SCP-6751 | 存在しなかった家 |
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2022/06/15 公開 |
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特別収容プロトコル: SCP-6751は存在しないので、収容は不要です。.Kušum: アイテムの収容は無期限に放棄されています。
説明: SCP-6751はカナダのビクトリアに位置する、存在しない2階建ての住宅です。知覚及び物理的な相互作用が可能であるにも拘らず、徹底的な試験.ソナー解析、赤外線解析、熱画像解析、電磁波解析、奇跡術解析、ヒューム値解析を含みますが、それらのみに限られません。によって、SCP-6751は現実には存在しないと断定されました。公文書の記録は、SCP-6751が“ラクーナ建設・修理社”によって2007年に建造されたことを示しますが、その他の情報はまだ発見されていません。
SCP-6751には現在、ジョン・ドームという38歳の男性、以下SCP-6751-Aが居住しています。ドームは2012年、一般的なビクトリア市民の経歴を取材しているジャーナリストを装ったエージェント N・ネスシオによってインタビューされました。ネスシオの秘匿ボディカメラの構造上の欠陥が原因で、このインタビューの映像の大部分と全ての関連メタデータは、深刻なデータ破損を被り、閲覧不能になっています。以下の記録は復元されたごく僅かな映像・音声から成っています。
SCP-6751-Aインタビューログ
[SCP-6751-Aとネスシオは、SCP-6751の台所にある小さなテーブルで向かい合って座っている。夜空をモチーフにした絵画が天井を覆っている。窓は着色されていないようだが、自然光はやや緑色を帯びている。時間帯は真昼のようである。]
SCP-6751-A: —み始めて… 7年ぐらいかな。親父が死んだ時に相続した。
ネスシオ: ご愁傷様です。
SCP-6751-A: [笑う] 気にすんな。正真正銘のクソ親父だった。俺の [指でエアクオートの身振りをする] “ライフスタイル面の選択には賛成できない”って理由で、16歳の俺を家から追い出しやがったんだ。
SCP-6751-A: 俺が家を相続できたのは、親父に遺言状を書く暇が無くて、何を望んでいたかを誰も知らなかったからだよ。俺は親父の持ち物をあらかた捨て—
[映像は無い。]
ネスシオ: —れは全部あなたが描いたんですか?
SCP-6751-A: ああ。俺は昔から少しばかり天文学オタクでな。将来は宇宙飛行士になると信じてたタイプのガキだった。望遠鏡なんかも自分で買い揃えた。
SCP-6751-A: 何しろ、ここの光害は年々酷くなる一方だ。だから、自分で星を作ろうと思った。
ネスシオ: 綺麗ですよ。
SCP-6751-A: ありがとよ — でもこんなもんはまだまだ序の口さ。こいつを見てくれ。
[木材が軋む音。]
ネスシオ: [呆気にとられた声] なんてこった。
[音声は無い。]
[SCP-6751の台所、最初に復元された動画の直前または直後。SCP-6751-Aは立ち上がっており、光は緑色を帯びていない。]
[ネスシオが着席しているため、SCP-6751-Aの頭部は画面外に出ている。SCP-6751-Aは生き生きと話している様子で、頻繁に身振りを交えている。SCP-6751-Aは2.7分間この挙動を続ける。]
[SCP-6751-AとネスシオはSCP-6751の居間に立っている。居間の天井も夜空の絵画に覆われている。]
SCP-6751-A: —星座ってやつがさ。人間はこの何もない空とちっぽけな光の粒を見て、そこに意味を持たせるんだ。俺はいつもその考えに引き込まれちまう。
ネスシオ: 星座を描いたことはありますか?
SCP-6751-A: そこが良いんだ — 描く必要がない。もう既にそこにある。ほらな?
[SCP-6751-Aは数歩前進し、天井を指差す。SCP-6751-Aの足音は4.5秒遅れて聞こえる。ネスシオは足音が聞こえた時に若干驚いているように見えるため、この遅延は映像の破損と関連していない可能性がある。]
[SCP-6751-Aとネスシオは2階の廊下に立っている。天井は映っていない。SCP-6751-Aの左側に開いたドアがあり、そこから暗い寝室が部分的に見え、その奥の廊下の突き当りに閉じたドアがある。自然光の明るさは、これが最初の映像の少なくとも1時間後の出来事であることを示唆する。]
[この映像を通して、寝室では何も起こらない。SCP-6751-Aとネスシオはそれに気付いていないようである。]
ネスシオ: —んでしょう?
SCP-6751-A: [振り向かずに身振りで閉じたドアを指す] 屋根裏への階段だよ。
ネスシオ: [合間] 屋根裏部屋がある?
SCP-6751-A: ああ。でも… ガキの頃から入ってない。
ネスシオ: 危険なんですか?
SCP-6751-A: そうじゃないけどよ。 [SCP-6751-Aは言葉を切り、身じろぎする] 俺を追い出した時、親父は俺が置いていく物を全部焼き捨ててやると言った。もしそれが嘘だったら — もし物置に俺の私物をしまっていたら…
[寝室での無活動が急激に高まる。]
SCP-6751-A: うん。大した意味はないと思う。でも何かを意味するはずだ。
SCP-6751-A: その疑問は解けないままにしておきたい。俺はもう、俺の知っている親父と折り合いを—
[静止画像が音声無しで29秒間続く。]
[画像は夜であり、SCP-6751の居間は暗い。SCP-6751-Aが立っており、カメラから顔を背けて部屋の窓を見ている。]
[空には満月が浮かんでいるが、星は見えない。]
[音声は無い。]
[時間帯は早朝のようであり、インタビュー翌日の可能性がある。ネスシオはSCP-6751の外に立っており、正面玄関は半開きになっている。ネスシオはSCP-6751に入り、各部屋をゆっくりと通り抜けていく。家具は全て取り払われ、天井は艶消しの黒い塗料で覆われている。どの部屋にも何も無い。]
[他全ての部屋を調査した後、ネスシオは屋根裏部屋へのドアに接近し、それを開く。]
[映像は無い。]
[ドアが閉まる。]
[木材の軋みを伴なう足音。足音の源 (SCP-6751-Aと推定される) は息を切らしているらしく、次第にはっきり呼吸が聞こえるようになる。]
SCP-6751-A: ガキの頃は暗闇が怖かった。知ってたか? 俺は大学半ばまで常夜灯を点けて寝てたんだ。
[他の声は聞こえない。]
SCP-6751-A: ああ、そんなタイプに見えないのは分かってる。でも本当さ。暗闇にはどこか、いつも俺の想像力を掻き立てるものがある。そこには何も無いと分かっている時でさえ、光の無い場所に何があるか考えるのを止められないんだよ。
[誰も話さない。]
SCP-6751-A: でもそれが本質なんだろう? 何も無い。
[誰も話さない。]
SCP-6751-A: 掌を目に押し付けると、色の点滅が見える。形。音。俺たちはそこに意味を持たせなければ無を想像できない。星座無しでは星々の間の途方もない距離を思い描くことはできない。そんなことは不可能だ。
[誰も話さない。]
[誰も話さない。]
[誰も話さない。]
SCP-6751-A: あんたの言う通りかもしれない。
[誰も話さない。]
[ドアが開く。]
[満天の星空が広がっている。]
財団がSCP-6571とその異常性を把握した経緯は不明です。N・ネスシオという名前の人物が財団に雇用された記録はありません。