SCP-6990
評価: +14+x
blank.png

アイテム番号: 6990
レベル3
収容クラス:
keter
副次クラス:
none
撹乱クラス:
dark
リスククラス:
notice

特別収容プロトコル: SCP-6990の広範な普及と、主流派の影響力に鑑みて、収容措置は不要と判断されています。

説明: SCP-6990は人類の集合的模伝子圏ミームスフィアに常に存在していた概念です。SCP-6990は、エジプトのピラミッド構造が地球外生命体によって、もしくは地球外生命体と人類の共同作業で建造されたという、広く知られた陰謀論を表します。それに反する圧倒的な量の科学的・論理的な証拠にも拘らず、この見解は特定のグループに属する人々の間では依然として一般的な信念です。SCP-6990に関する仮説は、多くの場合、ピラミッドの建設を巡って次のような (しかしこれらのみに限られない) 非論理的・疑似科学的な主張を行います。

  • ピラミッドは人類がその地域に居住する前に建造された。
  • 当時はまだ車輪が発明されておらず、従って石灰岩ブロックの運搬は不可能だった。
  • ピラミッドが位置する経線と緯線は互いに全く同じ値である。
  • ピラミッドの正面は磁北を正確に向いている。
  • ギザの三大ピラミッドの頂点は、オリオン座の“ベルト”部分を構成する3つの星の真下に正確に並んでいる。

発見: 当初、SCP-6990は広く知られている非異常な陰謀論に過ぎないと考えられていました。しかしながら、2021/09/26、財団はギザにあるクフ王ピラミッドの内部からの重大なミーム擾乱を検出しました。SCP-6690研究チームは、ケンブリッジ大学のために研究を行うエジプト学者を装い、エジプト政府の許可を得てピラミッド内に入りました。調査の記録は以下に添付されています。

SCP-6990研究チーム: クフ王ピラミッド内部における記録の書き起こし


日付: 21/09/29
時刻: 16:20
隊長: オマール・モハメド博士
研究隊員: エリザベス・スミス、ヨハン・オルフソン
武装隊員: アルフレッド・ショカス、デリカテッセン・ファーン
追加職員: ネジェム1 (ネコ)


[記録開始]

モハメド博士がクフ王ピラミッドの入口を抜ける。彼の研究パートナーと護衛はそのすぐ後ろに続いている。モハメド、スミス、オルフソンはいずれもミーム擾乱スキャナーを持ち、ゆっくりと周囲で振っている。

モハメド: 何か検出され次第、私に教えてくれ。すぐに。

スミス: 勿論です、博士。

チームはピラミッドの地下エリアに向かって降りていく。道はヘッドギアの電灯だけで照らされている。彼らがミーム擾乱を捜索している間、機材は互いに連動してビープ音を発している。

完全な静寂の中、チームは下り通路の終端に辿り着き、地下室の正面に立つ。オルフソン博士がスキャナーを退出用の竪孔に向ける。スキャナーが微弱なビープ音を発する。

オルフソン: 何かあったぞ! 退出孔の方だ。

チームの全員が竪穴に向き直り、速やかに登り始める。その後、彼らは歩調を落とし、信号を探して竪穴を徹底的にスキャンする。前進するにつれて、全てのスキャナーのビープ音がより大きくリズミカルになり始める。

スミス博士が左の壁の前で立ち止まる。

スミス: この壁の裏。

スミスは壁をノックする。中空の反響音が返ってくる。

スミス: ええ、やっぱり何か向こうにありそうですよ。

モハメド博士がイヤーピースに触れる。

モハメド: 司令部、こちらモハメド。ピラミッド内部で封印された部屋を発見。部屋を封じている壁の向こう側に、著しいミーム擾乱を確認。更なる調査の許可を求む。

司令部: 許可する、慎重に進んでくれたまえ。

モハメド: 了解。

モハメド博士は隊員たちを振り向いて頷く。彼らは速やかに作業に取り掛かる。オルフソンはペットキャリーを床に降ろし、中からアビシニアン種のネコを解放する。

オルフソン: よーし、ネジェム、君の魔法を見せておくれ。

彼はネジェムを抱き上げてあやす。スミスが鼻で笑う。

スミス: ネジェムを連れてきたんですか? どうして?

オルフソンはネジェムを降ろす。

オルフソン: おい! ネジェムはこのチームに不可欠な一員だぞ! そりゃあ、呪いを祓う力は無いけどさ。

スミス: ヨハン、呪いはありません。あなただって知ってるでしょう。呪いなんて初めから存在しなかったんです。2

オルフソン: シーッ、とにかくネジェムは残る。

オルフソンとスミスが口論している間に、ネジェムは壁に開いた猫サイズの小さな穴をくぐり、奥の部屋に入る。

スミス: いいですよ。あの子が良い道連れなのは認めます。

スミスは屈み込んでネジェムを撫でようとするが、既にネジェムがその場に居ないことに気付く。

スミス: ネジェムはどこ…?

オルフソン: ネジェム! ネジェム! パパの所に戻っておいで! チッチッチッ!

スミスとオルフソンは慌てて竪穴の中を見回す。突然、スミスの横の壁からカチッという音が響き、せり上がり始める。ネジェムは開放された部屋の奥に立ち、毛繕いをしている。

モハメド: これこそネジェムを連れてくるべき理由だ。さあ、中へ入ろう。

部屋の壁は象形文字で覆われており、チームは急ぎ足でそちらへ向かう。室内にはいかなる物品も無いが、部屋の中央に明るい黄色の球体がある。

モハメド: …何も無い。ごくありきたりなものばかりだ。

スミス: こっちにも何もありません。

オルフソン: こっちも外れだ。

小さなニャアという鳴き声が聞こえる。チームがネジェムに目を向けると、ネジェムは別なネコを見ている。ネジェムの正面に座るもう一匹のネコは、宝飾品を身に着けており、ネジェムを冷たく見つめている。ネジェムは見つめ返す。

スミス: あれはいったい…?

オルフソン: ネジェム、そいつにこの部屋は何なのか訊いてくれ。

スミス: なっ - ヨハン、あなた正気ですか?!

オルフソン: 何だよ? やってみる価値はある。

ネジェムは宝飾品を着けたネコに向かって鳴き、宝飾品ネコは鳴き返す。2匹は交互に鳴き交わし始める。

スミス: それで、ネジェムからはどう答えを得るつもりなんですか? ねえ?

オルフソン: なんとかなる!

モハメド: 2人とも静かにしてくれ。今、読んでる最中だ。

スミスが呻く。

ネジェムと宝石ネコは会話を続ける。やがて、ネジェムは鳴くのを止め、宝石ネコにお辞儀してからオルフソンの下へと戻る。オルフソンはネジェムを抱き上げてあやす。

オルフソン: よーしよし、僕の可愛い子! どんなお話だった?

ネジェムはオルフソンに向かってニャアと鳴く。

オルフソン: …うん。オーケイ、君の言い分も一理あったかもしれない。

スミスが鼻で笑う。

オルフソン: いいかい、何か考え出すよ、分かったね?!

モハメドがオルフソンに歩み寄り、ネジェムを受け取る。彼はネジェムを床に降ろすと、バッグから1枚の大きな紙を取り出し、ネジェムの前に置いて絵を描き始める。完了すると、彼は顔を上げてネジェムを見る。紙面には2つの絵が描かれている。片方は頭上に浮かぶ電球であり、もう片方も同じ絵だが電球にバツ印が重ねられている。

モハメド: どっちだ?

ネジェムは電球にバツ印が無い方の絵に前足を乗せる。モハメドは絵を消してもう一度描画し始める。スミスはその様子を唖然とした様子で見つめ、オルフソンは薄ら笑いを浮かべる。

オルフソン: 考え出すって言っただろ。

スミスはオルフソンの右腕を軽く殴る。

オルフソン: おい! 何のつもりだよ? 僕が正しかったからって怒るのか?

スミス: この - もう - 黙っててください。

スミスは口を尖らせ、腕を組む。オルフソンははっきりと響く含み笑いをする。2人はその後5分間、無言でモハメドとネジェムを見つめている。

5分後、モハメドは紙を巻いて立ち上がる。ネジェムは彼の肩によじ登る。

モハメド: よし、諸君、回答を得たぞ。

スミス: それで、ここは何なんですか? ミーム擾乱とどんな関係が?

モハメド: ネジェムに二択質問をして、正しい選択肢を選んでもらった。専らイエスかノーかの質問だがね。幾つかの単語やフレーズを引き出すことができたよ。

オルフソン: 例によって曖昧でしょうけどね。

モハメド: 彼女は“ピラミッド”、“起源”、“欺瞞”、“ラー”、“訪問者”、“富”、“消費”、“経済”、“未来”、“非人間”、“特異な建造者”といったフレーズで回答した。

スミス: つまり、今からそれを解読しなければいけない?

モハメド: そのようだ。

チームは熟考し始める。そうしている間、彼らは部屋を見渡す。モハメドは室内を歩き回る。

オルフソン: うーん、古代エジプト人はネコを雇ってピラミッドを建造させた後、この変な球体で人々がそれを思い出すのを妨害してるとか?

モハメド: いや、黒幕がネコだったら、ネジェムははっきりネコと答えたはずだ。

スミス: そう言えば、もう1匹のネコは?

チームは軽く部屋を捜索する。宝石ネコの姿はない。

オルフソン: 収容するチャンスを逃したらしい…

スミス: 仕方ありません、考え続けましょう。

チームは室内を歩き回り続ける。オルフソンは壁の象形文字を読み返す。

オルフソン: もしかしたらここに手掛かりがあるかもしれない。きっと“食神讃歌”3はこれと何の関係も無いよね?

スミス: 無いことを願いたいです。

モハメド: 本当に疑問なのは、“非人間”、“特異な建造者”というフレーズだ。

オルフソン: まさか、例の馬鹿馬鹿しい古代宇宙人説と関係があるとでも?

モハメドが立ち止まり、宙を見つめる。何かを閃いたように見える。

オルフソン: いや。その通りだなんて言わないでください。

モハメド: 答えが出たぞ!

スミス: 宇宙人だなんて言わないでください、お願いです -

モハメド: 違う。

スミスとオルフソンが大きな溜め息を吐く。

モハメド: 彼らはピラミッドを超自然的なものだと思わせたかったんじゃないか?

スミス: は?

オルフソン: そういうことか!

スミス: え?!

オルフソン: 古代人はピラミッドがどう建造されたかを偽ったに違いない! 彼らはその起源を余所者には謎のままにしておきたかったんだ。

モハメド: 私もそうだと思う。エイリアンがピラミッドを建てたという陰謀論を展開する以上に相応しいやり方があるか? ファラオの墓所なのだから、ある種の超自然的な雰囲気を漂わせるのは妥当だろう。

スミス: でも、それではこれの説明が付きません。

スミスは身振りで黄色の球体を指す。

スミス: この大きなボールはどういう関係があるんですか?

モハメド: それは私にも分からない。非常に強いミーム擾乱を引き起こしているから、ある種の媒介物には違いないんだがね。

チームは10秒間沈黙する。

スミス: …一つ思い当たりました。この球体が、あなたの仰った陰謀論を永続させています。

オルフソン: えっ、つまり、こいつが古代宇宙人説を集合ミームスフィアだかなんだかに埋め込んでいるのかい?

モハメド: 恐らく。ネジェムは“ラー”に言及したから、古代エジプト人は太陽神ラーの力を流用したのかもしれない。その結果が今目の前にある球体だ。

スミス: でも、どうして? 起源を謎のままにして、彼らがどんな利益を得るって言うんでしょう。

モハメド: 観光だ。

オルフソン: そうか! ネジェムはお金に関する言葉に沢山言及したし、“未来”や“訪問者”とも言った。

スミス: 何か掴めた気がします。古代人はピラミッドの起源を余所者に隠し続けることで、人々が調査に訪れるように仕向けたんですね。

モハメド: あらゆる者に謎を残すことはできなかったのだろうな。だから陰謀論に落ち着いた。

オルフソン: 随分とまあ長い目で計画を立てたもんだ。

モハメドはイヤーピースに触れる。

モハメド: 司令部、そろそろ外に出る準備が整ったと思う。サイトに戻り次第、調査結果の報告書を提出する予定。退出許可を求む。

司令部: 許可する。よくやってくれた。

モハメド: 了解、ありがとう。

モハメドがチームに顔を向ける。

モハメド: さあ、出発時だな。考えるべきことが山ほどできたぞ。

スミス: 全くですよ!

オルフソンがネジェムを抱え上げ、キスする。

オルフソン: 今日はとっても頑張ったねえ!

彼はネジェムをペットキャリーに戻し、蓋を閉じる。

オルフソン: よーし、準備万端だ。


[記録終了]

この相関関係の発見に続いて、問題の部屋は石灰岩で再び封印されました。全ての主要な研究機関には、新たに配置された石灰岩と周囲の石材の年代不一致を暴露しないように緘口令が敷かれています。ミーム部門は、研究チームが提示した理論について更なる調査を実施し、正しい説だと結論付けました。現存する他の陰謀論と、ミームスフィアにおけるそれらの存在についての調査が進められています。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。