SCP-7160

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財団記録・情報保安管理局より通達

以下の情報は、最近加えられた幾つかの変更によって、もはや正確ではなくなりました。このアーカイブ版ファイルにアクセスしている者は、速やかに上司に連絡し、最新の資料を請求してください。

SCP-7160の異常性は引き続き調査中です。

— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ


アイテム番号: 7160
レベル4
収容クラス:
pending
副次クラス:
none
撹乱クラス:
vlam
リスククラス:
notice

6584014189_f7e14bcd1c_b.jpg

SCP-7160のスマートフォン。

特別収容プロトコル: SCP-7160は、あらゆる観点から見て、既に死亡しています。SCP-7160が存在した証拠を含む記録 — 雇用証明書、保管されている過去の納税申告書類、政府が発行した身分証明書などを含むが、それらだけに限られない — は全ての公開データベースから削除されます。財団とその活動方針の機密性を確保するため、SCP-7160の近親者や親しい人物らへの軽微な記憶処理が許可されています。

SCP-7160が所有していた携帯電話は、現地法執行機関から押収され、サイト-119科学捜査チームの管理下にあります。この携帯電話は現在、指定されたデータ管理者1名によって監視されており、管理者は携帯電話と相互作用する全ての人物を記録する責任を負います。無許可のアクセスが発生した場合は、違反者を捕縛するための封鎖措置を開始する必要があります。

SCP-7160の異常性は未だ十分に理解されていないため、財団エージェントは、勤務中に過剰に身体を掻く、噛む、その他の掻痒感を示す行動を取っている職員を捕縛、勾留することを認められています。

説明: SCP-7160はサイト-119に雇用されていたレベル3研究員、ジョン・マカクラーです。2022/07/09、SCP-7160は生死に関わるほどの自傷行為を全身に施し、ジェネバリア健康研究所に搬送されました。具体的には、SCP-7160は以下のような外傷を負いました。

  • 両腕の深い裂傷。
  • 下部胴体と腰の開放創。
  • 左足首の脱臼と右足の完全な剥離。
  • 過度の歯軋りを示唆する歯茎の出血と深刻な顎の損傷。
  • 顎の外側と首の第1度熱傷。
  • 複数の化学物質と洗浄剤の交差汚染による重篤な中毒症状。
  • 左眼窩が空洞化し、断裂した視神経が内部に垂れ下がっている。
  • 両手の爪と残っていた足の爪の剥離。

SCP-7160の救命のために緊急手術が行われたものの、16時間後に死亡が確認されました。死因は本稿執筆時点で断定されていませんが、SCP-7160の私用携帯電話の回収を切っ掛けに、異常な影響を受けていたものと推測されています。


補遺1: 科学捜査報告書


携帯のメモ

体調はまるで良くなってないよ、シェリー。

確か呼吸法がどうのこうのって話をしてたのを覚えてるか? それか、身体を掻きたい衝動に駆られたらやってみろと促した、例の“爪先をギュッと絞る”小技でもいい。そう、君の“豆知識”だ。

何の役にも立たなかった。

ついさっき、今週2回目のERに駆け込む羽目になった。私を一目見るなり、大急ぎで中に入れて治療してくれたよ。医師たちは何時間もかけてかさぶたと死んだ皮膚を剥ぎ取ってから、馬でも痺れるほどのリドカインで麻酔をかけてくれた。これ以上掻いたら文字通り骨まで削れるだろうと言われた。

いいかい、君が自分の仕事をしようとしてるだけなのは理解しているさ。君が私の医者じゃないのも分かっている。でもお願いだからこれをどうにかしてくれないか、シェリー?

また予約を入れる。

やぁ、シェリー。

今朝目を覚ましたら口の中を3インチのヤスデが這っていた。殻が私の唾の中を蠢く感触があり、舌の上を這い回る小さな足の乾いた味がした。実際、そいつが歯茎を擦り始めた時は吐きそうになった。

トイレに駆け込み、全てを吐き出した。ホースで何かをシンクに流さなきゃならない場合に備えて、どうにか殺虫剤も掴んでいったんだ。でも、案の定、何も出てこなかった — 嘔吐物と粘液だけだ。いつものように。

ゲロがまだ口の外にこびり付いているようだが、率直に言って洗い落とす気にもなれない。わざわざ鏡の前に立ってこすり取るほどの価値は無い。顔を拭いている最中に、目の中でサナダムシがぬるぬる這っているのを目撃したりしたら、それこそ大変だ。

シェリー、もう我慢の限界だ。

私は絶え間なく苦しんでいる。同僚たちは、職場で爪を噛むのを止めろと言い続けている。奴らは私をからかい、“衛生的”じゃないとかどうとか指摘するのを止めようとしない。私は理由があってこうしているんだと理解してくれない。

でも、それはどうでもいいんだ — 少なくとも、爪痕じゃなくて火傷で通院するようになってからは、看護師に奇異の目を向けられなくなった。

同僚と言えば、先週の予定にもう数日休みを加えなければならなかった。皮膚の下を這うヒアリを見るまでは万事順調だった。余りに酷い有様だったから、警備員の1人がまた手錠で私を拘束したほどだ。

それでも、軽く噛んだり、心地悪いながらも身悶えしたりして、どうにか虫どもは取り払った。まだ奴らのはらわたが歯の隙間に挟まっているような気がする。

これもまた、次回の面談で君に見せるための備忘録だ。君なら私を気遣ってくれると分かっている。君のような天使ならば。

これまでに会った他のセラピストどもには共通点があった。奴らは何一つ分かっていない。

奴らはこれについて書き出すのが実際に役立つんだと私に伝えようとした。“問題に直面”すれば“立ち向かう助けになる”とかなんとか。全くありきたりな助言だろう? そしてだ、なんと私自身もその戯言を信じるつもりでいた。つまりだ、私だって奴らが助けようとしているだけなのは分かっていた — そして私はただ、痒みが治まり、腕に血を滲ませることなく目覚めたいだけだった。

だがあのクソ野郎どもは私に嘘を吐いた。

そうとも、そんなに単純に解決するはずがないんだ。私は未だにこれまでと同じ感覚と衝動に駆られて目を覚ます。もう逃れようがない。考え事をする時でさえ、脚に這い上がるクモを払いのけたい、鼻の穴に押し入るハエを叩き落としたい、そんなデタラメな衝動が付きまとう。自分の服に目をやる時、数え切れないノミやダニが繊維の隙間に巣くっているのが四六時中見えているのを抜きにしてもそんな状態だ。

このままではいけない。どうにかしなければならない。

やつらがまたわたしのなかにいる。どうしてやつらはやめてくれないんだ?

わたしをかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいるかんでいる。

もうメモを書き続けられない。ストレスが溜まる一方だ。それに疲れた。身体の痛みはまだ収まらないし、視線はますます悪化している。

またシェリーと話す必要がある。彼女は他の誰よりも私のことを理解してくれている。

診察予約

TO: moc.liamg|02496yuglooc#moc.liamg|02496yuglooc
FROM: ハートランド・カウンセリング&回復センター (自動返信)
件名: 予約の確認


こんにちは、マカクラー様。

おめでとうございます! 当センターとの専門カウンセラーとの新たなセッションが予約されました。お二人での進歩を応援しております!

以下の情報をご確認ください。間違いがあった場合、お電話か当メールへの返信を通して当センターまでご連絡ください。


  • 日付: 2022-06-12
  • 時間: 6:00 P.M.
  • カウンセラー: シェリー・リー
  • 訪問の理由: 小さな昆虫どもが食道を這い降りて内臓にトンネルを掘っている。爪痕はますます酷くなっているのに誰も理解してくれない。その虫は幻覚ですと言われたって奴らが存在しなくなるわけじゃないんだぞ!

ご来院をお待ちしております!

過去の履歴を表示中…

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - シェリーが必要なんだ。

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - また奴らを感じる…

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - 耳の中にいる。

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - 間違いなく体の中に虫がいるんだ。

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - 誰も分かってない。

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - また自分を傷付けてる。

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - 至急電話をくれ!

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - 今日にしてくれないか?

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - 話が違うじゃないか…

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - 単なる健康診断じゃない。

ハートランド・カウンセリング 予約の更新: - 今週は空いているか?


送信されたボイスメール

TO: ハートランド・カウンセリング&回復センター


ええと — もしもし。

私の名前は、あー、ジョンだ。次回の診察予約の件で誰かと話せないだろうか? そちらで、あー、私のカウンセラーにラヒームという人を割り当てたようだが — その、実は相手をシェリーに変えてくれないかな。

本当にすまない。選択画面で誤タップしてしまったんだ。手がデカいから… 分かるだろう。

とにかく、よろしく。

そうだ、もし連絡を取りたいならこの番号に掛けてくれ。メールでもいいかな。

じゃあ。

やぁ、またジョンだよ。分かるかな? あの、ほら、いつも予約を入れまくっている例の男だ。

前回のちょっとしたミスを直すのに、いつが良いかと思ったんだ。君たちが — あっ、すまない — 君たちが何度も電話してくれたのには気付いているが… なかなか返事ができなくてね。

とにかく、私はラヒームさんと面識が無いし、彼に会うのが良い考えとは思えない。

折り返し掛け直してくれないか?

やぁ、ジョン・マカクラーだ。

誰かがあの… 例の変更を私の要望通りに加えてくれたのを確認した。ええと、最高だよ! ありがとう。

それで — いや、ちょっと失礼する。

良し、戻ったよ。申し訳ない、ちょっとだけ中座してトイレに入っていた。ほら、あれだよ。小便とかではなくて、身体を掻き過ぎないようにするためだ。あー、私が君たちとまた連絡を取ろうとしている理由はまさにこれなんだ。

気まずくなってしまったな。すまない。私はただ、シェリーが出勤しているか確かめたかっただけなんだ。 彼女なら私を助けてくれる。

それじゃ。

やぁ、今回もジョンだよ。

ふざけているのか?

なぁ、もう5、6回連絡しているのに誰も折り返してこない。どういうことだ?! もうこれ以上午後2時なんて時間帯に掛けてもらっちゃ困るね。君たちの勤務時間が多分9時から5時までなのは分かるが、私は自分一人じゃ解決できない問題に取り組むのに忙しい!

君たちが普通に電話を取ってくれれば大した事じゃないんだよ! それなのに私は誰かが折り返し連絡するまで苦しみ続けなきゃならない! いいか、私はシェリーと話す必要があるだけだ — 分かったな? 理解してくれる相手だけが必要だと頼み続けるのは、もういい加減うんざりだ! 私を分かってくれる人がいなくちゃダメなんだ!

ストーカーまがいの振舞いなんかじゃないぞ。私はただ助けを求めてるんだよ!

やぁ、ジョンだ。

明日の4時に行く。着いたら責任者を出せ。


録音メモ

[記録開始]

ジョン: す — すまない、少し待ってくれ。

シェリー: 大丈夫です、ゆっくりどうぞ。

ジョン: その… もし可能なら、あー、この会話を録音しても? つまり、私のためにだ。

シェリー: 勿論です。それがあなたの助けになるのならね、ジョン。

ジョン: 効果覿面だよ、ハハハ。

数秒の沈黙が続く。

ジョン: 良し、準備できたと思う。

シェリー: 本当に?

ジョン: 今のところはね。

シェリー: それは何よりです。

シェリーは咳払いする。

シェリー: センターとの連絡時にトラブルがあったと聞いています。本当に申し訳ありません。

ジョン: もういいんだ。いや、まだかなりムカついてはいるけれども、こう、実際に誰かと話せるならそれで問題ない。

シェリー: そうですか、ご辛抱いただき感謝します。改めて診療記録を見返しましたが、今回は症状が再発したから予約したとありました。その通りですか?

ジョン: そうだ! そう、それで合っている。

書類をめくる音がする。

シェリー: 医師から薬を処方されているようですね。服用していますか?

ジョン: ああ、シェリー、飲んでいるとも。それが効かないから来ているんだ。

シェリー: それは残念です。どのように効かないのかを説明していただけますか?

ジョン: “どのように”? それはどういう意味だ?!

シェリー: ただ質問しているだけです、ジョン。

ジョン: どうして見えないんだ? 奴らはそこら中にいる!

シェリー: 具体的な場所を指していただけますか? もし見せてもらえるのなら—

ジョン: 見せてるじゃないか! 今まさに! ほ — ほら、こうやって掻き落としてる!

シェリー: ジョン、どうか落ち着いてください。

ジョン: いいから見てくれシェリー、奴らはすぐそこに—!

シェリー: ジョン、私には何も見えません。

ジョン: 私には見える!

シェリー: それは分かります。私としても助けになりたいですが、もう少し落ち着いてくれなければ先に進めません。

ジョン: あ — ああ…

沈黙が続く。

ジョン: 悪かった。

シェリー: 大丈夫です。それが私の仕事ですからね。

軽い身動きに続いて、軋むドアを開ける音がする。

シェリー: 軽く一息入れましょう、いいですね?

[記録終了]

[記録開始]

ジョン: ありがとう、シェリー、どうしても休憩が必要だったんだ。

シェリー: 問題ありません。先程も言ったように、これが私の仕事です。

2人は数秒間沈黙する。

ジョン: じゃあ、君にも奴らは見えないんだね?

沈黙。

シェリー: ええ、ジョン、見えません。今後見えるようになることもないでしょう。

ジョン: 奴らが“実在しない”からだろう?

シェリー: 1つ訊かせてください。あなたにとって、それらはどのような形で存在していますか? それらが現れる時、あなたには何が見えていますか?

ジョン: …色んな姿で見える。分かるかな。

シェリー: 例えば?

ジョン: うん、大抵の場合はアリが見える。デカいアリだ。大きな肉厚の顎がある奴ら。そして時にはクモや線虫も見える — 実のところ、線虫は明るい場所でしか出てこない。私の目のすぐ下に現れるんだよ。

シェリー: 成程。痛みは?

ジョン: 時々ある。と言うか… 場合に依るんじゃないかな。

シェリー: 場合に依る? 詳しく説明していただけますか?

ジョン: どう説明したらいいのかよく分からない。私の気分とか、その時見ているもの次第で左右されると思う。クモが一番痛いんだ。特に奴らが、こう、噛みついてくるとね。

シェリー: それはあなたの怪我とは別ですか? 怪我していない場所でも痛みを感じますか?

ジョン: 分からない。

シェリー: そうですか…

2人は沈黙し、再び書類をめくる音がする。

シェリー: それらが見えますか?

ジョン: “それら”? 虫どものことか? つまり、今?

シェリー: はい。

ジョン: あー… いや… 見えないな。積極的に探している時に限ってなかなか見つからないことが時々ある。

シェリー: ああ、成程。失礼しました。

ジョン: 謝ることじゃない。

シェリー: では、また少し間を置いて、再開した時に改めて具合を確認しましょう。

[記録終了]

[記録開始]

シェリー: あなたが悩んでいるのは伝わってきます。理由を説明していただけますか?

ジョン: 説明するだって?

シェリー: もし可能であれば、です。

ジョン: それは…

ジョンは溜め息を吐く。

ジョン: あらゆる人に“お前の頭はおかしい”と言われる人生がどんなものか分かるかい?

2人は数秒間沈黙する。

ジョン: 真面目な話 — 何処へ行っても、何をしても — いつだって同じなんだよ。私は自分の世界が本物だと知っているし、自分が見ているものは… 皆が言うようなただの幻覚じゃないと分かっている。自分の目を信用できなかったことは一度も無い。

シェリー: 分かります。

ジョン: ところが、ある日目を覚ますと、誰もが見えているものを全部無視して何も起きていないふりをしろと言うんだ。苛立たしくてしょうがない。

シェリー: それに気疲れするでしょう?

ジョン: そう! まさにそうなんだ。私はもう疲れたんだよ、シェリー。こういう診察を受けなきゃいけないのも、鼻を這い上がるナメクジやムカデから気を逸らし続けるために携帯にメモを取るのもうんざりだ。私はただ…

ジョンは最後まで言い切らない。

シェリー: ただ…?

ジョン: いる。

シェリー: えっ?

ジョン: 人差指の間だ。見えるか?

シェリー: 具体的に何が見えているか教えてください。

ジョン: こいつは… 大きい。私の掌ぐらいある。茶色で、指の横にしがみついてる。

シェリー: ふむ。

ジョン: 身体の前に2本のデカい爪があって、腹回りに脚が4本。這ってる…

シェリー: カブトムシでしょうか?

ジョン: いや、それにしてはデカすぎる。こ — こいつはもしかすると —

ジョンは身震いして口ごもる。

シェリー: 大丈夫です、ジョン。何と言おうとしたんですか?

ジョン: …タガメのように見えると思ったんだ。

2人とも話さない。

ジョン: なぁ — シェリー。シェリー助けてくれ。どうか、どうかお願いだから —

シェリー: 心配しないで、ジョン。大丈夫です。少し待っていてくださいね?

身動きがあり、間もなく引き出しを開ける音が聞こえる。ジョンが喘ぎ、再び身動きの音がマイクに捉えられる。

シェリー: では、その虫の位置を教えてください。…ここですか?

ジョン: 違う、もう少し上 — いや、あー、下だな — ストップ。ちょうどそこだ。

シェリー: 成程。鏡に映っていますか?

ジョン: 鏡? そりゃ当然—

ジョンが突然沈黙する。

シェリー: これが私に今見えているものですよ、ジョン。保証します、そこに虫はいません。

シェリーは言葉を切る。

シェリー: 鏡の中にタガメが見えますか?

ジョン: 奴は… ええと…

2人は短い間黙っている。

ジョン: いや… いや、もう見えない。

ジョンは安堵と思しき溜め息を吐く。

ジョン: 信じられない… 君は今… いったい — いったいどうやったんだい?

[記録終了]


テキストメッセージ

やぁシェリー、ジョンだよ
この番号で合っているよね… だよね?

どうも、ジョン。
これが正しい番号です。先程は不正確なものを教えてしまい、失礼しました。

別にいいよ笑
今日は助けてくれてありがとう。どんな魔法を使ったにせよ… バッチリ効いた。

それは何よりです。薬は飲みましたか?

ああ、君の言う通りに。

良かった。また何かあったら教えてください。

実はあるんだ。

何でしょうか?

君がやってくれたアレは… どうして分かったんだ?

分かったというと?

あの虫けらが、ほら
消えるってことをだよ

鏡の話でしょうか?

ああ

ええとですね、ジョン。
実を言えば、消えるとは知りませんでした。
何が起こるか分からないままやったんです。

知らなかっただって?

ええ、全く。
いずれにせよ役立ったので幸いでした。

もっと根本的な解決策は無いんだろうか?
つまり、虫どものだ。
そうすれば少しは寝やすくなるんだが笑

その助けになるのが薬ですよ。
飲んでいる限りはね。

本当に飲んだよ!
ただ… 何だろう。

私にできる事があれば教えてください、ジョン。

オーケイ。


やぁ、シェリー?

どうも、ジョン。

仕事中でもないのに連絡してすまない
ちょっと… 思い出したことがあったんだ。

全く問題ありませんよ。
どうしました?

カウンセリング中に君から質問があっただろう。
答えを最後まで言えなかった笑

ああ。
あなたがどれほど気疲れしているか、という質問ですね?

そうだよ

どうぞ、どんな事を考えているか教えてください。
ただし、もっと深く話したい場合は、また別な予約を取る必要がありますよ。

ああ、分かっているとも笑
悪いけれど、君の会社は日程調整がどうも苦手らしい

ジョン、そろそろお願いします。
あなたはどう答えたかったのですか?

ああ、そうだった
すまない
とにかく、答えたかったのは… 何だろう。一人きりでこんな思いをするのは辛いんだ。

その気持ちは分かります。
あなたのような人は大勢います。そして、他にもそう感じている人が大勢います。

ああ… そうかもしれない
つまりだ
その隙間を埋めてくれる、助けてくれる人がいてほしいと… ただそれだけなんだ

…?

この続きは診療所で話し合いましょう。

オーケイ。悪かったね。


やぁ

どうも、ジョン。

続きは診療所で話そうと言われたのは覚えてる
それは別にいいんだ、ただ
申し訳ないと思って、謝りたかった

わざわざありがとうございます。
大丈夫です。

オーケイ… 良かった。
今週の土曜日はまだ空いているかい?
また色々気掛かりがあってね笑

私の予定をチェックしないと何とも言えません。

いいとも笑
しかし… 真面目な話、ありがとう…
君のおかげで本当に助かっている

どういたしまして。

レビューを乗せる場所はあるかな?
君のレビューを書いても構わないかい?

会社のレビューであれば可能です。
もし私に関するコメントを残したいなら、それでも結構です。
私にはそれを止めることはできません。

オーケイ… クールだね笑
大した事じゃない、感謝とお礼の気持ちを伝えたかった
君に5つ星をあげよう… 5つ星らしい働きぶりを評価してね ;)
すまない 今のは少し馬鹿げていた
どうか返信してくれ

ジョン、これ以上メッセージを送るのは控えていただけると幸いです。

分かった。


シェリー
シェリー返事してくれ
奴らが戻ってきた
虫が… 奴らがここにいる

今日は薬を飲みましたか?

シェリー薬は効かないと言ってるじゃないか
大変だとんでもない数だ
頼むシェリー君の助けがいる
頼む

カウンセリングの予約は明日です。
それまで待てそうですか?

無理だ
シェリー君は分かってない
最悪だ
誓ってもいい瞬きしたらコップの中からシロアリの群れが消えるのを見た
今骨が見えるほど体を掻いている
今すぐ君の助けがいる
死んでしまう

ジョン、緊急に助けが必要ならば警察に連絡してください。
あなたが望むなら私が代わりに連絡できます

何故だ?どうせ警察が来ても信じてくれないのに???
シェリー頼む鏡を持ってすぐに私の家に来てくれ
それだけの大事だと約束する

ジョン、私にメッセージを送るのを止めてください。
私は真剣です。

シェリーどうかお願いだ
奴らが頬を掘り進んでいるのを感じるんだ
やつらつまさきをひきさいてる
あの鏡を持ってきてくれ…
頼む…

今、警察に連絡しています。
彼らが援助してくれるでしょう。

シェリーどうして拒絶するんだ???
私を助けてくれるんじゃなかったのか???
私が今まさに苦しんでいるのが分からないか?????
助けてくれ
助けてくれ

この番号はブロックします。
私に近付かないでください。

クソ女め
そういうことか??
お前も嘘つきの外道だと分かってた
絶対に後悔させてやる


動画記録

[記録開始]

録画は、カメラがダイニングルームのテーブル上に置かれた状態から始まる。まだテーブルの下に押し込まれたままの椅子2脚が、無我夢中で左右に歩き回るジョン・マカクラーの動きを多少妨害している。ジョンはソファとテレビ (現在チャンネル16ニュースを映している) の正面に立つ。音声は聞こえない。

ジョンは必死の様子で呟きながら数秒間歩き続ける。彼は足を踏み出す途中で立ち止まる。また別の呟きに続いて“シェリー”という言葉を口走った後、彼はこめかみを掴む。

ジョンは無音のまま、明らかな苦痛を示す叫び声を上げ、両腕を猛然と掻き毟り始める。皮膚の表面にギザギザの引っ掻き傷が付く。剝き出しで傷だらけの皮膚が摩擦で赤くなる間も、ジョンはその場に硬直したままである。血液らしきものが肘から滴り、床に落ち始める。

ジョンは眉間の汗を拭い、脱衣し始める。最初にシャツ、次にズボン、最後に下着が脱ぎ捨てられる。また一瞬だけ身体を掻き毟った後、彼は全裸でカメラの前に立つ。上半身にはギザギザの切り傷や痣が幾つか見える。また、この角度からは、著しく出血している人間の歯型が左右の太腿に認められる。

ジョンはカメラの後ろに移動し、34秒間そこに留まる。彼は間もなく、包丁、金属製のフォークとスプーン、清掃用の消毒剤、熱湯が入った大きな鍋、スリップジョイント・プライヤーを持って戻ってくる。彼は道具類を無造作に床に投げだし、カメラを見て荒々しい笑みを浮かべる。

ジョンはまた何かしら発言した後、横から包丁を取り上げる。彼は研ぎ澄ました刃を左手首に添える。彼は微笑んでから包丁を滑らせ、皮膚と腱に深い裂傷を負わせる。彼が手首を床に向かって傾けると、血液が滴って床に溜まる。

ジョンは含み笑いする。出血が続く中、彼は反対側の腕にもう1つの切り傷を作る。

血液が更に溜まり、ジョンは反対側にあるフォークとスプーンを掴む。彼は深呼吸してからスプーンを左目に差し込む。スプーンが傷ついた眼窩に突き刺さり、彼は頭を後方にのけ反らせる。彼がスプーンを捻りながら引き抜くと、内臓と目の残骸がテーブルの上に飛び散る。彼はフォークの方に向き直り、その先端を人差指の爪の下に突っ込み、素早く後ろに引っ張る。爪はあっけなく折れ、出血している皮膚が剥き出しになる。

明らかに苦痛を感じているにも拘らず、ジョンはプライヤーを手に取り、足指を固く押さえる。彼は締め付け続けてから、不可解にもプライヤーを捻る — この結果、足の親指が60度の角度に捻じれ、脱臼する。彼は再び後ずさりし、プライヤーを床に落として、短時間身動きを止める。彼は話し始めるが、カメラ視点からは“溺れろ”という呟き以外を読解できない。

ジョンは近くに置かれた熱湯の鍋を掴み、顔面と上半身に浴びせかける。湯気が全身から立ち上る。彼の両腕は苦痛で震えるが、熱湯を払いのけようとはしない。ジョンの姿はこの時点で辛うじて映っている程度である。

湯気が消散するまでの約30秒間、何も起こらない。ジョンはダイニングテーブルの前で身動きしていない。

突然、ジョンが再び笑顔になる。カメラ映像に映る彼の歯は血で赤く染まっている。彼はまた何事かを発声するが、“シェリー”のみが読解できる。

ジョンが眉をひそめた瞬間、ビデオカメラが倒れる。録画が唐突に終了する。

[記録終了]






補遺2: 更新


2022/08/01、財団の科学者たちはSCP-7160の完全な検死解剖を実施しました。1週間後の2022/08/06、SCP-7160の遺体に関する続報がサイト-119で記録、保管されました。この報告はSCP-7160の死に関する幾つかの重要な事実を裏付けた一方で、他にも複数の発見がありました。

コリンズ博士 - SCP-7160報告からの抜粋:

死体そのものには、様々な負傷とは別に、独自の… 特異性があった。例を挙げると、身元確認のために各種の組織サンプルを抽出した際、ラドハースト博士と私は、皮膚の内側に沿って幾つもの小さく明瞭な痕があり、頭蓋骨の内部に様々な擦り傷が残されていることを発見した。

頭蓋骨から話が飛ぶが、遺体の骨格をより精密にスキャンしたところ、手足や開口部のほぼ全てに通じる大規模な空洞がトンネル網を形成していたことが判明した。 […] 中空になった骨の余分な骨髄や石灰化した外殻は、内部に巣食っていた何かにとって完璧な生態系を作り上げていたように思われる。

加えて、真皮を穿刺してみたところ、間質を満たしているはずの液体は全く存在しなかった。通常なら稀な遺伝性疾患や深刻な外部損傷が原因となった場合もあるが、今回のケースでは遺体の構造が損なわれたとは考えられない。それどころか、その後の身体組織や周囲の分析では、代わりにほとんど目に見えないほど細かいキチン質の粉がそこから検出されている。 […]

検死解剖後、SCP-7160のスマートフォンの再調査が行われました。更なる解析の結果、財団の研究者たちは、このスマートフォンで最後に開かれたアプリケーションがGoogleマップだったことを突き止めました — 当時、マップはシェリー・リーの自宅に向かうルートを示していました。また、スマートフォンを起動した際、新着メッセージ通知が表示されました。内容は以下の通りです。

ジョン?
どうも… シェリーです。
分かりますか… ハートランド・カウンセリングの?
今すぐ連絡してもらえませんか?
他に誰を頼ればいいか分からなくて…
痒みが収まらないんです。


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