓を叩く。]

フランク: ねぇ、グリスさん、出てきて新入りさんたちと会ってよ!

[警察官はフランクに手を振って窓から離れるように合図し、囚人を独房のベンチに投げ倒して拘束する。囚人は抵抗し続けるが、警察官は囚人を殴り、手錠を掛ける。警察官は手の埃を払ってから警察署の入口へ移動し、外に出てフランクとカメラに近付く。]

グリス巡査: 何の用だ、悪魔?

[フランクは巡査の口調に怯み、1歩後ずさる。]

フランク: 新しく引っ越してきた子たちの顔を覚えてもらおうと思ったんだよ。町を見せて回ってるんだ。

[グリス巡査がカメラを見る。]

グリス巡査: お前たち子供は学校にいるべきじゃないのか?

[フランクがカメラと巡査の間に割って入る。]

フランク: 落ち着いて、グリス巡査! おいらは町を案内してるだけだってば。

グリス巡査: お前には何も言っとらんわ、化け物。そこを退かんか。

[巡査はフランクを押し退ける。フランクはよろけ、仰向けに倒れる。]

グリス巡査: [カメラを至近距離から凝視する] お前たちに訊いとるんだっ!

[巡査は数分間唸り、やがて1回頷く。]

グリス巡査: 良かろう、今回は警告で勘弁してやる。だが今度また登校日に町をぶらつくようなら、本官がずる休み罪でしょっぴくぞ。分かったな?

[巡査は警察署に戻りながら肩越しに叫ぶ。]

グリス巡査: そこの消し炭悪魔を連れて、とっとと失せろ!

[フランクは立ち上がり、身体から埃を払う。]

フランク: …行こっか。

[冒涜合唱団が歌うのを止め、警察署の向こうでうなだれているのが見える。]


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ベニングス町長。

[フランクはカメラを連れて“町役場”という看板がある老朽化した建造物を訪れる。建造物の正面で、高齢男性の人形がトランプ用テーブルの前に座っている。この老人は物乞いをしているらしく、テーブルには酒瓶が置かれている。衣服は汚れ、髪は乱れている。]

フランク: おはよう、ベニングス町長さん!

ベニングス町長: [不明瞭な呟き]

フランク: あのね、町に何人か新入りが来たから、案内しようと思ったんだ。ほら、おいらはフィンズ・ホロウTMの大使だからね。

[ベニングス町長は反応せず、酒瓶を持ち上げて一口飲む。]

フランク: 訪ねてきたみんなに言いたいことはある、町長さん? 何か格言とか?

[ベニングス町長は唸り、また酒を一口呷ってからカメラを見つめる。彼は正面にある物乞い用のボウルをつつき、顎でそれを指す。]

フランク: 勿論協力するよ、町長さん! 今日はどういう寄付を募ってるの?

[ベニングス町長はテーブル上の半分空になった酒瓶を指で軽く叩く。]

フランク: あっ… [カメラに向き直る] そろそろ別な場所に行こうか。

[フランクは数枚の貨幣をボウルに入れ、カメラを急かして通りを先に進んでいく。]

フランク: [小声で] やめてよ、町長さん… あんなの [検閲] じゃないか。

不明: ふん、フィンズ・ホロウTMに何を期待している、フランク?

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サビタ・ガイコツ, Esq.

[フランクは驚いて飛び上がってから振り向き、カメラがその視線を追う。通りの上に、著しく錆びた金属で構成されているヒト型の骸骨が浮かんでいる。]

フランク: [検閲] 、サビタ! ビックリし過ぎて地獄まで落ちてくかと思っちゃった。 [カメラを見て含み笑いする]

サビタ: 吾輩を紹介せんか、地獄生まれ。

フランク: あ、そうだね。みんな、この人はサビタ・ガイコツ・エスクワイア – ホロウの死者や呪われた人たちの顧問弁護士をしてるんだ。

[サビタが優雅に会釈すると、酸化した金属の破片が剥がれ落ちるが、道路に落ちる前に消失する。サビタは地面から半メートル近く上に浮かんでいるため、カメラ視点は全身を映すために見上げなければならない。]

サビタ: ふーむ、吾輩の姿が見えるとは妙だな。教えてくれ、子供たち… お主らは実は死者ではないのか?

フランク: 違う違う! 死んでないよ、特別なだけだよ! それに新入りさんなんだから最高のおもてなしをしてあげなくっちゃ。

[サビタは通りの向こうにいるベニングス町長を見る。]

サビタ: それはあの化石に言ってやれ! 吾輩は死者の相手をしているに過ぎん、奴の方がまだしも良識がある。

フランク: [カメラに向き直る] 普通、サビタを見たり聞いたりできるのは、死んだ人か地獄民だけなんだ… ああでも天国民たちも見えるのかな、でもそれはどうでもいいよね?

[サビタはカメラに視線を戻し、視界に頭蓋骨しか見えなくなるまで接近する。]

フランク: ジーザス・クライスト、サビタ。子供たちを [検閲] 怖がらせて殺すつもりなの?

サビタ: それで上手く行くと思うか? ふーむ…

[サビタは1分以上、空の眼窩をカメラに押し付け続ける。]

サビタ: お主らが死者かどうかを確かめておるだけだ。呪われし者でも構わん。吾輩は選り好みはせんぞ。

フランク: その子たちは死んでないし、呪われてもいないよ。もしそうだったらおいらにも分かるはずでしょ?

[サビタは頭骸骨を掻いてカメラから離れる。]

サビタ: それは確かにそうだろうな。ところで、観光の残りは?

フランク: 大通りをずっと下って、丘の上に行こうかなって。

サビタ: 一番良い所は最後まで取っておくのか、気に入った。いいだろう、その気になってきたぞ。吾輩も同行する。

フランク: いいよ。でもこれ以上ゲストに迷惑かけないでね。分かった?

[サビタは両手を挙げて降参を表明し、宙に浮かぶ。]

サビタ: 行くとするか?


[フランクとサビタは、案内しているはずのカメラを無視している様子で、通りを歩き続ける。]

フランク: 分かったよ。でもおいらが言いたいのはさ、ウリエルが本当においらたちを穴の中にずっと閉じ込めておきたかったのなら、もっとちゃんとした壁を作るべきだったと思うんだ。あれはもう [検閲] 何世紀も前から崩れてるんだよ!

サビタ: そうだな。ウリエルにも責任が無かったとは言わん、しかしそもそもラジエルが反乱の最中に下手を打たなければ–

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哲学者 ボエティウス。

[カメラは2人を追うのを止め、空き店舗の正面でコンクリートに座っている男性の人形に焦点を合わせる。男性は虚ろな表情でカメラを見上げている。]

ボエティウス: 私は車輪を回転させる。そして高きものが降下し、低きものが上昇するを見て歓びを覚える。

[画面外で、サビタの何かしらの発言を聞いたフランクが笑っているのが聞こえる。]

ボエティウス: 君は元老院の不実を痛烈に糾弾した。君は私が誹謗されたと嘆き、私の美名が損なわれたと悲しんだ。

[画面外からフランクの叫び声が聞こえる。フランクがやや離れた場所から近付いてくるにつれて、声は大きくなる。]

ボエティウス: “望むように訊いてくれ”と俺は言った、“お前が選ぶ質問なら何でも答えよう”と。すると彼女は言った、“君は私たちのこの世界がいい加減な偶然に支配されていると思うか、それとも何か合理的な導きがあると信じているか?” “”、俺はそう言った。

[フランクがカメラの隣に駆け付け、腰を屈めて息を整える。フランクの姿は辛うじて視界の左側に見える程度である。ボエティウスは虚ろな目付きでカメラを見つめ続けている。]

ボエティウス: それ故に賢人の心には憎悪を抱く余地が無い。

フランク: [荒い息遣い] じゃあ、ボエティウスさんに会ったんだね? [喘ぐ] 哲学者のボエティウスさん、フィンズ・ホロウTMに新しく引っ越してきた子たちだよ。

ボエティウス: 然れども兄弟の生命を奪わんと人は殺戮の鋼を振るう
不当にして残忍な戦を仕掛け
飛び交う矢を以て死に急ぐ
彼らには正義も道理も無い5

サビタ: [通りの向こうから叫ぶ] その変人は今度は何をほざいている?

[フランクはサビタに向かって軽くあしらうように手を振り、その間もボエティウスを見下ろしながら息を整えようとしている。]

ボエティウス: 悪徳が言わば肉体の病気と同じような魂の病気であるのなら、私たちは身体を病んだ人間は決して憎むべきではなく、むしろ憐れむべきだと見做しているのだから、どんな病よりも恐るべき邪悪に精神を蝕まれてしまった者たちは猶一層憐れまれるべきではなかろうか。

フランク: ボエティウスさん、悪いけど何を言ってるか [検閲] 分かんないよ 。いつも [検閲] だけどさ。

ボエティウス: 意志の薄弱な愚か者ほど
稀少で奇怪なもの全てを針小棒大に捉え
蒙昧な群衆は予期せぬ変化があれば
畏怖のあまりに圧倒される
しかしひとたび無知の霧が晴れる時
不可思議は啓かれた精神を去ってゆく。

フランク: [カメラの方を向き、通りの向こうへと導き始める] ほら、先に行こう? あの人は少し浮世離れしてるんだ。


[フランクとサビタは丘を登り、カメラを頂上まで案内する。丘はさほど高くないが、小さな町を良く見渡せる。町は明らかに人形向けに作られたセットだが、これまでの場面で使用されたものよりも遥かに多い建物が存在する。]

[フランクとサビタは丘の頂上付近にある樫の木の下で立ち止まり、町に向かって腰を下ろす。サビタは着座姿勢だが、依然として地面から半メートル上に浮かんでいる。]

フランク: この素敵な景色を見てごらんよ。なんて素晴らしい街だろうね。

サビタ: [頭蓋骨に指を近付け、フランクの視線の外で“頭がおかしい”のジェスチャーをする] ああ、そうとも。

フランク: いつか地獄に落ちていくのが楽しみだなぁ。

サビタ: おい、何を–

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地元の穀潰し シャルルマーニュ・ケプラー3世。

[画面外から笑い声が聞こえる。フランクは立ち上がり、木の後ろに回り込む。ぼさぼさに乱れた髪の、ずんぐりした人形が木の幹にもたれて立っている。]

フランク: チャーリー、こんな所で何してるんだい?

シャルルマーニュ: [犬のように唸る] それは。俺様の。名前じゃ。ねぇ。

フランク: 分かったよ、シャルルマーニュ。何しに来たの?

シャルルマーニュ: お前のダチに俺様を紹介しろ。

サビタ: 全く面倒な奴だ。

フランク: [片手を挙げてサビタを制する] いいよ。みんな、この人はシャルルマーニュ・ケプラー3世。彼はごく最近ホロウに引っ越してきた。

シャルルマーニュ: おう、その通りさ、大した歓迎ぶりだったぜ!

サビタ: もしお主がもう少し落ち着いていれば…

フランク: 聞いてくれよ。おいら、あんな事になるとは考えてなかったんだ、しょうがないだろ?

シャルルマーニュ: 町巡りに付き合ったせいで、俺様がお前の仲間だと思われるとは考えなかっただと? お前の毛皮と俺様の髪の毛が似てるせいで、町の奴らが俺様を半悪魔だと思い込むこともか? 俺様が町に居ついたり、家や職場を探したりするのを誰も助けてくれなくなることもか? 俺様は今じゃ一人っきりで生きてるんだ!

フランク: おいらが助けるって言ったじゃんか。

シャルルマーニュ: お前がどんな [検閲] 助けになるってんだよ? あの掘っ立て小屋に住むのか? 農場をお前と一緒に立て直せってか? そんな事したら町の奴らが言う通りだ、俺様は本当にお前の仲間になって、お前と同じように扱われるだろうが!

フランク: ホロウの人たちはまだおいらをよく知らなくて、慣れようとしてるだけさ。悪魔に会ったことが一度も無かったんだから仕方ないよ!

シャルルマーニュ: そうだろうよ、フランク。いつでもお前を町に泊めてくれるだろうぜ。

フランク: [低い声で] サディはおいらを気に入ってる。

シャルルマーニュ: [検閲] ほどどうでもいいね! お前は俺様の全てを台無しにしやがった、フランク。俺様はお前の同類じゃない、悪魔なんかじゃない!

フランク: ああ、うん。もう分かったよ。じゃあ何をしに来たんだい?

シャルルマーニュ: [カメラに向き直る] ガキども、もし分別があるならこのゴミ悪魔と付き合うのは止せ。こいつはお前らのこの町での暮らしを破滅させる。つるむ相手に気を付けねぇと、お前らまでこいつと同じ救えねぇクズだと思われるぞ。

フランク: オーケイ、チャーリー。言いたい事は言っただろ、もう帰ってくれない?

[シャルルマーニュは花火が一杯に詰まったバックパックを拾い上げる – 開いたジッパーから酒瓶が見える。彼はバックパックのジッパーを閉めて肩に掛ける。]

シャルルマーニュ: おう、おう。とにかく俺様に近寄るんじゃねぇぜ、フランク。

[フランクはうつむき、木に寄りかかる。サビタが彼の肩を叩く。冒涜合唱団が上の枝から陰鬱なメロディを歌う。]

サビタ: 他人が何を思うかはどうしようもなかろう、フランク。お主なりの生活を送るしかあるまい。いつか町の者たちも、お主が善良で、ただの悪魔ではないことを悟るだろう。

[フランクは頷き、目元を拭う。]

フランク: バイクまで戻ろう。ねぇサビタ、おいらの家まで来るかい?

サビタ: 後でな。しかし今は依頼人たちと面会しなければいかん。

[サビタは町から離れた方角を指差す。カメラがそちらを向くと、狭い墓地から一列に並んだ幽霊がサビタに近付いてくるのが見える。]

フランク: そっか、じゃあまたね。


フランクが農場の外にバイクを停める様子への場面転換。以前と同じく、カメラはサイドカーに乗っているようである。

[フランクは正面ポーチに寄りかかる。]

フランク: さて、君たちがホロウで良い初日を過ごせて、おいらのツアーが役に立ったなら嬉しいんだけどね。感想とかある?

[フランクは数秒間熱心に耳を傾けている。]

フランク: そりゃまぁ、小さい街の暮らしに馴染むのは大変だけど、全体としては結構充実してると思う。それに、おいらはこの農場を修理してブタとウシを何頭か飼ってるんだけど、それがまた中々楽しいんだよ。地獄で生きるよりずっとマシさ。とにかく、仕事に戻らなきゃ。じゃあね、みんな。

[フランクは納屋に向かって歩き始め、カメラはそれを追う。納屋のドアに辿り着いた時点で、フランクは振り向き、カメラと目が合って悲鳴を上げる。]

フランク: うわぁ [検閲] ! てっきり帰ったと思ったのに。ツアーはおしまいだよ、みんな。おいらはやる事がある。さっきも言った通り、ここは農場なんだ。

[フランクは数秒間カメラを見つめている。]

フランク: ここに居たいの? おいらと? えっと… 本気で言ってる? 丘の上であのチビ助がなんて言ってたか聞いたよね?

[フランクは沈黙する – 返答を聞いていると推定される。]

フランク: うん、まぁいいけど、君たちが納得してるうちだけだよ。それとね、おいらの家じゃタダ飯は出さないぜ。農場をちゃんと運営できるようにするんだ。町の人たちはおいらを認めてくれないかもしれないけど、ここはおいらたちの土地なんだから、暮らすのに最適な状態にしなきゃ!

[フランクは納屋のドアに向き直って開き、カメラを振り向き、数秒間微笑んでから屋内へ向かう。納屋のドアが閉まり、エンドロールが始まる。]

書き起こし終了

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