"風車さえなけりゃ最高の景色だったんだけどな。"
Info
タイトル: SCP-6961 - 僕らの上のデッカイやつら
翻訳責任者: Tetsu1
翻訳年: 2026
著作権者: Maplestrip,
ubergoober,
Daloohn
原題: Giants Above Us
作成年: 2024
初訳時参照リビジョン: 10
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-6961
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SCP-6961実例のコロニー
特別収容プロトコル: SCP-6961の完全な収容は物流上不可能であり、現在SCP-6961の標準的な収容プロトコルは存在しません。SCP-6961がヴェールに及ぼすリスクに対抗する手順は現在発案中です。
説明: SCP-6961は地球上の全大陸に固有の大型菌類の異常な種です。SCP-6961実例は高さ100 m以上まで成長し、白い光沢のある金属質の甲皮に覆われています。SCP-6961実例は頂点から翼状の胞子嚢を突き出しており、そこから胞子を放出して無性生殖を行います。実例は通常、平原、草原、海岸などの開けた環境で最大7,000体ほどのコロニーを形成しているのが発見されます。
SCP-6961は公的には「風力タービン」として知られており、持続的な発電のための人口構造物であるという信念を広める受動的なミーム感染を伴っています。既存の「風力発電」企業の性質の調査は現在進行中です。
SCP-6961の存在は20世紀から知られていましたが、その異常性は2024年9月18日、サイト-54の上級研究員であるグストー博士がフランス、オクシタニア地方で有給休暇中に初めてSCP-6961実例と交流するまで知られていませんでした。以下のログはグストー博士の携帯電話に記録されたものです。
発見ログSCP-6961-1
[記録開始]
グストー博士が目撃したSCP-6961-1。
グストー博士はフランスの田園地帯、SCP-6961のコロニー付近をハイキングしている。彼は風景を見渡し、緑の野原と起伏のある丘陵を鑑賞する。風景の中心にあるSCP-6961のコロニーを一目見ると、ため息をつく。
グストー博士: はあ…… 風車さえなけりゃ最高の景色だったんだけどな。
グストー博士が北へ歩き続けていると、谷から声が響き渡る。
不明な声: 失礼だなぁ。
グストー博士は振り返る。
グストー博士: 何が— 何だ今の?
グストー博士: まあ…… 気のせいだな。
グストー博士は向き直る。
不明な声: ふう、危なかった。
グストー博士: あぁ? これ- 喋ってんの風車か?
不明な声: あー、違うよ。
グストー博士: おい、聞こえてるぞー。全然騙せてないぞ。
SCP-6961-1: あぁ。しまった。
グストー博士はため息をつき、聞こえない声で何かをつぶやく。
グストー博士: (静かに) うぁ、最悪だ。ゆっくり休めるもんだと思ってたのに。
グストー博士: で、結局お前は何だ? 喋る風車?
SCP-6961-1: 風車って何?
[記録終了]
SCP-6961-1を発見したグストー博士は、付近のサイト-06にその存在を警告しました。翌日、財団エージェントは同じ風力発電所の他の風力タービン11基もSCP-6961実例であることを発見し、更なる調査が承認されました。
間もなくエストニアでSCP-6961のコロニーが発見され、グストー博士は更なるSCP-6961の調査のため該当地域に派遣されました。グストー博士は地元のSCP-6961へのインタビューを行いました。インタビューのうち一つは以下の通りです。
インタビューログSCP-6961-46
インタビュアー: グストー博士
[記録開始]
グストー博士はSCP-6961実例(以下SCP-6961-46と呼称)の境界に入ると同時に、呼びかける。
SCP-6961-46、航空写真。
グストー博士: どうも、SCP-6961-46。
以前の実例と同じように、SCP-6961-46の声が風車から発せられて丘陵を響き渡る。
SCP-6961-46: どうも、人間。何の用だ?
グストー博士: 休暇が短縮されて少々腹立ってるんだが。風車とか諸々調べなきゃならなくて。
SCP-6961-46: それは大変だなぁ。俺は元気にやってるぞ。今日のそよ風はかなり気持ちいいな。
グストー博士: それは良かった。いくつか質問しても?
SCP-6961-46: ご自由に。
グストー博士: 君はどこから来た?
SCP-6961-46: 俺か? わからない。生まれてからずっとここにいる。
グストー博士: ここに建てられたのか?
SCP-6961-46: ここに芽を生やしたって言った方がいいかな。かなり前のことだ。相当なスピードで成長した。
グストー博士: それで、君はここで何をやってるんだ?
SCP-6961-46: お天道様の下で自分の生を生きてるだけだよ。
グストー博士はSCP-6961-46に背を向け、遠方を見る。
グストー博士: 海岸の風力発電所がなけりゃもっときれいな風景だったんだけどな。
SCP-6961-46: あれは俺の子供たちだ。
グストー博士: あぁ。
グストー博士: 悪い、気分を害する気はなかった。
グストー博士: うーん、次の質問は…… どうやってこちらに話しかけてるんだ?
SCP-6861-46の胞子嚢の回転が加速する。
SCP-6961-46: おう、結構すごいんだけどさ。音が空気の振動に過ぎないってのは知ってるだろ?
グストー博士: ざっくりとなら。
SCP-6961-46: デカい翼で空気の波を操ればこんなことまでできるんだ。すごいだろ!
グストー博士: 翼を回転させて声を生成できるのか?
SCP-6961-46: かなりコツがいるんだけど、そうだな。デカい扇風機みたいな感じだ。
グストー博士: じゃあ次は、リストにある質問から、どうやってこちらのことを見てる?
SCP-6961-46: なあ、さっきから退屈な質問ばっかだよ。全部訊くつもり?
SCP-6961-46: 鳥にいちいちどうやって飛んだり鳴いたりしてるのか訊くの?
グストー博士: 残念ながら仕事なもので。答えを求めて質問することが、だぞ。鳥にインタビューはしない。
SCP-6961-46: 鳥にインタビューするってものなかなかいいな。高く飛んでるからいろんなものが見えてるんだろうな。
10秒間の沈黙。
SCP-6961-46: 下からじゃあんまり見えないんじゃないかな、小人さん?
グストー博士はSCP-6961-46の頂上を見上げる。
グストー博士: 確かに無理だ、前方に木がある。
SCP-6961-46: 今日の木は元気そうだな。
SCP-6961-46: なあ、俺の背中に手をかけるところがあるんだけど。時々人が俺を登ってくるんだけど、やってみるといい。壮観だぞ!
グストー博士は含み笑いする。
グストー博士: 残念だけど、あまり私には向いてないと思う。
SCP-6961-46: まあそれなら別に。
グストー博士は振り返って海の方向を見る。
グストー博士: ただ、カモメがお前の子供たちの上に群がってるのは見える。
SCP-6961-46: 北を向いて、ずっとお天道様に背を向けて、自分の影が回転するの見るの、好きなんだ。
両者は20秒間沈黙を保つ。
SCP-6961-46: 海の向こうには、数百の子供たちがいたはずだ。
グストー博士: それは…… 思ってたよりも少々多いな。
グストー博士: (ささやき) マジか、こりゃかなり蔓延してるぞ。
このインタビューの後、世界中の「風力タービン」として知られていたもののほぼ全てが実際にはSCP-6961であることが判明しました。機動部隊が派遣され、100か国以上におけるSCP-6961蔓延の全容を記録しました。ヨーロッパ各地を広範囲に移動しながら、グストー博士は遭遇したSCP-6961実例との会話を継続するよう指示されました。
インタビューログSCP-6961-887
インタビュアー: グストー博士
[記録開始]
グストー博士は、オランダのチューリップ畑の風景を撮影している。彼はカメラを上げ、下からSCP-6961を映し出す。
グストー博士が撮影したSCP-6961-887。
グストー博士: 君の種に接近するのももう何度目だが、こうも巨大だと毎回怖く思ってしまうな。
SCP-6961-887: 何です?
SCP-6961-887の胞子嚢が少し回転する。
SCP-6961-887: あぁ、あなたでしたか。
グストー博士: こっそり近付いたのは悪かった。知っているのか?
SCP-6961-887: 話は伝え聞いていますよ。とうとう政府に捕まるのですか?
グストー博士: ちょっと違うが、似たような感じではある。
グストー博士は一瞬動きを止める。
グストー博士: 質問させてもらうが、どうして君たちは皆そんなに隠れたがっている?
SCP-6961-887: 心から独りでいることを望んでいるので。静かなのが好きなんです、よろしくお願いします。
グストー博士: 膨大な量の公式文書を偽造するほどにか?
SCP-6961-887: 私の姿を見ていますか?
グストー博士: うん?
SCP-6961-887: 80メートルもの身長で気付かれないようにするのがどれだけ難しいか、わかりますか?
グストー博士: いったいどうやってそんなことを達成しているのやら。
SCP-6961-887: それでしたら、人々を振り払うのに役立つ方法があります。
グストー博士: 詳しく説明してくれるか?
SCP-6961-887: もちろん、この情報の詳細は互いに秘密にしていますが。しかし私たちは人間の方々により、環境に溶け込むため、ある種の…… 進化を、強制させられたのです。1
グストー博士: どういうことだ? どうして君や君の仲間たちは隠れ続けたがっている?
SCP-6961-887: 少なくとも、あなた方人間が私たちを崇拝し、敬意を表して大きな地上絵を描かれる分には良いということには皆が同意すると考えています。
グストー博士: そんなことがあったのか?
SCP-6961-887: はるか昔、私の生まれるずっと前。二時代前の話です。
SCP-6961-887: 一つ前の時代では、あなた方人間はただ私たちを地上から焼き払い、祖先の育った地にプランテーションを建設しました。
SCP-6961-887: 今では電柱やパラボラアンテナのようなものを建てられ、そこに私たちが収まる枠組みを与えてくださっているので、嬉しい限りです。
グストー博士は沈黙する。彼はSCP-6961-887の甲皮に触れる。
グストー博士: それにしてもどうしてこんなに高く成長した? まるで邪魔- じゃなくて、場違いに目立ってる。緑の- あるいは赤と黄色の野原に、青白色の灯台が立ってるみたいだ。
SCP-6961-887: 別の質問で回答しましょう。足元に何輪の花が見えますか?
グストー博士は周囲を見回す。
グストー博士: 数えきれない! 数千か? あいや、数十万あるかも。
SCP-6961-887: これまでに600万輪のチューリップを数えました。300万は赤で、150万はオレンジ、残り150万は黄色です。正確な数はまだわかりません、これは大まかな計測です。
SCP-6961-887: そのように地面にほど近い場所でそんなにも多くの花を数えることは可能でしたか?
グストー博士: 無理だと思う。でも見事な眺めなことは変わらない。
SCP-6961-887: でしたら嬉しいですし、私も存分に享受しているつもりです。
SCP-6961-887: 毎日、数十人の人がこの野原を行き来しています。網を外したり、雑草を抜いたり、総じてモノをいろいろ動かしています。トラクターが走るのは見ていて楽しいです。週末になると、そちらの左側の水路で父娘が釣りをしています。
SCP-6961-887: それに認めざるを得ませんが、誰かが歩いて通り過ぎる際にこちらを見上げるというのも面白いものです。
グストー博士: みんながみんな風力タービンが好きなわけじゃない。中には目障りだと思ってるのもいるだろう。
SCP-6961-887: 言ってしまえば、私が損するわけではないので。
SCP-6961-887: 自分がここにいたいからここにいるんです。
グストー博士が撮影したSCP-6961のコロニー。
このインタビューの後、O5評議会はSCP-6961の分析と調査の完了を宣言し、グストー博士を残りの有給休暇から解放しました。しかし、グストー博士はサイト-54から離れている間もSCP-6961へのインタビューの継続を要求しました。この要求は承認されました。
インタビューログSCP-6961-3590
インタビュアー: グストー博士
[記録開始]
ギリシャ中央部、グストー博士は未収容のSCP-6961実例(以下SCP-6961-3590と呼称)に接近する。
グストー博士: おはよう、友人。
15秒間の沈黙。
グストー博士: もしもし、起きてるか?
SCP-6961-3590: うん?
SCP-6961-3590: あぁ! おはよう! 新しいお友達?
SCP-6961-3590: ごめん寝てた!
グストー博士: 大丈夫だよ。今日のハイキングはちょっと早いからな。起こしちゃってごめん!
SCP-6961-3590: あくび。2早朝の眺めはどう?
グストー博士: あぁ、ここは実にきれいだな。
SCP-6961-3590: ほんとに!
SCP-6961-3590: だからここに根を下ろしたんだ! 人気スポットだよ!
グストー博士: 君の名前は?
SCP-6961-3590: 名前? 名前って何?
グストー博士: 人からの呼ばれ方みたいな。どういう風に君は呼称されてる?
SCP-6961-3590: なるほど! えっと、識別コードならあるよ! ちょっと恥ずかしいんだけど……
グストー博士: 恥ずかしい?
SCP-6961-3590: うーん……
SCP-6961-3590: その、左にいるのはSK-8007ってコードなんだよね。
グストー博士は頷く。
SCP-6961-3590: それで右にいるのは、SK-8009だよ!
グストー博士: ほう?
グストー博士: あー。そうだな、理想的ではないかも。
SCP-6961-3590: これでいい?
両者は20秒間沈黙する。
グストー博士: 他にこんな名前がいいとかは?
SCP-6961-3590: ううん…… そんなことしたら政府が矛盾に気付いて、パニックとか混乱になっちゃうよ。列にじっと並んで風景を楽しんでた方がいいな。
グストー博士: 秘密にしておけばいいんじゃ? 私たち2人と、すぐ近くにいる友達たちだけの。
SCP-6961-3590は10秒間沈黙する。
SCP-6961-3590: 考えもしなかった。変な感じ。
SCP-6961-3590は更に20秒間沈黙する。
SCP-6961-3590: ドラゴンって名前がいいな。ドラゴンはかっこいい。
グストー博士は笑う。
グストー博士: ドラゴンが何なのか知ってる?
SCP-6961-3590: もちろん!6年前に1頭がここに飛んできたよ。すっごい風起こしてた!
グストー博士: なるほど。
沈黙が続き、SCP-6961-3590とグストー博士は山々を見つめる。
グストー博士: ちょっと変な質問がしたい、嫌じゃなければいいんだが— 君を登っても大丈夫か?
SCP-6961-3590: 登る? えーと、僕の頭まで?
グストー博士: うん、背中の梯子を使って。そこからの眺めは壮観だって聞いた。
SCP-6961-3590: どうぞどうぞ! 上がってきて!
グストー博士はゆっくりと息を吸う。
グストー博士: わかった、じゃあさっそく。
グストー博士はSCP-6961-3590背面の梯子をゆっくりと登り、15分後に頂上に到着する。
SCP-6961-3590: ね、ちょうどいいタイミングで着いたね! 日の出だよ!
グストー博士とSCP-6961-3590は静かに山々から日が昇るのを見つめる。
グストー博士: きれいだった。ありがとう、ドラゴン。
グストー博士が降下後に撮影したSCP-6961-3590のコロニー。
その日の後、O5司令部はグストー博士から以下のメッセージを受信しました。
100体以上のSCP-6961と会話し、ヨーロッパ各地を大変よく見て回った後、私は以下の一つの結論に達しました。
風車は美しいものです。


