SCP-7073


評価: +28+x
アイテム番号: 7073
レベル2
収容クラス:
euclid
副次クラス:
{$secondary-class}
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
caution

Goose2.jpg

撮影者を攻撃しようとするSCP-7073。


特別収容プロトコル: SCP-7073はウィルソンズ・ワイルドライフ・ソリューションズへの移管手配中です。サイト-333の職員は、前述の移管手配を行うための関連連絡先情報が収納されていると思われる、ヴィンセント・ボハート管理官の卓上名刺ホルダーの捜索を推奨されます。名刺ホルダーの速やかな回収に対して5ドルの現金報酬が用意されています。

説明: SCP-7073は自らの近距離にある電磁スペクトル、主に電波に干渉する能力を有するガチョウ (Anser anser) です。SCP-7073は半径5m以内の無線通信の質を劣化させることが判明していますが、この歪曲現象を方向付け、マイクロ波や赤外線を含む他の電磁スペクトル帯域にも選択的に影響を及ぼす能力があると仮定されています。

SCP-7073はニュージャージー州アトランティックシティ (ネクサス-36) における通信技術障害の報告に続いて回収されました。SCP-7073は収容される8週間~12ヶ月前からアトランティックシティで活動していた疑いがありますが、ネクサスとしての特性 (“不運な”出来事の頻度の上昇) ゆえに、同地域の建造物や電子機器はたびたび通信不調や停電に見舞われるため、正確な期間は断定できません。サイト-333の職員は、ヴィンセント・ボハート管理官がそれと知らずSCP-7073を怒らせた結果、1週間にわたってサイト-333から退出する際に襲われかけ、それに伴って通信が毎回途絶したことから、SCP-7073の特異な異常性を認知しました。


補遺7073.01:

以下の書き起こしは、機動部隊イオタ-2 “浜鳥” によるSCP-7073捕獲試行の記録です。

SCP-7073回収記録

MTF イオタ-2 (“浜鳥”)


Van2.jpg

サイト-333機動部隊の隠密即応車両。


イオタ-2の隊員3名が車内に座っている。機動部隊長のジェシカ・アルノーは運転席、ジョン・ミラーは助手席、フランシス・ウェーバーは中央後部座席にいる。最後部座席は折り畳まれ、そこに大型犬用の檻が置かれている。機動部隊員たちにはサイト-333の保管ロッカーで発見された麻酔銃、捕獲棒、魚網が提供されている。

ミラー. 待てよ、クソッ。こっち側の車線だ! 左、左!

ジェシカ・アルノーがバンの急ハンドルを切ったため、フランシス・ウェーバーのシートベルトが外れ、彼は横に倒れて窓ガラスで頭を打つ。

ウェーバー: ぐぅっ、ファック。

アルノー: だからちゃんと締めろと言ったんだ。とりあえず、着いたぞ。

バンは放棄された農家の私道に駐車する。隊員たちは降車し、SCP-7073を追跡する用意を整える。

アルノー: 全員準備はいいか? マイクチェック。

様々な歪んだ音とフィードバックが聞こえ、20秒間にわたって強度を増す。

ウェーバー: あぁ、うるせぇな。今のは何だ?

アルノー: 忌々しいフィードバックループめ。この無線はいつのなんだ、60年代か? ちょっと間隔を空けよう。

チームは約20mほどの範囲に散らばる。

アルノー: オーケイ、もう一度だ。マイクチェック。どうぞ。

ミラー: こちら、聞こえてる。どうぞ。

約30秒の沈黙が続く。

アルノー: ウェーバー、いるか? どうぞ。

沈黙が続く。

ミラー: ボタンを押してないんじゃねぇか。

ミラー: どうぞ。

アルノー: ウェーバー、通信の際はボタンを押さなければいけない。どうぞ。

ウェーバー: あー、成程ね。今分かった。

アルノー: どうぞ。

ウェーバー: は?

ミラー: 通信終了時は“どうぞ”と言うんだよ。どうぞ。

アルノー: オーケイ、散開だ。ミラーと私は納屋を確認するので、ウェーバー、お前は農家に向かえ。もしガチョウを見かけたら伝えてくれ、鎮静しに行く。どうぞ。

チームは散開し、2棟の建造物へ向かう。その後10分間、アルノーとミラーは荒廃した納屋の中を捜索するが、特筆に値する発見はない。

アルノー: ふん、期待外れだったな。ウェーバー、そちらでは何か見つかったか? どうぞ。

反応は無い。

アルノー: 改めて言うが、ボタンを押さないと声が届かないぞ、ウェーバー。

ミラー: どうぞ。

アルノー: そうだった。どうぞ。

反応は無い。

ミラー: 無線の故障かな?

アルノー: その可能性はあるが、マイクチェックは行ったぞ。少し待とう。

1分が経過する。反応は無い。

アルノー: オーケイ、流石にこれは馬鹿げてる。携帯に電話しよう。

ジェシカ・アルノーは携帯電話を取り出し、フランシス・ウェーバーの番号に発呼する。発呼は直接留守番電話に繋がる。

アルノー: ジーザス。

ミラー: 電池切れか?

アルノー: まさか、あいつは車の中で音楽を流してたんだぞ。何かが起きているに違いない。

ジェシカ・アルノーとジョン・ミラーがお互いに向き合い、同時に口を開く。

アルノーとミラー: ガチョウ!

2名は足早に農家へ向かう。ドアに近付くにつれて、遠方からのくぐもった叫び声と掴み合いの物音が聞こえてくる。2名は玄関で立ち止まる。

アルノー: マイク — じゃない、武器チェック。

2名は麻酔ピストルにダーツを装填し、建造物に入る。内部は老朽化し、荒れ果てている — 落ち葉と瓦礫が床を覆い、多数の窓ガラスが割れている。2名が古びたキッチンを通り抜けた時、隣の部屋から大きな破砕音が聞こえる。

ジェシカ・アルノーとジョン・ミラーがダイニングルームに走り込むと、フランシス・ウェーバーがSCP-7073の首を掴んで立っている。SCP-7073は身をよじってウェーバーをつつき、噛みつき、引っ掻こうと試みている。ウェーバーの身体は多数の小さな引っ掻き傷や正体不明の染みに覆われている。ウェーバーが入室したアルノーとミラーに顔を向けると、SCP-7073は一瞬の隙を突き、彼を翼で殴打する。ウェーバーの把握が緩み始める。

アルノー: 撃てェ!

アルノーとミラーはSCP-7073に発砲する。同時に、SCP-7073はウェーバーを押し退け、ダーツを回避しようとする。片方のダーツは危害を加えることなくダイニングテーブルに当たって跳ね返り、もう1発はウェーバーの上腿に命中する。彼は悲鳴を上げ、SCP-7073を手放す。

ミラー: クソッ、フランシス。大丈夫か?

ウェーバーは不明瞭に発声する。アルノーは麻酔銃を落として捕獲棒を伸ばし、先端のループをSCP-7073の首にかけようと試みる。アルノーは最初の一撃を外し、SCP-7073は彼女に向かって突進する。

ミラーはバッグから魚網を引き出し、投げてアルノーとSCP-7073の両方に被せる。SCP-7073は飛んで逃げようとするが、更に網に絡みつく。アルノーは網から身体を振りほどく。

SCP-7073は繰り返し噛みつきや逃走を試み、絶え間なく鳴き続けるが、隊員3名はどうにかSCP-7073を鎮圧し、待機中の車両へと運ぶ。鎮静剤の影響が出始めたため、ウェーバーは顕著に無気力になる。SCP-7073を犬用の檻に押し込んだ後、隊員たちはバンの座席に倒れ込むように座る。

ウェーバー: なぁ、気分が悪くなってきた。なんか…

ウェーバー: しまった、無線を置きっぱなしだ。誰か取って来てくれないか?

アルノーとミラー: 断る!

ウェーバー: 分かったよ、じゃあ俺が —

ウェーバーが意識を喪失し、アルノーはバンのギアを入れる。SCP-7073が前述の通り鳴き続けているのを別として、チームは静かにサイト-333に帰還する。


Goose3.jpg

捕獲されたSCP-7073。


サイト-333 — 部門間交流ログ:
2022/11/10 — 2:16 pm
  • ヴィンセント・ボハート、管理官
  • レオノーラ・モラレス、野生動物スペシャリスト

ヴィンセント・ボハート: 未だに名刺ホルダーが見つからない。正直言ってキレそうだ。連絡先は全部あれに入れてたんだぞ。もし喉が詰まったりしたら、俺はどこに電話すればいい?

レオノーラ・モラレス: 911とか?

ヴィンセント・ボハート: そういう事を言いたいんじゃないんだよ。原理原則の問題だ。とにかく、WWSとの連絡も付かない。あいつらのウェブサイトは1990年から更新されてないんじゃないのか。電話番号を公開したらウィルソンは死ぬのか?

レオノーラ・モラレス: ヴェール政策のせいでしょう。私がサイト-58に連絡しますよ。あそこなら私たちよりもSCP-7073に上手く対処できる設備があると思います。

ヴィンセント・ボハート: 良し、じゃあそうしてくれ。さっさとあの野郎を追っ払う必要がある。俺の車のラジオがぶっ壊れたのは間違いなく奴のせいだ。

レオノーラ・モラレス: そうですかね? あれが通信干渉できるのはごく短距離ですよ。

ヴィンセント・ボハート: 俺に分かるのは、あん畜生が特に俺を嫌ってることだけだよ。奴にはさっさと消えてほしいんだ、ふれあい動物園なんかやってられるか。

2022/11/10 — 2:20 pm
  • ヴィンセント・ボハート、管理官
  • トニー・カタラーノ、経理・観光部門

ヴィンセント・ボハート: おう、トニー。ちょっと訊きたい。

トニー・カタラーノ: うん?

ヴィンセント・ボハート: ふれあい動物園の入場料は幾らまでなら妥当だと思う?


SCP-7073 更新 — 2022/11/11:
ヴィンセント・ボハート管理官の要請で、長期収容施設へのSCP-7073の移送は中止されました。ボハート管理官は代わりにサイト-58の動物学研究部門に連絡し、新たな収益計画の一環として“何でもいいから手持ちの余分な生き物、できれば可愛いの”を送るように求めました。ファラン・キャラウェイ博士は、ボハート管理官の意図が“プロ意識に欠ける”、“動物を危険に晒す”、かつ“非現実的で道徳に背く”ものであることを理由に、この要請を却下しました。ボハート管理官は前述の計画の続行を決定しました。


Zoo2.jpg

ふれあい動物園 — 参考イラスト。現時点ではサイト-333に設けられていない。


SCP-7073 更新 — 2022/11/15:
サイト-333での収容中、SCP-7073は攻撃的、暴力的、反社会的な行動を繰り返し示しています。これらには以下が含まれますが、それだけに限られません。

  • 財団職員、他の動物、訪問者や入場料を支払った観光客 (ふれあい動物園と博物館の利用者を含む)、郵便配達員を噛みつき、つつき、殴打し、引っ掻く。
  • 成功・失敗を問わず、自らの檻、檻が置かれた部屋、またはサイト-333自体からの収容違反を繰り返し試みる。
  • 衛星通信、携帯電話、WiFi、ラジオ放送などの電気通信技術を妨害する。
    • SCP-7073は2階休憩室の電子レンジ火災に関与した疑いもあるが確証されていない。
  • 食べ物や飲料を含む私物の窃盗。
  • 1日中鳴き続け、日勤・夜勤双方の職員に迷惑をかける。
  • 基本的人権と自由に対する冷酷な無視。

SCP-7073の行動 — 及び一般市民の関心の全般的欠如 — は、サイトに併設されたふれあい動物園の営業停止と、複数の用務員の辞職を招きました。

このため、ボハート管理官はSCP-7073の収容の長期的検討を再開しました。なお、SCP-7073の終了処分が頻繁にサイト-333職員から提言されていますが、まだその実行は検討されていません。


サイト-333 — 部門間交流ログ:
2022/11/15 — 7:14 pm
  • ヴィンセント・ボハート、管理官
  • トニー・カタラーノ、経理・観光部門
  • レオノーラ・モラレス、野生動物スペシャリスト
  • ノア・パテル、未確認動物学者 兼 博物館学芸員

ヴィンセント・ボハート: もう我慢ならない。あの鳥は悪魔そのものだ。

トニー・カタラーノ: そもそもあれを飼い続けるのはお前のアイデアだったよな。

ヴィンセント・ボハート: 大成功のはずだった。奴はただ突っ立って、鼻水垂らしたよちよち歩きのガキどもの手から餌を貰って、幾らか余分なカネを稼ぐだけでよかったんだ。ところがどうだ、あん畜生は俺を破滅させようとしてやがる。そうはさせるかよ。

Boston2.jpg

トースト。

レオノーラ・モラレス: ノアのボストンテリアと檻に入ってキレ散らかしてるガチョウじゃ、魅力的なふれあい動物園にはなりませんでしたよ。

ノア・パテル: あの子の名前はトーストだ。お客だってあの子を気に入ってた。

レオノーラ・モラレス: ガチョウに噛まれてあなたの車の下から出てこなくなるまではね。

トニー・カタラーノ: あの時はまだピーナッツバターが近くに残ってて助かったよ。

ヴィンセント・ボハート: 集中しろお前ら。俺たちはあの鳥悪魔にどう対処する? 誰に連絡すればいい?

トニー・カタラーノ: レオノーラ、これはお前の領分だろ? 俺だって帳簿を軽くごまかす時なんかはお前の助けを借りなくて済むぞ。

レオノーラ・モラレス: 私はどちらかと言えばカモメの専門家です。ガチョウはかなり異なる鳥です。

レオノーラ・モラレス: そう言えば、近くで超常古生物学者さんが発掘作業をしてませんでしたっけ? 鳥は現代の恐竜みたいなもんです、彼が助けてくれるかもしれません。

ヴィンセント・ボハート: 俺はむしろ祓魔師を呼ぶのを検討してたが、いいだろう、試す価値はある。

レオノーラ・モラレス: メッセージを送るので待っててください。

トニー・カタラーノ: ちょっと待て、もし誰かが会話に参加するなら念のため言っとくが、上の“帳簿をごまかす”ってのはジョークだからな。

ピーター・ダゴン が参加しました。

ピーター・ダゴン: どうも、今しがたメッセージを読みました。ガチョウについて助言してほしいですって?

ヴィンセント・ボハート: ああ、そのガチョウが血に飢えた怪物って意味ならそうだ。ジュラシック・パークは多分観たことあるよな?

ピーター・ダゴン: 実は新作について相談受けてたんですよ。私の言い分には耳を貸してくれませんでしたがね。

ヴィンセント・ボハート: じゃあ、とにかく一番厄介な恐竜を思い描いてくれ。俺たちは今そういう奴に手を焼いてるんだ。

ピーター・ダゴン: いいですか、恐竜が人間とどう交流していたかを化石証拠から外挿するのはかなり難しいんです。恐竜は非常に複雑な社会共同体を有していたんですよ。

トニー・カタラーノ: ガチョウは?

ピーター・ダゴン: まぁ、ぶっちゃけると、骨を検査できないならどういうお手伝いができるか分かりません。多分まだそのガチョウは生きているんでしょう。

ヴィンセント・ボハート: 今はな。

ピーター・ダゴン: そうですね、1億年後に改めて連絡してくれますか?

ヴィンセント・ボハート: よーし、プランBだ。

ピーター・ダゴン が退出しました。

ノア・パテル: どうします?

ヴィンセント・ボハート: 俺はまだ悪魔祓いのアイデアが良いと思ってる。

トニー・カタラーノ: サイト-666?

ヴィンセント・ボハート: 冗談じゃない。悪魔だろうが何だろうが、あの連中にウチが鳥1羽にすら対応できないなんて思われるのはごめんだ。

ヴィンセント・ボハート: 別な心当たりがある。

ダニエル・アシュワース が参加しました。

ダニエル・アシュワース: にゃぁ

レオノーラ・モラレス: は?

ダニエル・アシュワース: クソ。今起きたばかりで、まだ夢を見てると思ってた。お前ら、こっちが今何時か分かってるのか?

ヴィンセント・ボハート: 邪悪なガチョウを追い払うにはどうしたらいい?

ダニエル・アシュワース:

ヴィンセント・ボハート: どうした、猫に舌でも引っ掻かれたか?

ダニエル・アシュワース: やめだやめだ。またこんな寒天の安穏なfail wate of Tomに付き合ってられるか。1

ダニエル・アシュワース が退出しました。

レオノーラ・モラレス: オーケイ、私が最初に提案したように、サイト-58にガチョウを引き取ってもらえませんかね?

ヴィンセント・ボハート: ダメだ。それは絶対に無い。

レオノーラ・モラレス: どうしてですか? 彼らにはあの手のアノマリーを扱う設備があります。

ヴィンセント・ボハート: キャラウェイに“だから言ったんだ”とか何とか説教されるに決まってる。

ノア・パテル: そうかな? 私にはかなり良い人のように思えるんだけれどね。

トニー・カタラーノ: あぁっ、畜生! またかよ!

トニー・カタラーノ: ガチョウが俺のオフィスにいる。あいt jijkkr jejejiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii

トニー・カタラーノ が退出しました。

ヴィンセント・ボハート: オーケイ。サイト-58に連絡だ。


SCP-7073 更新 — 2022/11/16:
SCP-7073を長期的な飼育・収容のためにサイト-58動物学施設へ移管する手配が行われた後、ファラン・キャラウェイ博士は対象の移送支援を志願しました。以下の書き起こしは、サイト-333に到着したキャラウェイ博士とSCP-7073の交流の記録です。

SCP-7073移送記録


333_58.png

ファラン・キャラウェイ博士が降車し、サイト-333正面入口に近付く。キャラウェイ博士は額に生えた1対の角、尻尾、赤みがかった皮膚などの目立つ特徴を有するヒト型実体である2。彼は暗色のジーンズと濃紺色のタンクトップを着用し、厚手の皮手袋をベルトにたくし込んでいる。

ボハート: キャラウェイ博士かな?

キャラウェイ: はじめまして。

ボハート: アンダーベガス出身か? 俺もしばらく前までサイト-666に勤めてたんだよ。

キャラウェイ: いえ、全く違います。さて、行きましょうか?

ヴィンセント・ボハートはキャラウェイ博士をサイト-333の中へと案内し、ニュージャージーデビル博物館と土産屋を通ってサイト本部へと入る。本部のドアは1個のレンガで開いた状態に固定されている。

キャラウェイ: あれは放置してていいんですか?

ボハート: ああ、そうしないとドアが開かなくなるんだ。

ボハートはSCP-7073が収容されている部屋へキャラウェイを案内する。レオノーラ・モラレスが着席し、SCP-7073を見つめている。モラレスは入室した2名に挨拶し、SCP-7073は新たな訪問者を見て大声で鳴き喚く。

キャラウェイ博士はベルトから作業手袋を引き出しつつ、SCP-7073が入った檻に近付く。

キャラウェイ: 成程、大騒動を引き起こしたのは君だな。話はたっぷり聞かせてもらったよ。

ボハート: 俺だったらあまり近寄らないようにするぞ。

キャラウェイ博士はゆっくりとSCP-7073の檻のドアの掛け金を外す。SCP-7073は動かず、一瞬ためらうように彼を見つめる。

キャラウェイ: ほら、全く —

キャラウェイ博士が檻から目を離した瞬間、SCP-7073は入口に突進し、彼の腕の下をくぐり抜けてドアへと走り寄る。キャラウェイ博士は後ろに下がってSCP-7073とドアの間に身を置く。SCP-7073は左側にフェイントをかけてから右へと回り込むが、キャラウェイ博士は尻尾を動かして脱走を妨害する。

進路を塞がれたSCP-7073はキャラウェイ博士の尻尾に噛みつく。彼は苦痛の叫びを上げ、反射的に尻尾を振り動かし、また噛みついたままのSCP-7073が振り回される。SCP-7073は噛みつくのを止め、キャラウェイ博士に向き直って翼と足で殴打する。キャラウェイ博士は両腕を伸ばし、整然とSCP-7073を檻の中へ誘導する。SCP-7073は檻の隅に戻り、室内の人物らに目を走らせる。

ボハート: 言っただろ。こいつは邪悪だ。

キャラウェイ博士は息を切らしながらゆっくり返答する。

キャラウェイ: 邪悪じゃありません、アプローチを変える必要があるだけです。

キャラウェイ博士はジーンズの尻ポケットから、一握りの冷凍エンドウ豆が入った小さなジップロックバッグを取り出す。彼は幾つかの豆を、手袋を嵌めた掌に空け、手を伸ばしてSCP-7073に近寄る。

キャラウェイ: やぁ、君。お腹が空いてるんじゃないかな?

SCP-7073は用心深くキャラウェイ博士に接近し、彼を見つめてから、素早く1粒の豆をつつく。数秒後、SCP-7073はまた戻って来て、旺盛に豆を食べ始める。

キャラウェイ: ほーら、やっぱりそうだと思ったんだ。

キャラウェイ博士は残りの豆を掌に空け、SCP-7073が食べ続けている間にヴィンセント・ボハートの方を向く。

キャラウェイ: あなたは実質的にこの気の毒な鳥を誘拐して檻に閉じ込めたのに、自衛するのを責めるんですか? そりゃ当然暴れるに決まってますよ! 自分を恥じたらどうです。

ボハート: おう… あー、その…

豆を食べ終えたSCP-7073は、キャラウェイ博士に歩み寄り、彼の前腕に頭と首をもたせかける。

キャラウェイ: 君は可愛いねぇ。大丈夫、これから素敵な場所に連れていくよ。どう思う?

キャラウェイ博士は抵抗を受けずにSCP-7073を腕ですくい上げる。彼はサイト-333を抜けて待機中の車両へSCP-7073を運んでゆく。

キャラウェイ: ボハート管理官、私としてもあまり直截な事は言いたくありません。ですが、また同じような真似をしたら、あなたの人生を地獄に変えるのは動物だけじゃ済みませんよ。分かりましたね?

ボハート: 分かったと言っとくべきかな。それと、まぁ、ありがとよ。

ヴィンセント・ボハートはSCP-7073と顔を合わせる。

ボハート: お前がいなくなるのは寂しいと言いたいとこだが、誰が言うかってんだ。幸せにな、ガチョウ。俺から遠く、遠く離れた所で幸せに暮らせ。

SCP-7073はヴィンセント・ボハートに向かって攻撃的に鳴き喚き、首を伸ばして噛みつこうとするが、ボハートは間一髪で避ける。

ボハート: ハ! 今回は俺の勝ちだ。惜しかったなぁ。

キャラウェイ博士とSCP-7073が車両に乗り込み、サイト-333の私道から出る。ボハートはキャラウェイ博士に手を振るが、SCP-7073が窓から顔を覗かせ、聞こえはしないものの鳴いているのを見てハンドジェスチャーを変える。


補遺7073.02:

キャラウェイ博士の出立後、ヴィンセント・ボハートは自らの執務室に戻りました。室内は徹底的に荒らされた状態であり、泥と羽根が床を覆い、デスクの上に幾つもの鳥の糞が散乱し、多数の引き裂かれた紙 — 後ほど、ボハート管理官の卓上名刺ホルダーに由来することが判明 — が部屋一面に撒き散らされていました。

ボハート管理官は、“二度とあの自惚れ屋のクチバシ野郎が同じ事をして逃げおおせられないように”、この情報をSCP-7073のファイルに追加することを選択しました。

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