日誌エントリー134
2021/03/12
きつい1週間だった。今日、私とバリーはレスキューを1つ見つけた、それも今までと違う全く新しいものだった。ヘンリーのところへトラックを走らせてる途中、巨大な、本当に巨大なハゲタカがどこからともなくやってきて攻撃してきた!トラックを停めて外に逃げた、と同時にトラックの屋根が切り剥がされるのを見たんだ。彼が怪我をしていることに気づいた私たちはどうにか捕獲用の刺又で首を留めて、トラックの中に押し込んだ。かわいそうに、翼に切り傷を負っていた。車に轢かれたに違いない。
保護区へ向かう途中に奇妙なことが起こり始めた。たった20分の距離なのに保護区に戻るのが永遠のように感じられた。そして突然トラックが動かなくなった。エンジンをチェックしても異常はない、そんなときにトラックが勝手に進み始めたんだ!バリーに停車させられるまでに1マイルは走ったはずだ。要点検。その間ハゲタカはずっと鋭い声で鳴き続けていた、これまで聞いた中で最悪な叫びだったよ。
バリーの昔の飼い犬にちなんで、私たちはそのハゲタカに「シャドウ」という名を付けた。神様、彼を祝福してくれ。保護区に連れて行ってもその叫び声が止まることはなかった。リンダが彼の検診を準備している間に一時的な囲いへ入れはしたが一向に落ち着いてくれなかった。あんなに怒っている鳥を、そしてあんなに大きい鳥というものを見たことがないね。今日はあまりにクレイジーだったから、もう家に帰る。
日誌エントリー135
2021/03/13
検診は… 控えめに言って、ほどほどで終わった。
リンダとバリーがシャドウを捕まえるのに大体1時間、鎮静剤で落ち着かせるのに更に30分かかった。かわいそうに、頭がどうにかなりそうなくらい怖かったに違いない。リンダが言うには翼が折れてるからギブスが必要らしい。彼に合うようなのを。ハゲワシの一種だとも教えてもらったが、私たちが今まで見てきた中でも一番に大きい、10フィートはあるに違いない!ハゲワシは動物の死肉を食べるものなので彼のために肉を買ってきた。のだが一向に食べてくれない。バリーとベンは彼がずっといられるような囲いを設置している最中だ。願わくは彼にとって落ち着けるものであればいいな。
奇妙なこともたくさん起こっている、この世のものではないような。廊下を歩いていたら突然車椅子がすぐ横を通ったんだ!誰も押していないのに、何の力も借りずに私を通り過ぎて、角を曲がっていった。落とした鉛筆が空中で静止したとリンダは言ってるし、ハツカネズミがドブネズミに変わるのを見たともベンは言ってる!まあ、ベンはちょっとお馬鹿さんなのがいつものことだから信じられるかは怪しいけれども。バリーは幽霊なんていないと言ったけど、私は信じてるし、もしかしたらみんな呪われたかもと思ってる。
日誌エントリー136
2021/03/16
本日、バリーとベンはシャドウの囲いの設置を終えた。そして1時間の格闘の末にシャドウをその中へ移動させた。ここに来てからずっとひどいストレスを感じているようだった。なんとか翼にギブスを装着したが、意外と気にしていないようだ。囲いの中に入ってからストレスが幾分か減ったように見えたけど、それでもまだ無くなってはいないみたいだ。明日、手からごはんを与えてみて、少しは落ち着いたかどうか見ようと思う。
日誌エントリー137
2021/03/17
予想以上にうまくいった。悪かったけど、予想よりは良かった。
私が肉片を持って囲いの中に入ると、シャドウはすぐさま走り寄ってきて私めがけてタックルを仕掛けてきた!私は地面に釘づけにされて、持っていた肉はもぎ取られた。彼がどいてくれた瞬間に今まで見せたこともない速さで囲いから走り出したよ。でも彼は食べた!ここに来てから初めて食べてくれたし、これは最初の一歩目だ。明日もやってみるつもりだ。
日誌エントリー138
2021/03/23
シャドウと同じことをやった、今日は少し仲が良くなれた!
いつもと違ってシャドウはタックルせずに、ただ駆け寄ってきて私の手から肉を取ってった。囲いの中に座って彼が食べてるのを私は見つめていた、彼はさして気にしていない様子だった。いつもは私がいると金切り声だったり騒がしい鳴き声を上げるのだが、今日は食べている最中に鳴き声も上げずに、横たわって私の方をじっと眺めるばかりだった。
枝で巣を作り始めていることにも気づいた、これは良い兆候だね。毎日食べて、ボウルから水を飲んでいる。ここにきて彼と私の仲は少しずつ良好なものに改善されている。それと調査してみたけど、見聞きした内にはどうやらシャドウほど大きなハゲワシは世界中探してもいないようだ。もしかしたら新種みたいなものかもしれない。
他のニュースとして、奇妙なことが保護区でまだ起きてる。シャドウの囲いを眺めてたら、たくさんの枝が空中に舞っては飛んでってシャドウの巣に絡みあい始めた。シャドウはずっとその棒をじっと見ていた。何がどうなってるの?
日誌エントリー139
2021/03/27
シャドウとの関係は少しずつ進展してる!肉片を持って囲いに入るとシャドウは必ず私のところにやって来て、持ってく。そして巣の中で横になってそれを食べるんだ、私を見つめながら。私は座って彼を観察してるし、毎日少しずつ巣に近寄ってみてる。彼も私に慣れてきたみたいだ。バリーとベンも肉をあげようとしてみたけど、その度に前みたいなタックルが繰り返されている、なので私がごはん係になっている。
彼の翼は少し治ってきたようだ。まだギブスが必要なのは明らかだけど、少しずつ動かせるようになってるよ。
明日、彼を撫でてみるつもりだ。彼の巣にだいぶ近づいたし、願わくは、撫でさせてくれるのに相応しいほどに仲良くなれていると思いたい。
日誌エントリー140
2021/03/28
やった!
今日、シャドウを撫でられるところまで巣に近づいた、やるなら今だって思ったね。彼の頭にそっと手を置いてゆっくりと撫で始めた。喜んでくれてるみたいだった!シャドウは目を閉じて、しばらくの間お互いに座ってそうしてた。ここにきて彼とのつながりが感じられてきてるし、その心根も見え始めてきてると思う。
日誌エントリー141
2021/04/01
シャドウの魅力は本当に光り始めている!気難しい鳥からこんなにも愛らしい子に変わったんだ。私がごはんを持って囲いの中に入ると嬉しそうに鳴きながら駆け寄ってくる。私たちはごはんでゲームをやってる。私が肉を放り投げて彼はそれをキャッチして食べる。そして、もっと食べたいと彼は舌を鳴らし、肉片が無くなるまで繰り返すんだ。
一緒に寄り添って寝ることにもお熱なみたい、大きな巣の中でのおねんねの時間をいつも設けてる。私はいつも枕と毛布を持ちこむけど、彼は時々それをひとり占めしたがる、けど私は気にしてないよ。まだこの保護区メンバーを好きになれていないようだ、怖がっているんだと思う。彼が怯えているとき、羽がほんの少し逆立っていることに気づいた。そして私以外が囲いに入ってきたときにはいつも逆立っていることにも気づいた。
日誌エントリー142
2021/04/09
今のシャドウはとても愛らしく幸せいっぱいの鳥です!迎え入れてからの1ヶ月で彼は随分と成長し、一緒にいるのがとても嬉しい様子だ。私は囲いの中で彼との時間を過ごした。いつもシャドウは私のそばにいて、擦り寄って遊びたがっている。
彼は私に本当になついてくれてるし、私も彼が本当に好きだ。今ではペットのように感じている、7フィートのハゲワシを指してそう言うのも変な話だけど。本当に愛らしく思っているし、いつまでも幸せな鳥でいてくれることを願っている。
余談だが奇妙なことは起こらなくなったようだ。そもそも本当に起きていたことだったのか、それとも本当に消えてしまったのか、何が奇妙なことだったのかも私にはわからない。
注記: 前述の最終エントリーの後、SCP-6773の存在が財団職員の知るところとなり、SCP-6773実体の収容が即座に遂行されました。ペブラー氏を含めたゲアリー鳥獣保護区のメンバーにはクラスC記憶処理薬が投与されました。