クレジット
タイトル: SCP-7300 - プランクトンだぜ!!!
原題: SCP-7300 - PLANKTON!!!
著者: Ellie3
翻訳者: merc_benz
作成年 (EN)/(JP): 2022/2023

SCP-7300 (画像中央).
アイテム番号: SCP-7300
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-7300はサイト-438に所在する池の中に収容されています。異常気象が発生した場合に備え、グローライトが付属したオブジェクトロッカーが用意されています。
SCP-7300は現在、メンタルヘルス並びに身体の検査を目的として、週に一度、ジョアンナ・グッドマン博士と面会しています。
説明: SCP-7300は淡水性の植物プランクトンです1。SCP-7300は光合成によってエネルギーを生成することも、有機物を摂取することも可能です。
また、SCP-7300は平均的な人間の声量で発話する能力があり2、人間社会に関する相当量の知識を有しています。
発見
SCP-7300は、アメリカ合衆国オレゴン州ユージーン市のスターツ湖で行われていた定期的なアオコの検査の最中に、報告によれば「すすり泣」いて「許しを請う」ていた所を、ウィルソンズ・ワイルドライフ・ソリューションズ によって発見されました。
ボーリング協定に基づき、SCP-7300はただちにサイト-438に転送されました。短期的な観察期間の後、ウェクスラー博士によってSCP-7300への聴取が行われました。
<ログ開始>
SCP-7300: なあ――マジで……よかった、窓のある部屋に移してくれてありがとう。その、人工的な灯りも別にいいけど、本物の代わりはねえからな。けど、たぶん、クソみたいな灯りに照らされるのが俺の運命なんだよ。だって、俺はクソみたいな――
ウェクスラー博士: SCP-7300。話が脱線するのを抑えてください。お願いします。私は、いくつか質問に答えていただくために、あなたをこちらで受け入れました。そうすれば、うまくいけばあなたの身に何が起きたかがわかるでしょう。よろしいですか?
SCP-7300: それが問題なんだ……たぶん俺はずっとこんな感じだったんだよ。クソでゴミみたいなダニだった――
ウェクスラー博士: 冷静さを保っていただけますか。私はあなたの境遇には同情しています。本当です。一度、私は蚊に姿を変えられたことがあるんです。ぶっちゃけ、面白くはありませんでした。でも私は元に戻されましたから。あなたのこともなんとかできると思います。
SCP-7300: 俺は――ああ、わかったよ。
ウェクスラー博士: ありがとうございます。まず最初に……記憶していることをすべて教えていただけますか?
SCP-7300: いや……色々あってさ。俺の記憶はなんというか、モヤモヤしてて。俺が生まれて、その時に何かとてつもなく変なことが起きている感じだったのを覚えてる。最初はそれが何だかよくわからなくて……丸い穴に四角い釘を入れようとしてる……みたいな、しっくりこない感じ、かな?それで、俺は実際、藻類の穴に人類の釘を入れようとしたようなもんだと分かったというわけだ。
ウェクスラー博士: 藻類ではなくて、実際はプランクトン、ですね。
SCP-7300: え、俺、マジでプランクトンなの?その……スポンジボブに出てくるアイツみたいな?
ウェクスラー博士: まあ……そのキャラクターのもとになった生物種に該当するのかもしれませんね。
SCP-7300: マジか。じゃあロボットを作らなきゃな。ロボットの妻……いいね……
ウェクスラー博士: 確かに。それで、あの、スポンジボブについて知っているということで、他に何か人間社会に関する記憶というのはありますか?
SCP-7300: ああ、たくさんあるよ。めっちゃくちゃケーブルテレビを見てた。税金も納められるよ、まあ、本当にちゃんとな。人間のときは会計士だったんだと思ってる。嫁もいたよ。子供も。そして腎臓に石も。それに元嫁も。納税申告書よりも離婚の書類を書くほうがキツいって分かった。全然離婚のほうがキツかったよ。でも彼らの名前は覚えてないんだ。俺らは川のそばに住んでた。そのあと、親の所に引っ越さなきゃいけなかった。そのあとで、俺は死んじまったに違いない。まあ……このくらいかな。
ウェクスラー博士: それは……沢山のことがありましたね。では、あなたは過去の一時期に人間だった、ということでよろしいですね。
SCP-7300: そうだったと思うよ。どういう神様をキレさせたらこんなことになるかは分からないけどさ。でも思うんだよ、プランクトンとして生きてるのも悪くないなって……メシ食わなくてもいいし……別に食ってもいいけど……だけどさ。
ウェクスラー博士: けれども?
SCP-7300: ただ気になるのは、今俺の身に起きてることが、なんか、呪いみたいなものなのか、それとも宇宙レベルで何かがイカれてるのか、それとも……クソ、マジで、よくわからないわ。ごめん。
ウェクスラー博士: 大丈夫ですよ。これからのための情報を沢山くださりましたから。今の所は、こちらで幸せな生活を提供できますよ。近くに素敵な池があります。よろしければ、あなたをそちらに移せるか確かめますが、どうでしょう?
SCP-7300: ああ、いいと……思うよ?池っていいね。カエルとかいたりする?アヒルは?
ウェクスラー博士: ええ!アヒルが最近卵を産んで、そろそろヒナがかえるというところです。
SCP-7300: マジか、本当に?
ウェクスラー博士: 本当ですよ。
SCP-7300: それは、まあ……それは……なんて言ったらいいのかわからないな、ただ、ちょっと……もう一つ心配なことがあって。
ウェクスラー博士: なんでしょう?池がお気に召さなければ、別の……
SCP-7300: いや……違うんだ、池はすごい良さそうなんだよ。素晴らしいとすら思う。ただ……もし本当に宇宙レベルで何かがイカれて、なんか、俺の人類の釘が藻類の穴に入ったみたいなことが起きて、俺がこうなっていたとしたら……じゃあ逆に、藻類の釘が人類の穴に入っちゃったヤツはどうなってるんだ?
ウェクスラー博士: それは……そのようなことが実際に起きているかは分かりかねますが。
SCP-7300: いやいや、本当にそれが起きてる気がするんだよ。俺は被害者だよ!俺の体のことが不安でたまらない。だって、この体はまぎれもない俺の体なんだからさ。
ウェクスラー博士: 根拠のない結論に至っていますよ。それに——
SCP-7300: だから、逆に光を食ってるし脳もまったく機能してないイカれちまった赤ちゃんがいるんだよ!プランクトンってのは考えなんてしないんだ!試しに話しかけてみたんだよ。俺の兄弟姉妹に。でもアイツら思考なんかしていない。簡単に食われちまうんだ。泳いで逃げることすら考えないんだよ!もう俺は食物連鎖の中の自分の位置に甘んじて——
ウェクスラー博士: 落ち着いてください。お願いします。とにかく深呼吸……いや、深……光合成?をしてください。池を見に行ってみますか?
SCP-7300: 見に行くかって?!?ああ、クッソ見に行きたいよ。マジで池は大好きだから。
ウェクスラー博士: よかった。ああ、窓のすぐ外ですね、ここからも見えますよ!
SCP-7300: うわ、ヤバ。これはいい池だな。マジで。
ウェクスラー博士: でしょう?
SCP-7300: 最高だよ!マジで!いやあ、さっき言ったことは取り消すよ――
ウェクスラー博士: 池のことですか、それとも――
SCP-7300: プランクトン生活、最高!
<ログ終了>
2022年5月1日の時点で、SCP-7300の精神状態評価は最高水準に達しています。従って、SCP-7300の起源に係る調査の優先度は、無期限に低く設定されています。SCP-7300担当の心理士であるグッドマン博士は、この決定に対し、以下のように支持を表明しています。
今回の場合、SCP-7300に対してさらに何かを行うということは不必要であり、おそらくは有害ですらあります。SCP-7300の精神状態は、実質的に、聴取を行うたびに崩壊してしまいます。現在、SCP-7300はようやく、これまでよりも好調になっています。
我々に出来る最善の行動は、SCP-7300に幸せな生活を提供することです。そして、現在、まさにそれを実行しています。SCP-7300と話をしたことがあれば、その心境が分かるでしょう。
SCP-7300はただただ、プランクトンでいることをとても気に入っているのです。それだけなのです。