SCP-7007


評価: +10+x


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SCP-7007。


特別収容プロトコル:

SCP-7007はサイト-43の大容量データストレージ施設1号に保管されます。SCP-7007の視聴は、サイト管理官マッキンスの明示的な承認を得て、厳格な制限下で行う必要があります。

如何なる状況でも、監督評議会のメンバーがSCP-7007を視聴する、またはその存在について通知されることは認められません。SCP-7007の内容へのアクセスは、審査のために特別に許可された職員に限定されます。当該アノマリーに関する一般知識の公開は、財団職員に対しても抑制されます。

説明:

SCP-7007はGOI-5889 (“ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディア”) がスポンサーとなって配信したゲームバラエティ番組 “ミスフォーチュン・ゴージ” のある放送回を絶え間なく再生し続けているブラウン管テレビの指定名称です。シリーズ物として確立された番組からの抜粋のようですが、他の放送回への言及はデータベース上に発見されていません。

録画には一貫して画質の劣化、スノーノイズ、短時間続く映像の歪みが見られます。しかしながら、音声は1990年代の録音技術と一致します。これにも拘らず、ミスフォーチュン・ゴージのオープニングクロールには、この放送回が観客のいるライブスタジオで撮影されたという主張と、2022年に配信されたことを示す著作権情報が含まれます。1 SCP-7007に動画ファイルを保存した形式や技術は判明していません。テレビは標準的な製品らしく、分解しても、動画ファイルの保存機能を説明付けられる明白な改造は確認できません。SCP-7007は動作維持のために電流を必要とせず、再生中に人間が収容区域内に入ると、番組をリセットして最初から再生し始めます。

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SCP-7007と共に配送された印刷物

SCP-7007の内容を見た人物は、43分の再生時間中に描写された全ての信憑性を確信します。この確信は視聴者の言動に予測可能な影響を及ぼし始めます — 即ち、視聴者は一連の出来事が実際に発生したと信じ、それに従って反応します。記憶処理は視聴者に対して効果が無く、研究者たちはこの番組の記憶が事実上永続的なものだと仮定しています。この異常性は番組の書き起こしを印刷物形式で読んだだけでも発現します。

発見: 2022年9月25日、SCP-7007は、エリア-32から高度保安プロトコルに従って移送されたことを示すラベルが貼られた、財団支給品の人工物確保ケースに収められた状態で、サイト-43に届けられました。マッキンス管理官はエリア-32からのアノマリー移送に不信感を抱き、小包の検査を命じました。超音波解析の結果、対象物は1980年代後半のテレビセットであることが判明し、小包の内部から音声が発せられているのも確認されました。マッキンス管理官とリリハンメル博士立会いの下、小包は開封され、以下のメモと、当ファイルに添付された印刷広告が共に見つかりました。2

ウェトル博士へ

同封した番組をレビューしていただけると嬉しいです。あなたの組織はかなり大規模なので、果たして財団内の観点からこの番組が成り立つかどうか、ベータ版の視聴者からのフィードバックを得たいと思っていました。

報告は気にしなくて結構です。動画からお分かりの通り、O5評議会は既に十分承知しています。なので、今のところは我々だけの秘密にしておきましょう、この番組にはサプライズであってほしいので!

宜しく、

ヴィキャンデル=ニードの友人たちより


財団記録・情報保安管理局より通達

最も強力な記憶処理薬でさえ有効ではないことが示されているため、当ファイルのこれ以上の閲覧は推奨されません。自己責任でお読みください。もしあなたがまだ内容を把握していない場合、マッキンス管理官に直接セキュリティ違反を報告してください。

警告を理解した上で読み進めてください。

— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ



補遺 7007.1 – ミスフォーチュン・ゴージの書き起こし:

以下は唯一既知のミスフォーチュン・ゴージの放送回の書き起こしである。

[番組は砂漠地帯の荒廃した都市の空撮映像から始まる。建物の間で多数の火が燃え、煙でスカイラインが半ば遮られている。“ミスフォーチュン・ゴージ”というタイトルカードが映像に重ね掛けされる。視点は降下し、アスファルト舗装された広い駐車場に堆積している砂漠の砂で構成された広大な空き地へと入る。駐車場には破壊された自動車や乾燥した人間の死体が散乱している。視点が駐車場を横切って大きな建造物に入ると、明かりが徐々に暗くなり、やがて画面は完全な黒一色になる。]

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[ドラマチックな器楽曲が音量を増し、やがて盛り上がりと共にタイトルカードが薄れて、番組の司会者 ジェレミー・キンケイドのクローズアップに切り替わる。彼は紅白チェック柄のスーツジャケット、幅広の黒いネクタイ、黄色の襟付きシャツ、赤いスラックスを着用している。血の気が無い灰色の皮膚で、両目からは常に黒い油質の涙が流れている。彼はカメラに向かって微笑む — 歯は血まみれで黄ばんでいる。彼は約45cmある細長いマイクを持っている。]

キンケイド: 本日もまた、絢爛豪華なるゲームバラエティ、“ミスフォーチュン・ゴージ”へようこそ! この番組では、出場者たちが知恵を絞り、努力して身につけた生活技能を駆使して、生死をかけた熾烈な競争に挑みます!

[キンケイドの紹介と共に盛大な拍手が始まるが、彼が話し終えると静まり返る。視点が前に出てキンケイドの顔を大写しにする。彼はウィンクし、油質の液体がジャケットとマイクに飛び散る。]

キンケイド: ああ、落ち着いてください。冗談です!

[観客の笑い声が聞こえる。3 笑い声に混じってノスリの鳴き声が聞こえる。時折、ステージの上を影がよぎり、鳥が旋回していることを示す。]

キンケイド: 技能は一切関係ありません! ここは“不運の峡谷”ミスフォーチュン・ゴージ、勝利の女神があなたに微笑- [耳に手を当てる] あ? 嘘だろ、ジェリー。なんでだ?!? うんうん。うんうん。あぁ。成程。そりゃ残念。スローガン新しくしとくわ。 [咳払い] Y que las probabilidades estén siempre a tu favor! この放送回は — 全ての放送回と同様に — ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディアが皆様にお届けしております。より良い明日TMのために。4

キンケイド: このミスフォーチュン・ゴージでは、公明正大な競争を信条としております。我々の出場者たちの額に光る汗や功績は、縁故主義や世界的な陰謀といった厳しい道のりを経て得られたもの。その通り! 本日の出場者は全員、皆様お気に入りの圧政大好き秘密組織、SCP財団の職員です! [小声で] それとも確保収容保護財団? 正直言ってそっちのがヤバそうな響きですよな。前者でやっていきましょう。

[視点がズームアウトしてステージを映す中、キンケイドは劣化した錆色の重々しいカーテンへと歩み寄る。]

キンケイド: 我々が観客と呼ぶところのイロモノ、ゲテモノ、そして栄光ある消費者の皆さん、今回の出場者たちはこちらです。

[以下の画像が画面に表示される。]

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[画像が薄れて、カーテンが引かれ、紹介された3名が現れるが、エージェント エコーは武器を所持していない。3名全員が困惑した様子で素早くステージを見渡す。]

キンケイド: ラッキーな出場者たちと知り合いましょう! O5-7、自己紹介をどうぞ。

O5-7: マージョリー・ゴンザレス、財団のO5-7よ。

[O5-7は話しながら目を見開く。彼女は恐怖の表情で他2名の出場者を見る。]

キンケイド: ではマージョリー、あなた自身について軽く教えてください!

O5-7: 私は監督評議会に10年以上所属している。私はこの組織のために全てを犠牲にした。夫と7歳の息子を捨ててこの地位を取った。彼らは記憶処理されて、私はもう死んだと思っているわ。息子は最近高校を中退してヘロインを吸い始めた。

[O5-7はスピーチの途中で自らの口を塞ごうと試みるが、腕が上がり切らず、そのまま話し続ける。]

キンケイド: おやおや! 今まで彼らに連絡を取ろうとしたことは?

O5-7: 一度も無い。

[O5-7は目を細め、歯軋りしながら最後の一言を発する。]

キンケイド: お似合いじゃないですか! 宜しい、あなたの話はここまでにしましょう。エージェント エコー、調子はどうです?

[O5-7は話すように口を動かし続けているが、音が出てこない。エージェント エコーはショックを受けた顔でO5-7を見つめるが、話し始める。O5-7は叫んでいるように見える。]

エージェント エコー: 実はよく分からない。財団には結構前から所属しているはずだが、後になって記憶処理を受けたミッションがかなりあるから、3年かもしれないし、3週間かもしれない。

キンケイド: うーん、それは困りましたねぇ。今夜はあなたにも楽しんでいただきたいものです、そうでしょう皆さん?

[盛大な拍手が聞こえる。]

キンケイド: ところでマージョリー、あなたはエコーの苦境に何かしら光明を見出せませんか?

O5-7: [顔をしかめる] 精神療法に金を費やすよりも、記憶処理の方が安いし効果的なのよ。

キンケイド: ほほぅ、それは興味深い! どう思います、エコー?

[エコーはO5-7を凝視する。O5-7は視線を避ける。]

キンケイド: 彼は唖然として言葉が出ないようです、皆さん! マージョリー、他には何か?

O5-7: 私たちはエージェントを最大効率で働かせる必要があるけれど、彼らは数多くトラウマを経験する。言うまでもなく、アノマリーを収容するにあたって、倫理的に問題のある行動を取るように要請される場合もある。だから誰にとっても記憶処理が一番なのよ。そうすれば彼らはまだ役立つ。

[O5-7はキンケイドに向かって中指を立てるが、映像ではモザイク処理されている。]

キンケイド: ちょっとちょっと、やめてください! ミスフォーチュン・ゴージは家族向け番組なんですから!

[観客がブーイングし、O5-7は観客にも中指を立てようとする。画面外に視線を向けた彼女は一歩後ずさり、口を大きく開ける。エージェント エコーは身体の横で拳を握りしめ、O5-7を凝視している。]

キンケイド: そして最後の出場者! クライナー博士、自己紹介をどうぞ。

[話しかけられるまで、この研究員はキンケイドや出場者仲間にほとんど関心を払っていない。彼女は集中した様子でステージを見回している。彼女は観察を止めようとしないが、キンケイドには応答する。]

クライナー博士: イザベル・クライナー。研究員、セキュリティクリアランスレベル4。サイト-19。

キンケイド: うーん、愉快な人たちがいっぱいですねぇ?

[観客が約3分間笑い続け、キンケイドが腕を振って黙らせる。]

キンケイド: しかし真面目な話、イジー、ここに来られて嬉しくありません? 興奮してます?

クライナー博士: あなたは意に反して私たちを連れてきて、異常な手段で機密情報の漏洩を強制してる。だからこれを嬉しいとは言えないよね。興味があるかって訊かれたら、勿論。職業的な観点から言うと、ここにどうやって来たかは分からないし、是非知りたい。

キンケイド: おお、どうやらこの方は優勝候補のようです!

[スラックスにボタンダウンシャツをたくし込んだ中肉中背の中年男性が、カーテンの裏から姿を現す。男性は困惑した表情で必死にステージを見回す。]

ケビン: 何だ?

キンケイド: えっ-

ケビン: お前っ!

[男性5はキンケイドを指差し、彼に向かって歩き出す。]

ケビン: またお前の仕業だったのか!

キンケイド: あーはいはい、今思い出しました。待って、君はいったいここで何をしてるんです?

ケビン: こっちの台詞だ!

キンケイド: あのねぇ、君のおかげで文句なく面白いはずの放送回が台無しになってるんですよ!

ケビン: 俺はこんな場所にいたくないし、特にお前なんかには絶対会いたくなかった!

O5-7: もしそちらに対処する必要があるなら、私たちはお邪魔せずに帰-

キンケイド: ナンセンス! 撮影後にカットします。 [耳に指を入れて小声で話す] ふざけんなよ、ジェリー? 警備員呼べ。

ケビン: 聞こえてるぞ。

キンケイド: 聞こえてないでしょ! ガスライティングはやめなさいよ、ケビン! とにかく、ここで一旦…


スポンサーの皆様からの御言葉




第二部

[映像がフェードインすると、出場者3名全員が名前の書かれた演台の後ろに立っており、キンケイドがカメラに顔を向けて彼らの前を歩いてくるのが映る。]

キンケイド: 皆さん、人生が天秤にかけられるゲームバラエティ、ミスフォーチュン・ゴージにおかえりなさい! ご心配なく、単なる言葉の綾-

ケビン: 嘘つけ。

[ケビンは出場者たちの背後をうろつき、出口を探している。]

キンケイド: 出てってください。

ケビン: どっかに峡谷ゴージがあるんじゃないのかよ。

キンケイド: 黙れ、キース。

ケビン: 俺は出場者ですらないんだぞ! 何故ここにいるかさえ分からない。

キンケイド: 私もですよ、ブライアン。帰ったらどうです?

ケビン: お前が俺を家から連れ出したんだ。またしてもな!

キンケイド: 些細な事、些細な事。さぁ、司会に戻っても構いませんかね?

[ケビンは軽蔑的な身振りで手を振る。]

キンケイド: どーも。 [出場者3名に向き直る] ではっ! 最初のゲームについてご説明します!

クライナー博士: あなたって割と苦手なんだね、司会。

O5-7: 全くだわ。

キンケイド [溜め息] オーケイ、とっとと始めましょう。

[画面が暗転した後、短時間、以下の画像が表示される。]

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キンケイド: 皆さん、ご唱和ください!

[数千人が聞き取れない声で呟くのが聞こえる。]

キンケイド: その通り! “その暴虐の名を当てよ”ネーム・ザット・アトロシティ

[出場者たちの入場地点でカーテンが引かれ、巨大なプロジェクタースクリーンが現れる。]

キンケイド: さて、これからお三方に幾つかの画像をお見せします。我々が何を見せているのか最初に気付いた方は、ボタンを押してお答えください。

O5-7: [ボタンを押す] 時間の無駄。

キンケイド: あなたがそんな事を言うとは面白い、このコーナーはあなたとエージェント エコーにとって特に興味深いものになるはずですよ!

エージェント エコー: 俺はさっさと帰りたい。

ケビン: みんなそうだろ。

キンケイド: あいつにマイクを渡したのは誰だ、ジェリー? オーケイ! レッツゴー!

[炎上するショッピングモールの画像が画面に表示される。]

エージェント エコー: ジャージーシティか? 俺はここにいた覚えがあるぞ。

O5-7: そうよ。

[O5-7はキンケイドを睨みつける。キンケイドは彼女にウィンクする。]

エージェント エコー: いつ?

O5-7: 2ヶ月前。

キンケイド: 彼はそこで何をやってたんでしたっけ、マージョリー?

[O5-7は溜め息を吐き、肩をすくめる。]

O5-7: あなたはマズい結果に終わった収容作戦に派遣された。私たちは厳しい決断を迫られたわ。

キンケイド: 婉曲表現は認めませんよ!

エージェント エコー: マズい結果とは?

クライナー博士: そのお芝居は純真さを見せつけてるつもりなの、エコー? 民間人が死んで、私たちは町に勤める警察部隊と救急隊員の半数を記憶処理しなきゃならなかった。収容でマズい事態が持ち上がったら、それが何を意味するかなんて分かり切ってるでしょ?

エージェント エコー: ああ… 何人死んだ?

O5-7: 15人。

エージェント エコー: 何故俺はそれを覚えていない?

[クライナー博士は呆れた表情で呻く。彼女はボタンを押す。]

クライナー博士: ファストフードレストラン“スバーロ”の店舗1棟と民間人15名の乳状化を引き起こし、財団が隠蔽を余儀なくされた未登録アノマリーの収容失敗。

キンケイド: “その暴虐の名を当てよネーム・ザット・アトロシティですよ、博士。

O5-7: オペレーション・ムーン・ヒッツ・ユア・アイ。

[キンケイドが笑う。]

キンケイド: めちゃめちゃ面白いじゃないですか、皆さん?

[観客が拍手する。]

キンケイド: マージョリーに1ポイント! ボーナスを差し上げましょう、エコーの部隊からは何人の犠牲者が出ましたか?

O5-7: [目を閉じる] 3人。

キンケイド: そして?

O5-7: うち1人は彼の婚約者だった。

エージェント エコー: 俺には婚約者がいたのか?

キンケイド: もういません!

[観客が笑う。]

キンケイド: 次の画像です!

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[簡潔にまとめるため、16分の映像を省略。表示される画像は全てエージェント エコーの担当ミッションであり、成功例もあれば失敗例もある。いずれも著しい人命の損失を伴なっているか、エージェント エコーが精神的外傷を負っている。3枚目の画像以降、エコーは話さなくなる。コーナーの終了時までに、O5-7は3ポイント、クライナー博士は2ポイントを獲得している。]

キンケイド: 宜しい、このコーナーの勝者はあなたです! ジェリー、マージョリーに賞品を見せてやってくれ!

[カーテンが勢いよく閉まってプロジェクタースクリーンを覆い隠した後、再び開くと、水で満たされた大きな水晶のボウルがある。数十匹の溺死したコガネムシが水中に浮かんでいる。]

O5-7: あなたは水中の虫に見覚えが-

キンケイド: おっとっとっと! ダメですよ、番組が著作権違反で打ち切りになったら大変! 次に移ります!


コマーシャル休憩!


第三部

キンケイド: おかえりなさい。皆さんが我々にお金を払ってくれたおかげで、もしかしたら我々も出場者に幾らか出演料を出せるかもしれません! 次のゲームに移りましょう!

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[錆色のカーテンが引かれると、少なくとも直径3mで、1から7までの番号が振られた均等なマスに分かれている大きな回転円盤がある。]

ケビン: ホイール・オブ・ケビン?! どういうことだ、俺の名前をまともに覚えてないくせに、ゲームには俺の名前を付けるのか?

キンケイド: 君が誰なのかなんて見当も付きませんな。警備員!

[円盤には、イエス・キリストの肖像と似た容姿の、茨の冠を被った人間の死体が十字磔にされている。]

ケビン: こいつは俺じゃない。

キンケイド: その通り、これはイエス様です。誰が君なんかを唯一真なる救世主と見間違えますかね? あと、失せなさい!

ケビン: でもこれはホイール・オブ・ケビンなんだろ。

キンケイド: 何を言いたいのか理解できません。

[O5-7が咳払いする。]

キンケイド: はい?

O5-7: 一晩中ここで過ごさなきゃならないの?

キンケイド: 多分!

[キンケイドはカメラに向き直ってウィンクする。観客が笑う。]

キンケイド: オーケイ、それではこのゲームのルールを説明します。

[キンケイドは回転盤に歩み寄る。]

キンケイド: この円盤を回すごとに、特定のチャレンジに応じたポイントを稼ぐ機会が与えられますが、ご用心! 円盤のマスにはペナルティを課すものもありますよ!

ケビン: ふん、そりゃ面白そうだな。

キンケイド: 帰ってくれます?

ケビン: 俺もそうしたい。

[キンケイドは頭を左右に振り、出場者たちに向き直る。]

キンケイド: エージェント エコー、あなたからです!

エージェント エコー: 分かった…

[円盤が回り始めると、死体の片腕が伸び、円盤の各マスの中心から突き出た棒にぶつかる。円盤から血しぶきが飛び散り、出場者たちにかかる。]

クライナー博士: どうしてゲームに挑まなきゃいけないかすら分からない。

キンケイド: 他にどんな選択肢があります? それに、こんなに豪華な賞品を獲得するチャンスを前にして、己の運命を試してみたくない人はいないでしょう?

[カメラ視点が回転し、幾つかの賞品6が展示されているステージの反対側にズームインする。カメラは減速し始めた円盤に視点を戻し、キリストの手は2番マスの棒に収まる。棒は死体の手首に空いた穴に完璧に嵌まり込んでいる。]

キンケイド: あーっと! どうやらペナルティマスに当たってしまったようです!

エージェント エコー: 何ポイント失うんだ?

キンケイド: ゼロ! ここに書いてあるでしょう、“お前は番組中のある時点で刺される”って。お楽しみに!

[O5-7が呆れ顔になる。]

エージェント エコー: この番組はどうなってるんだ?

ケビン: 地獄だぜ。

キンケイド: 全くどうもなってません! [目を細めてケビンを見る] 彼のことは気にせずどうぞ。オーケイ、マージョリー、あなたのターンです。

[簡潔にまとめるため、14分の映像を省略。O5-7が3番マスに当たると、キンケイドは“破産!”と叫び、彼女のポイントは全て失われる。クライナー博士は“後ろを見るな”と書かれた7番マスに当たり、0ポイントを獲得する。7 エージェント エコーは5番マスに当たり、“ケビンに石を投げろ!”というチャレンジを提起される。小さな石がエージェント エコーの演台に出現するが、彼は従うのを拒否したため、ポイントを得られない。]

キンケイド: 宜しい、クライナー博士、あなたの番です!

[円盤が回転し、キリストの手が1番マスに止まる。]

キンケイド: このカップに血を注いだら2ポイント!

[果物ナイフと発泡スチロールカップがクライナー博士の演台に出現する。彼女はナイフとカップを持ち上げて調べる。]

キンケイド: どうしました? 自分の手で汚れ仕事をするのには、それほど心惹かれませんか?

[クライナー博士はキンケイドを睨みつけ、彼にナイフを投げ付ける。ナイフはクライナー博士の指先を離れると消失し、演台に再度出現する。キンケイドは微笑み、指を前後に振る。]

キンケイド: あなたの勇気には感服しますが、そう上手くは行きませんよ。ほらほら、軽い流血沙汰に抵抗があるわけじゃあるまいし。誰のために働いてるんですか!

[クライナー博士はエージェント エコーに歩み寄り、彼の前腕を斬り付ける。エコーは叫び、クライナー博士を押し退ける。]

エージェント エコー: イカレてんのか、あんたは?

クライナー博士: 早く勝てば早く帰れる。私はヴィキャンデル=ニードの報告書を読んだ。奴らは人殺しはしない。そうでしょ?

[キンケイドは微笑み、首を左右に振る。カメラが出場者たちの背後に立つケビンにズームインする。]

ケビン: あー…

キンケイド: 無視。

[キンケイドは、エコーが投げるのを拒否した石をケビンに投げ付ける。]

クライナー博士: 今は私がリードしてるから、このまま無傷なら一番勝率が高い。あなたはこの程度の傷を負っても恐らく動けるだろうから…

[クライナー博士は発泡スチロールカップを差し出す。エージェント エコーは悪態を吐き、腕を差し伸べて傷口からカップに血を注ぐ。キンケイドが突然画面外から現れ、発泡スチロールカップを掴んでひっくり返し、血液が彼の両目に滴る。血液はキンケイドの目から流れる油質の黒色物質と混ざり合い、錆茶色に変色する。番組が終わるまで、物質はこの色を維持する。]

キンケイド: [満足げな溜め息] ああ助かった、すごく目が渇いてたんですよ。

[クライナー博士は後ずさりして演台に戻る。彼女の名前の下にある表示が3ポイント増え、合計5ポイントになる。]

[キンケイドはカップの中に指を走らせ、エコーの血液の残渣を自らの目の中に擦り付ける。彼は円盤正面の立ち位置に戻る。]

キンケイド: さぁ! マージョリー!

O5-7: 私には肩書があるの、せめてそちらを-

キンケイド: あなたの肩書はマージョリーです。

[円盤が回転し始める。]

キンケイド: ああ、これは失礼、あなたが偉大な使命のために家族を犠牲にしたのを忘れてました。暗闇の中の化け物と戦うためにね。オー・ファイブ・セヴン! 重要な決断を下す偉大な指導者! 悍ましいアノマリーどもを収容する者! セ~ジョ~セ~とやらの保全者。

[円盤の回転が止まり、今や打ちのめされて変形したキリストの手が4番マスを指す。]

キンケイド: さぁ来た! 心の準備は宜しいですか?

[O5-7は腕組みをする。]

キンケイド: どうして息子さんを見捨てたのか、彼に説明しなさい!

O5-7: は?

[カーテンがまたしても開き、薄汚れた服装と髪の10代の青年が現れる。彼の目の下には隈がある。]

O5-7: キャス?

キャスピアン・ゴンザレス: 母さん? どういう事だよ!

キンケイド: どうぞ、説明してください!

O5-7: 私は仕事に専念する必要があった。とても重要な仕事にね。

[観客がブーイングする。]

キャスピアン: でも本当に俺たちを捨てなきゃいけなかったのか? 秘密にしておくだけじゃダメだったの?

O5-7: 気を抜くわけにいかなかった。もし目を離せば、私は地位を失い、世界は苦しむ。

キャスピアン: でも、あなたは俺の母さんじゃないか。俺には母さんが必要だった。

O5-7: 財団はそれ以上に私を必要としていたわ、キャス。

キンケイド: 本当に?

O5-7: まぁ違うけど、私はそもそも母親にはなりたくなかったのよ!

[発言後、O5-7の口が呆然と開く。彼女は意気消沈した様子で目を逸らす。]

キンケイド: 素晴らしい! マージョリーに3ポイント!

[観客が拍手する。]

ケビン: ケッ、相変わらずのクズだな。

キンケイド: そうですとも!


金儲けタイム!


最終部

[直前のコマーシャルから画面が切り替わり、ステージの床にあぐらをかいて座るキンケイドが映る。茶色の油性物質は彼の周囲の床に溜まり、目からシャツを伝って膝に流れ落ちている。出場者3名は半円を描くようにキンケイドと向き合っているが、立っている。ケビンは画面隅に置かれた簡素な木製の椅子に縛り付けられ、口には布の猿轡を噛まされている。ケビンは椅子に座ったまま前後に身体を揺らしている。]

キンケイド: おやおや、観客の皆さんがお戻りです! お会いしたかったですよ。

O5-7: [鼻を鳴らす] 観客。

キンケイド: はい?

O5-7: どの観客?

キンケイド: [カメラを指差す] あちらの観客です。

[O5-7はカメラに近付き、回転させる。8 撮影地点はアメリカンフットボール場サイズの闘技場である。客席には少なくとも数千人が座っている。最も近い席を映しながらカメラ視点が横方向に移動する。どの席にも様々な程度に腐敗したヒト型の死体が座っている。]

キンケイド: 止めろっ!

[カメラが再び回転してステージを映し、キンケイドはO5-7を元の立ち位置へ誘導する。]

キンケイド: 彼らはシャイなんです。

[キンケイドはカメラにウィンクする。]

キンケイド: さぁさぁ、番組の最終部に挑む覚悟は宜しいでしょうか?

クライナー博士: ああ良かった。さっさと終わらせよう。着手すべき研究が待ってる。

エージェント エコー: そうだな、俺もうんざりだ。

キンケイド: ほう? おお、成程! 帰って重要な仕事を済ませ、記憶を消されたいと! 楽しみですねぇ。

[エージェント エコーは眉をひそめるが、応答しない。]

O5-7: オーケイ、もう十分でしょう。彼を放っておいて。

キンケイド: つい先程までの子育て精神は何処に消えたんです?

O5-7: さっさとゲームの内容を教えなさい。

キンケイド: はいはい、了解です。実は私のお気に入りでしてね! その名も…

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キンケイド: オーケイ! 準備は宜しいですか?

クライナー博士: ルールは?

キンケイド: 私が思い浮かべている数字を当ててください。

O5-7: 馬鹿馬鹿しい。

キンケイド: とんでもない。同じ挑戦を仕掛けたバラエティゲーム番組を1つでも挙げてごらんなさいよ。どうぞ、待ってあげますから。

エージェント エコー: 一本取られたな。

[キンケイドはエコーに歩み寄り、平手で背中を叩く。エコーの制服には錆色の手形が残る。]

キンケイド: ありがとう、我が友よ!

[ケビンは椅子の上でもがき、クライナー博士の注意を引き付けるのに成功する。彼は頭の動きで束縛を示す。クライナーはケビンを見つめた後、キンケイドと他の出場者たちに向き直る。]

クライナー博士: 分かった。さっさと始めよう。

[ケビンの低い呻き声が一瞬聞こえるが、観客の拍手にかき消される。]

キンケイド: オーケイ! 数字は1から10の間。エコー、あなたが最初です。ゴー!

[エージェント エコーはただ顔をしかめる。]

キンケイド: 数字を。1つ。とっとと。選べ。

エージェント エコー: あー、4。

キンケイド: ふぅーむ。いえ、違いますね。

エージェント エコー: だからどうした?

キンケイド: その意気です! マージョリー?

[O5-7が溜め息を吐く。ケビンが再び背景で静かに呻き始め、クライナー博士は彼に顔を向ける。]

O5-7: 8。

キンケイド: 大外れ! オーケイ、博士? あなたのターンです。

[クライナー博士はケビンを見つめている。彼女の顔に容易に読み取れるような感情はない。]

キンケイド: [耳に触れる] ジェリー、ジョージを裏に連れてってくれないか?

[ヒト型の暗闇がケビンを舞台袖へと引きずり始める。]

キンケイド: あー、クライナー博士?

[クライナー博士はケビンから顔を背け、キンケイドに向き直る。]

キンケイド: ワオ! 何が起きても動じないんですねぇ? あなたの予想は幾つですか? あなたはマージョリーと同点なので、もし当たらなかったらまたやり直しになっちゃいますよ!

クライナー博士: 7。

[出場者たちの上から紙吹雪が降り注ぎ始め、クラクションが鳴り響き、トランペットがファンファーレを奏でる。]

キンケイド: 正解です!

O5-7: ふざけないで。

キンケイド: 文句、文句、文句ばかり。今度は何でしょう?

O5-7: あなた、どうせ数字を思い浮かべてさえいなかったんでしょう。勝たせたい出場者を選んだだけ。

キンケイド: 全く以てその通り。

O5-7: 本気で言ってる?

キンケイド: どうしました? ゲームで遊びたいのはご自分が結果を操作できる時だけですか? ゴールデンタイムの冠バラエティ番組を持つという男の夢を潰す時しか幸せを感じないんですか?

O5-7: 何の話をしてるわけ?

キンケイド: そもそも何故あなたはこんな事をするんですか? 暗闇で死ぬ云々のナンセンスは抜きでお願いしますよ、レディ。何故全てを収容するのに拘るのですか? 私はあの番組で何年も働いてきたんです。腐れ外道のあなた方が下した単純な決定1つで、何もかも水の泡。だから教えてくださいよ、どうして悪夢ではないものまでも封じ込めるのですか? 戯言はもう懲り懲りです。

O5-7: 私たちは長年それを続けてきたから、他に存在する術を知らないのよ。それに手放したくないしね。

キンケイド: 何を?

O5-7: 制御力。組織名を読めば分かるでしょ、いい加減にしてちょうだい。もし制御すべきアノマリーがもう存在しなくなったら、私たちは今持っているものを失うことになる。

クライナー博士: わぁ感動的。もう帰っていい?

[キンケイドはエコーとO5-7を指差し、指を弾く。]

キンケイド: 彼らはね!

[黒い汚泥で構成された触手がステージの床から伸長し、エコーとO5-7の周囲に巻き付いて、床に空いた穴の中へと引きずり込む。]

クライナー博士: ねぇ聞いて。あなたがあいつらをどうしようと、どうでもいい。でも私は家に帰る。

キンケイド: 賞品は要らないんです?

クライナー博士: どうでもいい。

[キンケイドが再び指を弾くと、全ての賞品が2人の正面に並べられる。彼が紙袋に近付いて持ち上げると、紙袋は茶色の液体に覆われた指でますます汚れる。この時点で、判別できるキンケイドの外見的特徴は鈍い黄色に発光する目だけになっている。]

[彼はクライナー博士に歩み寄り、紙袋を手渡す。彼女はキンケイドが触れた後の残渣を避けようとしつつ、恐る恐る紙袋を開ける。彼女は皺だらけの紙束を引っ張り出す。それを見た彼女は、目を大きく開いてカメラを見上げる。]

キンケイド: ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディア企画・統計部との独占雇用契約! サイン済みです!

[クライナー博士は半狂乱で最後のページまでめくっていく。]

クライナー博士: ちょっと、これって私の署名だよね。こんなのにサインした覚え無い!

キンケイド: サインしたことにいずれ気付くでしょう。

[キンケイドは腕を大きく広げてカメラに向き直る。茶色の液体のしぶきがクライナーにかかる。]

キンケイド: さぁて、本日はここまでです、皆さん! ミスフォーチュン・ゴージ 終了のお時間となりました。楽しんでくださったなら幸いです、我々のクライナー博士はしっかり楽しんでくれたようですよ。ご心配なく、今後も彼女の姿を沢山目にすることでしょう! 彼女はVKTMの人材です。

クライナー博士: 冗談じゃない!

キンケイド: どうです、この覇気! 着手するのが待ちきれませんねぇ! 我々のスポンサー、ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディアに感謝申し上げます。より良い明日TMのために。おやすみなさい、アメリカ!

[エンドクレジットが流れ始めると、カメラはステージから後退する。クライナー博士が影によって舞台袖へと引きずられていき、それをキンケイドが追う。]


Misfortune


制作




キャスト

司会者
O5-7
エージェント エコー
クライナー博士
ケビン

撮影班

美術監督
キーグリップ
グラフィックデザイナー
照明制御
企画・統計
人形制作コンサルタント
音楽監督
編集監督
照明助手
キャスティング監督


Gorge


ヴィキャンデル=
ニード
テクニカル
メディア



ジェレミー・キンケイド
マージョリー・ゴンザレス
エージェント エコー
イザベル・クライナー博士
ケビン・フィルモア



ジェリー
ジェリー
ジェリー
ジェリー
イザベル・クライナー博士
ジェリー
ジェリー
ジェリー
ジェリー
ジェリー


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放送の再開前に映される最終映像は以下の通り。

VKTM-7000%20End%20Image.jpg


更新: (2022年7月30日) エージェント エコーはアイスランド、レイキャヴィークの路上に無意識で倒れているのを発見されました。本稿執筆現在、前任のO5-7だったマージョリー・ゴンザレスの行方は不明です。

ケビン・フィルモアは引き続きフェニックス警察署に勤務しており、上記の出来事に関する知識を有していません。

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