
SCP-6968-1から回収されたポスター。
特別収容プロトコル: 財団機動部隊デルタ-3 (“未確認動物学者”) はアメリカ合衆国本土のミシシッピ川以西における放火行為を積極的に監視します。SCP-6968のチラシやその他の宣伝資料は全て除去・破壊し、必要に応じて接触した民間人に記憶処理を施します。SCP-6968-1の出現が確認され次第、立入禁止区域をその周囲に確立し、山火事の被害評価という名目で財団職員でない人物の入場を防止します。全ての機動部隊エージェントには、SCP-6968-1への遠征に先立って5米ドルが提供されます。
財団の管理下に置かれた全てのSCP-6968-2個体には、一般的な世話及び収容に関する各個体独自の文書があり、SCP-6968に関わる全ての職員が閲覧可能になっています。詳細については “文書6968-2: 世話と収容” を参照してください。一部のSCP-6968-2個体を要注意団体 “ウィルソンズ・ワイルドライフ・ソリューションズ” の管理下に移送できるかについては現在調査中です。

アリゾナ州フラッグスタッフの歴史保存協会から回収されたSCP-6968-1の宣伝資料。
“世界一醜い生物… スクォンク!”
説明: SCP-6968-1は、表面的にアメリカ風サーカスの大天幕を連想させるテントや構造の異常な集まり、“幻想的なファンタスティック途轍もないフィアサム生き物たち”クリッターズを指します。テントの内部には、文字入りプラカードを下部に貼り付けられた檻が何列も並んでいる以外には何もありません。これまでのところ、テントの内部で人間やヒト型生物が発見された事例はありません。
SCP-6968-1の敷地の入場口として強調された場所に“お支払いはこちら”という看板を添えた大きな箱があります。入場希望者が5米ドルを箱に投入しない限り、SCP-6968-1に入場することは物理的に不可能です。
SCP-6968-1の所在地は固定されておらず、アメリカ合衆国本土のミシシッピ川以西に位置するあらゆる州に移動できることが判明していますが、特に頻繁に出現するのはカリフォルニア州、ワシントン州、アリゾナ州、オレゴン州です。SCP-6968-1は一貫性のある移動パターンを持たず、現時点ではいつ消失し、新しい場所に再出現するかを予測する手段はありません。
SCP-6968-1の到着に先行して、常に唐突かつ大規模な山火事が発生します。これらの山火事は通常・異常どちらの消火手段にも耐性を有することが確認されており、SCP-6968-1を十分に収容できる広さの敷地が確保されるまでは植物を焼き続けます。この条件が達成されると、SCP-6968-1が焼け跡に現れ、幾つかの見世物の宣伝資料が10km圏内のあらゆる地域社会に出現します。
SCP-6968-2は、様々なSCP-6968-1出現事象において檻の内部から回収された異常な動物の総称です。これらのうち、自然界に棲息する一般的な動物と外見上類似するものはごく少数であり、大半の動物は生物学的にあり得ないような形態を呈しています。SCP-6968-1で発見された全ての動物種を適切に分類し、既存の歴史記録と相互参照するための試みが進行中です。SCP-6968-2個体の要約版リストが以下に掲載されています。
SPC-6968-2個体 | 説明 | 注記 |
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SCP-6968-2-A | 対象は外見上Puma concolor (ピューマ) に類似しますが、長さ2mの尾があります。尾の先端には骨で形成された大きな球形構造があり、獲物に打撃を加えるために使用されます。 | 特に無し。 |
SCP-6968-2-B | 対象は4本脚の大型陸生哺乳類に類似します。草食性であり、上唇が長さ1mまで延伸しています。また、脚部に関節がありません。 | この生物の解剖学的構造は草を食べるにあたって著しい妨げとなっており、どのようにして人間の直接介入無しに生存できるのかは現在不明確です。対象の特徴は19世紀初頭のアメリカ西部入植者たちが残した記録のそれと一致するようです。 |
SCP-6968-2-C | 対象はLepus saxatilis (アカクビノウサギ) に類似しますが、頭部に2本の短い枝角があります。枝角は雌雄どちらのSCP-6968-2-C個体にも存在します。 | 収容下に置かれた他の同種個体と交尾する意欲を示す数少ない生物の1種です。収容担当職員は雄個体と雌個体を引き離すことを求められます。 |
SCP-6968-2-D | 対象は小型陸生両生類に似ており、極度に奇形化した顔面特徴と、著しくシワの多い皮膚を有します。対象の顔はイボや腫れ物などの皮膚疾患に覆われています。目から大量の涙液を分泌することが可能で、1日あたり10リットル以上の涙を流します。対象は財団職員に観察されると甲高い鳴き声を発し、自らを不可視化する能力もあるようです。 | SCP-6968-2-Dは観察行為を意識している様子を示すため、収容室内にカメラや記録装置を設置することは許可されていません。 |
SCP-6968-2-E | 対象は黒い毛皮を有する6本脚の中型ネコ科生物です。対象は水陸両性らしく、1日平均14時間を部分的に水に浸かった状態で過ごします。対象は定期的に、職員から“死にかけの女のような”と形容される物悲しげな鳴き声を発します。 | SCP-6968-2-Eは2012/4/16に財団の収容下で死亡しました。最初の発見以来、SCP-6968-2-Eの特徴と一致する動物はSCP-6968-1から回収されていません。 |
SCP-6968-2-F | 対象は白い毛皮で厚く覆われたSalmo trutta (ブラウントラウト) に類似します。この毛皮があることを除けば、対象は一般的なブラウントラウトと同一の挙動を示します。 | SCP-6968-1から回収された1組の番いから10匹構成の群れが形成されました。非異常なブラウントラウトに遭遇すると、SCP-6968-2-F個体群はその魚群の周囲に円を作り、身体を揺らして水を暖めようとする共生行動を取ります。 |
SCP-6968-1が訪れた州の歴史的記録から、SCP-6968-1は1840年頃には既に存在したことが明らかになっています。SCP-6968-1が生成する広告の記録は、SCP-6968-1が常に自らを“世に比類無き動物見世物”として宣伝していることを示します。
補遺 6968.1: 事案報告書
2016/7/23、ファラン・キャラウェイ博士 (SCP-6968の研究と収容を監督するサイト管理官) のオフィスに、マーカス・ダヴェンソンと名乗る未知の人物からの直通電話がありました。財団のプロトコルに則って、キャラウェイ博士は通話を録音し、逆探知のために対応可能な機動部隊への警報を発しました。財団の努力にも拘らず、この電話は追跡できず、“マーカス・ダヴェンソン”という名前と一致する人物の記録も発見されませんでした。通話内容の書き起こしは以下の通りです。
音声記録
日付: 2016/7/23
[記録開始]
キャラウェイ博士: もしもし、キャラウェイ博士のオフィスですが?
ダヴェンソン: おお、そいつは素晴らしいや。光栄にもファラン・キャラウェイ大先生とお喋りできるとはな。あんたと連絡を取るのはかなり骨が折れる!
キャラウェイ博士: …失礼、どなたでしょう?
ダヴェンソン: 俺の名前はマーカス・ダヴェンソン。お宅で世話してる何匹かの動物について重要な話がある!
キャラウェイ博士: すみません、その… これは機密扱いの専用回線ですよ。どうやってこの番号を入手しました?
ダヴェンソン: 俺は強力なコネがある強力な男でね、キャラウェイ先生。頼むよ、つまらん些細な事で時間を無駄にするのは止そうぜ。
この時点までに、キャラウェイ博士は司令部との連絡を取り、発呼者との通話をできる限り長く引き伸ばすように指示されていた。
キャラウェイ博士: 全く些細な事ではありませんが、いいでしょう。あなたの仰る重要なお話とは?
ダヴェンソン: ちゃんと話を聞いててくれないか、キャラウェイ先生よ、要件はもう伝えたろ。お宅では俺が所有してる動物どもの世話をしてるはずだ。
キャラウェイ博士: 私が世話している動物は数種類いますので、もっと具体的にお願いします。
ダヴェンソン: おお、確かにそうだな。はっきり言わなくて悪かった。“ファンタスティック・フィアサム・クリッターズ”から盗まれた動物どもの話だ。
キャラウェイ博士: 盗まれ…? いえ、あなたは誤解してらっしゃる。我々は催事会場の環境が劣悪だったので、あの動物たちをSCP-6968から救助したのです。
ダヴェンソン: ウチじゃ“ファンタスティック・フィアサム・クリッターズ”の動物どもに最上級の世話をしてると保証する。心外な事は言わんでもらいたいね。資金繰りはちょいと厳しくなってきてるが、その理由はもう少し後で話そう。とにかく、話題が逸れちまったな。俺が今回電話してるのは、お宅の組織に、そっちで管理してる動物どもを返還するだけでなく、ウチの資産をこれ以上盗むのを速やかに止めてほしいと正式にお願いするためだ。同じように、宣伝チラシの破棄と、ウチの施設への一般人の立ち入り制限も止してもらいたい。
キャラウェイ博士: …どんなものでしょう、取引をしませんか。あなたの催し物に関する情報を幾らか提供していただけるならば、SCP-6968収容プロトコルを解除できるかどうか、私が司令部と話し合います。どうです?
ダヴェンソン: 公正な取引だと思うね。どういう情報が必要なんだ?
キャラウェイ博士: あの動物たちは皆、何処から来たのですか? 我々があなたのテントにチームを派遣する度に、毎回違う動物たちがいましたよ。
ダヴェンソン: 俺は風変わりな物のデカい個人コレクションを持ってるのさ、キャラウェイ先生。お宅が見世物をどんどん盗んでいくもんだから、過去100年間に集めたあれこれで穴埋めをしなきゃならなかった。
キャラウェイ博士: 質問への答えになっていません。
ダヴェンソン: そうかもしれん。よぅし、分かった。数年前に俺のカタリーナを盗んだのを覚えてるか? お宅はあれから何も察することができなかったのか?
キャラウェイ博士: 失礼ですが、何のお話をしてらっしゃるのか分かりかねます。カタリーナについては今まで聞いたこともありません。
ダヴェンソン: ふん、残念だな。それと、あいつの話を聞いたことが無いって教えてくれてありがとうよ。こりゃマーケティングを改善せんとダメだな。
ダヴェンソンが溜め息を吐く。
ダヴェンソン: ほら、世間の連中は動物園が好きじゃないか、キャラウェイ先生。その上、希少でユニークな生物がいる動物園なら猶更だろ? 俺の商売はできる限り希少な生物のコレクションを誇りにしてるんだよ。あんたもウチの広告は見てるよな? “世に比類無き”と謳うのには相応の理由があるのさ。
キャラウェイ博士: 待ってください、では…
ダヴェンソン: だからこういう風にお宅から展示物を持っていかれるのは本当にむしゃくしゃする。この調子じゃ、俺はそのうちドードーを出さなきゃならなくなっちまう、それじゃあ誰が相手でもとっておきのサプライズにならんだろうが!
キャラウェイ博士: 失礼ですが、あなたはドードーを飼ってらっしゃるんですか?
ダヴェンソン: 遮らないでくれないか、キャラウェイ博士。失礼じゃないか、ましてや俺は今あんたの質問に回答してるんだぜ。ああ、俺のコレクションの生物はどれもこれも昔は栄えてたが、時の流れがそれを変えた。真面目な話、そんな生物をできるだけ長く存続させ続けてるんだから、俺は結構親切な方だと思うがね。そもそも、奴らをそこまで追い込んじまった埋め合わせってところかな。ああ、そうそう、ウチは確かにドードーを飼ってる。ありゃ不愉快な生き物だよ、しかもとんでもなく臭い。
キャラウェイ博士: 質問攻めにするようで申し訳ないのですが、その話をもう少し詳しく説明していただけますか? “そこまで追い込んじまった”とは具体的に何を指すのでしょう?
ダヴェンソン: 質問ばっかりだなぁ! つまりだな、昔の俺は手ずから汚れ仕事をやってたんだ。動物種の10や20を一掃するのにそう大それた計画は要らないしな! だが、近年じゃ人類が仕事をずっと簡単にしてくれた。いやもう、見世物の生き物を調達するのに指1本上げる必要すら無いようなもんさ! 何年か前に話題になったメキシコの魚を知ってるかい? パプフィッシュだっけ? 俺はもうあの魚の胸躍らせる幻想的な物語を書き始めてる。生体標本が手に入って良かったよ! 物語を広めるのには時間がかかるが、商売ってのはそういうもんだ。今後20年程度で展示できるようになるだろうぜ。
キャラウェイ博士: なんという…
ダヴェンソン: まぁしかし、何種類かは他よりも絶滅させるのが難しいのは白状する。具体的には例のジャッカロープどもだが、お宅も何か対策するのが身のためだ、個体数を少なく抑え続けるのが骨だから。奴らの繁殖ぶりときたら… ウサギにそっくりさ! ハハハ!
キャラウェイ博士: ええ、はい… その… 何とかします。
ダヴェンソン: さてさて、あんたと話せて嬉しかったぜ、キャラウェイ先生。取引を忘れないようにしてほしいね。近い将来、もう一度あんたと話すのを心から楽しみにしてるからよ。
[記録終了]
結: マーカス・ダヴェンソンはPoI-6968に指定された。当該人物の発見はクラスB優先任務である。SCP-6968収容プロトコルの変更は承認されていない。