
真桑友梨佳氏の唯一の写真ファイル。
特別収容プロトコル: サイト-400の現サイト監督官の承認を得て、SCP-7212は通常のオフィスと同様に設計された低温収容格納ユニット内の椅子に座らせられます。衛生を目的としたユニット内への立ち入りは可能な限り制限されなければならず、その場にいる研究主任の承認が必要となります。
SCP-7212-Aに関して財団職員は如何なる行動も取るべきではありません。SCP-7212-A実例との交流は厳重に禁止されています。
説明: SCP-7212は20██/██/██に自殺した真桑友梨佳氏の死体です。死亡前、真桑友梨佳氏は財団の次席研究員としてサイト-400の公衆虚偽情報統制部門のもとに勤務していました。SCP-7212は如何なる顔のパーツも欠如しており、執筆時点では腐敗の兆候は確認されていません。
SCP-7212-AはColumba janthina(またはカラスバト)に属する死体で構成、融合された約78体の人型実体を指し、凡そ20~30メートルの高さを有します。現在、SCP-7212-Aの全実例はサイト-400の外周に位置しており、互いに手を繋ぎサイト-400を囲むように鎖を形成しています。SCP-7212-Aは不動で直立しており、外界からの如何なる刺激にも反応を示しません。
毎日、ランダムな時間帯にSCP-7212の傷ついた両手首から血液が流れ出します。この間、全SCP-7212-A実例は一斉に静かに発声します。
補遺7212-1、現象の概要: SCP-7212は今は亡き真桑友梨佳氏の私室内で発見されました。SCP-7212は胎児のような態勢でベッドに横たわり、右手に血塗れの医療用メスが握られている状態で確認されました。ベッド横の引き出しには粗雑な結び目のある縄と、不完全に混ざったシアン化物の入った橙色の薬瓶が仕舞われていました。
引き出しとベッドフレームの間には一冊のノートが隠されており、冒頭の数ページには血塗れた手形と、殴り書きされた日本語によるメッセージが書かれていました。しかしSCP-7212の性質に焦点が当たり、ノートは無視され、代わりに証拠として他の物品と共に差し押さえられました。
補遺7212-2、留意すべき発声記録: 以外はSCP-7212-A実例群により行われた発声記録の転写です。
これで正解なんです。
私の名前は真桑友梨佳、公衆虚偽情報統制部門の次席研究員です。
彼には私の名前しか見れなかった、他には何も見えていません。
吃らないよう、口籠らないよう、ただただ言葉をはっきりと口に出します。
死にたいと思う人なんていません。
深呼吸をします、吸って、吐いて。
他人のことを考えるのは疲れます。
鏡が曇ってしまって、自分の顔が見えません。
死にたくない。
いっそ、ただ死ねれば良かったのに。
補遺7212-3、その後の発見記録: サイト-400の周辺エリアが調査され、一見放棄された様に見える、暖炉の設置された老朽化した丸太小屋が発見されました。空の小屋の内部には、以下の特筆すべき物品群以外のものは存在しませんでした
- 綺麗に掃かれた灰の山
- 使用済みマッチ棒
- 数匹の野生動物の骨格残骸
- ミラーフレーム
小屋を調査していた職員は、成人男性が日本語で韻を踏む幻聴を聞いたと報告しました。これを考慮し小屋の分析は中止され、研究主任の要請により小屋は放棄されました。
補遺7212-4、アーカイブ済み文書: 以下は以前SCP-7212指定の下割り当てられたアノマリーに関する旧版のファイルです。以下のファイルは研究主任により追加するに十分な程重要であると見なされました。
アイテム番号: SCP-7212
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: サイト-400の現サイト管理官の要請により、SCP-7212は財団での長期的な雇用の継続の許可が与えられました。判明しているカラスバトの実例は荒野に放たれました。
説明: SCP-7212はサイト-400の公衆虚偽情報統制部門の下、財団の次席研究員である真桑友梨佳氏に与えられた指定です。彼女は[データ編集済]の血筋である成人女性であり、[データ編集済]の髪と[データ編集済]の眼をしています。
毎日、ランダムな時間帯に単独のColumba janthina(またはカラスバト)の実例がSCP-7212の頭上に出現し止まります。出現するカラスバトは非異常性であり、種の他個体と同様に振る舞いますが、SCP-7212が存在する際は顕著に従順に行動します。
補遺7212-5、正確な遺書: 以下は真桑友梨佳氏が死亡する際に残した真正の遺書の転写であり、体長が最も高いSCP-7212-A実例の巣で発見され、正規の英語で書かれていました。
この遺書は時間の無駄遣いです。
思い返してみると、私は彼らにとって容易いターゲットだったのだと思います。厳密に言えばまだ新参者でしたが、牢獄にぶちこまれた嘘つき達と一緒くたされ同じ世界に住んでいる、一人の初心な少女です。騙され易くて、世間知らず、それはほとんどの場合痛みを伴います。この世界が正直であるならば、どちらにせよ、起こるべくして起こったと言えるでしょう。
或いは、私とは何の関係も無いかもしれません。もしかしたら、私が公衆虚偽情報統制と呼ばれる部門で働いているという事実が、私がもし全く違った、目立った行動を取ったとしても誰も気付かないのだろうと考えさせたのかもしれません。
それが何であれ、彼が私を追いかけて森へ入っていくのを止められなかったでしょう。私は辺りが暗く、分厚い雲が星々を覆っていたことに気が付きました、それが第一に外へ出た本当の、ただ一つの理由です。あいつは私に自分の名前を教えてきて、私は私の名前を教えました。それはバカなことになるから、ここには書きません。
言っておきますが、体中の全分子が突然爆発することは心地よいものではありません。突然置き換わるのは更に痛いです。痛みが去らなかったなら舌を噛んでいたことでしょう。その時点で既に雲は切れており、私が最後に見たものは星でした。復讐は地獄の様に痛いです。
しかし、私を心配しないで下さい。これは正しいことなのです。
正直、私はごめんなさい、そう言うためにこれを書いています。皆さんを失望させてしまったから。お父さん。妹。友達。私の羽の生えた可愛い子供たち。今、彼みたいな人は沢山いるでしょう。私にあんなことをした人が報いを受けることを望むばかりです。しかし、私は財団の賢明さを知っています。彼らは私が誰か、誰でないのかを知ることになるでしょう。
この遺書は本当に時間の無駄遣いです。
補遺7212-6、インシデント記録: 20██/██/██、SCP-7212が蘇生し収容ユニットの出口へ進行しました。サイト-400は即時封鎖され、保安職員はプロトコルに基づき放棄された小屋で待機しました。SCP-7212は足を引きずりながらサイト-400の外の中庭に向かい進み、血液と内臓が後続して引きずられました。SCP-7212は発声し、刺激から聴覚的なミーム災害を数度発生させました。
SCP-7212が中庭に到着すると、全SCP-7212-A実例が一斉に実体の方向へ向き直りました。SCP-7212-A群は手を離し合い、実体を形成していたカラスバトも蘇生するにつれ徐々に崩壊していきました。新たに蘇生したハトは上向きに飛び始めSCP-7212のもとへ集まり、服を引き裂き鋭利となった鉤爪でSCP-7212の腕を掴みました。SCP-7212はサイト-400から引きずり出される際、ハトに向かって大声で罵倒し、更なるミーム災害を発生させました。
ハトはSCP-7212を小屋のもとへ運ぶと、自分たちごと建物内に備え付けられている暖炉の中へ強制的に引き込みました。保安職員は小屋のドアを閉めた後、小屋に放火しました。火は徐々に明るい朱色に変わり、約1時間燃えた後消火しました。枠付きの鏡以外は何も残らず、鏡面は不明な原因より曇っていました。鏡面には「ありがとう、私のかわいい子供たち」と記されていました。
SCP-7212はNeutralisedに再分類されました。報告書は間もなく更新される予定です。